四郎國光
最強の切れ味を持つ日本刀
その技術を包丁に活かす
「切れる」を追求し続けた
200年以上続く刀匠
日本の刀と西洋の刀。二つは同じようで思想が全く異なる。西洋の刀は重く頑丈だ。どんな鎧も刀を叩きつけ押し切ったり、両刃で鎧の隙間から突き刺したりして使う。一方の日本刀はしなやかで反りがある。敵を切り裂くことに長け、その切れ味は最強とも言われる。
日本刀の起源は平安時代。各地に全国的に名をとどろかせる刀鍛冶が生まれていった。その一人が現在の福岡県大牟田地域にいたといわれる刀匠「三池典太」。その切れ味には豊臣秀吉も驚いた、という逸話も残っている。
そんな三池典太の刀づくりを理想にしていた刀鍛冶が四郎國光の祖となる小宮家だ。その祖先には、柳河藩の御番鍛冶もおり、代々刀と共にあり、生きてきた一族なのだ。彼らの作る刀は「切れ味」が信条。昭和14年に行われた「全国試し切り大会」では日本一の切れ味に輝いた。
創業天明6(1786)年。200年続く刀鍛冶の技術は、廃刀令後、包丁などの暮らしの道具に生かされるようになった。
刀づくりと同じ技で
5人の刀匠が作る包丁
四郎國光には5人の刀匠がいる。日本に存在する刀匠200人程度。そんな中、1つの工房に5人も「刀匠」と呼ばれる職人が集まっているのは稀有である。しかも、5人の刀匠はそれぞれに特色のある刀を打ち、毎年行われている新作刀展で多くの賞に輝いているのだ。
包丁だけでなく美術品としての日本刀を作る理由を「刀づくりの技術を継承していくため」と語るのは当主四郎國治氏。刀を作る技術を受け継ぎ、日々高めているからこそ、その技をそのまま使って作られた包丁も、日々切れ味を増し、使いやすくなっていくのではないか。
鋼の質や気温、室温、炎の温度。さまざまな条件で刃物の出来は日々変わる。その中で納得のいく1本の包丁を打つ。「本当に自分の思い通りの刀ができたということはほとんどない」という刀匠たちが、日々の修行の中で生み出す包丁は、切れ味以上の魅力を持って、私たちの心を掴んでいるように思う。
Buyer's Voice 代表・松澤斉之より
本物の刀を作る人が作った
切れないわけがない包丁
日々、料理をする、というわけではないが、切れ味のいい包丁は料理の見栄えや味にかかわる、と聞いたことはある。切れ味がいいことで知られる日本刀を作る人が作った包丁と聞いて、少し心が躍った。
訪れた工房は、創業200年以上という歴史が感じられ、道具も作業場も使い込まれたものが置かれていた。時代の感覚を一瞬忘れそうな作業場には、しめ縄もかけられており、刀を作る聖なる場所、という感じがした。そんな場所で1本ずつ、刀と同じように鋼を叩き、作られている包丁。見せてもらった1本1本が、「包丁」というより「刀」というたたずまいを見せていた。
世界に知られる日本刀の技。その技で作られた包丁が切れないわけがない。そんな切れ味のいい包丁で作った料理が美味しくならないわけがない。この包丁で、なにか料理を作ってみたい、そんな気持ちにさせられる。一生使える包丁として、1本、ぜひ、多くの人に使ってもらいたいと思っている。