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珠洲焼

石川

珠洲焼(すずやき)は、石川県珠洲市を中心に生産される中世の代表的な焼き物です。12世紀後半から15世紀末にかけて能登半島で作られ、日本海側を中心に広く流通しました。古墳時代に伝わった須恵器(すえき)の技術を基に、珠洲の土を用い、窖窯(あながま)で高温焼成することで生まれた焼き物です。

珠洲焼の最大の特徴は、釉薬を使わない無釉焼成であることです。焼成時に灰が自然に釉薬のように働き、落ち着いた光沢と独特の風合いが生まれます。また、還元焼成によって鉄分が黒く発色し、深い灰黒色の美しい色合いを呈しています

当時の珠洲焼は甕、壺、摺鉢など日用品として多く作られ、実用性と美しさを兼ね備えていました。成形には叩き技法などが用いられていたとされ、粘土紐を積み上げ羽子板状の道具で叩き締めるなどの方法も取られていました。15世紀末に一度生産が途絶えますが、昭和に入り考古学調査を経て再発見され、昭和36年に「珠洲焼」として名付けられ復興の歩みが始まりました。

現代の珠洲焼は、伝統の技術を守りつつも、花器や酒器など現代の暮らしに調和する品々が作られています。近年、2024年の能登半島地震で甚大な被害を受けましたが、窯元や陶芸家たちが復興を目指し、地域を挙げて取り組みを続けています。

珠洲焼は、中世の美意識と現代のものづくりの精神が響き合う、今もなお多くの人々に愛される焼き物です。その静かで力強い美しさは、暮らしに深い余韻をもたらしてくれます。

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