日本酒が美味しい季節。「冷やおろし」に合う伝統工芸の酒器
四季折々の変化を大切にする日本。色合いや料理に四季の変化があるように、日本酒にも四季があることをご存知でしょうか。中でも秋に出荷される「冷おろし」はまろやかな味わいで人気の高い日本酒です。今回は秋の日本酒に合うおすすめの酒器もご紹介します。
目次
日本工芸堂取扱いの酒器(江戸切子、錫、陶磁器など)一覧はこちら
秋の日本酒「冷やおろし」とは
季節ごとに楽しめる日本酒
豊かな味わいと香りで世界から注目されている日本酒。年中出荷されているイメージですが、実は、蔵元では季節にあわせて仕上げの方法などを変え、さまざまな味わいが楽しめるよう工夫しています。
冬:しぼりたて新酒
通常の日本酒は出荷前に二回の火入れをしています。保存期間を長くするためです。けれど、寒いこの時期、火入れをせずに出荷されるのが「しぼりたて新酒」。日本酒のヌーヴォーと呼ぶ人もいます。火入れをしないため、日本酒の中で酵母が生き続け、短期間に味わいがどんどん変化するのが大きな特徴。中でも立春の朝に絞りその日のうちに飲む「立春朝搾り」は、限られた酒屋さんだけでしか手に入れられない、特別な新酒として毎年多くのファンが心待ちにしています。
春:春酒
春純米などの名前で3~5月に販売される日本酒です。特別な麹を使い、ほんのりピンクに染まったものや、甘酸っぱい風味のものなど、春らしい見た目や味わいにこだわって作られています。お花見や女子会でも人気の日本酒です。
夏:夏酒
最近話題になっているのが、蔵元がさまざまに工夫した個性豊かな夏酒。微発泡のものやオンザロックで楽しむものなど、夏ならではの飲み方ができます。味わいも軽く爽やかなものが多く、食事と一緒にさっぱりと飲めるものが人気です。
秋:冷やおろし
日本酒の中でも一番知られているのが秋酒。中でも「冷やおろし」はお米の香りと旨みが凝縮しているとファンが多い日本酒です。冷やおろしは冬から春にできあがった日本酒に一度だけ火入れした後、蔵でじっくり熟成させて作ります。この製法は江戸時代の酒造りを継承したものと言われており、生酒の爽やかなのど越しと、熟成することで生まれるまろやかな味わいが楽しめます。
秋の「冷やおろし」の魅力
「冷やおろし」の出荷時期は9~11月頃です。一度しか火入れせず貯蔵される「冷やおろし」は出荷されるまでに少しずつ熟成が進んでいきます。同じ「冷やおろし」でも9月のものと11月のものでは味わいが変化するのです。出荷時期を見ながら、味の違いが楽しめるのも面白いですね。
飲み方のバリエーションが多いのも「冷やおろし」の魅力。「冷や」と名前に入っていますが、冷たくして飲まなくてもかまいません。豊かな香りを楽しむために40度くらいの燗酒にする人もいます。生詰酒なので、氷を入れて味わいの変化を楽しむのもいいでしょう。
料理を合わせるなら、秋の味覚がおすすめ。お米で作られたお酒だからこそ、秋に旬を迎える素材を使った和食との相性はぴったりです。あぶらののった秋刀魚の塩焼きや、キノコ料理、焼きナスなどは冷やおろしの味わいを引き立ててくれます。
冷やおろしにおすすめ ①銀の酒器
【東京銀器】純銀ぐいのみ(森銀器製作所)
一枚の銀ののべ板を槌で叩くことでぐい呑みの形に仕上げる東京銀器のぐい呑みです。柔らかい銀は鎚があたると槌跡がついてしまいます。失敗が許されないひと打ちを繰り返すこと、約2万回。丁寧に作られ磨かれたぐい呑みは、反射する光で注いだ日本酒の輝きを増してくれます。「冷やおろし」の深い香りと味わいにより特別感を感じさせてくれること間違いなしです。
冷やおろしにおすすめ ②切子の酒器
【江戸切子】菊七宝ぐいのみ(山田硝子)
世界に誇る日本の伝統工芸が江戸切子。古くから縁起柄として親しまれている七宝柄に、人気が高い菊の花をあしらった菊七宝は、光を多く反射し日本酒をキラキラと輝かせてくれる模様です。飲み口が透明なガラスになっており、日本酒をなめらかに口に注ぎ込んでくれるので、爽やかな「冷やおろし」の味わいがより強く楽しめます。
【薩摩切子】伝匠猪口(薩摩びーどろ工芸)
江戸切子と並び立つ日本のガラス工芸、薩摩切子。江戸末期の日本において、鮮やかな色ガラスと美しい彫刻で海外からも注目されました。しかし、島津藩の産業振興として始まったが故に、藩主の急逝、薩英戦争の影響により20年ほどでその技術が途絶えた幻の切子でもありました。現在の薩摩切子は長年の研究と試行錯誤により当時の技術を復刻したもの。日本で初めて成功した被せガラスの技術が生み出した美しいぼかしと重厚感のあるたたずまいは、豊かな風味の「冷やおろし」にぴったりです。
冷やおろしにおすすめ ③ガラスの酒器
【金沢箔】氷結酒器揃え(箔座)
「冷やおろし」などの日本酒は飲む温度で味わいが変わります。そんな変化を楽しむなら、片口に移しておくのがおすすめです。次第に温度が変わり、飲みはじめと飲み終わりの味わいの違いが楽しめます。せっかくなら、片口とぐい呑みをセットで揃えて一緒に使ってみるのはどうでしょうか。氷のような涼やかなデザインが魅力的なガラスの器が「冷やおろし」をより一層楽しませてくれます。
冷やおろしにおすすめ ④錫の酒器
【大阪浪華錫器】富士山タンブラー(大阪錫器)
宮中では日本酒のことを「おすず」と呼ぶほど、日本酒との関わりが深い金属が錫。日本酒の雑味を取りまろやかにする、熱伝導率が高いので温度による味わいの変化を楽しめる、など、金属の特性と日本酒の相性がとてもよい、と言われています。そんな錫を使ったタンブラーは伏せておけば、縁起の良い赤富士と青富士が一度に見られるという趣向で人気。盃より大きいので「冷やおろし」をゆっくり味わいたい方におすすめです。
冷やおろしにおすすめ ⑤銅×漆の酒器
【高岡銅器】HORN黒漆ぐい呑み(KISEN)
銅と漆器を組み合わせた個性的なぐい呑みは、パリで日本酒を楽しむ器として招待された実績をもつ逸品。美術品としても人気の高い高岡銅器と、木目や漆の美しさを表現することで定評のある山中漆器のコラボレーションで、ほかにはないスタイルのぐい呑みになっています。下になるほど細くなり不安定に見えますが、金属の重みが絶妙なバランスで全体を支え、驚くほど安定しています。飲み口に向かって広がっている形状なので「冷やおろし」の芳醇な香りを引き出してくれるのもおすすめポイントの一つです。
冷やおろしにおすすめ ⑥陶磁器の酒器ギフトセット
【肥前吉田焼】GOSU hana 徳利・猪口セット(副久製陶所)
佐賀県嬉野市で作られている磁器「肥前吉田焼」。徳利と猪口には点描で花が描かれています。5つのブルーから色の組み合わせを選んでいただけるのもポイント。同じ色で組み合わせても、全部異なる色の組み合わせにしても、違和感なく使っていただけます。日本酒好きの方への贈り物におすすめです。
【有田焼】GEN酒器セット(KIHARA)
佐賀伝統の有田焼・波佐見焼の産地商社KIHARAが手がける酒器セット。製造過程で破損してしまった素焼きの器を、細かく砕いて粉にし釉薬に混ぜて 再利用する加飾法「泡化粧」のシリーズです。
季節の日本酒をこだわりの酒器で楽しむ
実りの季節。美味しい食事と一緒に楽しむなら、秋だけの味わい「冷やおろし」を合わせたいですよね。せっかくの美味しい秋酒。形や素材だけでなく、見た目や背景にある物語も楽しめませてくれる伝統工芸の酒器なら、味わいがより深まるのではないでしょうか。今年の「冷やおろし」は、伝統工芸品と一緒に楽しんでみませんか?
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