鶴・亀・猫・龍・孔雀|工芸品に描かれる動物の縁起と由来
「社長就任祝いに、二匹の鶴をモチーフにした七宝焼きを贈るのは縁起が悪いですか?」そんなご質問をお客様にいただいたのをきっかけに、日本の工芸に描かれる“動物モチーフ”の意味をさらに深く興味を持ち、調べてみることにしました。
鶴・亀・猫・龍・孔雀──これらの動物は、古くから日本文化の中で、吉祥や祈りを象徴してきた存在です。本記事では、それぞれの動物に込められた由来と象徴、そして現代の工芸品における表現をたどりながら、節目の贈り物としての選び方を考察します。
目次
鶴 ― 長寿と繁栄の象徴
亀 ― 不老長寿と地の安定
猫 ― 魔除けと福を呼ぶ守り神
龍 ― 天に昇る力と守護の象徴
孔雀 ― 美と再生、吉祥の象徴
結び ― 祈りをかたちにする、日本の工芸
鶴 ― 長寿と繁栄の象徴
鶴は「千年生きる」といわれ、古来より長寿・繁栄・吉祥を象徴する鳥として愛されてきました。日本画や工芸の世界では、夫婦仲の良さを示す「相鶴(あいづる)」や、未来への飛翔を意味する「飛鶴(ひかく)」など、構図にも意味が込められています。
特に「双鶴」は、社長就任祝いや結婚記念の贈り物など、節目の慶事にふさわしい図柄として用いられます。鶴が舞う姿は、天と地、人と人、過去と未来を結ぶ象徴でもあります。七宝焼や蒔絵、織物などに描かれる鶴の意匠には、ただの装飾を超えて「寿ぎを祈る心」が宿っており、日本人が大切にしてきた“祝いの美意識”が凝縮されています。
鶴の意匠が用いられた工芸品は、いずれも空間に「祝いの気配」を生み出す力を持っています。特に七宝焼や銀器など、光を受けて輝く素材との相性は抜群で、時を経ても変わらぬ華やかさを放ちます。
日本工芸堂がおすすめする鶴モチーフの作品を3点。
七宝焼き 飾皿 祝い鶴 24×24
“鶴は千年”とも称される吉祥の鳥。緻密な七宝焼き技法で描かれた双鶴の舞いが、祝いの場にふさわしい華やかさを添えます。
結婚祝いや長寿祝い、企業の節目など、“ずっと続いてほしい”という願いを込めた贈り物に最適です。 飾るだけで空間が祝宴の雰囲気に包まれる一枚であり、特別な日の象徴としてふさわしい工芸の華やかさを備えています。
東京銀器 額 | 純銀 双鶴 | 木製卓上フレーム M5号 | 関工芸
純銀のレリーフで双鶴を浮き彫りにした卓上額。木製フレームとのハイブリッドが上質で、オフィスや玄関ホールにも自然に溶け込みます。「出世祝」「就任祝い」「開業祝い」など、形として長く残る記念品としておすすめです。
手元に置くアートとして、人生の節目を刻む贈答品に。名入れ対応が可能で、企業ギフトとしても高い人気を誇ります。
七宝焼き | 飾皿 | 丸祝い鶴 27φ
径27cmというしっかりしたサイズの丸皿に、富士山を背景に双鶴と紅白梅を配した設え。七宝焼きの輝きと豪華な意匠が、祝賀や親族の集まりにも映えます。引き出物や内祝、また海外の方への贈り物としても喜ばれる一枚です。
富士と鶴、紅白梅という“めでたさ”を重ねた構図は、和の伝統美とモダンな空間にも調和する品格を感じさせます。
詳しくは、縁起の意味を込めた工芸品を集めた特集
>動物モチーフの工芸品コレクションはこちら
亀 ― 不老長寿と地の安定
鶴と並ぶ吉祥の象徴が亀です。「万年生きる」とされる亀は、不老長寿・繁栄・家庭円満の象徴であり、安定と調和の象徴とされる存在でもあります。特に甲羅の六角形は、自然界の調和を表す「亀甲文」として工芸品や建築装飾に多く見られます。
鎧や漆器、染織などに用いられるこの文様は、強さと持続の象徴でもあります。また、亀は神話や民話にも登場し、浦島太郎の物語に見られるように「時を超える存在」として人々の想像をかき立ててきました。
現代の工芸では、鶴と亀を組み合わせた意匠が“バランスと永続”を意味し、周年記念や永年勤続など、時間の積み重ねを祝う贈り物に好まれています。
亀が描かれた工芸品では、その姿や甲羅の文様が「堅牢さ」「安定」「未来への継続」を暗に語ります。特に、室内に静かに佇む亀の工芸品は、“日常を支える基盤”としての意味合いも強く、節目の贈答品としても選ばれます。
日本工芸堂がおすすめする亀モチーフの作品を2点。
高岡銅器 香皿|かめ 丸型香立付 桐箱入 金青銅|松美堂
約400年の歴史を誇る産地・高岡の銅器技術を用い、金青銅仕上げで落ち着いた輝きを持つ丸型の香皿です。杏香立付きのフォルムに小さな亀の造形が添えられ、香を焚くひとときに“安寧”“長寿”の象徴を添えてくれます。
贈り物として、名入れ/桐箱仕様といった仕様もあり、節目の贈答品にふさわしいひと品です。飾るだけで「時間を経ても変わらぬ願い」が空間に宿る一品。
九谷焼 カップ “花きらり” 海亀|美山窯
石川県能美市の九谷焼「美山窯」が手がけるカップ。手塗りによる鮮やかな絵付けに海亀のモチーフが描かれており、甲羅の六角文様の意味が紹介されています(「長寿・知恵者のシンボル。甲羅の六角形は隙間なく並ぶことから蓄財の吉祥図形でもあります」)。
食器という日常使いの器に“亀の願い”を込めたデザインで、場面を選ばず活用できます。日々の暮らしの中に“長寿と安定”の意匠をさりげなく添える器。
詳しくは、縁起の意味を込めた工芸品を集めた特集
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猫 ― 魔除けと福を呼ぶ守り神
日本で猫が「福を呼ぶ」存在として定着したのは江戸時代。商家の軒先に置かれた「招き猫」は、右手を上げて金運を、左手を上げて人を招くとされました。しかしその源流をたどると、猫は古来より魔除けや守護の象徴でもありました。夜目が利き、見えないものを察知する猫の感覚は、霊的な存在としての敬意を受けていたのです。
例えば、九谷焼や瀬戸焼では、愛らしい姿に加え、しなやかな体躯の美しさを生かした造形が多く見られます。近年では、猫を描いた漆器やガラス工芸なども人気で、単なる可愛らしさではなく“安らぎと直感の象徴”として現代的に再解釈されています。
人に寄り添い、幸福を招く猫の意匠は、今も多くの工芸家にインスピレーションを与え続けています。猫モチーフの工芸品を贈る際には、日常にさりげなく福を招く道具として、また節目やお礼の品としても優れています。置物として玄関に飾る、食器として食卓を彩る、など場面にも合わせやすいのが魅力です。
日本工芸堂がおすすめする猫モチーフの作品を3点。
九谷焼 カップ “花きらり/黒猫” |美山窯
九谷焼ならではの艶やかな絵付けで、黒猫が描かれたカップ。日常使いの器として、猫の持つ“守り”と“福を呼ぶ”という意匠が映えます。
九谷焼 置物/招き猫 椿 ペアセット|虚空蔵窯
赤絵・釉彩で仕上げられた招き猫ペア。左右それぞれ手を上げているデザインで、金運・人を招く両面の願いを込められています。
瀬戸焼 置物 “SETOMANEKI ギフトセット 小/赤・白 金手”|中外陶園
伝統の瀬戸焼技術を用いた招き猫置物セット。ギフト仕様で、贈答品としての相応しさも兼ね備えています。
詳しくは、縁起の意味を込めた工芸品を集めた特集
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龍 ― 天に昇る力と守護の象徴
龍は東洋文化を代表する神獣であり、天を駆け、雨を呼び、万物に生命を与える存在として崇められてきました。中国から伝わった龍信仰は、日本では神仏習合の中で“水の神”や“守護神”として定着し、神社仏閣の彫刻や絵画、金工、陶磁器などに多く描かれています。
龍が天へ昇る姿は「昇龍」と呼ばれ、出世や飛躍、成功の象徴として現代でも人気です。特に、産地として名高い高岡銅器の作品では、金属の輝きと造形の力強さが龍の神秘性を雄々しく表現しています。
また、龍は混沌の中に秩序を生み出す存在でもあり、変化の時代を生きる私たちに「内なる力を呼び覚ます」象徴として再び注目されています。
このような龍モチーフの工芸品は、単なる装飾以上に“昇進・開業・新生活”といった節目にふさわしい贈り物として機能します。例えば、重厚な金属質の置物が応接間に据えられたとき、それは空間に「守る力」と「飛躍の兆し」を帯びて静かに存在します。
日本工芸堂がおすすめする猫モチーフの作品を2点。
高岡銅器 置物 龍/香皿付 桐箱入
鋳造による銅製の置物で、龍の躍動感を瑞雲のような造形で表しています。重厚な質感と存在感が、贈答の場にふさわしい「力の象徴」としておすすめです
高岡銅器 香立 | UNRYUU 桐箱入 | 金青銅 | 松美堂
高岡銅器の龍作品で、よりシンプルかつ上品なフォルム。玄関や応接に置くことで「守りと飛躍」の意を込められます。
詳しくは、縁起の意味を込めた工芸品を集めた特集
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孔雀 ― 美と再生、吉祥の象徴
孔雀は、古代インドにおいて神聖な鳥とされ、仏教の伝来とともに日本へと伝わりました。その羽の文様は「目玉文様」と呼ばれ、あらゆる災いを見抜き、除ける力があると信じられてきました。
また、孔雀は羽を広げる姿から「美」「誇り」「再生」の象徴ともされます。七宝焼や蒔絵では、孔雀の鮮やかな羽色を金・緑・青の釉薬で表現し、華やかさの中に静かな品格を宿しています。特に平安時代には、孔雀文様が高貴な女性の衣装や調度品に好まれ、今日でも美術的な意匠として継承されています。
現代の工芸においても、孔雀は「美しさが内側から放たれる」という理念を象徴し、人生の節目を祝う贈り物にふさわしいモチーフです。
高岡銅器 香炉 | 玉型孔雀 彩色 | 銅 | 喜泉堂
銅金属を用い、羽根を広げた孔雀が堂々とした佇まいで立体的に表現された置物。素材の光沢と造形のダイナミズムによって、「再生」「誇り」の意がしっかりと伝わります。
高岡銅器 香皿 | 鳳凰 丸型香立付 桐箱入 | 白金 | 松美堂
より洗練されたフォルムとミニマルな造作により、モダンインテリアにも合う孔雀モチーフの置物です。羽の色彩・質感にこだわり、日常空間に新しい“美の象徴”を添える一品です.
結び ― 祈りをかたちにする、日本の工芸
動物モチーフの工芸品は、単なる意匠ではなく、人々が“見えない願い”をかたちに託してきた文化の記録です。鶴のように寿ぎを、亀のように安寧を、猫のように幸福を、龍のように力を、孔雀のように美を。
それぞれが象徴する祈りの意味を理解することで、贈り物の選び方にも深みが生まれます。工芸とは、祈りを素材と技で包み込む行為。時を経ても褪せない“想いのデザイン”として、人と人を結びつけ続けています。
詳しくは、縁起の意味を込めた工芸品を集めた特集
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