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記事: 【伝統工芸の旅】400年の歴史を誇る、肥前吉田焼の魅力とは(佐賀県)

【伝統工芸の旅】400年の歴史を誇る、肥前吉田焼の魅力とは(佐賀県)
#伝統工芸の旅

【伝統工芸の旅】400年の歴史を誇る、肥前吉田焼の魅力とは(佐賀県)

全国各地に、その土地ならではの伝統工芸を受け継ぐ工房があり、職人の思いがあります。日本工芸堂の代表・バイヤーの松澤が作り手をたずねる「伝統工芸の旅」。
今回は、佐賀県の肥前吉田焼で新たなブランド「GOSU」が注目される、副久製陶所(そえきゅうせいとうしょ)の三代目職人・副島久洋さんをたずねました。

肥前吉田焼で人気の“青い器“「GOSU」を訪ねて

訪問先の有田から車で向かったのは、同じく佐賀県の「肥前吉田焼の里」。
今回の目的は、オリジナルブランド「GOSU」が注目を集める、肥前吉田焼の窯元・副久製陶所さんです。

素朴な風景を通り、少し坂を登った途中にその工房はあります。
三代目の職人・副島久洋さんを訪ねると、数多くの品を製作中にも関わらず手を止めて制作工程や開発秘話などを話してくださいました。

工房に入った瞬間、目を奪われたのは「GOSU」の器の数々が並べらたテーブル。窓ガラスから入った陽の光に照らされ、より青が浮き彫りになって輝いています。

オリジナルブランドの食器づくりでこだわったその一つが青の染料である呉須による染付。和食器といえば必ずイメージされる青い染料、呉須(ごす)を使った絵付けや色つけです。

呉須は古くから磁器に使われてきた染料で、素焼きの状態で色をつけるため、色褪せることなく、鮮やかな青を保ち続けます。
三代続く副久製陶所が新たに着目したのは、このさまざまな青を活かした美しい青の表現を磨くこと。
「GOSU1.0」から「GOSU5.0」と名付けた独自の青を開発しました。



こだわったのが伝統技法である「濃み(だみ)」の技術。
濃みとは、筆にたっぷりと含ませた呉須の量を指先で調整しながら細かく塗っていく技法です。
これに点描の技術を加えた「hana」シリーズなど、天候や湿度によって発色が変わるという呉須の特性を活かしながら、一枚一枚、丁寧に色付けされています。





日本工芸堂バイヤー・松澤の「GOSU」との出会い

初めて「GOSU」に出会ったのは2015年頃、東京での展示会でした。
当時は、AMAZONのバイヤーとして流通可能品をたくさん揃えるというミッションで仕事をしていた頃で、高く仕切られた白い板の壁に、「GOSU」各種が1.0から5.0まで綺麗に並べられていたのが印象的でした。

人混みでごった返す展示会場の中で、そこだけは静けさの漂う独特の雰囲気で、引き寄せられました。
そんな印象的な出会いから、いつか日本工芸堂で取り扱いをさせてもらいたいと思い続けていた品が「GOSU」です。

今回の訪問で副島さんとお話する中では、
「こだわりの青に出会って、さらに仕事が楽しくなった」と改めて言われたことが、とても印象的でした。

写真左:副久製陶所 代表・副島久洋さん、右:日本工芸堂 代表・松澤斉之

九州・佐賀県で400 年続く、肥前吉田焼とは?

肥前吉田焼の産地は嬉野市吉田地区。佐賀県と長崎県の県境にあり、日本三大温泉の一つにもあげられる「嬉野温泉」や香り豊かな嬉野茶の産地として全国的に知られている地域です。

佐賀藩主・鍋島直茂により招かれた職人たちを吉田に集めたことに始まる肥前吉田焼は、有田焼や波佐見焼の産地とも近いため、古くは有田焼の一つとして全国、そして中国で販売されていました。暮らしに密着した食器が中心で、特にお茶の産地らしく、土瓶や急須、湯呑などが多く作られてきました。その歴史は400年以上とも言われています。

その特徴はあくまで日常生活に使える陶磁器を作っていること。固定的なイメージや特徴がないことを逆に捉え、受け継いできた伝統的な技術を活かし、肥前吉田焼の個性を作ることを目指して、多くの職人やデザイナーが今も試行錯誤しながら技術を磨いています。

九州・佐賀県のその他の伝統工芸

■肥前びーどろ

佐賀県で発展したガラス工芸品、肥前びーどろ。一般的なガラス製造は「鉄竿」が用いられますが、肥前びーどろは「ガラス製の吹き竿」を使い、「ジャッパン吹き」と呼ばれる特殊な技法が特徴です。その歴史は江戸時代に始まり、明治時代には多くの工房が設置されましたが、現在、その技術を伝承するのは「副島硝子工業」のみとなりました。虹色に輝く、ハンドメイドならではの優しい雰囲気のグラスが人気です。

>肥前びーどろについて詳しくはこちら


■有田・伊万里焼

有田焼・伊万里焼は、佐賀県西部を中心に発展してきた磁器。すっきりとした白磁と鮮やかな絵付けが特徴です。有田焼と伊万里焼は、もともと原料・製法に大きな違いはなく、有田町で作られた焼き物を「有田焼」、伊万里で作られた焼き物を「伊万里焼」と区別されてきました。古くから陶磁器の産地として有名な佐賀県は、今でも全国シェア2位の人気。毎年開催される有田陶器市には、全国から100万人以上が掘り出し物を求めて足を運びます。

■唐津焼

有田・伊万里焼の「磁器」とは異なり、陶土から作られる「陶器」の唐津焼。有田・伊万里焼と同様に、国の伝統的工芸品に指定されています。16世紀頃から作られはじめ、安土桃山時代から、茶人の間では「1楽・2萩・3唐津」と言われるほど、茶の湯の世界で定番として好まれてきた焼き物でもあります。粗い土を使用しており素朴さ・力強さを持ちながら、多彩な装飾技法による洗練された雰囲気が魅力です。

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