手仕事が美しい竹細工。竹かごの種類・活用方法をご紹介
竹を割って作る竹ひごを組合せ、大きさも形も多様に編み上げられる竹かごは、昔から暮らしに欠かせないものとして人々の暮らしの中で生きてきました。台所で、食卓で、買い物で、農作業で。運ぶ道具として、収納する道具として、実用性に美しさを加えながら愛用されてきた竹かごについてご紹介します。
日本で受け継がれる「竹」の手仕事
竹細工の歴史とは
竹細工は日本だけでなく、アジアをはじめとする温暖な地域で多く作られています。それは、この地域が竹の生育に適しているから。竹は生育が早く、加工もしやすいという特徴も持っています。手軽に手に入り、しなやかで通気性や抗菌性などの機能性に長ける竹は、日々の暮らしの中で使われる道具を創る素材としてぴったりだったのでしょう。
日本の竹細工は縄文時代の遺跡から竹の道具が出土するほど長い歴史を持っています。平安時代には茶人に愛され、茶杓や茶筅などの竹細工が茶席に欠かせない道具になりました。さらに、日常使いの道具としてだけでなく、花器や仏具などに使われた竹細工の中には、その技巧の美しさから美術品として注目されるものもでてきました。
その後、江戸時代になると大分県の別府や岡山県の勝山など、日本でも各地で竹細工が作られるようになります。そのほとんどは暮らしの道具でしたが、中には大名の居城の窓枠や細かい彫刻を施した花入れなどにも使われ、シンプルな中にある自然美で多くの人の目を楽しませてきました。
竹細工・竹かごの魅力
竹細工の中でも多様な使い方ができるのが「竹かご」です。軽くて丈夫なため、たくさん入れても持ち運びしやすいのは大きな魅力。さらに適度な通気性があり、入れたものを長持ちさせてくれます。
使っていくと色合いが変わっていくのも竹製品が長く愛用されるポイント。日々使うことで竹が磨かれ、青みがかっていた竹かごは次第に飴色ともいえる深い茶色に変化し、さらには上品な艶も出てきます。使うほどに味わいを増し、編み目もくっきりと鮮明になっていく様子を「育てる」という人もいるほどです。
素材としてエコであることも竹細工の魅力の一つです。使えなくなった竹製品は竹炭などへのリサイクルが可能。竹炭としての役割を終えれば、土に還って新たな資源を育てます。天然資源を使ったエコサイクルができているのが竹製品なのです。
竹かごの種類
編んだ竹細工の代表ともいえる「竹ざる」と「竹かご」。その違いは編み目にあったといいます。ざるが隙間なく編まれるのに対し、かごは編み目が大きいものが多いのです。模様のような編み目が人気の「竹かご」にはどんな種類、編み方があるのでしょうか。
竹かごのさまざまな形
竹かごと言われて思い浮かぶのはボウルのような形をしたかごではないでしょうか。茶碗かごや鉄鉢と呼ばれる形は汎用性が高く、いろいろなシーンで活用されています。おおぶりのかごは脱衣かごや収納かごとして使われることも多いようです。
キッチンで使うものには、四角や楕円に編んだ竹かごに足をつけたものも。通気性がよくなり、かご自体、乾燥しやすくなります。
取っ手をつけ持ち運びやすくした手提げ型の竹かごバッグも人気です。たっぷり入るおおぶりの買い物かごだけでなく、巾着の底に竹かごをつけた巾着かごを、着物や浴衣とコーディネートする人もいます。
お弁当箱として使える蓋つきの竹かごもお弁当をおいしそうに見せてくれると人気です。
竹かごのさまざまな編み方
竹かごの編み方にはいくつかの種類があり、通気性を高める、強度を増すなどの特徴があります。
〇六つ目編み
編み目が六角形になる編み方です。左右斜めと横の合計6本の竹ひごを編むことで強度が増すため、竹かごにもよく用いられます。六つ目編みを2つ重ねてより強度を増す方法もあります。
〇四ツ目編み
同じ太さの平たい竹ひごを交差させながら編む編み方です。等間隔に四角の目ができるため、四ツ目と呼ばれます。縦横をまっすぐに交差させたり、斜めに交差させたりすることで、同じ四ツ目編みにも表情が生まれます。
〇八つ目編み
四ツ目編みを3つ重ねたように見える八つ目編み。縦横に2本ずつ直角に編んだ竹ひごに45度で左右から斜めに2本ずつの竹ひごを入れて、八角形の編み目を作ります。強度に優れているため、椅子の座面などにも使われる編み方です。
〇ござ目編み
太い竹ひごを縦に、少し細い竹ひごを横に使い、隙間なく編んでいく方法です。編みあがりがござのように見えるのでござ目編みと呼ばれます。比較的隙間が少ないので、竹ざるや買い物かごなどにもよく使われます。
〇菊底編み
底が円形になった竹かごなどに使われる編み方で、編みあがりが菊の花のように見えます。太めの竹ひごを放射状に重ねた後、細い竹を中心から外に向けて編んでいきます。
竹かごの使い方
同じ竹かごでも、使い方はさまざま。キッチンで使っても花器として使っても様になります。それぞれ、どんな使い方ができるか、シーンごとにみてみましょう。
キッチンで使う竹かご
キッチンで使う竹かごは、取っ手がないものがおすすめです。布巾を敷いて、いつも使うお茶碗やグラス、湯呑みを入れておけば食卓に置いたままでもインテリアのポイントになります。
通気性がよいので食品を入れておくのもおすすめです。野菜や果物を入れておくだけでおしゃれな雰囲気です。
花器としての竹かご
編み目が大きい竹かごは花器として使うこともできます。四季折々の草木・花を飾れば、季節感を演出するインテリアになってくれます。
ドライフラワーであれば、そのまま飾ってもOK。編み目に枝を差し込めば、思う場所に留まってくれます。水が必要なら口が細い瓶を使ってかごに立てかけるように挿してみましょう。フラワーアレンジメント用の給水スポンジがあれば、活用するのもおすすめ。水がこぼれる心配もなく、自由なアレンジが楽しめます。
買い物用の竹かご
買い物用の竹かごは重いものをいれてもいいように、しっかりした編み目のものを選びましょう。特にコンビニなどちょっとした買い物には、竹かごが便利。編み目の隙間が心配であれば、お気に入りのバンダナやスカーフなどを敷いておけば、買ったものが落ちる心配もありません。
別府竹細工 八ツ目かごバッグ(籐)(小)¥31,574[税込]
竹かごのお手入れ
竹かごで心配なのは、カビや黒ずみではないでしょうか。実はお手入れは思っているより簡単です。ポイントを押さえてお手入れすれば、数十年使え、美しい経年変化も楽しめます。
竹かごのお手入れは簡単
竹かごのお手入れの基本は「濡れたらすぐに拭く」ことです。丈夫で水に強いとはいえ、天然素材の竹は長時間濡れたままにしておくのは禁物。水回りで使う竹かごも、使った後はすぐにしっかりと水気を拭き取り、完全に乾燥させましょう。
かごバッグなど水回り以外で使うものはできるだけ水気を避けて使用します。もし、濡れてしまった場合はすぐに柔らかい布で拭いて乾燥させます。乾かす際は、天日に干すと竹が日焼けしてしまうので、陰干しがおすすめです。
さらに、使った後は軽く拭いておくと次第に艶が増していきます。
竹かごを長く使うための保管方法
竹かごをしばらく使わないというときは、風通しがよい、乾燥したところで保管するようにします。湿気は低いところに溜まりやすいので、できるだけ高いところに保管するとよいでしょう。
時折、竹の中に潜んでいた虫が発生することもあります。竹を加工する際は、殺虫剤などは使われていません。だからこそ、食品に使用しても安心なのです。万が一虫が発生して白い粉がでてきた場合は、熱湯をかけて処理するようにします。
一生もので万能な竹細工のかご
竹細工のかごは、さまざまな使い道があり、暮らしをおしゃれにナチュラルに彩ってくれる万能アイテムです。ポイントを押さえて大事に使っていけば一生使っていくこともできます。竹細工上級者の中には50年以上同じかごを使っている、という人もいるほどです。
長持ちさせるためのポイントは、何より毎日使うこと。季節を問わず暮らしの必需品として使っていれば、小さなトラブルもすぐに気づいて対処できます。毎日触れて愛用して、あなただけの色に変化していく竹細工のかごを、ぜひ、楽しんでみてください。
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