「金工品」の魅力とは?銀・銅・鉄・錫の工芸の特徴

「金工品」の魅力とは?銀・銅・鉄・錫の工芸の特徴

金属を素材に作られる工芸品が「金工品」。日本でも古くから、銅や錫、鉄、銀などを使って暮らしの道具が作られてきました。今回は、日本が誇る金工品の魅力をご紹介します。

金工品とは

金工品は伝統工芸品のひとつ

「金工品」の魅力とは?銀・銅・鉄・錫の工芸の特徴

金工品はさまざまな金属を加工して作られる工芸品です。日本でも多くの工芸品が作られており、越後三條刃物や高岡銅器、南部鉄器、東京銀器など日本の伝統的工芸品に指定されているものも多くあります。

金工品の素材になるのは、金、銀、銅、錫、鉄のほか、チタンやステンレス、アルミニウムなどさまざま。中でも玉鋼は日本刀づくりに欠かせない素材です。それぞれの産地では素材となる金属の特徴を十分に引き出した道具を作っており、その機能性や質の高さから世界から注目されています。

紀元前から続く歴史

人が最初に道具として利用した金属は「銅」と言われています。その歴史は紀元前9500年ごろまでさかのぼると言われており、金属は人の暮らしの発展と共にありました。

日本で金工品づくりが始まったのは弥生時代ごろ。大陸から青銅や鉄を作る方法が伝わり、稲作に使う道具づくりが始まりました。その後、暮らしの道具だけでなく、銅鏡や銅鐸など装飾品や祭事の道具が作られるようになり、さまざまな装飾技術も生まれました。

奈良時代には鋳物(溶かした金属を型に流し込む方法)や鍛造(熱した金属を叩いて形を作る方法)、鎚金(金属板を叩いて形を作る方法)など、基本的な金工品の製造方法が開発されていき、鎌倉時代には金属製品を作る職人が社会的な地位を得ていきました。刀を専門に作る刀鍛冶が生まれたのもこのころです。

使いこむほどに増す魅力

さまざまな伝統工芸品と同じように、金工品も使うほどに変化する「経年変化」があります。

例えば鉄。南部鉄器は使いこむと白い湯垢がつき、錆びにくく、おいしいお湯を沸かせるようになります。銅は使うことで酸化し、色合いが変化。新品の輝きとはひと味違う、つややかな色合いに魅せられる人も少なくありません。銀も変化していきます。銀の変色は酸素ではなく、空気中の硫黄分によるもの。黄色や赤、紫など銀の色合いにさまざまな表情が生まれていきます。銀の輝きの中に、次第に変化していく色を見つけていくのは、毎日使っているからこその楽しみです。

金工品の種類

金工品で使われる素材

「金工品」の魅力とは?銀・銅・鉄・錫の工芸の特徴

金工品で使われる素材はさまざまです。その中から、日本の金工品で使われる素材とその特徴をご紹介します。

〇金

その美しさから世界で愛される金属です。現在日本では鹿児島県でのみ産出されています。金の特徴は加工のしやすさ。叩けばどこまでも薄く伸び、その代表である金箔は多くの工芸品に使われています。

〇銀

かつて日本は世界有数の銀の産出国でした。純度の高い銀は世界中に流通していました。銀の特徴は熱伝導率の高さ。また、銀イオンの効果で中に入れた飲み物の風味をまろやかにするとも言われています。

〇銅

加工のしやすく、古代から暮らしの道具を作っていたのが銅。熱伝導率が高く、耐食性が高いという特徴があり、プロ用の調理器具の素材としてよく使われます。

〇錫

紀元前から使われていた金属の一つで、神具などの素材として利用されてきた錫。常温でも手で曲げられるほど柔らかいという特徴があります。錫の分子は不純物を吸着するとも言われており、お酒の味をまろやかにするとして、宮中でも酒器として活用されてきました。

〇鉄

丈夫で硬さもあり、農機具や調理器具など暮らしの道具として使われてきたのが鉄です。加工もしやすく、保温性も高いという特徴を生かし、南部鉄器などが作られています。

〇チタン

チタンはもともと軍用機に使われていた金属。これを暮らしに役立つ製品にと日本の企業が技術開発し、今ではさまざまな製品が作られるようになりました。軽くて丈夫で錆びにくく、金属臭がしないのが大きな特徴。食器などに適した金属です。

金工品の作り方と種類

金工品は、金属の特徴にあった製造方法で作られています。

〇鋳金

溶かした金属を型に流し込み、製品の形を作る製法です。複雑な形や大きなものも作ることができ、南部鉄器はこの方法で作られています。

〇鍛金

刃物などの製造で使われる方法で、熱した金属を叩いて形を作っていきます。金属は何度も叩くことで強度が高くなるので、丈夫な製品を作ることができます。

〇彫金

金属の表面に模様を彫っていく方法です。彫った模様に金属を埋め込む「象嵌(ぞうがん)」などの技法もあり、刀の鍔(つば)や、アクセサリーづくりなどに活用されています。

〇鎚金

銀器や銅器などを作る方法で、1枚の金属板を何度も叩いて形を作っていきます。一度叩いてしまうと失敗ができず、高い技術が求められます。

〇打刃物

刃物の中でも「打刃物」と呼ばれているものは地鉄と鋼など異なる金属を熱して叩くことで密着させ、粘りのある丈夫な刃物を作る技法です。刀鍛冶が使っていた技法で、切れ味のよさから料理人などに好まれています。

代表的な伝統工芸の金工品

【鉄】南部鉄器(岩手県)

岩手県の盛岡地域と水沢地域で生産されている鉄製品が南部鉄器です。17世紀中ごろに茶の湯釜を作らせたのがその始まりと言われており、茶の湯釜を小さくして南部鉄瓶が生まれました。質のよい鉄を鋳型に流し込んで作られた形に漆を焼き付けて錆止めをするなど、今も伝統的な技法で作られています。

適度に厚みがある南部鉄器は、熱を均一に伝えるため鍋やフライパンにすると焦げ付きにくくなるという特徴があります。また、南部鉄瓶でお湯を沸かすとまろやかな風味のお湯になるだけでなく、表面から体に吸収されやすい二価鉄が溶けだし、鉄分補給にも効果があるとして、再注目されるようになりました。

さらにシンプルながら高い機能性に世界も注目。海外の方にも受け入れられやすいカラフルな急須タイプの南部鉄器も人気です。

南部鉄器 鉄瓶 | アラレパール | 淡紅
南部鉄器 鉄瓶 | アラレパール | 淡紅 ¥13,200[税込]

【銅】高岡銅器(富山県)

日本最大の銅の産地、富山県高岡で作られているのが高岡銅器です。もともと、鍋や農具などが作られていましたが、江戸時代に庶民の生活水準の向上に伴い、装飾性が高い銅器が作られるようになりました。

中でも仏具のニーズは高く、華やかな彩色を施したものや、彫刻をしたものが多く作られるようになります。刀の装飾に使われていた技術を活かした装飾には、美術品としての価値も認められるようになり、パリ万国博覧会で世界にその名を知られることになりました。その技術は現代にも受け継がれ、日本初の伝統的工芸品に指定されました。

色合いも形も自由度が高い高岡銅器には、個性的なコンセプトのグラスや仏具の技術を活用したドアベルなど、他にはないユニークな商品が揃っています。

日本酒グラス | 高岡銅器 山中漆器 ぐい呑み | HORN 黒漆 MELLOW GOLD/MISTY SILVER
日本酒グラス | 高岡銅器 山中漆器 ぐい呑み | HORN 黒漆 MELLOW GOLD/MISTY ¥13,200[税込]

【錫】大阪浪華錫器(大阪府)

大坂で錫器が作られるようになったのは江戸時代と言われています。宮中で主に使われていた錫器が、江戸時代に庶民の間でも使われるようになったことから、心斎橋を中心に製造業者が集まっていました。最盛期である昭和前半には250名を超える職人が、技術を競っていました。現在でも全国シェアの7割を占める一大産地となっています。

錫の特徴は熱伝導率の高さ。「すぐ温まり、すぐ冷える」と言われるほどで、お燗の際には素早く適温になり、器を冷やしておけば、すぐにひんやりとしたお酒が楽しめます。水の浄化作用もあると言われており、おいしいお酒を楽しみたいという人に好まれている金工品です。

大阪浪華錫器 タンブラー | クレールシリーズ タンブラーベルク(小)
大阪浪華錫器 タンブラー | クレールシリーズ タンブラーベルク(小)¥11,000[税込]

【銀】東京銀器(東京都)

東京で銀製品を作る職人が生まれたのは江戸時代中期です。銀製品を作る職人は「銀師(しろがねし)」と呼ばれ、町人の間でも銀製品が親しまれていました。

東京銀器の特徴は、鍛金で作られているということ。1枚の銀の板を丁寧に鎚で叩くことで、柔らかい曲線を描くぐい呑みなどに加工していきます。一度、金槌を振り下ろすと、そこに跡がついてしまうので、失敗は許されません。一つのぐい呑みを作るのに振り下ろされる鎚は2万回以上。約2時間の手仕事で作られたぐい呑みは「手仕事」とは思えないほどの曲線を描いています。

ぐい呑み | 純銀製 並型 | 槌目模様
ぐい呑み | 純銀製 並型 | 槌目模様 ¥41,800[税込]

金工品の手入れ方法

金工品を長く、美しく使っていくためには、素材にあわせたお手入れが重要です。素材ごとのお手入れのポイントをしっかり押さえておけば、経年変化も楽しみながら、金工品の輝きを長く保てます。

鉄製品の手入れ

鉄製品で気を付けたいのが水気です。鉄製品には錆止めが施されているとはいえ、錆びやすい金属であることは否めません。鉄瓶や調理器具などは水洗いしたら火にかけるなどしてしっかりと水気を飛ばしてしまいましょう。鉄瓶でお湯をわかした後は、すぐにポットなどに移して、水分に触れる時間を少なくすることが重要です。

銅製品の手入れ

銅製品は使用後、食器洗い用の中性洗剤で洗うことができます。水洗いした後は、柔らかい布で水気をしっかりと拭き取って乾燥させます。

銅製品は使ってるうちに緑青(ろくしょう)と呼ばれる緑色の錆のようなものが付着することがあります。緑青は人体に害はありませんが、気になる場合は、酢と塩を1:1で混ぜたものを布につけてこすると落とすことができます。

錫製品の手入れ

錫製品も食器洗い用の中性洗剤で洗うことができます。錫は柔らかいので強い力を加えないよう、優しく洗うのがポイントです。洗った後は、柔らかい布で水分をしっかり拭き取りましょう。

表面が曇ってきた場合は、重曹を水で溶いてペースト状にしたもので磨くと、輝きが戻ってきます。

銀製品の手入れ

銀製品のお手入れは、通常の食器と同様です。柔らかいスポンジに食器洗い用の中性洗剤をつけて優しく洗います。表面に塩の粒などが付いたまま洗うと、表面にキズがつくことがあるので、一度ぬるま湯の中で振り洗いをしておくと安心です。十分にすすいだ後は、柔らかい布でしっかりと拭き、水分を取っておきましょう。

しばらく使っていると黒ずみが出てくることもあります。これは汚れや錆ではなく、空気中の硫黄分に反応したことでおこる硫化。経年変化の一つとして楽しむこともできますが、気になるようであれば、市販のクリーナーで磨くと黒ずみを落とせます。食器に使えるクリーナーを選びましょう。

長く愛用できる金工品は贈り物にもおすすめ

金工品は長く愛用できることに加え、見た目の華やかさで使う人の心を豊かにしてくれるるという特徴もあります。そんな金工品は大切な方の贈り物としてもおすすめの工芸品です。ラッピングや熨斗をして、特別な記念日にプレゼントすれば思い出に残る記念品として愛用していただけるでしょう。

【あわせて読みたい】
「伝統工芸の魅力」記事一覧