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記事: 工芸品、工芸に関するよくある誤解10選

工芸品、工芸に関するよくある誤解10選

先日、ある雑誌の取材を受けた際、いくつかの驚きの質問を投げかけられました。その中で、工芸に対するさまざまな誤解や固定観念に気づかされ、新たな視点を得ることができました。この経験をきっかけに、工芸に関する現状を知ってもらうために、この記事を書こうと思い立ちました。

工芸は私たちの日常に根ざした魅力的な文化であり、多くの可能性を秘めています。では、どのような誤解が存在し、工芸が私たちの生活とどのように結びついているのか、一緒に考えてみましょう。(なお、記載する内容はあくまで私の私見ですので、ご了承ください。日本工芸堂、松澤)



<目次>
工芸はただの趣味である
すべての工芸品は高価である
工芸は伝統的なものだけである
工芸は似通っていて違いがわかりずらい
工芸は大量生産できない
工芸は若者に人気がない
工芸は特定の地域だけのもの
工芸は特別な才能がないとできない
工芸品は機能性が低い
工芸は古いものだけである


 

  1. 工芸はただの趣味である
    工芸は多くの技術や知識を要する職業であり、職人たちは長年の修練を通じてその技術を磨いています。当然単なる趣味ではなく、文化財としての価値や地域の伝統を支える重要な役割を果たしています。特に日本の伝統工芸は、歴史的背景や技法の継承があり、世代を超えて受け継がれています。これらの作品は、実用性だけでなく、文化的なメッセージやストーリーを持っており、機能としてのモノとしてを超えた価値を提供しています。特に「伝統工芸士」は伝統的工芸品産業振興協会が実施する認定試験を受けることで認定されます。現在、4,000名以上がさまざまな職種で登録されています。受験資格は、経済産業大臣指定の伝統工芸品の製造に12年以上従事し、産地内に居住することです。試験は知識、実技、面接に分かれ、産地組合の委員会を通じて行われます。このようにして伝統は口伝のみならず形式化され受け継がれています。

  2. すべての工芸品は高価である
    工芸品には高価なものが多い(ブログ記事「伝統工芸の値段が高い理由」はこちらhttps://japanesecrafts.com/blogs/news/price-of-traditional-crafts)一方で、手頃な価格の作品も存在します。手作りであるため、価格は職人の技術や使用する材料、製作過程に依存しますが、陶器市や地元の催事や自社で展開しているオンラインショップでは、多様な価格帯の制品が手に入ります。また、若手職人が新しいデザインに挑戦している場合、よりリーズナブルな価格で提供されることもあります。これにより、工芸品は幅広い人々に楽しんでもらえる存在となっています。

  3. 工芸は伝統的なものだけである
    現代の工芸は、伝統技術を基礎にしながらも革新を追求しています。デザインや素材に新しいアイデアを取り入れることで、時代のニーズに応じた工芸品が生まれています。伝統的な技法や工法を用いながらも、モダンなライフスタイルに合わせた機能性や美しさを追求する作品が多く存在します。このように、工芸は過去を尊重しながらも未来に向かって進化しているのです。これにより、工芸は単なる古いものではなく、現代に生きるアートとして多くの支持を得ています。
    事例となるようなブログ記事は以下:
    「伝統工芸品をインテリアに。お部屋を彩るこだわりの手仕事」
    https://japanesecrafts.com/blogs/news/interior


  4. 工芸は似通っていて違いがわかりずらい
    工芸品は地域や職人ごとに独自のスタイルや技法があり、その表現は多様です。たとえば、伊万里焼の色彩や形状、南部鉄器の質感や機能性は、地域の文化や歴史に根ざしたものです。この多様性は、工芸の魅力の一つであり、同じ産地カテゴリーに属する制品でも、使う素材の特徴や制法で職人の個性が反映されています。また、近年は国際的な影響を受けた新しいスタイルの工芸品も増え、さらに広がりを見せています。このような背景を理解することで、工芸品の選び方や楽しみ方がより深まります。
    メーカー必見「伝統工芸を海外展開するには」 KCmitF代表の大谷啓介さんに迫る【工芸イノベーターインタビュー】https://japanesecrafts.com/blogs/news/talk16

  5. 工芸は大量生産できない
    工芸品は多くの場合、手作りであるため、一つ一つの作品に職人の個性や技術が表れ量産しずらいのは事実でしょう。ただ、一部の工芸品は量産も可能です。特定の技術やデザインを用いることで、一定の品質を保ちながら多くの制品を生み出すことができます。このような製造方法の革新は、ビジネス上の成功を収めるためにも重要です。しかし、量産品の中にも工芸のエッセンスを感じる、消費者は手頃な価格で工芸品の魅力を体験することができます。素材の特性を活かした商品づくりなどの工夫によって人気を博しているブランドとして能作がある。
    ←メーカーページへのリンク
    https://japanesecrafts.com/collections/nousaku

  6. 工芸は若者に人気がない
    親世代や年配世代が使うのが工芸品だと思っている方もいらっしゃいます。しかし、現在では地域産品への関心や環境意識の高まりから、若者の間でも工芸の魅力が再評価されています。特にSNSの普及により、制作プロセスや想いをまとめた画像や動画が発信され、メッセージが多くの人々に届くようになっています。インスタグラムやPinterestなどのプラットフォームでは、手作りのアイテムやアートがシェアされ、多くの人々に広がっています。また、ワークショップやポップアップイベントを通じて、若者たちが自らの手で工芸を体験する機会も増えており、興味を持つ層が拡大しています。このトレンドは、工芸が現代的なライフスタイルにマッチし、若者たちが楽しむ要素を含んでいることを示しています。

  7. 工芸は特定の地域だけのもの
    日本各地には独自の工芸文化が存在し、地域ごとに異なる特性や技法があります。たとえば、陶芸では有田焼や備前焼、漆器では輪島塗など、それぞれが地域の環境や文化に根ざしています。また、地域の特性が反映された工芸品は、観光資源としても重要で、地域振興にも寄与しています。さらに、近年では地域を超えたコラボレーションが進み、新しい価値を生み出す機会が増えています。このように、工芸は地域の文化を豊かにし、広範囲にわたる魅力を持っています。
    特に産地間の情報の橋渡しになった存在に「北前船の存在があります。このて点についてまとめたブログは以下です。
    https://japanesecrafts.com/blogs/news/kitamaebune


  8. 工芸は特別な才能がないとできない
    工芸は特別な才能だけでなく、努力と学習によって身につけられる技術です。多くの工芸品は、専門の教育機関や訓練校で学んだり、美術系の学校出身の方が現場で学びながら製作されています。各地で関心を高めるための動きは活発で、初心者向けの講座・ワークショップも多く開かれており、誰でも気軽に工芸に触れることができます。また、オンラインコースや動画チュートリアルの普及により、自宅でも技術を学ぶ機会が増えています。このように、工芸は誰でも参加できるものとしての敷居が低くなっており、新たな挑戦を受け入れる土壌が整っています。
    日本工芸堂主催イベント「会津若松市での工芸体験イベント」
    https://japanesecrafts.com/blogs/news/kougex_aizu2306

  9. 工芸品は機能性が低い
    工芸品は美しさだけでなく、実用性にも優れています。むしろそれがないと伝統工芸として存続しえなかったのではないでしょうか。多くの工芸品は、使用する場面や目的を考慮したデザインが施されており、日常生活で役立つアイテムが多くあります。当然、漆器や陶器は食器として使用され、愛でるだけでなくその使いやすさが評価されています。漆器に至っては抗菌性が確認されたことに加え、新型コロナウイルスにも効果があることが示されています。
    https://www.shikki.or.jp/info/kokin/kokin.html
    職人は機能性と美しさを両立させるために、素材や形状、デザインを工夫しています。このため、工芸品は装飾品ではなく、実用的なアイテムとしても非常に高い評価を受けています。


  10. 工芸は古いものだけである
    工芸品が古い、という定義は存在していません。経産省が指定する伝統的工芸品の定義一文に以下があります。「伝統的とはおよそ100年間以上の継続を意味します。工芸品の技術、技法は、100年間以上、多くの作り手の試行錯誤や改良を経て初めて確立すると考えられています。」
    https://kyokai.kougeihin.jp/traditional-crafts/
    これを持って古い印象を持っている可能もあります。現代の工芸は、伝統技術を尊重しながらも、革新を追求しています。新しい素材や技法が導入され、時代のニーズに応じた新しい工芸品が生まれています。このように、工芸は過去の遺産を受け継ぎながらも、常に進化を続け現代に新たな魅力を提供しいます。工芸の新しい側面を発見することで、文化やアートに対する理解が深まることでしょう。