津軽びいどろ
青森
津軽びいどろとは
「びいどろ」とは、安土桃山時代にポルトガル語「vidro(ガラス)」とともに伝わり、江戸時代を通じて日本で親しまれたガラス工芸の呼び名です。特に吹きガラスの製品を指すことが多く、和ガラスの象徴的な言葉として受け継がれてきました。
数ある吹きガラスの産地の中で、青森県が誇るのが「津軽びいどろ」です。漁業用のガラス浮玉を製造していた技術を基盤に生まれ、手仕事ならではのあたたかみを持つガラス製品として発展しました。
桜や紅葉、雪景色など日本の四季を映した柔らかな色彩のグラスや器は、今では海外でも高い人気を集める工芸品となっています。

津軽びいどろの歴史・技術
津軽びいどろは、もともと漁業用の浮玉づくりから生まれました。
木製や竹製の浮きが主流だった明治時代後期までを経て、1840年代にノルウェーで誕生したガラス製の浮玉が世界に広まり、日本でも大正期にはガラス製のものが広く使われるようになりました。1910年代にはガラス産業の盛んな小樽などで製造が始まり、国内でも普及していきます。
青森では、1949年に北洋硝子がガラスの浮玉製造を始めました。津軽半島の西に広がる七里長浜の砂を原料に、宙吹きなどの伝統的な吹きガラスの技法を用いて丸い浮玉を作っていたのです。渋い緑褐色の浮玉は他の工場のものより丈夫だと評判となり、1973年には日本一のシェアを誇るトップメーカーへと成長しました。
浮玉製造で重要なのは、いかに美しい球体に整えるかという点です。吹き竿の先端に溶けたガラスを巻き取り、息を吹き込みながら竿を振って形を整えるには高度な技術が必要でした。この高い技術を何かに活かせないか──そう考えた職人たちは、色ガラスの調合を独学で習得し、日本を代表するガラス工芸品「津軽びいどろ」を生み出していったのです。
特徴的な色ガラスは、日本の四季を映す色を表現するために自社で調合するのが基本です。桜の淡い桃色、紅葉の鮮やかな朱、青森を象徴するりんごの赤など、自然が見せる彩りをガラスに映し込みます。
津軽びいどろの製法は、かつての浮玉づくりと大きくは変わりません。高温に熱して溶かしたガラスを吹き竿の先端に巻き取り、もう一方から息を吹き込んで膨らませる宙吹きの技法によって形づくられます。この自由度の高い技法が、津軽びいどろならではの個性的なフォルムを可能にしています。手仕事でありながら、熟練の職人による製品のサイズにはほとんど誤差がなく、高度な技術がそこに表れています。
伝統の技術と自然を愛する日本人の感性が融合した津軽びいどろ。その美しい世界観は、日本国内にとどまらず海外からも高い注目を集めています。
津軽びいどろのブランド一覧
北洋硝子 / 青森県青森市
北洋硝子株式会社は、昭和24年創業のガラスメーカー。浮玉づくりで磨かれた技術により、青森の青森の伝統工芸品第一号に認定。鮮やかでいて優しい色合いのグラスが人気。
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