久留米絣のおしゃれなもんぺとは?久留米絣ってなに?
久留米絣はご存知でしょうか?重要無形文化財に指定されている伝統的工芸品の特徴、歴史を始め制作工程や、人気でおしゃれなもんぺまでご紹介いたします。
目次
そもそも久留米絣(くるめかすり)とはなに?
日本を代表する綿織物「久留米絣」をご存知ですか。戦時中に、作業着として利用されてきた「もんぺ」もこの技法で作られたものが多数あります。
「絣(かすり)」とは、紋様の縁がドット柄にぼやけていることをそう呼んだもので、この、柄が「かすれ」ている様子がこの技法の最大の特徴です。
福岡県久留米市とその周辺地域で生産されており、伊予絣と備前絣と並んで、日本の三大「絣」のひとつ。1957年には国の重要無形文化財に指定されています。
久留米絣の特徴・歴史
「久留米絣」の最大な特徴は、名前にもある通り、「絣」の紋様です。
「括り(くくり)」の工程や「織り」の工程を経て、独特の「かすれ」模様が生み出されます。また「染め」の工程にも特徴があります。それは、「藍色」です。藍染めは久留米絣の代表的な色合いです。
一方、現在は、伝統的な技法に捉われすぎないモダンなデザインの製品も多く見られます。紋様や色合いに工夫を凝らしたり、ハンカチやスカーフなどの、衣服以外の製品も生産され、さまざまな形で久留米絣の技法に触れることができます。
そんな「久留米絣」のルーツは1800年頃といわれ、久留米の米屋にいた井上伝(いのうえでん)という当時12歳の少女の発案とされています。
着古した着物に現れる白い斑点模様に着目した彼女は、その模様が生まれた過程をたどり、糸を括る・染める・織り上げるという、久留米絣の元となる技法を考案したと伝えられています。
当初は「加須利(かすり)」と名付けられ、販売したことが「久留米絣」のはじまりです。
さらに、のちに絣に絵の紋様を入れる技術も発明され、明治期には庶民の衣服として全国に親しまれるようになりました。
戦後、洋服が急速に普及したことによって需要の厳しい時期がありましたが、現在では再び、ファッションへの関心が高い人を中心に注目されています。
久留米絣の良さとは
久留米絣の魅力は、なんといっても「絣」の美しさといえるでしょう。
複数の工程のなかで織り出される紋様と一緒にドット柄の「かすれ」が現れます。
もんぺの代表的な絵柄である「井型」をはじめ、モールス信号などのモダンなデザインも多く生み出されていますが、そのデザイン全てに「かすれ」を見てとることができます。
また、伝統的な織物でありながら、日常生活で使いやすいことも魅力です。
綿素材のため、夏は涼しく、冬は暖かい、という特性があります。
また、丁寧に織り込まれた生地は、丈夫で扱いやすく、普段着に適しています。
着るほどに肌に馴染んでくる久留米絣は、一つのものを長く使うことの大切さが再確認されている昨今、愛されるべき織物と言えます。
さらに、久留米絣の技法を用いた豊富な製品バリエーションも魅力です。
和のイメージが強い絣ですが、もんぺだけでなく、ハンカチやスカーフなどの小物やインテリアにも使われています。さまざまなものに形を変え、私たちの生活を豊かに彩るアイテムとして注目されています。
久留米絣のおしゃれなもんぺとは
久留米絣のもんぺは、「日本版のジーンズ」と言われるほど密かに人気が高まっていることをご存知ですか?
もんぺとは、ゆったりとした腰回りに、裾がキュッとすぼまっている形が特徴的な作業着です。その動きやすさから、明治から昭和の初めまで、女性たちの間で愛用されてきました。
現在、ファッションに関心が高い層を中心に、久留米絣のもんぺに再び注目が集まっている理由は、その機能性だけでなく、色やデザインのバリエーションにあります。
伝統的な和柄からモダンなデザインの紋様まで、また、定番の藍色をはじめ、カラーバリエーションも多様化してきています。
ジェンダーレスな作業着として、今求められるスタイルに合っているのもうなずけます。
久留米絣のもんぺ販売店
すべて手作業でつくられる久留米絣のもんぺは、大量生産こそできませんが、オンラインショップでの購入が可能です。工房やショップによってそれぞれ特色がありますので、お好みのもんぺを探してみてください。
うなぎの寝床
地域文化商社として、新たな取り組みを行っているECショップです。カラーバリエーションが豊富なオリジナルデザインのもんぺが多数取り揃えられています。
日本工芸堂
日本の工芸品を販売しているECショップです。伝統的な藍色のもんぺはもちろん、他の色のものも取り揃えています。もんぺだけでなく、ハンカチやストールなども取り扱っています。もんぺ屋
久留米絣のもんぺを専門としたECショップです。モールス信号などのオリジナルのデザインをはじめとした親しみやすい絵柄を多数展開しています。
久留米絣の制作工程
久留米絣はどのような工程を経て作られるのでしょうか。一つの反物ができるまでに多くの工程がありますが、その中でも特に「括り」「染色」「織り」は、完成度を左右する重要な工程です。
1. 図案の作成
絣の特性や完成イメージを踏まえて、絣糸と地糸を計算してデザインを決めます。その際に、糸が伸びたり縮んだりすることも考慮に入れます。
2. たて糸の整経
デザインに合わせて、絣糸と地糸の糸数を割り出し、それぞれで整経を行います。
3. 括り
染色を行わない部分に、染料が染み込まないように経糸を括ります。手括りと機械括りの2パターンがあり、手括りの場合は、水に浸した麻の一種であるアラソウで、1箇所ずつ固く括ります。
4. 綛上げ(かせあげ)
次の工程である「染色」がしやすいように、輪の状態に束ねます。
5. 染色(藍染・化学染料)
薄い色の甕(かめ)から濃い色の甕へと順番に浸して、染色します。伝統的な色合いは「藍」ですが、近年ではその他の色も用いることもあります。ムラができないように細心の注意を払います。
6. 絣解き(かすりとき)
括り糸をほどきます。これによって染色した部分と、染色されていない部分(絣部分)ができます。この工程の前に、蒸したり、糊付けをしたりして、糸が不用意に乱れるのを防ぎます。
7. 経割(たてわり)
経糸をそれぞれの紋様に合わせながら束ねていきます。
8. 割り込み・筬通し(おさとおし)
図案に沿って、地糸と絣糸を並べます。並べた糸を一羽に2本ずつ通していきます。
9. 織る
経巻と緯巻が完了したら、完成イメージに沿って経糸と緯糸を織り込みます。手織りと機械織りがあります。
製造体験できる久留米絣織元
旅先での素敵な思い出づくりに、日本の工芸技術に触れてみませんか。
久留米絣の工房では、製造に加えて、手織り体験、染めもの体験、また工房見学を行なっているところがあります。ここでは5つの工房をご紹介します。
1. 野村織物
広川地区の工房です。工房見学ができます。また工房で販売も行っています。工房開きは4月下旬の平日です。予約の受付は3日前まで。人数は電話でご相談ください。
2. 下川織物
八女市にある工房です。工房見学とセミナーが行われています。また、インターン等職業見学も相談可です。また、工房で販売も行っています。工房開きは、11月第4金土日で、1〜8名まで(5名から要相談)まで訪れることができます。
3. 有限会社 久留米絣 山藍
広川地区の工房です。手織り体験、染めもの体験、そして工房見学をすることが可能です。また、自社で販売も行なっているので、実際に手に取って商品を選ぶことができます。工房開きは5月で、2〜20名(要相談)まで訪れることができます。体験・見学は予約制で、7日前までの予約を受け付けています。
4. 森山絣工房
広川地区の工房です。手織り体験、染めもの体験、そして工房見学が可能です。手織り体験は無料です。藍染め体験は、ハンカチとTシャツで行います。自社販売も行なっています。工房は、正月を除く通年で開いており、1〜40名まで受け入れ可能です。また、フランス語・英語・韓国語・中国語での対応も可能なので、海外の方の見学も歓迎されています。
5. 久留米かすり 池田絣工房
筑後地区の工房です。染め物体験と工房見学が可能です。工房に併設されている展示場では、反物や小物などさまざまな絣製品が販売されています。工房は、正月を除く通年で開いており、体験・見学の予約は前日まで受け付けています。1〜50名まで受け入れ可能です。
ご紹介した5箇所以外にも多くの工房があります。久留米絣協同組合のサイトをご覧いただくと、「見学可」「体験可」などの項目別に工房がまとめられています。福岡に旅行する際は、ぜひ久留米絣の工房をたずねてみてください。
おしゃれな久留米絣のもんぺ5選
当社で取り扱っている久留米絣のもんぺをご紹介します。
野村織物は、明治31年創業、現在四代目のもと伝統と革新を両立させて久留米絣製造一筋125年の工房です。「久留米かすりのある暮らし」を提案し、巧みな技術からうまれる伝統模様と色合いが楽しめるもんぺを展開しています。
「染め」と「織り」の工程のどちらも手作業で行なっている工房は、現在は珍しく、野村織物ならではの仕上がりを生み出しています。特に「染め」の技術は、「のむらカラフル」と呼ばれ、伝統的な藍色以外のもんぺも多くあります。
・久留米絣 現代風もんぺ | グラデーション | うぐいす S/M/L | 野村織物
・久留米絣 現代風もんぺ | グラデーション | 濃藍 S/M/L | 野村織物
・久留米絣 現代風もんぺ | 梅鉢 | 濃紺 S/M/L | 野村織物
・久留米絣 現代風もんぺ | 花菱格子 | 濃紺 S/M/L | 野村織物
・久留米絣 現代風もんぺ | 十字 | 濃紺 S/M/L | 野村織物
繊細な「織り」の技術に、独自の「染め」の技法が合わさった野村織物のもんぺ。令和の時代にぴったりのモダンなアイテムです。おしゃれ好きの方へのギフトにもおすすめです。
まとめ
日本三大絣の一つ、久留米絣。精密に織り込まれた紋様の周縁にできる、淡いかすれ。少しでも「絣」の良さに気づいてもらえたら嬉しいです。工房見学や体験ができる工房も多くありますので、福岡に旅行に訪れた際は、ぜひ「久留米絣」にも注目してくださいね。
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