吉祥文様
吉祥文様は、日本の伝統的な工芸品において重要な役割を果たしてきました。縁起柄、吉兆柄などとも呼ばれ、多くの種類があります。それぞれの文様に様々な意味があり、幸運や繁栄をもたらすと信じられてきました。
例えば麻の葉は麻の葉をかたどったひし形を敷き詰めた文様です。麻は神事に用いられる神聖な植物とされている他、数か月で数メートルの高さまで伸びる、成長の早さにあやかって「すくすくと育つように」という願いが込められています。また、江戸時代には、麻の葉文が描かれた産着を子どもに着させる、魔除けの風習がありました。
青海波は扇のような波が重なって描かれた文様です。扇にあやかって「末広がりの幸運」の文様とされています。また、繰り返す波の模様には平安な暮らしや子孫繁栄、未来永劫などの願いが込められています。古代ペルシアに起源をもち、シルクロードから日本に伝わったとされています。伝統的な漆器や陶磁器にも多く描かれています。
市松は二色の正方形を碁盤の目のように組み合わせた文様です。災難厄除のご利益があるとされているほか、左右上下どこまでも続くことから繁栄への願いを込めた意味も持ちます。江戸中村座の佐野川市松(1722-62)が、この文様をつけて登場したことから役者の名前を取り入れて市松文と呼ばれるようになりました。また、神社の石畳にもみえることから「石畳文」とも呼ばれていました。
これらの吉祥文様は、日本の歴史や文化、自然と結びついて伝統的に親しまれてきた文様です。工芸品のデザインにも多く取り入れられており、お祝い事などの場面でよく用いられています。贈り物を選ぶ際には、シーンにふさわしい意味のある吉祥文様を選んでみてはいかがでしょうか。
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