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記事: 伝統工芸の良さって何?よさがわかる工芸品5選、良さを伝えよう

伝統工芸の良さって何?よさがわかる工芸品5選、良さを伝えよう
#工芸を知る

伝統工芸の良さって何?よさがわかる工芸品5選、良さを伝えよう

伝統工芸って?

伝統工芸品の魅力について少し覗いてみませんか。
そもそも「伝統工芸」とは何でしょうか。「工芸品」とは、辞書的な意味で言えば、日常生活において使用される道具のうち、その材料・技巧・意匠によって美的効果を備えた物品、およびその製作の総称を指します。

最も理解しやすい伝統工芸品は経済産業大臣が指定する”伝統的工芸品”ではないでしょうか。令和5年11月現在、全国で241品目あります。この他にも都道府県が定めた工芸品などを足し合わせると1000品目は超えます。

様々な伝統工芸品


伝統工芸品のジャンルは、陶磁器や木工品・竹工品、漆器や金工品、その他ガラス工芸など多岐に渡ります。さらに産地によって背景にある文化や歴史が異なり、理解すればするほど奥の深さを味わえます。今回はその伝統工芸の魅力の一部を主観に基づきご紹介していきます。

伝統工芸のよさって何?6つをご紹介!

本記事では伝統工芸のよさを6つに分けてご紹介します。

  1. 職人の手作り
  2. 使いやすさとデザイン性を兼ねそなえる
  3. 経年変化そのものを楽しむ
  4. 修理して使い続けられる
  5. 日本の歴史と地域の特性を知る機会になる
  6. 自然との調和

それぞれ見ていきましょう。

 

1.職人の手作り

伝統工芸品の魅力は、なんと言ってもその製品の多くに職人の長年の修練した技術と、心に響く意匠が凝らされている点でしょう。代々受け継がれてきた技法の精巧さと手作りならではのぬくもり。その妙技は、一目見るだけで惚れ惚れするものばかりです。

職人の技

 

2.使いやすさとデザイン性を兼ねそなえる

伝統工芸品が長年人々から愛されてきたのには、理由があります。そのひとつに使いやすさとデザイン性の両方が備わっているという点があります。

例えば、江戸切子のぐい呑みは、お酒を嗜むのにちょうどいい形状をしている上、表面には職人による洗練されたカットが施されています。「目で見て楽しい、呑んで美味しい」のが江戸切子の魅力です。

このように、伝統工芸品は、単純に機能的に優れているというだけでなく、職人の意匠が込められたデザインにも価値があります。

江戸切子のぐいのみ

 

3.経年変化そのものを楽しむ

同じものを長く使っていると、いつかは古くなってしまうものです。伝統工芸品もいろいろな素材が使われており、日が経つと色や性能が変わることがあります。しかし、長く使っている分、愛着も湧き、経年変化そのものを楽しむことができます。

例えば竹細工の場合、購入したての頃の生き生きとした竹は、だんだんと落ち着いた飴色に変わっていくでしょう。また、陶磁器なども長く食卓に置いていると落ち着いた色合いに変化したり、貫入が進んだりします。さらに特徴的なのは、南部鉄器や山形鋳物などの金工品です。使用するにつれて生まれる「錆び」は、適切な手入れを行えば、鉄分を多く含むお湯を作る大切な変化となります。

別府竹細工


4.修理して使い続けられる

大切に扱っていたとしても、壊れてしまうことがあります。しかし、伝統工芸品を生み出す職人はその品のことを熟知しているので、修理をお願いすることもできます。つくる技術があれば修理する技術もある、ということです。修理して使い続けられる点も伝統工芸品の魅力です。

例えば、お使いの陶器や磁器が割れてしまった場合には「金継ぎ」と呼ばれる、割れた箇所を漆などを用いて修理する技術で、修繕することができます。また、漆器が剥げてしまった場合は、塗り直しの処置をしてくれるところも多くあります。使い捨てではありません。
関連記事:修理・補修で長く使う伝統工芸の技

 

 

 

5.日本の歴史と地域の特性を知る機会になる

伝統工芸品やその土地ゆかりの産業は、その土地の気候や歴史の変遷に紐づいて引き継がれてきました。そのため、それぞれの工房や技術の背景には、その土地の文化やそこで暮らしていた人たちの思いがたくさん詰まっています。

そして、さまざまな地域の伝統工芸品について知ることは、日本各地の歴史を知ることに繋がっていきます。工芸品を通して、地域の歴史への理解を深めていくことはきっと楽しいでしょう。

伝統工芸品を知ることは、日本の歴史と地域の特性を知る機会になるのです。

職人との交流

6.自然との調和

伝統工芸品は、その土地の特性に合わせた原材料を用いています。例えば、漆の木の育成には湿度が高い環境が良いことから、漆器産業は盆地で栄えていることが多いです。石川県加賀市の山中漆器や福島県会津若松市の会津塗りなどがあります。

また、限られた資源の中で「必要な分だけつくる」という意識があり、自然資源の無駄遣いをしていないということもあります。
関連記事:伝統工芸とSDGsの関係とは?

 

伝統工芸の抱える課題点、5点。よさが伝わらない背景。

ここまで伝統工芸品の魅力をお伝えしてきましたが、いくつか抱えている課題も考えられます。本記事では、以下の5点を取り上げていきます。

  1. 伝統的=古くさいというイメージ
  2. 生活習慣の変化、簡単便利
  3. これまで日常生活で触れることが少ない
  4. 購入方法の変化
  5. 機能比較すると高額

それぞれみていきましょう。

1. 伝統的=古くさいというイメージ

「伝統」という言葉から、現代の日用品とは違った古くささを感じるという若い世代の方もいらっしゃるでしょう。若い世代が新しいものを追い求めるのは世の常ですので、仕方のない現象なのかもしれません。

しかし、伝統工芸品が現在まで多くの人々に使われてきたことも事実です。長い間、続いてきたものの価値は、信用に値します。ものづくりの革新とそれをいかに伝えるかという流通側の力量あわせて必要でしょう。

 

2. 生活習慣の変化、簡単便利

生活習慣が変化したことにより、人々の購入するものも変化していきました。傾向として、安価で扱いが簡単な商品が好まれるようになっていきました。

伝統工芸品産業がひとつのピークを迎えたのは、バブル期でした。その頃は結婚式の引き出物やイベントのギフトに選ばれることが多々ありましたが、バブルが崩壊後、少しずつ市場が縮小してしまいました。他事例では核家族化が進んだことでこどもの日やひなまつりなどの儀礼の規模が小さくなるなど様々な現象がみられます。

しかし、それぞれの工房では、時代のニーズに合わせた製品の在り方を日々模索しています。例えば、こどもの日に飾る「兜」には、カラフルな色合いかつ設置に複雑な工程が要らない製品も販売され、子育て世代に人気を博しています。

モダンなデザインの五月人形


3. これまで日常生活で触れることが少ない

親世代が安価で便利なものを家庭に取り入れるようになってから、日常生活で伝統工芸品に触れる機会は減ってしまいました。そのため、次の世代には、伝統工芸品がどのようなものなのかそもそもよくわからないという人が少なくありません。

使い勝手をよく知らないものは、なかなか手に取りにくいため、いつの間にか人々と伝統工芸品との距離が生まれてしまったのかもしれません。

樺細工


4. 購入方法の変化

人々の購入方法が、実店舗からネットショッピングに移行しているのもひとつの要因でしょう。現代のお客さんは、気になるものがあったらネットで検索して、ヒットした商品を購入しています。

ピーク時は百貨店に陳列することで、お客さんとの接点を持ってきた伝統工芸品でしたが、徐々にネット上での露出が重要になってきました。オンラインでうまく表現されていなければ、いい品であってもお客さんに見つけてもらえません。

自社サイトで販売しているメーカーは、多く存在しています。ただ、このような時代の変化にうまく対応できているメーカーとそうでないところで、差が生まれていることは確かです。


5. 機能比較すると高価

単純に機能的な側面で比較したとき、伝統工芸品とそうでない製品では、後者の方が安価なことは多いです。”ジュースを飲む”、”お酒を呑む”という行為だけならば、百均で売られているコップで事足ります。

機能的な側面だけでは言い尽くせないのが伝統工芸品なのですが、その魅力をよく知らない方は、「安さ」を基準に手に取るでしょう。

他方、工芸品を利用することで地域への理解が深まったり、文化的な背景を味わったり、技術の精巧さに想いを馳せたりすることができるのです。

職人の意匠、思いなど伝統工芸品に詰まっている魅力を発信し、そうした奥深さに触れる機会を人々に提供することが、我々伝統工芸品を扱う人間の今後の課題であることは間違いありません。

焼き物制作風景

伝統工芸品のよさが伝わる5選

伝統工芸品の代表的なジャンルを5つご紹介します。

1.陶磁器
2.漆器
3.金工品
4.ガラス工芸
5.日本刀

以下それぞれをみていきましょう!

1. 陶磁器

陶磁器とは、焼き物の種類である「陶器」と「磁器」のことです。
日本の焼き物産業は、室町時代から安土桃山時代にかけて流行した茶の湯の文化をきっかけに、華々しく発展を遂げていきました。

日本一の流通を誇り「特徴がないことが特徴」と表されるほどいろんな焼き物が生産される、岐阜県の美濃焼や、日本初の磁器の産地である、佐賀県の有田焼。また九谷五彩と呼ばれる鮮やかな絵付が特徴の、石川県の九谷焼など、さまざまな産地や窯元があります。

産地によっては定期的に陶器市が開催されているところもあるので、ぜひ現地でお気に入りの焼き物を見つけてください。

有田焼

 

2. 漆器

独特の艶感が美しい漆器は、漆を塗った器のことです。断熱性が高く、熱々のスープを入れてもおいしく頂くことができます。また、重ね塗りをすることで耐久性も上がり、陶磁器に比べて頑丈であることも特徴です。

全国には、伝統的工芸品として登録された産地が、現在のところ、23ヶ所あります。石川県の輪島塗や山中漆器、ものづくりの街として有名な、福井県鯖江市の越前漆器。

輪島塗

また、堅牢な印象を抱く富山県の高岡漆器、そして福島県会津若松市の会津塗りなど各地で生産されています。現在、日本工芸堂では、売上の1%を漆器産地に寄付をする取り組みを行なっています。

関連記事:オンラインショップ売上の1%を工芸産地へ寄付。
日本伝統の想いをつなぐ「1% for 日本の工芸育成」
プロジェクト開始

津軽塗 | 会津塗 | 小田原漆器 | 輪島塗 | 高岡漆器 | 山中漆器 | 越前漆器

 

3. 金工品

金工品とは、金属を加工してつくる工芸品のことです。皆さんの身近にある鍋や釜も金工品のひとつです。

有名な金工品に、岩手県の南部鉄器や山形県の山形鋳物があります。ずっしりとした重厚感を持ち、飲むと鉄分が取れることで人気の工芸品です。「金」で有名なのは、石川県の金沢金箔です。

また、「銀」では1979年に伝統的工芸品に指定された東京銀器があります。さらに「銅」では、新潟県燕市の燕槌起銅器と富山県高岡市の高岡銅器があります。燕三条は、オープンファクトリーの先がけとしても注目されています。

高岡銅器

南部鉄器 | 山形鋳物 | 東京銀器 | 高岡銅器 | 金沢箔 | 越前打刃物 | 大阪浪華錫器


4. ガラス工芸

日本のガラス工芸は大きく分けて「吹きガラス」と「カットガラス」の2つです。
ガラスの表面に花鳥風月などの紋様をカットしていくカットガラスでは、東京の江戸切子と鹿児島県の薩摩切子、そして大阪府の天満切子があります。

薩摩切子

関連記事:薩摩切子と江戸切子はどう違うの?そもそも切子とは?

「吹きガラス」では、鉄ではなくガラスの棒を用いる「ジャッパン吹き」の技法に寄ってなめらかな仕上がりが人気の、佐賀県の肥前びいどろや、浮き玉から着想を得た青森県の津軽びいどろ、また、廃瓶を再利用して美しい工芸にする、沖縄県の琉球ガラスが有名です。

津軽びいどろ | 小樽切子 | 江戸切子 | 江戸硝子 | 天満切子 | 肥前びーどろ | 薩摩切子 | 琉球ガラス


5. 日本刀

日本刀は、洗練された刀姿を美術品として高く評価され、国内外で人気を博しています。日本刀として認められるには、原材料が「玉鋼」と呼ばれる鉄の塊であることと「鍛錬」と呼ばれる、職人によって鉄を打ち付ける工程を経ていることの2つの条件が必要になります。

人斬りの道具から美術品・工芸品として役目を移していった日本刀。上野の国立博物館で展示物として見ることもできます。

関連記事:日本刀文化を伝えるエヴァンジェリスト【日本工芸コラボトーク Vol.3 studio仕組】


 

伝統工芸と地域連携の5事例

日本各地で、伝統工芸産業と地域が連携して、工房見学やトークショーなどのイベントが開催されています。4事例をご紹介します。

  1. RENEW(福井県)
  2. 五感市(岩手県)
  3. kouba(新潟県)
  4. SANUKI ReMIX(香川県)

それぞれをみていきましょう。

 

1.RENEW(福井県)

RENEW(リニュー)は、持続可能な地域づくりを目指した工房見学イベントを主催する団体です。イベントは2016年から毎年、福井県鯖江市・越前市・越前町の3地域を跨いで開催しています。

会期中は、越前漆器・越前和紙・越前打刃物・越前箪笥・越前焼・眼鏡・繊維の7産地の工房・企業を一斉に開放し、見学やワークショップを体験することができます。作り手の想いや背景を知り、商品の購入を楽しめる特別な工芸体験が可能です。
(詳細サイト:https://renew-fukui.com)


2. 五感市(岩手県)

五感市は、「人々の五感を刺激し、いわて県南の地場産業を活性化させる!!」をビジョンに掲げ、イベント参加者に「五感」で体感する機会を提供することによってこの地の工芸品のファンになってもらおうという取り組みをおこなっています。

場所は、岩手県県南地域<一関市・平泉町・奥州市>各地の工房です。本イベントでは、工房見学・制作体験、また職人トークなどに参加することができます。
(詳細サイト:https://gokan-ichi.com)


3. Kouba(新潟県)

Koubaの正式名は「燕三条 工場の祭典」といいます。燕三条は、新潟県にある金属加工を中心としたものづくりの街です。取り組みは2013年から行われており、地域の人々や外からきた人たちにものづくりの背景や奥深さを現場で直接、伝える場を提供しています。

イベントの参加者の中には、職人を志す若者も出てきており、ものづくりの技術を次の世代に継承するきっかけにもなっています。
イベント中、参加者は地図を手にして、地域内の工房を見学をすることができます。2022年度は3年ぶりに、オンラインではない形でのイベントが開催されました。
(詳細サイト:https://kouba-fes.jp/)

4. SANUKI ReMIX(香川県)

職人の技と志を体感する香川発の展示博覧会です。香川県の伝統工芸や地場産業を支える職人(アーティザン)と、日本を代表するアーティストやクリエイターとの共創によるアートプロダクトをはじめ、個性あふれるアーティザンが多数出展しています。

2022年は香川県高松市にある、高松城跡(玉藻公園)内の重要文化財「披雲閣」にて、アートプロダクトの観覧、トークショーの拝聴、工房見学などが実施されました。
(詳細サイト:https://s-remix.jp)

まとめ

伝統工芸品の魅力についてご紹介していきましたが、いかがだったでしょうか。伝統工芸品の背景には、これまで培われてきたその土地の文化と歴史が紐づいています。そしてそれを後世に残そうとする取り組みは各地で行われています。

「百聞は一見に如かず」ということわざの通り、気になった工芸品について調べてみて、実際に手にとってみたり、現地を訪れてみたりしてみてはいかがでしょうか。きっと自分にピッタリの工芸品が見つかるはずです。

この記事では、当方視点でまとめた内容ですが、ぜひご自身での視点で背景を探ってみてください。あなたにとっての工芸品との出会いのきっかけになればうれしいです。

 

 

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