
琉球ガラスとは?特徴・歴史・色の意味と魅力を解説
琉球ガラスは、沖縄を代表する工芸品のひとつです。厚みのあるガラス、やわらかな気泡、鮮やかな色合いが特徴で、グラスや器、花器など暮らしの中で楽しめる品として親しまれています。
この記事では、琉球ガラスとは何か、その歴史や特徴、色の意味、作り方、種類、そして日常使いやギフトとしての魅力まで、日本工芸堂の視点でわかりやすくご紹介します。
目次
琉球ガラスとは?
沖縄でのガラス製造は明治時代中期頃に始まり、約100年の歴史があるといわれています。ところがその製造は、第二次世界大戦をきっかけに大きく変化を遂げることとなりました。
第二次世界大戦の敗戦によってガラス工房やガラスの原料がなくなってしまったことで、ガラス職人たちは、駐留米軍による廃瓶に注目しました。職人たちはその廃瓶を再利用し、琉球ガラスとして復活させたのです。このガラス製品が、現在の琉球ガラス製作の3割を占める「再生ガラス」による琉球ガラスです。
資源不足から発展した再生ガラスを使う製法は、時を経るごとにその独特の美しさに注目されるようになり、平成10年に沖縄の伝統工芸品に指定されました。
琉球ガラスは、戦後の資源不足の歴史を背景に生まれましたが、現在は伝統工芸品としてのその独特な美しさに注目が集まっています。
>この品の紹介ページ:ビールを入れるとグラデーションが美しい「沖縄の夕日」
琉球ガラスの歴史
沖縄でのガラス製品づくりは明治時代中期頃に始まり、現在まで約100年の歴史があります。沖縄でガラス製品づくりが始まる前は、ほとんどのガラス製品を本土から輸入していました。しかし、輸送途中にガラスが破損してしまうことが多かったと言われています。
そこで、長崎・大阪からガラス職人を沖縄に招致することで、沖縄でのガラス製造が始まりました。当時は主に食品を入れるための瓶やホヤ(火を使ったランプに用いられるガラス製の円筒)が作成されていました。
ところが、その頃に建てられたガラス工房や製品は冒頭に御紹介したとおり、第二次世界大戦により甚大な被害を受けてしまいます。
第二次世界大戦を経て発展を遂げた琉球ガラス
第二次世界大戦中の1944年10月10日の空襲(10・10空襲)により那覇市街は焦土と化し、多くのガラス工房が無くなるとともにガラス資源も失うことになりました。終戦を迎え、日本が復興に向かうなかで沖縄県の那覇市与儀周辺にて戦後の1947年頃からガラス製造が再度開始されたと言われています。
しかし、駐在兵や米軍関係者を中心にガラス製品の需要が高まったものの、物資不足の中でガラス製品の原料不足が続きます。そこで当時のガラス職人たちは駐留米軍によるジュースやお酒の廃瓶に目を付けました。
現在見ることができる「再生ガラス」による、琉球ガラス製品の誕生です。当時は米軍関係者からの需要が多く、ワイングラスや花瓶などアメリカ的なデザインの製品が多かったといわれています。
平成10年に沖縄県の伝統工芸品として認定
1960年代のベトナム戦争によりガラス製品の戦争特需が発生し、沖縄県内で数多くのガラス工房が建てられます。
1972年5月15日に、ついに沖縄が米国から日本に返還されると、沖縄の返還を記念して1975年に開催された「沖縄海洋博覧会」を契機に、本土からの沖縄観光ブームが巻き起こります。
観光ブームで沖縄に訪れた人々の土産物として、沖縄の伝統工芸品にも多くの注目が集まるようになりました。琉球ガラスも例外ではなく、商業用としてではなく観光客向けのお土産品として定着していったのもこの時期だと考えられます。
また、この時期には琉球ガラスの人気が高まると同時に、着色剤の開発や原料ガラスの使用により徐々に製品も種類を増やしていきます。その後の1998年(平成10年)、琉球ガラスは「伝統工芸品」として指定されました。
現在では、沖縄が観光地として豊かになると同時にガラス工房やメーカーも増え、多彩なガラス製作が行われるようになってきています。2014年には、県内では303人の職人たちが、17か所のガラス工房で琉球ガラスを作り上げています。
2020年には宙吹き職人である末吉清一が、琉球ガラス職人として「現代の名工(厚生労働省による、卓越した技術を持つ技能者を表彰する制度)」に選ばれるなど、現在でも伝統工芸品としての琉球ガラスへの注目や知名度は高まっています。
🔍 日本工芸堂 現地レポート
日本工芸堂の代表・松澤は、沖縄の伝統工芸を訪ねる「伝統工芸の旅」の中で、読谷村の琉球ガラス工房を実際に訪問しています。「色彩やかたちには海や風といった自然の記憶が息づく」と感じたこの旅では、工房での商談や現場見学を通じて、職人の想いや地域の文化に直接触れました。
【伝統工芸の旅】やちむんと琉球ガラスの手ざわり感を深める(沖縄)
琉球ガラスの特徴と魅力
戦争や観光ブーム等の多大な影響を受けて変遷を遂げてきた琉球ガラスですが、時代を超えて愛され続ける特有の魅力や特徴があります。
ぬくもりを感じる丸みを帯びた形状
琉球ガラスといえば、その厚みと丸みのある形が特徴です。琉球ガラスは職人によって一つ一つ手作りされており、ほどよい厚みやぽってりとした丸さがあります。特有の丸さは、吹き竿で空気を送り込む工程に由来しています。
それにより、通常の冷たい印象のあるガラス製品とは異なり、琉球ガラスは職人それぞれの味わいやぬくもりが伝わる形状になっています。
職人による手作りのあたたかみを感じることができる、丸みや厚みは琉球ガラスの魅力の一つといえるでしょう。
閉じ込められた魅力。ガラスの気泡
琉球ガラス特有の特徴として人気を集めているのが、ガラスに残されている沢山の気泡です。
本来のガラス製品の作成においては気泡が入ってしまった製品は失敗とされています。特に再生ガラスを使用した製作ではラベル等の不純物が残りやすく、必然的に気泡が入りやすくなります。
しかし、琉球ガラスの気泡はその豊かな魅力の一部として、多くの人々から受け入れられ、愛されているのです。現在はガラスの攪拌や巻きつけ、剣山の針などを用い、わざと気泡を含ませることもあります。
どことなく沖縄の海や涼しさを感じさせてくれる気泡は、まさに琉球ガラスならではの魅力といえるのではないでしょうか。
琉球ガラスの色の意味|赤・青・緑に込められる印象
琉球ガラスのもう一つの特徴として、そのカラフルな色合いが挙げられます。
琉球ガラスが色とりどりな色彩を帯びているのは、敗戦後のガラス製造に使用された廃瓶によるものです。当時は廃瓶の約6種類の色(オレンジ・茶色・緑・水色・青・紫)がガラスの色として使われていましたが、現在ではカラフルな色を人工的に着色することで豊かな色彩や濃淡を生み出しています。
色ごとに異なる印象があり、贈り物を選ぶ際の参考にもなります。ここでは、各色から受けるイメージをご紹介します。
- 赤・オレンジ系
沖縄の太陽や朝夕の空を思わせる、華やかで温かみのある色合いです。お祝いの席や、気持ちを明るく伝えたい贈り物にも選ばれます。
- 黄色系
明るく前向きな印象の色です。食卓に取り入れると、やわらかな陽気さをもたらしてくれます。
- 緑系
沖縄の豊かな大地や植物を連想させる色合いです。穏やかで落ち着いた印象があり、日常使いにもなじみやすい色といえます。
- 青・水色系
琉球ガラスを代表する色のひとつです。沖縄の海や空を思わせる、涼やかで清らかな印象があります。夏の食卓や、爽やかな気持ちを伝えたい贈り物に合います。
- 透明(クリア)
シンプルで汎用性が高く、料理や飲み物の色を引き立てます。どんなシーンにも合わせやすい定番の色合いです。
色の好みや贈る相手のイメージに合わせて選べるのも、琉球ガラスの楽しさのひとつです。沖縄らしいカラフルな色彩の中から、お気に入りの一点をお探しください。
沖縄の光や海を思わせる色合いの琉球ガラスは、日常使いのグラスや贈り物にも選ばれています。日本工芸堂では、暮らしの中で使いやすい琉球ガラスの品をご紹介しています。
> 琉球ガラスの商品を見る
再生ガラスを使う琉球ガラスの原料と作り方
近年、SDGsへの関心の高まりとともに「持続可能性」に注目が集まっていますが、その潮流のはるか前の第二次大戦後から、琉球ガラスづくりでは「再生ガラス」が使われています。
再生ガラスによるガラス製品づくりは、その原料となる瓶の色によって色味が異なり、さまざまな仕上がりになるのです。例えば、泡盛の一升瓶やビールを原材料とする場合はブラウン系のガラス製品、コーラなどはグリーン系、ジャムの瓶はクリア系などその色合いは多種多様です。
琉球ガラスの技法|「宙吹き法」と「型吹き法」
琉球ガラスには、「宙吹き法」と「型吹き法」の主に二つの製法があります。どちらの技法を用いるかは、製造するものの形などにより決められます。吹きガラスは琉球ガラスだけでなく、日本各地のガラス工芸に受け継がれる技法です。詳しくは日本のガラス工芸を知るもあわせてご覧ください。
- 宙吹き法
約1300~1500℃の高温で溶けたガラスを、筒状の「吹き竿」と呼ばれる道具で巻き取ります。その吹き竿に息を吹き込み、ガラスをふくらませながら製品の形を創りだしていく技法です。
この技法では、ドロドロに溶けたガラスに働く重力とガラスが巻き付いた吹き竿を回す遠心力だけで整形します。高温のガラスが冷める前に成形をする必要があるため、異なる模様や形が加工の過程で偶然つくこともあります。
そのため、宙吹き法では、加工過程での数多くの偶然や吹き竿に吹き入れる職人の加減により、同じものが一つとして存在しない多種多様な製品をつくることが可能です。
- 型吹き法
宙吹き法と同じく、ガラスを約1300~1500℃で溶かします。その後、溶かしたガラスを吹き竿につけ、金属型、木型、石型に差し込みます。その状態のまま竿に息を吹き込むことで、型通りに成形することができます。
この技法では型通りの同じ形状の製品を沢山作ることができます。型で同じ形を成形しているとはいえ、工房や材料・職人によって一点一点異なる味魅力を楽しむことができます。
- 製造工程
どちらの工程においても、琉球ガラスの製造工程としては主に5つ段階があります。これらの工程の中で、ガラスを溶かしておく窯(坩堝、るつぼ)、製品を仕上げる窯(整形窯)、製品を冷ます窯(徐冷窯:じょれいがま)の三つの窯が使われるため、2~3人の職人が連携して一つの作品が作成されます。
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色を調合する
原料を色ごとに調合します。廃瓶を使用する場合は、調合の前に色別で分けて洗うことからスタートします。 -
原料を溶かす
調合済みのガラス原料を約1300~1500℃で溶かしておく窯(坩堝、るつぼ)に入れ、一晩溶かします。 -
形を作る
ここで、「宙吹き法」・「型吹き法」のどちらかの製法を用いて成形していきます。最終的には、製品を仕上げる窯(整形窯)を用いながら形をしっかりと整えていきます。 -
冷やす
約600℃で常温になるまで、ゆっくりと製品を冷ます窯(徐冷窯:じょれいがま)に一晩入れておきます。そうすることで、急速な温度変化によるガラスの損傷を防ぎ、成形した琉球ガラスを製品へと仕上げます。 -
検品する
徐冷窯より取り出された製品を水洗いしてヒビや割れがないか、期待した形に成形されているかを検品し、皆さんのもとに届く琉球ガラスが完成します。
こうした、職人や工房の丁寧なひとつひとつの手作業によって、一つとして同じものがない琉球ガラスが生まれるのです。
🎥 動画で見る琉球ガラス
沖縄県読谷村の東シナ海に面する工房で作られる琉球ガラスを、日本工芸堂スタッフ、廣田がご紹介しています。職人が一つ一つ心を込めて手づくりする様子もあわせてご覧ください。
琉球ガラスの種類と使い方
琉球ガラスには、グラスや器をはじめ、さまざまな形の品があります。用途やシーンに合わせて選べるのも、この工芸品の魅力のひとつです。
- グラス・タンブラー:飲み物を楽しむための定番アイテム。食卓で毎日使えるものが多く、「琉球グラス」として親しまれています。
- ぐい呑み・酒器:泡盛などの沖縄の酒文化とも馴染みが深く、お酒好きへの贈り物にも喜ばれます。
- 皿・小鉢:食卓に色を添える器として、日常使いにも取り入れやすいアイテムです。
- 花器・一輪挿し:インテリアとしても楽しめます。窓辺に置くと光を受けてきれいに映えます。
- 箸置き・豆皿:手軽に取り入れやすいサイズで、まとめてギフトにするのにも向いています。
日常的に使えるグラスや器が中心ですが、飾って楽しむ作品としても親しまれています。
琉球ガラスをはじめ、江戸切子や薩摩切子など日本各地のガラス工芸品は、ガラス工芸品の一覧からあわせてご覧いただけます。
琉球ガラスと琉球グラスの違い
「琉球ガラス」と「琉球グラス」、この二つの言葉を目にすることがあります。
一般的には、琉球ガラスは沖縄で育まれてきたガラス工芸全体を指す言葉として使われることが多いです。グラスだけでなく、皿・花器・酒器など、ガラスを素材にしたさまざまな品を含む広い概念といえます。
一方、琉球グラスは、その中でも飲み物を楽しむグラス類を指して使われることが多い言葉です。コップやタンブラーとして使うことを想定した品を選ぶ際に、「琉球グラス」という言葉で探す方が多い印象があります。
どちらも同じ沖縄のガラス工芸に根ざしたものです。用途や使うシーンに合わせて、お好みの品をお選びください。
琉球ガラスはお土産やギフトにも選ばれる工芸品
琉球ガラスは、沖縄旅行のお土産として長く親しまれてきた工芸品です。近年では、旅の思い出としてだけでなく、日常の暮らしに取り入れるギフトとしても選ばれるようになっています。
色合いや形にそれぞれ個性があるため、贈る相手の好みやイメージに合わせて選びやすいのも魅力のひとつです。
- 結婚祝い・新築祝い:食卓で毎日使えるグラスや器として
- 誕生日・記念日の贈り物:好きな色で選ぶ、少し特別な品として
- 旅の記憶を感じる品:沖縄を訪れた方や、沖縄好きの方へ
- 日常の食卓をちょっと豊かにしたい方へ:普段使いのグラスを工芸品に替えてみる楽しみ
一点一点に個体差があるため、「世界にひとつ」の品を贈れるのも、手仕事の工芸品ならではの良さです。
日本工芸堂で扱う琉球ガラス
色合いや形、使うシーンから選べる琉球ガラスのグラスや器を、日本工芸堂でもご紹介しています。旅の記憶を感じる品として、また大切な方への贈り物としてもお選びいただけます。
> 日本工芸堂で取扱の琉球ガラス一覧はこちら
日本工芸堂スタッフおすすめ各産地のガラス工芸
日本工芸堂では、全国各地のガラス工芸品を取り扱っています。その中から、日本工芸堂スタッフが自信をもっておすすめするガラス工芸品をご紹介します。
ガラス工芸、江戸切子
日本を代表するガラス工芸として、国内外の人々を魅了し続けている江戸切子。
江戸切子とは、ガラスの表面に華やかな文様を加工した工芸品のことで、東京都江東区・隅田区を中心に江戸時代から技術が受け継がれています。その特徴は、表面に施されたシャープで独特な文様や色味にあります。
江戸っ子に愛され続け、2002年に伝統工芸品に指定された江戸切子は、その美しさから多くの人々に親しまれています。
> 日本工芸堂で取扱の江戸切子一覧はこちら
ガラス工芸、薩摩切子
切子の中でも長い歴史を持つ薩摩切子。薩摩切子はカットの緩やかさや美しいグラデーションのぼかしが特徴です。江戸切子よりも厚めの色ガラスを重ね、そこに緩やかにカットしていく薩摩切子は、江戸切子とは異なる風合いで人気を博しています。
江戸時代の藩主たちから愛された薩摩切子で、癒しの時間を彩ってみませんか。
ガラス工芸、肥前びーどろ
佐賀県の重要無形文化財として受け継がれている肥前びーどろ。
型を全く使わない「宙吹き」という技術で知られる肥前びーどろは、その表面の艶とやわらかな形状が特徴です。継承された高い技術力が必要となってくる肥前びーどろづくりは、他にない類まれなその柔らかな風合いがあります。
江戸時代より続く高い技術によって作成された肥前びーどろで、大切なひとときを過ごしてみてはいかがでしょうか。
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