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記事: 南部鉄器で美味しいお茶を。「急須」「鉄瓶」の種類の違い

南部鉄器で美味しいお茶を。「急須」「鉄瓶」の種類の違い
#工芸を知る

南部鉄器で美味しいお茶を。「急須」「鉄瓶」の種類の違い

岩手県の盛岡地域と水沢地域の伝統工芸品として世界に知られる南部鉄器。大切に使えば「一生使える」「孫の代まで使える」道具として、憧れる人も多い工芸品です。中でも愛用者が多いのが鉄瓶や鉄急須。似ているようで大きく異なる急須と鉄瓶の違いについてご紹介します。

南部鉄器の魅力とは

今では世界に知られる南部鉄器。「南部鉄器」と呼ばれるのは、岩手県の盛岡地域と水沢地域で生産されたものだけです。この地域は原料となる良質な鉄だけでなく、製造に欠かせない川砂や粘土、木炭などが豊富でした。そこで、17世紀頃、茶の湯に使用する釜を製造するために盛岡藩が京都から釜師を招いたことから、南部鉄器の歴史が始まりました。

その後、良質な湯釜をもっと手軽に使えるように、注ぎ口や取っ手がついた「鉄瓶」が登場。手軽にお湯が沸かせる鉄瓶は庶民の間でも広まり、江戸時代後期には「お鉄(鉄瓶)は南部で」というセリフが歌舞伎に登場するほど、全国で知られるようになりました。

今では、南部鉄瓶を象徴する黒い製品だけでなく、海外からのバイヤーのニーズに応えたというカラフルな製品も人気です。

詳しくはこちらの記事をご覧ください。
南部鉄器
今こそ知りたい南部鉄器

南部鉄器の「鉄瓶」「急須」の違い

南部鉄器といえば「鉄瓶」を思い浮かべる人も多いのですが、同じ色、形でも用途が異なる「鉄急須」もあります。「鉄瓶」と「鉄急須」は明確に使い方が異なっており、間違ってしまうと破損につながってしまいます。長く使っていくためにも、それぞれの違いをきちんと知っておきましょう。

南部鉄器の「鉄瓶」はお湯を沸かすもの

鉄瓶は茶道でお湯を沸かす道具である「湯釜」を小さくしたものとして生まれました。つまり、鉄瓶はお湯を沸かすためのもの。直火にかけても大丈夫なように作られています。

鉄瓶の内側は鉄がむき出しになっており、お湯を沸かすことで微量の鉄分がお湯の中に溶け出します。この鉄分は二価鉄と呼ばれるもので、体に吸収されやすい鉄分。鉄瓶で沸かしたお湯を継続的に飲んでいると、貧血の予防や改善に効果的であると言われるのは、鉄瓶だからこその特徴です。

南部鉄瓶

「鉄瓶」のおすすめ商品

業界随一と言われるほど多彩な品揃えを誇るのが薫山工房の南部鉄器。デザインし、鋳型を作るところから職人が手仕事で行っています。中でも「はるか」は小ぶりで「めんこい(岩手の方言で「かわいい」)」と人気の鉄瓶です。丸い木のつまみをつけ、お湯を沸かしてすぐでも素手で押さえられるようにしたユニバーサルデザインシリーズは、薫山工房のオリジナルデザイン。表面に押された桜の模様は、職人が手で描いて鋳型から作っています。


南部鉄器の「急須」はお茶をいれるもの

急須は内側にホーロー加工を施し、錆びにくいように作られています。南部鉄器なので熱には強いのですが、鉄瓶と異なり直火には耐えられません。内側には茶こしがついており、あくまでもお茶を淹れる道具としてお湯を注いで使います。

ホーロー加工により、水に触れる内側に鉄が露出していないので、鉄瓶より水気に強いのが大きな特徴。お手入れも簡単なので、気軽に南部鉄器を使ってみたいという方におすすめです。ただし、鉄瓶のように鉄が溶けだすことはありません。鉄分補給はできないことに注意しましょう。

カラフルな南部鉄器のほとんどはこの急須タイプ。ティーポットとして海外で使われることを想定して作られています。

 

「急須」のおすすめ商品:ホーロー加工あり

伝統を受け継ぐ職人たちによって作り上げられた、岩鋳の菊模様の急須。テーブルを彩るかわいらしいカラーが人気です。蓄熱性に優れた鉄急須の最大の魅力は、長時間温かいお茶を楽しめることです。内側はホーロー加工されており鉄分補給はできませんが、錆びにくくお手入れしやすいのがポイントです。

 

 

「急須」のおすすめ商品:ホーロー加工なし

急須の内側をホーロー加工ではなく、鉄瓶と同じ酸化被膜加工にした急須です。酸化被膜とは南部鉄器の伝統的な錆止め加工の一つ。鋳造した急須を炭火で真っ赤になるまで焼くことで、表面が空気中の酸素と反応し、鉄と空気が直接触れ合わない膜をつくります。酸化被膜加工の鉄急須は、ホーロー加工と異なり鉄分が溶け出します。急須で鉄分を、と考える方にはおすすめです。弱火であれば直火で使用することもできます。

酸化被膜の急須は、ホーロー加工のものより水分に弱いので、使用後はしっかりと水分を拭き取り、乾燥させるようにしましょう。


南部鉄器でお茶がおいしくなる理由

鉄瓶を使うと味がまろやかに

鉄瓶でお湯を沸かすと風味がまろやかになる、と言われます。これは、水分中に含まれるミネラルが鉄瓶の内部に付着して取り除かれるため。お湯が軟水化するため、口当たりが柔らかくなり、飲みやすいお湯になるのです。そのため、毎日「白湯」を飲みたい、という方に最適。鉄分が溶け込むので、不足しがちな鉄分補給もできます。

さらに、日本茶に適した硬度のお湯になるのも、鉄瓶で沸かしたお湯を使うとお茶が美味しくなると言われる理由。お茶は軟水で淹れると成分がより抽出されます。旨みや渋みのバランスがとれ、お茶本来の味が引き出された美味しいお茶になるのです。

鉄急須は保温性・耐久性が秀逸

南部鉄器の特徴の一つが保温性の高さです。特に伝統模様である「アラレ」模様は、その部分の鉄が厚くなるため、保温効果を高めてくれます。内部がホーロー加工してある鉄急須なら、お茶を入れたまましばらく置いておくこともできます。温かい状態を長くキープできるので、お茶の時間をゆっくり楽しめますね。

また、茶こしを外してお酒を入れて使うのもおすすめです。冷やした日本酒でも燗を付けたものでも、適した温度を保ち、長くおいしい温度でお酒が味わえるのです。

使った後は表面の水分をしっかり拭き取っておけば、割れたり欠けたりすることもなく、長く使っていけます。大事に使って、いろいろな思い出を感じさせる急須として、次の時代に受け継ぐのも素敵です。

南部鉄器で素敵なお茶時間を

お茶を美味しくしてくれるお湯を沸かす鉄瓶に、温かいお茶を長く楽しませてくれる鉄急須。受け継がれてきた南部鉄器の技は毎日のお茶の時間をより豊かにし、一杯のお茶を特別なものにしてくれます。一生使える道具として暮らしの中に取り入れてみませんか?

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