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記事: 漆器の正しい使い方とお手入れ方法、紹介します

漆器の正しい使い方とお手入れ方法、紹介します
#工芸品を使う

漆器の正しい使い方とお手入れ方法、紹介します

毎日の食事に使うお箸やお椀、運動会やお正月に使う重箱など、身近な存在の漆器。プラスチックのお椀や重箱も増えているものの、伝統工芸品の中では身近な存在です。

とはいえ、毎日使うものだからこそ「漆器は日々のお手入れが大変」と諦めていませんか?確かに少しの手間はかかりますが、慣れれば漆器のお手入れは意外と簡単。そこで今回は、漆器の特徴やお手入れの方法について学んでみましょう。

漆器の特徴

漆器に使う漆は、漆の木を傷つけて採取した樹液。漆器にはそれを精製して使います。木の器に漆を塗り重ねるのが漆器ですが、漆を塗ることでどんな効果が生まれるのでしょうか。まずは漆器の特徴をご紹介しましょう。

丈夫さの追求から始まった漆器

漆の木は東アジア、東南アジアに分布していますが、日本の漆の木はおそらく縄文〜弥生時代にやってきた外来種。ですが、漆の好む気候と日本の気候がマッチしたのか、アジアの中でも日本の漆が上質であるといわれています。

漆器に使うには、多くの場合、樹液である生漆(きうるし)を精製。木にその漆を塗ると、主成分ウルシオールが酵素の働きにより硬化、堅牢な膜ができます。漆によってできたその膜は、酸性にもアルカリ性にも、アルコールにも強いためいろいろな食事を盛ることに向いています。また、耐久性・耐水性・防腐性も強く、近年作られているどんな化学的な塗料よりも丈夫だといわれています。

現代では、蒔絵や沈金など豪華な装飾を施した漆器も伝わっていますが、漆器づくりがはじまった頃の漆は木の器の補強材として使われていたのです。木に漆を塗ると、丈夫な器になることを昔の人は知っていたのですね。

カシュー塗、ウレタン塗。安価に使える素材もある

漆は木から取った天然の塗料なので、採取量も少なく、そのため漆を使った漆器のお値段もそれなりです。

そこで、日本人は漆に変わるさまざまな塗料を作ってきました。その中でもよく知られているのがカシュー塗とウレタン塗。

カシュー塗とは、名前の通りカシューナッツのカラから抽出した塗料を使ったもの。漆のように皮膚がかぶれることがなく、塗ると漆によく似た仕上がりになるのが特徴です。色も豊富で色々な器を作ることができますが、ウルシオールのような硬化する成分が入っていないためそのままでは硬くなりません。そのため、カシュー塗料には酸化剤や有機溶剤が必要となり、分類的には合成塗料となります。

ウレタン塗は、ウレタン樹脂を使った塗り物のこと。化学的に作られた合成塗料ですが、多くは食品検査に合格しているものを使っているため、溶け出すようなことはほぼありません。最近では、ウレタン樹脂の技術も向上、漆とよく似た仕上がりのものも登場しています。

どちらも漆器よりもお手頃な値段なため、本格的な漆器にチャレンジする前の一品としてはよいかもしれません。

漆器を購入したとき最初にすること

初めて漆器を購入して、最初にするべきこととはなんでしょうか。また、漆を使ったお椀やお皿、どんなお料理も盛っていいの?そんな漆器の基本を知っておきましょう。

使いはじめに匂いが気になるときは?

新しい漆器には、漆特有の匂いが気になることがあります。漆器は幾重にも漆を塗り重ねて作られるため、完全に硬化・乾燥するまでにそれなりの時間が必要です。ある漆職人さんによれば「漆が完全に硬化するのには100年かかる」のだそうです。

この匂いを取るには、やはり時間が大切。直射日光が当たらない風通しのよい部屋に半年〜1年ほど置いておくと、自然に匂いが消えていきます。

ときどき購入したお椀などを、買ったときに入れてもらった木箱などにそのままにしておく方を見かけますが、それはNG。カビなどの原因になります。

とはいうものの、新しい漆器、できればすぐに使ってみたいですね。そんなときは、食酢を水で薄めて、やわらかい素材の布巾で漆器を拭き、お湯で洗いましょう。もう一つの方法として、米びつの中に数日入れておくという方法もあります。どちらの方法も、不思議なくらい匂いがなくなりますよ。

どんなものでも入れていいの?

前述の通り、漆器は酸性にもアルカリ性にも、アルコールにも強いので、ほとんどのお料理に使うことができます。天ぷらや唐揚げなどの油ものでも大丈夫。漆器はオールランウンドに使える丈夫な食器といえます。

ただし、食事のときに使うのがメインであり、保存や調理の器として使うことはできません。漆器に盛ったお料理などが余ったときは、別の容器に移し変えてから保存しましょう。高温になるオーブンやレンジに漆器をかけると、漆が変質してしまう可能性があります。

また、同じ理由から沸騰しているお湯を注ぐのもNG。やかんなどから直接お湯を注がないようにしましょう。だいたいお味噌汁やお吸い物が美味しくいただける温度が、70度〜80度くらい。これくらいが漆器にもやさしい温度です。

 

漆器の使い方、意外と簡単。日常のお手入れ

漆器はデリケートな食器と思われがちですが、実は丈夫さを追求した器だということがわかっていただけたのではないでしょうか。普段使いの漆器なら、コツさえ知っておけば、お手入れは思ったよりも簡単です。ただし、蒔絵や沈金など装飾がある高級な漆器は、毎日使う漆器とはまた別のお手入れ、保存方法が必要になります。

毎日のお手入れは手洗いが基本

漆器の洗い方は手洗いが基本。最近では食器洗い乾燥機が使える特別な漆器もありますが、普通の漆器は高温での洗浄や乾燥により、漆が剥がれることがあるため使えません。毎日使う漆器はスポンジと中性洗剤を使って、普通の食器と同じように洗い、高級な漆器の場合には陶磁器とは別洗いで、やさしく洗うようにします。

金たわし、クレンザーなど硬く目が荒いものを使って洗うのも、漆に傷をつけてしまうためNG。洗い終わったら、ぬるま湯ですすぎます。

その後は自然乾燥でもいいのですが、より長く漆器を愛用したいなら布巾など柔らかい布で拭くことをおすすめします。新しい漆器は粒子が揃っていませんが、布で拭きあげることで漆器の表面を磨くこととなり、ツヤが増していきます。毎日漆器を使って拭けば、できたばかりの頃とは違う艶やかな風合いへ変化していくのを楽しめますよ。

収納の注意事項

普段使いの漆器は、乾燥後、直射日光の当たらない食器棚などにそのまま収納することができます。その際には擦り傷を防ぐため、漆器同士を重ね、陶磁器などとは重ねないようにしてください。もし時間に余裕があるなら、漆器と漆器の間にキッチンペーパーやティッシュなどを挟んでおくと、より長く、きれいな状態の漆器を使うことができます。

高級な漆器の場合は、ほんの少し手間が必要です。普段使いの漆器と同じように、収納する場所は直射日光を避けた戸棚・押入れなど。できれば和紙などで一つひとつ漆器を包み、桐箱などに入れて収納します。人によっては防虫のため、桐箱をウコンで染めた「うこん布」で包む人もいるようです。お手入れや収納方法に迷ったときは、漆職人さんや販売員の人に確認を。よりよい方法を教えてくれます。

なお、高級な漆器はお正月にしか使わないということがあるかもしれませんが、漆器は乾燥が苦手。戸棚に入れっぱなしにせず、数カ月に一度取り出してぬるま湯ですすぎ、布で拭いてあげましょう。

それでも傷がついたら修理へ

漆器は丈夫な食器ではありますが、長年使う中で漆が剥げたり、傷がついたり、欠けたりすることがあります。しかし、伝統工芸品である漆器は、修理に出しながら何十年も使い続けられるのも大きな特徴です。

漆が剥げた部分に漆を塗り重ねる修理はもちろん、木地に傷がついた場合でも、傷に糊に木の粉を混ぜたもので補修できることがあります。

漆器が剥がれた、傷がついた、といった場合には、まずは購入したところに問い合わせ、修理できるかを確認してください。工房によってはよその漆器を受け入れて修理してくれるところもありますので、まずは探してみましょう。

使い続けることでツヤが増す!
だから日常に漆器を取り入れて

陶磁器やプラスチックと違い、口につけると柔らかくほんのり温かみを感じる漆の器。さらに漆は時間が経つほどに硬くなっていき、お手入れするごとに風合が増していきます。漆器ならではの温もり・風味は、毎日の生活に彩りを与えてくれるでしょう。朝ごはんのお味噌汁のお椀に、毎食使うお箸に、漆器を取り入れてみませんか。

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