朝、コーヒーを淹れながら壁の時計に目をやる。出かける前に、鏡の前で襟元を整える。一日に何度も目にする道具は、部屋の印象を思いのほか左右します。そのうちのひとつを木のものに替えてみると、白い壁や明るい床の部屋に、木目という表情がひとつ加わります。
木製インテリアは、家具をそろえ直さなくても、時計や鏡、あかりといった小さな品から始められます。この記事では、日本各地の工房がつくる木工品を例に、暮らしへの取り入れ方と、自宅用・贈り物それぞれの選び方をご紹介します。

木製インテリアの魅力とは
木の品は、同じ品名でも一点ずつ表情が異なります。木目の流れや色の濃淡は一本ごとに違い、同じ木から切り出した板でも場所によって見え方が変わるためです。佐賀県のミマツ工芸は、一本の杉から切り出した板の年輪の濃淡を組み合わせ、時計の盤面に文様を描いています。木目そのものを模様として生かした一例です。
質感も木によって異なります。この記事で紹介する品だけでも、杉、タモ、ウォルナット、青森ヒバ、黒檀、いちょうと素材はさまざまです。色の明るさ、木目の現れ方、手に触れたときの感触はそれぞれに違い、塗装を施すか素地のまま仕上げるかでも印象が変わります。木材ごとの特性は、工芸品に使われる木材の種類と特性で詳しく紹介しています。
もうひとつの楽しみは、使ううちに起こる変化です。木の品の多くは、光や空気、手に触れることで色味や艶が少しずつ移ろいます。変わり方は樹種や仕上げによって異なるため一様ではありませんが、購入したときと数年後で細部の表情が違ってくるのは、木の品ならではのことです。
白い壁や無地の建具が多い現代の住まいでは、部屋全体を木でそろえなくても、壁に掛けた時計や棚に置いた小物がひとつあるだけで、色と質感の違う部分が生まれます。木のインテリア雑貨が取り入れやすいのは、このためです。
暮らしに取り入れたい木製インテリア
壁に掛ける木の時計
北海道旭川市のササキ工芸がつくる「HAGIclock ラウンド」は、直径28cmの木の掛け時計です。盤面は4枚の木片を「ハギ合わせ」で接着したもので、その継ぎ目が12時・3時・6時・9時の位置と重なるように設計されています。数字を置かず、木の合わせ目が時刻の目安を示すつくりです。リビングやダイニングの白い壁に掛けると、木の色合いが壁面のアクセントになります。
手元に置く木のミラー
同じササキ工芸の「ピボットミラー」は、北海道産のタモを使った卓上ミラーです。鏡と脚をつなぐ部分にはマグネットメーカーと共同開発した部品が使われ、角度を変えて使えます。洗面所だけでなく、ダイニングテーブルやデスクで身支度をする人に向いた大きさです。使わないときも、木のフレームが小さなインテリア小物として机の上になじみます。
置く場所と組み合わせ方
最初の一点は、毎日必ず目に入る場所に置く品から選ぶと、変化を感じやすくなります。たとえば、ソファに座ったときに正面に来る壁や、仕事をするデスクの端です。すでに木の家具がある部屋なら、色味の近い木を選ぶと落ち着いたまとまりになり、あえて濃い色の木を合わせると空間にメリハリが生まれます。棚やサイドボードには、壁掛けよりも小ぶりな木製の置き時計が収まります。後半で紹介するko NENRINは12cm角ほどの大きさです。
時計や鏡のほか、花器やスツールなどは木のインテリアにまとめています。
職人の技を楽しむアート木工
組子細工のあかり
組子は、薄く削った木を格子状に組み合わせ、模様を組み入れていく技法です。かつては欄間や書院、障子など、日本家屋の建具に多く見られました。山形県米沢市の「木のあかり」は、この技法を小さな照明に仕立てています。
「麻の葉キューブ S」は、11cm角の立方体に麻の葉模様を組み込んだテーブルランプです。素材は青森ヒバ。灯すと格子のあいだから光が漏れ、周囲に模様の影が浮かびます。常夜灯としても使えるため、寝室の枕元や廊下の棚などにも合います。昼間、灯りを消しているときは、組子そのものを細工として眺められます。
薄い木を組み合わせたトレイ
徳島市の森工芸は、木材を0.2〜0.6mmの薄さにスライスした「ツキイタ」をつくり、家具などの表面に貼る工房として70年にわたって木目と向き合ってきました。「Round Rays Tray」は、そのツキイタを木目に合わせて三角形に切り、中心から光が広がるように貼り合わせた丸いトレイです。黒檀のLサイズは直径44cm。来客時にお茶を運ぶお盆として、また一人分の食事を並べる銘々盆として使えます。使わないときは、立て掛けて木目の放射を眺めるのもよいでしょう。
あかりもお盆も、用途のある道具です。そのうえで、使わないときにも、その造形を楽しめるのが、工芸的な木工品の特徴です。組子やツキイタの貼り合わせなど、技法そのものを楽しむ品はアート木工に集めています。
贈り物にも選びたい木の工芸品
木の品を贈るときは、相手の暮らしのどこに置かれるかを思い浮かべると選びやすくなります。新築や引っ越しのお祝いなら新しい部屋に置けるもの、結婚のお祝いならふたりで毎日使う台所の道具、退職や節目の記念品なら長く手元に置けるもの、といった具合です。
節目のお祝いに贈る木の時計
ミマツ工芸の「ko NENRIN」は、一本の杉から切り出した板を組み合わせ、日本に古くから伝わる吉祥文様を表した木製の置き時計です。大きさは約12.4cm角、素材は無塗装の国産天然杉。「市松」は上下左右に連続する文様で、繁栄への願いが込められています。新築祝いや退職の記念など、人生の節目に贈る品としてもおすすめです。
ページのトップの画像はこちらの商品です。周年記念などでも喜ばれています。
毎日の台所で使う一枚板のまな板
東京のWONDERWOODによる「MANAITA 贈るまな板」は、日本産のいちょうの一枚板でつくられています。商品ページによれば、樹齢100年以上の木を、材質や乾燥の状態を見極めて選んでいるとのことです。サイズはSとMの2種類。ふたりの暮らしを始める方への結婚祝いにも向いています。
木のギフトには、日本の木でつくる木軸ペンや曲げわっぱの器など、贈り物に向く品もそろっています。
木製インテリアを長く楽しむために
木は周囲の湿度に応じてわずかに水分を吸ったり吐いたりする素材です。置き場所を選ぶときは、直射日光が長く当たる窓辺や、エアコンの風が直接当たる場所、湿気のこもりやすい場所を避けると安心です。
お手入れの方法は、素材と仕上げによって異なります。この記事で紹介した品でも、HAGIclockやピボットミラーはウレタン塗装、ko NENRINやMANAITAは無塗装です。MANAITAについては、中性洗剤でやさしく手洗いし、熱湯での消毒は控えるよう案内されています。それぞれの品に合った扱い方は、商品ページや付属の取り扱い説明をご確認ください。
手仕事の木を、長く使う
ハギ合わせの継ぎ目を時刻の目安にした時計、組子の格子から光が漏れるあかり、薄くスライスしたツキイタを貼り合わせたトレイ、一本の杉の年輪で描いた文様。この記事で取り上げた品は、どれも木の性質をよく知る工房が、素材の生かし方を工夫して形にしたものです。毎日手に取り、同じ場所で使い続けるなかで、そのつくりの細やかさに気づく機会は少しずつ増えていきます。どの工房の、どの木の品を、暮らしのどこで長く使うか。その選び方にも、木製インテリアの楽しみがあります。
陶磁器や竹工芸など、木以外の素材も含めた工芸品のインテリアは、伝統工芸品をインテリアにで取り上げています。




