鋳心ノ工房
そこにあるだけで美しい
デザインと機能性を融合させる工房
鉄器といえば岩手県の「南部鉄器」のイメージがありますが、山形県でも金属を使った鋳造が伝統的に行われてきました。それが「山形鋳物」。南部鉄器と異なり、鉄が取れなかった山形では、鉄瓶の蓋を銅で作るなど、山形ならではの鋳造技術が発達していきました。
山形鋳物の工房の中でも「デザイン」に注力して製品を作っているのが「鋳心ノ工房」です。工房を主宰する鋳金家でデザイナーの増田尚紀氏は、もともとデザインを学んでいたという異色の職人。日本で最初にできたデザイン研究機関で、イサム・ノグチなども所属した商工省工芸指導書の研究員に師事し、生活に馴染むデザインを伝統工芸に取り入れるというコンセプトのもと、シンプルモダンな北欧デザインをモデルに山形鋳物をデザインしています。
今のインテリアにフィットする
異素材・技術の組み合わせ
「伝統工芸は、常にその時代において革新的なハードとソフトを併せ持ってきた」と語る増田氏。ユニバーサルデザインの考え方も取り入れながら、伝統の鉄瓶や鉄急須のほか、鍋敷きや箸置きなど、暮らしの中に取り入れやすい鋳物を次々に発表しています。
中でも注力しているのが異なる素材や技術とのコラボレーション。全体を鉄で作るのではなく、取手やハンドルに木を組み合わせることで、かわいらしさ、やわらかさという、これまでの鋳物になかったイメージの道具を生み出しました。「生活の中に潤いが生まれるような道具を作る上で重要なのが組み合わせだ。鉄に他の素材を組み合わせることで鉄の良さを活かしつつ、暮らしに馴染むものを作りたいんです」。
【ティケトル】
S (1.1L) :ホワイトオーク|ウォールナット|鉄ハンドル
M (1.7L) :ホワイトオーク | ウォールナット | 鉄ハンドル
【いものケトル】
M (1.4L) :ホワイトオーク|ウォールナット|鉄ハンドル
L (1.8L) :ホワイトオーク | ウォールナット | 鉄ハンドル
さらに、長く使える「鋳物」であることにも注目。鉄部分より傷みやすい木製パーツは、附属の道具で簡単に交換可能。「代々受け継ぎ使える」鉄器の魅力も伝えようとしています。
近年では、伝統的なケトルだけでなく、箸置きや香立てなど小さな雑貨も発表。海外でも人気を読んでいます。
「鋳物で暮らしを豊かに」。そんな想いを世界に伝える新しい山形鋳物の逸品です。
Buyer's Voice 代表・松澤斉之より
優れたデザインと異種素材のコラボ
挑戦するデザイナーの心意気にリスペクト!
木製のハンドルが印象的な山形鋳物は、その機能性も含め、南部鉄器との違いを紹介しながら、多くの人に知ってもらいたいと思い、声をかけた工房だ。北欧デザインをモデルにしたというシンプルモダンなスタイルは、美大卒で、全国の地場産業のデザイン開発を手掛けた増田氏によるもの、と言われて納得した。
中でも気に入っているのは木素材との組み合わせ。鋳物であれば、金属加工という技術だけを使った方が楽にモノができる。しかし、わざわざ違う素材を使ってやろうとすると技術の進化だけでなく、コミュニケーションや文化、考え方までも大きく進化させられることになる。その変革に自ら挑戦している増田氏の心意気には、いつ話を聞いてもリスペクトを感じる。
いいものをより良く。使いやすく。そして使いたくなるように。山形鋳物の魅力を世界に発信しようとする鋳心ノ工房から、今後どんな製品が生まれるのか、楽しみにしている。
日本工芸コラボトーク
【日本工芸コラボトークvol.9】山形鋳物の伝統美を現代の生活様式へ!
鋳心ノ工房鋳金家・デザイナーの増田尚紀さん