北洋硝子
国内有数の“浮玉”の技術が
暮らしを彩る器に
昭和24年に創業した北洋硝子は、もともと漁業用の浮玉を製造していた会社です。丈夫な浮玉をつくる技術によって、国内トップクラスのメーカーとなりました。しかし、時代の流れとともにプラスチック製の浮玉が登場し、ガラス製の浮玉は次第に姿を消していきました。それに伴い、北洋硝子も存続の危機に直面しました。
そんな状況の中、「自分たちの高い技術を活かして、何か別のものがつくれないか」と考え、新たな一歩を踏み出したことが、復活の原動力となったのです。
北洋硝子の強みは、長年の浮玉製造で培われた「宙吹き」の技法にあります。やわらかい曲線を吹きガラスで形づくる高い技術力により、宙吹きならではの手作り感あふれるグラスや器、オイルランプなど、暮らしに寄り添うガラス製品が生み出されました。
こうして誕生したハンドメイドガラスのシリーズ「津軽びいどろ」は、その柔らかく美しい佇まいで、私たちの暮らしを彩る一品となっています。
新しい技術を探求する姿勢と、高い品質・技術力は、異業種からも注目を集め、スターバックスからオリジナルグラスの制作を依頼されるまでになりました。津軽びいどろの風合いを大切にしながら、スターバックスの世界観を表現したグラスは、店舗でもなかなか手に入らないほどの人気となり、大きな話題を呼びました。
すべての始まりは、会社の存続をかけた模索からでした。BtoBからBtoCへの事業転換は、北洋硝子にとって大きなイノベーションとなり、「津軽びいどろ」は新たな工芸品として、多くのファンを魅了しています。
津軽の四季の彩りをうつす繊細な色ガラス
北洋硝子の特徴のひとつは、色ガラスを一つひとつ自社で手づくりしていることです。日本の四季を表現するために求められるのは、柔らかく繊細な色合い。その理想を追求するために、微妙な色の調合を何度も繰り返し、これまでに幾千もの色ガラスを生み出してきました。
吹きガラスに色ガラスを巻きつける技法によってつくられる製品は、同じ工程で製作しても、まったく同じものにはなりません。色合いが似ていても、ガラスの流れ方や色の配置などがすべて異なり、一つひとつが世界にひとつだけの存在です。そのため、大切な方への贈り物としても最適な工芸品といえるでしょう。
また、ハンドメイドガラスならではの少し厚みのある風合いも、大きな魅力のひとつです。ぽってりとしたやさしい肌触りは、津軽びいどろを生み出す青森の人々の温かさや、ものづくりへの優しさを感じさせてくれます。
Buyer’s Voice 代表・松澤斉之より
若手職人のチャレンジが生み出す、唯一無二のガラス
津軽びいどろを初めて目にしたとき、そのほどよい重量感や、ぼてっとした丸みのあるフォルムに、たまらない魅力を感じました。中でも「ねぶた」シリーズの風合いが特に好きです。
まるでねぶた祭りの色合いがそのまま手のひらに収まったかのような、鮮やかでありながらもどこか日本的な色ガラスの風情が心に響きます。テーブルに彩りを添え、注ぐものの風味まで引き立ててくれるような気がします。
色ガラスを巻きつけて成形する技法でつくられるため、まったく同じものは存在しません。その唯一性が、自分だけの特別な器としての喜びをさらに高めてくれます。
また、津軽びいどろをつくる工房には、若い職人の方も多く活躍しています。他の地域からも志を持つ人々が集まり、この地で産業を盛り上げようと取り組んでいる熱意あふれる現場であることに、強い感動を覚えました。
若い感性と挑戦心が、日本の四季の彩りをより豊かに、繊細にガラスへと表現しています。津軽びいどろが体現する日本の美しさが、世界へと羽ばたき、さらに多くの人々に愛される日も、そう遠くないと感じています。