アルチザン
金属の町「燕」と高岡銅器のコラボが生み出す
世界に一つの色合い
伝統工芸と言えば、漆器などの木製品や焼き物などが浮かぶ人が多いかもしれません。けれど、金属加工の技術も日本では長きにわたり受け継がれ、つくられている伝統工芸の1つです。
その産地の1つが新潟県燕市。江戸時代から続く金属加工の町は、鉄や銅、ステンレスなどの加工技術で世界にその名を知られ、特に「磨き」の技術ではアップルに指名されたほどの技術を持っています。そして、日本最大の青銅器産地となっているのが富山県高岡市。仏具や茶道具の製造で磨かれた技術で、同じく世界を魅了する製品を作ってきました。
そんな2つの産地が出会い、それぞれの伝統技術をコラボレーションさせて生み出したブランドが「アルチザン」です。燕の金属加工技術に高岡銅器がもつ伝統的な着色技術が加わってできた製品は、和の色合いの中にオリエンタルな雰囲気をまとった、独自の製品となりました。
2年の歳月をかけて可能にした
不可能と言われた着色
伝統技術のコラボレーションは、往々にして簡単にはいきません。アルチザンが製造するシリーズ「折燕 ORI-EN」の開発も、思う色が発色するまでに、なんと2年の歳月がかかったといいます。
折燕シリーズと独特の模様を生み出しているのは、高岡銅器の伝統技術である「腐食による着色」技術。特殊な液体に浸し、金属表面を腐食させて鮮やかな色彩を引き出す技術は、銅や真鍮を加工するものでした。その技術をステンレスで表現することは至難の業。それでも2つの産地の職人はあきらめることなく挑戦し続け、ステンレスに特殊な技術で同を着色し、高岡銅器の技術で着色することに成功しました。
燕が培ってきたステンレスの性質を最大限に引き出す技術と高岡銅器の鮮やかな発色技術のコラボレーションが起こした、不可能を可能にした挑戦は、多くの製品へと広がりを見せ始めています。
Buyer's Voice 代表・松澤斉之より
プラスで生まれる新しい価値が
世界に日本の伝統工芸を伝える
最初に鮮やかな色合いと印象的な模様が目に止まって「いいな」と思ったのが、アルチザンさんとの出会いだった。コラボトークでもお話を伺ったが、アイデアを形にするための熱量がとても強いのが社長の長澤さんだ。
「目標は燕の金属食器になにかをプラスして新しい価値を作ること」と語る長澤さんは、一度見て忘れられなくなったという高岡銅器の着色技術とのコラボを考え、飛び込みで制作をもちかけたという。そこから2年。技術的な苦労も多かった分、できあがった製品は一度見たら忘れられない印象深いものになったように思う。
世界への展開も始めているという。日本が誇る二つの伝統工芸のコラボが世界を魅了する日はそう遠くないだろう。
日本工芸コラボトーク
【日本工芸コラボトークvol.12】産地コラボ商品企画・開発、株式会社アルチザンの可能性 株式会社アルチザンの長澤政幸さん