ガラス食器のお手入れ方法

ガラス食器のお手入れ方法

千差万別な美しさを持つガラス。ラムネのような気泡が素朴な手びねり、繊細なカットが特徴の切子、絵画のようなステンドグラスなど、それぞれ異なる美しさがあります。 

ですが、ガラスの器は「きれいだけど割れるのが怖くて日常使いできない」「お手入れの仕方が分からなくて買うのをためらっている」という声をよく聞きます。 

確かにガラスは壊れやすく、儚い美しさがあります。 

ガラス製品に異なる美しさや繊細さがあるのは、ガラスが個体よりも液体に近い物体だから。個体は分子が規則正しく並んでいますが、ガラスは結晶化されておらず、水と同じように分子がランダムに詰まった物質なのです。 

どうしたらこのガラスを長く使うことができるのでしょう。今回はそのお手入れ方法をご紹介します。

 

ガラスの食器の手入れは種類で決まる

一口でガラスといっても、地域や国ごとにいろんな製造方法、成形の技術を用いたガラスがあります。ガラスの製造方法ごと、成分ごとの種類と特徴、そしてその種類によってどんな洗い方、お手入れをすればよいのかを探ってみましょう。

ガラスの製造方法による種類とその特徴

○ホットワーク

高温でガラスを溶かし、柔らかい状態でガラス成型する製造方法のガラスを指します。主な技法としては下記のようなものがあります。

  •  吹きガラス
    竿につけた熱いガラス種に息を吹き込み作る方法。厚手で素朴な味わいが特徴です。
  •  ホットキャスト
    粘土などで作った型を元に耐熱素材の型を作り、その中にガラス種を流し込んで作る大量生産が可能な製造方法。透明感のある仕上がりが特徴。同じように耐熱素材の型に入れて作るキルンワークという技法があるが、こちらは電気炉などに型を入れて成型するのがポイントです。 
  • バーナーワーク
    ガラス種を直接火で溶かして作る方法。小さなものを作るのに向いており、トンボ玉の製造やガラスの装飾などに用いられています。

○コールドワーク

ガラスが冷たい状態で加工したガラスのことを指します。主な方法としては下記のようなものがあります。

  •  切子
    ガラスに精密なカットを施す方法。日本では切子、海外ではカットグラスといいますが、同じ技法でなく、別の歴史をたどって発展したといわれています。和ガラスの切子としては江戸切子薩摩切子が有名。 
  • ガラスエッチング
    薬品などを用いてすりガラス状にする方法。絵や文字など、いろんな模様をつけることができます。エッチング用の薬品は手に入りやすく、趣味でエッチングをする人も増えています。
  • サンドブラスト
    細かな砂を高圧力でガラスに吹き付け、模様をつける方法。エッチングと同じく、絵や文字などいろんな模様をつけることができます。
  • ステンドグラス
    ステンドグラスは色板ガラスをカットし、絵のように配色していく方法。作る方法は細分化されており、芸術的な作品も多いのが特徴です。

ガラスの成分による種類とその特徴

  • ソーダガラス
    主原料に炭酸ナトリウムが使われているため、ソーダガラスとも呼ばれます。硬くて軽く、さらに透明度が高いのが特徴です。
  • クリスタルガラス
    酸化鉛を含んだガラスで、ソーダガラスと比べると屈折率が大きく、カットすると繊細な輝きを発します。代表的なものとしては、切子があげられます。無色透明で、重厚感があるのが特徴です。鉛の含有量が10%前後のセミクリスタルガラスなどもあります。
  • 耐熱ガラス
    名前の通り、約2000℃以上の高温でなければ溶けないガラスのこと。ほかのグラスに比べて二酸化けい素が多く含まれ、ほうけい酸ガラスとも呼ばれています。高温や温度変化にも強く、フラスコや調理器具などにも使われています。

 

手洗い?食器洗い機?基本の洗い方

ガラス製品は急な温度差や高温に弱く、柔らかいのが特徴です。そのため、耐熱ガラスや食洗機使用可能と書いてあるもの以外、お湯をかけたり食洗機を使ったりすると傷や破損につながります。ガラスの傷は曇りの原因にもなりますので、まずは自分の持っているガラスの材質を確認してください。

ここでは耐熱ガラスでなく、また、食洗機が使えないガラスの洗い方・お手入れ方法について説明します。

お湯で洗う?水で洗う?洗う温度が重要

基本の洗い方は手洗い。指輪や時計など、ガラスに傷をつけるものは事前にはずしておきます。ゴム手袋を使っても可。クレンザーやたわしなども傷の原因となるので用いません。必要なものは、中性洗剤と柔かなスポンジ、磨くための布などです。市販の食器用洗剤の多くはアルカリ性〜弱アルカリ性ですので、洗う前に成分を確認しましょう。

はじめにぬるま湯に中性洗剤を入れてガラスをつけておきます。ポイントは40度くらいのぬるま湯ということ。ガラスは高温(温度変化)に弱いので、熱いお湯を使うと割れてしまうことがあります。かといって冷たい水で洗うと、汚れ落ちが悪くなってしまうので、お風呂と同じくらいの温度がベストです。

次に、やわらかいスポンジでやさしく洗い、仕上げにもう一度ぬるま湯を全体にかけます。これにより水切れがよく、水垢などがつきにくくなります。最後に布で磨いて終了。

ただし、江戸時代以前に作られたガラスは現代のガラスよりさらに繊細なので、ぬるま湯でなく水のみを使い、布でソフトに拭き上げます。 

 

グラスに傷がつかないしつこい汚れの落とし方

基本の洗い方では中性洗剤を使った洗い方をご紹介しましたが、油汚れや茶しぶといった手強い汚れは洗剤だけでは落ちにくいことがあります。その場合には、ガラス専用クレンザー、お酢、重曹などで落とすときれいに落ちます。

ガラス専用クレンザーを使う

研磨剤が多く入った通常のクレンザーは使えませんが、微粒子でできたガラス専用クレンザーなら使うことができます。やわらかいスポンジに少量をつけて、やさしく洗ってください。

ウロコのような水垢は酸性の液体で落とす

茶しぶや水垢などの汚れはアルカリ性なので、お酢やレモン汁、クエン酸を溶かした水など酸性の液体が有効です。つけおきした後に基本の洗い方であらいましょう。

ただし、切子などクリスタルガラスだけは、酸性の成分とガラスの鉛の成分が反応してくすみの原因となりますので、お酢など酸性のものは使用できません。

切子のくすみが気になってきたら、薄めた漂白剤に、数分間浸けておきましょう。細かいところに入り込んだ汚れもきれいに落ちて、切子特有の輝きが戻ってきます。

お茶や赤ワインの汚れは重曹がおすすめ

酸性の液体を使っても落ちない茶しぶ、油分が強いもの、細くて内側が洗いにくいガラスコップやデキャンタなどは重曹が効果的です。ガラスを軽く濡らした後、ほんのすこしだけ重曹を入れてラップを丸めたもので傷が入らないようにやさしく磨きます。

また、重曹そのものはアルカリ性ですが、水に溶かすと弱酸性となります。そのため、切子などには使えないので気をつけましょう。

 

乾かし方と収納法のひと工夫が重要

繊細なガラスの食器は、乾燥機にかけたり、何枚も重ねて保存したりすると傷がつくことがあります。また、長期間戸棚などに入れっぱなしにしておくと、臭いがついてしまうことも。正しい乾かし方、収納方法で長くガラスを使うことができます。

大切なグラスはクロス・ふきんの素材にも配慮して

ガラスの表面に水滴を残したままにしておくと表面に水垢ができてしまうので、目の細かいマイクロファイバーや専用のグラスリネンの布を使ってすみずみまで磨きます。タオルなどで磨いてしまうと、傷がついたり、繊維が残ったりしますので、必ず専用の布を使ってください。また、磨く際には指紋がつかないように注意が必要です。

最後に透かしてみて曇りがなければ終了です。

扱い方に注意が必要なのが、薩摩切子や江戸切子といった切子。力を入れて磨いてしまうと、切子の特徴である虹彩が消えてしまうことがあるので、なるべくソフトに磨きます。

ガラス食器の保存方法

磨き終わったら、布の上において自然乾燥させましょう。完全に乾いたら直射日光の届かない食器棚などに収納しますが、その際にも注意が必要です。

ガラスは衝撃に弱いため、重ねて収納すると触れ合って傷やヒビが入ることがあります。そのためガラスコップなどは一個ずつ上むきに置いて保存。また、ワイングラスなど薄いガラス製品の場合には、下面が傷つかないようキッチンクロスや薄いマットなどを敷いておくことをお勧めします。

平たいお皿を一枚ずつ保存というのは難しいので、重ねるときはお皿とお皿の間にキッチンペーパーなどを挟んでクッションとします。

 

少しの気づかいで
お気に入りのグラスをいつまでも美しく

ちょっとだけ手間ひまが必要なガラス製品のお手入れですが、正しく使い方・保存方法を守ると、半永久的にその輝きを保つことができます。

長期間使わず収納したままにしておくと、臭いがついたり、曇りが出たりすることもありますので、日常から使ってあげましょう。ぜひ、丁寧にガラス製品を使って、長く使ってください。

保存中に臭いがついた場合には軽く洗う、曇りが出た場合には湯気にあてるかお酢などにつけて磨くことで美しさを取り戻すことができます。また万が一、欠けができてしまったときは、メーカーによっては欠けを削って整えるなど仕立て直してくれるところもありますので、諦めず相談してみましょう。

 

【あわせて読みたい】
「伝統工芸の魅力」記事一覧