白鷺木工
「上質」をより多くの人に
職人技が活きる手仕事の器
石川県にはそれぞれに特徴のある3つの漆器産地があります。その一つが山中。「木地の山中」と呼ばれ、天然木の原木を削り、漆を塗る前の木地づくりに長けている産地です。
そんな山中で三代に渡り、「丸物」と呼ばれる器を作っているのが白鷺木工です。丸物とは、円形の器のことで、お椀やお盆、ボウルなど。なめらかな曲線を「電動ろくろ」と「木工旋盤」という原始的な道具で削り出す技はまさに職人技です。
白鷺木工のもう一つの特徴は、原木の加工から関わっていること。原木を目利きしたうえで仕入れ、加工し、木取り、削り出して仕上げまでトータルに手掛ける職人は、山中でもまれです。その技術で、天然木から作られる山中漆器の木地の約5割のシェアを占める工房です。
木の魅力、木目の美しさを
気持ちを込めて届ける
原木に触れ、削りだすからこそ、職人は木目の美しさ、木の魅力を知っています。しかし、もともと、木地職人が作る器は依頼によるものがほとんど。多くの器を作る中、どうにかして自分たちが感じる木の良さを伝える器が作れないか。その思いから「SHIRASAGI」シリーズが生まれました。
木の素朴な風合いと手に馴染む美しい曲線。子どもにも愛着を持って使ってもらえる柔らかな手触り。そんな職人が感じる木の魅力を十二分に表現した白鷺木工だからできた、木製には、1つひとつの器には「ひとつひとつに気持ちを込める」という白鷺木工のモットーも生きています。
量産できる技法であっても「上質な器をより多くの人に」という想いを込めて手仕事で作られる器の数々。奇をてらわない形の中にある高い山中の技術が、毎日使いたい、長く使い続けたい器を生み出しています。
Buyer's Voice 代表・松澤斉之より
何げない道具の1つひとつが
「すごい」職人技を教えてくれる
白鷺木工さんには「山中漆器を学ぶ」ところからお付き合いが始まった。訪問した際には、木取りと呼ばれる工程も見せてもらった。
10cmほどの厚みにスライスされた丸太の板からとれるのは5~6個のお椀。鉛筆で丸太に線を職人さんが何げなく引いていく。けれどちょっとしたズレがあれば1枚の板からとれるお椀の数は少なくなり、木に無駄ができてしまう。無駄なく木を使い切る技術が、さらりと引かれる線の中にあった。
さらに驚いたのは「それぞれどんな木目のお椀になるかが分かる」という職人さんの言葉だった。表面から見えない木目が見えるまでに、どれほどの器を削ったのだろう。それぞれの木目にあるそれぞれの美しさ。それを多くの人に伝えたいと気持ちが生まれたのは自然なことだったろうと思う。
白鷺木工ではお椀だけでなく、お椀の形をいかしたランプシェードなども作っている。木を薄く削る技術で作られるランプシェードは、灯りをつけると明かりが透けて見える。割れずに使えるギリギリの厚み。それもまた、積み重ねられた技術が生み出したものだ。
木の美しさと共に、「すごい」職人技を日々の暮らしで使っているという贅沢を、より多くの人伝えたいと、美しい木目のお椀を見るたび、強く思う。