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記事: 【伝統工芸の旅】やちむんと琉球ガラス—「つくる土地」を歩き文化の手ざわりを知る(沖縄)

【伝統工芸の旅】やちむんと琉球ガラス—「つくる土地」を歩き文化の手ざわりを知る(沖縄)
#伝統工芸の旅

【伝統工芸の旅】やちむんと琉球ガラス—「つくる土地」を歩き文化の手ざわりを知る(沖縄)

全国各地には、その土地ならではの伝統工芸を受け継ぐ職人や工房があり、日本の文化を支えています。日本工芸堂の代表・バイヤーの松澤が作り手をたずねる「伝統工芸の旅」。
今回は、沖縄の伝統工芸を訪ね、商談や制作体験を通じて感じたことを綴ります。 



沖縄の伝統工芸と出会う

沖縄の空の下、伝統工芸の息吹を感じる旅に出かけました。中小機構が主催する「守礼門プログラム2023」に招聘され、「ライフスタイル雑貨」をテーマとした商談会・評価会に参加するために現地を訪れました。那覇の空は高く澄みわたり、心地よい風が吹いていて、まるで旅の始まりを歓迎してくれているようでした。

商談会では、沖縄の工芸品を扱う5社の事業者と意見を交わしました。それぞれの企業が持つ技術やこだわりに直接触れることで、バイヤーとしての視点から沖縄工芸の魅力や今後の課題について多くの気づきを得ました。やちむんや琉球漆器といった地域ならではの素材や意匠には独特の存在感があり、今後どのように展開していけるか、可能性が広がる思いがしました。


壺屋やちむん通りと読谷村の工房巡り

沖縄の伝統的な焼き物「やちむん」は、温かみのある素朴な風合いが魅力で、沖縄の風土や文化が色濃く反映されています。語源は沖縄方言で「焼き物」を意味し、読谷焼や壺屋焼など、各地の陶器を総称しています。やちむんの歴史は17世紀にさかのぼり、中国や朝鮮の技法を取り入れて発展しました。

特に「壷屋焼」は、那覇市壷屋地区を発祥とする代表的なやちむんで、17世紀から続く伝統があります。壺屋焼の最大の特徴は、沖縄特有の赤土を使用しており、この土が生み出す色合いや質感が特徴的です。伝統的な技法では釉薬を使わない素焼きもありますが、現在の壺屋焼は釉薬を使った製品も多く、多彩な表情を持っています。デザインには沖縄らしいシーサーや花模様などが施され、日常的に使われる食器や花瓶として広く親しまれています。

また、壺屋焼の工房が集まる「壺屋やちむん通り」は、街の中の国際通りからも程近く、那覇市内の観光名所となっています。ここでは歴史ある工房を見学したり、陶芸体験をしたり、地元の陶器を購入することができます。

やちむんの生産地として有名なのは読谷村。沖縄本島中部に位置し、「やちむんの里」(ページヘッダーの写真)では、陶芸家の工房が並び、見学や陶芸体験ができます。ここでは、沖縄の自然と伝統文化を感じながら、やちむんを購入したり、学んだりすることができるため、観光地としても人気があります。そのほかに印象的な作品が並ぶのは2つです。

  • 読谷山焼北窯:伝統的なスタイルの登り窯で焼かれている。モダンで力強く、釉薬の色使いが自然を想起させるとともにモダンで力強い食器。

  • エドメ陶房:販売所も独自で運営しつつ(読谷村入り口付近)、お皿の絵柄がとても可愛い。

「やちむん」は、沖縄の伝統的な工芸品として高く評価され、使うための美しさを追求した素朴で温かみのあるデザインが特徴です。壺屋焼や読谷焼のように、それぞれの地域に根ざした技術と魅力が伝統工芸として受け継がれています。


やちむん制作体験

沖縄・読谷村にある壺屋焼の窯元「陶眞窯」で、やちむんの制作体験をしてきました。陶眞窯では、粘土を板状に伸ばし、型に合わせてカットし、自由に装飾を施す「タタラ型」の技法を用いた体験ができます。私はお皿作りに挑戦しました。職人の方が丁寧に指導してくださり、初めてでも安心して取り組むことができました。

装飾には、沖縄らしい熱帯魚のハンコやサンゴを使って自由に飾り付けができます。仕上げには、黒(マンガン)または沖縄特有の釉薬『キビ白』から好きな色を選び、オリジナルのうつわを完成させます。体験中、他の職人さんが作業している姿も目に入り、工房の見学もさせてもらえました。

職人の技を間近で体験できるとあって、本気で陶工を目指す来訪者も多いといいます。 完成した作品は、約2ヶ月後に発送され、自宅に届く際には、体験の記憶が再び蘇り、嬉しさがこみ上げてきます。陶眞窯の陶芸体験は、沖縄の伝統工芸「やちむん」の魅力を体感できる素晴らしい機会でした。



琉球ガラスの魅力とその背景

琉球ガラスは、異なる文化が融合し、独自の文化を形成する「チャンプルー文化」の中から育まれた工芸品です。明治時代の後期に本格的なガラスづくりが始まり、その後、戦後の混乱期にはアメリカ軍の廃瓶を材料として再利用する中で、気泡や鮮やかな色合いを持つ独特のガラスが生み出されました。現在では、色とりどりの表情や自由なフォルムが魅力となり、多くの人々を惹きつけています。


関連記事:歴史から紐解く琉球ガラスの魅力と特徴とは。ガラスの良さを引き出す独自の原料と作り方

当社取扱の琉球ガラスの一覧はこちら


首里染織館suikaraでの布工芸の多様性

文頭の商談会にも商談参加されていた方からの薦めもあり、翌日訪問した「首里染織館suikara」は、那覇市首里にある沖縄の伝統染織の発信拠点。琉球びんがたや首里織などの展示や販売のほか、染色や機織りの体験も可能で、職人の工房も併設されています。2022年に開館し、「首里から」伝統を未来へつなぐ場として、多くの来館者にその魅力を伝えています。



まとめ

商談を通して沖縄の工芸品の力を実感し、やちむんや琉球ガラスの制作現場を訪ねることで、職人の想いや地域の文化の一旦に触れることができました。色彩やかたちには海や風といった自然の記憶が息づきます。現地の暮らしに根差したものづくりの本質を感じ取る、学び多き滞在となりました。

追記:帰京前、沖縄に住む旧友と食事。席の前にはにこやかなシーサーが飾られていたのが印象的。同種のシーサー置物を購入し、今でも玄関に鎮座している。