山中漆器
石川

山中漆器とは
柔らかな肌触りで長く愛されてきた、日本の伝統的な生活用品「漆器」。
漆器の生産が盛んな石川県には、3つの代表的な産地があります。塗りの技術で知られる「輪島塗」、華やかな蒔絵が施された「金沢漆器」、そして木地の美しさを誇る「山中漆器」です。
かつて山中漆器は、湯治客への土産物として少量生産されるにとどまっていました。しかし、その後どのようにして芸術性の高い工芸品として確立されたのでしょうか。そこには、木肌の個性をいかに引き出し、美へと昇華させるかを追求し続けた職人たちの、一切の妥協を許さない技術へのこだわりがありました。
山中漆器の歴史・技術
山中漆器の歴史は、天正年間(1573~1593年)、福井県の木地師集団が山中温泉近くに移住したことに始まります。「木地」とは、漆を塗る前の素地のことを指します。
現在も山中漆器の木地が質・量ともに優れているとされるのは、木地師たちの技術を脈々と受け継ぎ、さらに高めてきたからです。
江戸時代中期になると、金沢や京都から塗りや蒔絵といった技術が伝わり、山中漆器は芸術性の高い漆器の産地として発展し、今日へとつながっていきました。
山中漆器の特徴は、ろくろを用いて「縦木取り」という方法で木地を切り出すことです。縦木取りは、木の年輪の方向に逆らわずに削り出す技法で、木地を非常に頑丈に仕上げます。ただし、その分だけ一本の木から作れる製品数は少なくなります。
しかし、この強度があるからこそ、繊細な加工が可能となり、山中漆器特有の縞模様「加飾挽き」や、木目が透けて見える「薄挽き」といった独自の技術が生まれていきました。

また、山中漆器が得意とする「拭漆(ふきうるし)」は、木目を生かすための仕上げ技法です。木地に生漆をすり込み、拭き取る作業を何度も繰り返すことで、器を丈夫にしながら木肌の美しさを際立たせます。一方で漆は、木地の鉋(かんな)仕上げの良し悪しをそのまま映し出します。
そのため山中の木地師たちは、削り出しに使う鉋を自ら鍛造することも少なくありません。刃の形や硬さの違いは職人ごとに個性を生み、仕上がった木地の表情に反映されます。まさに山中漆器ならではの味わいにつながっているのです。
長く使い込むほどに趣を増し、その器だけの美しさを醸し出してくれる山中漆器。木と真摯に向き合い、生涯を通じて木を極めてきた職人たちが手がけるからこそ、暮らしの中で長く大切に使い続けたい逸品として、今も愛され続けています。
山中漆器のブランド一覧
山崎又一商店 /石川県加賀市

創業から120年余の山中漆器の老舗メーカー。熟練の木地師による高い技術を受け継ぎながらも、現代の生活に寄り添うモダンな製品を発信している。
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白鷺木工/石川県加賀市

三世代に渡り山中漆器を中心に丸物木地をつくり続けている白鷺木工。国産木だけを使い、正真正銘の真面目な日本製「メイドインジャパン」をつくり続けている。
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大島東太郎商店/石川県加賀市

日本一の木工轆轤(ろくろ)の産地である山中で、1909年以来漆器をつくり続けている大島東太郎商店。高度な伝統技術をもとに、格式だけでない、楽しみが伝わる漆器を目指し、「普段着の器」を生み出していいます
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浅田漆器工芸/石川県加賀市

生活の中で身近に使える山中漆器を提案しています。漆器の伝統を受け継ぎながらもカジュアルな作品が多いのが特長です。
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