副久製陶所
呉須のグラデーションで魅せる
「肥前吉田焼」の奥深さ
「肥前吉田焼」の産地があるのは嬉野市吉田地区。佐賀県と長崎県の県境にあり、日本三大温泉の一つにもあげられる「嬉野温泉」や香り豊かな嬉野茶の産地として全国的に知られている地域です。佐賀藩主・鍋島直茂により招かれた職人たちを吉田に集めたことに始まる肥前吉田焼は、有田焼や波佐見焼の産地とも近いため、古くは有田焼の一つとして全国、そして中国で販売されていました。暮らしに密着した食器を中心に作っており、特にお茶の産地らしく、土瓶や急須、湯呑などを多く作ってきました。その歴史は400年以上とも言われています。
その特徴はあくまで日常生活に使える陶磁器を作っていること。固定的なイメージや特徴がないことを逆に捉え、受け継いできた伝統的な技術を活かし、肥前吉田焼の個性を作ることを目指して、多くの職人やデザイナーが今も試行錯誤しながら技術を磨いています。
三代続く肥前吉田焼の窯元が「副久製陶所」。オリジナルブランドの食器づくりでこだわったのが、その一つが青の染料である呉須による染付です。和食器といえば必ずイメージされる青い染料、呉須を使った絵付けや色つけ。その技術は多岐にわたり、青一色で奥深い味わいのある青を作り出しました。
色褪せない青を
より美しく魅せる技法を磨く
呉須は古くから磁器に使われてきた染料です。素焼きの状態で色をつけるため、色褪せることなく、鮮やかな青を保ち続けます。一言で「呉須の青」とはいえ、どのように色をつけるかで焼き上がった器の色は変わります。
副久製陶所が着目したのは、このさまざまな青を活かした美しい青の表現を磨くこと。「GOSU1.0」から「GOSU5.0」と名付けた独自の青を開発しました。
そのためにこだわったのが伝統技法である「濃み(だみ)」の技術です。濃みとは筆にたっぷりと含ませた呉須の量を指先で調整しながら細かく塗っていく技法。これに点描の技術を加えた「hana」シリーズなど、天候や湿度によって発色が変わるという呉須の特性を活かしながら、一枚一枚、丁寧に色付けされているのです。
世界に一枚のとっておきの青を器に咲かせることを目指して作られる副久製陶所の器。青に込めた思いが世界に広がる日も遠くないかもしれません。
Buyer's Voice 代表・松澤斉之より
記憶に残る青が
肥前吉田焼のプライドを感じさせた
多くの展示会に参加しているが、見ただけで忘れられない逸品に出会うことはそう多くはない。副久製陶所の鮮やかな呉須の美しいグラデーションは、多くの商品が並ぶ会場にあって、記憶に残る光景だった。だから、お会いして取引できるタイミングに恵まれたときは、素直にうれしいと思った。
副久製陶所の呉須にかける思いには、肥前吉田焼を作る工房としてのプライドも感じさせてくれる。美しい器を見て、使って、気に入ってくれた人に「肥前吉田焼」というブランドを根付かせたいという強い思いも感じて、GOSUのシリーズを紹介したいと思った。
食卓で使う際、会話のきっかけになる点もいいと思う。どの色が好きか、隣の人の皿と見比べながら使うひとときは、きっと楽しい時間になるはずだ。ちなみに、好みの色は4.0。深い宇宙のようなコバルトの色合いがたまらなくいいと思っている。