錫、銀、銅など金属器でおいしいお酒を
暑い季節に使うグラスは、ガラスが一番、と思っていませんか?
見た目にも涼し気なガラスのグラスです。ですが、結露ができてテーブルに水たまりができたり、冷たい飲み物がすぐに温まってしまったり、暑い時期に使うには困った点も少なからずあります。
夏のグラスとして日本工芸堂が見直したいのは金属のグラス。錫、銅、銀、チタン。日本の伝統技術が磨き上げてきた機能的にもすぐれた金属器をご紹介しましょう。
金属ならではの特徴を生かした器たち
金属のグラスには、それぞれ使われる素材によって異なる特徴があります。それぞれの産地では、その特徴を生かした器が作られています。
すぐ温まり、冷える錫
紀元前から人間の暮らしに寄りそってきた金属の一つが錫。日本に伝わったのは6~7世紀頃と言われ、各地の古墳の副葬品として錫のアクセサリーが発掘されることもあります。宮中でも錫の酒器が使われており、今もお酒を「おすず」と呼んでいるそうです。
錫にはイオン効果があるといわれています。水の浄化作用が期待できるともいわれ、お酒の味をまろやかにしてくれるところから、徳利やぐい呑みとして使われていたようです。
熱伝導率が高いのも錫の特徴の一つ。使う直前に錫器を冷蔵庫に入れておけば、氷をいれずキリっと冷えた飲み物が楽しめます。
水をまろやかにする銀
かつては金より価値が高いといわれた銀。数多くの銀山が存在した日本では、各地で銀器が作られました。その輝きは金属の中で最も美しいとも言われ、世界中で食器やカトラリーに使われる素材です。
銀器に含まれる銀イオンは、水に作用して風味を柔らかくするともいわれています。さらに抗菌性も高く、安心して長く使えるもの大きな特徴です。
高い熱伝導率を誇る銅
加工性、耐食性が高い性質をもち、古くからさまざまな道具に加工されてきたのが銅です。すずや亜鉛を加えれば青銅や真鍮となり色合いも変わる銅。
中でも純度の高い純銅は、熱伝導性の高さが大きな特徴。金属の中では抜群に熱の伝わり方が早く、さらに均等に伝わっていきます。料理人が調理器具に銅を使っているのは銅ならではの熱の伝わり方がおいしい料理の決め手になるからです。
冷たい氷を入れればすぐにグラス全体が冷え、いつまでも冷たい状態を保ってくれます。
美味しさを損なわないチタン
古くから使われていた素材ではないのですが、酒器として注目したいのがチタン。チタンの軽さは鉄の3分の2、丈夫さは鉄の2倍、銅の3倍と言われています。その軽さ、丈夫さから軍用機などに使われていたチタンですが、職人の工夫で暮らしの道具に加工できるようになりました。
耐食性が高いチタンは、他の金属に比べて金属ならではの臭いがしないのが最大の特徴。無味無臭で中にいれた食材の風味を変えません。
さらに、保温・保冷効果が高いのもチタンの特徴。金属アレルギーを起こす成分も入っていないので、どんな人にも安心して使っていただけるのもポイントです。
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ビールにおすすめのタンブラー
ビールは細かい泡が味の決め手。保温保冷効果が高く、細かい泡を生み出す加工のタンブラーがおすすめです。
○チタンのビアタンブラー
チタンのマグカップを最初に作ったホリエのチタンタンブラーは、二重になっているのが特徴。チタンの特徴である保温・保冷効果をより高めています。その保冷力は中に入れた氷が3時間後にも残っているほどです。内側には細かい凹凸があり、きめ細かな泡を作ってくれます。
○燕三条ステンレスと他産地コラボのタンブラー
金属加工技術の高さで有名な新潟県燕三条。燕三条で作られるステンレスに他の工芸産地の技術が融合することで、見た目も機能も優れた新商品が生み出されています。ウチキの「漆磨カップ」シリーズは、ステンレスの表面に山中塗の伝統的な白檀塗りを施したり、金箔を貼り付けてから漆塗りで仕上げたりと、伝統的かつ先進的なデザインが魅力です。
ステンレスの表面に、高岡銅器の着色技術で装飾を施したのが「折燕ORI-EN」のシリーズ。他にはない独特のブルーが人気ですが、ブラウンやシルバーもひとつひとつ表面の模様が異なり、使ううちに愛着が増すデザインです。
古くから金属加工で知られる燕三条の職人技が世界に知られるきっかけになったのが「磨き」の技術。金属を鏡のように磨き上げる技術と細かい溝を刻む技術を駆使したビアタンブラーです。内側の加工はクリーミーな泡を作り、口元の滑らかさが、ビールの味を際立たせてくれます。
> ビアタンブラー | シンジケート ビアタンブラー | アヅマ
日本酒をまろやかにするぐい呑み
日本酒に使うぐい呑みは、銀器と銅器がおすすめ。いずれもイオンの効果で日本酒の味をまろやかにすると言われ、古くから愛されてきた金属器です。
○純銀ぐい呑み
銀のぐい呑みと日本酒の組み合わせは、双方の輝きを増してくれるベストコンビ。銀器に日本酒を注げば特別な一杯に感じさせてくれます。2万回あまり金槌を打ち下ろすことで作られた微妙なカーブと槌目模様は、手にしっくりとなじみ、丁寧な職人の手仕事を伝えてくれます。
> ぐい呑み | 純銀製 並型 | 槌目模様 |森銀器製作所
○高岡銅器ぐいのみ HORN
不安定なようで安定している不思議な形のぐい呑みは、高岡銅器と山中漆器のコラボで生まれた逸品。真鍮と漆器の輝きは、落ち着いた雰囲気の中に使う楽しみも添えてくれます。※上部は真鍮ではなく漆器です。
> 日本酒グラス | 高岡銅器 山中漆器 ぐい呑み | HORN 黒漆 MELLOW GOLD/MISTY SILVER | 喜泉
金属の輝きで食卓をキリっと引き締めて
日本の伝統工芸で作られる金属器。金属といえば冷たいイメージと思われがちですが、日本の金属器はマットな輝きのものやデザインなど温かさや柔らかさを感じるものも多くあります。
それでも、金属の輝きが食卓に一つあると、なんだか雰囲気がキリリと引き締まるもの。それぞれの金属器の特徴を上手に生かしながら、いつもより少しおいしいお酒を、楽しんでみてください。
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