端午の節句 五月人形に込められた意味は?
目次
― 鎧飾り
― 大将飾り
― 華やかな貴族文化 京甲冑
― 節句の文化
― 職人技に触れる
端午の節句 五月人形に込められた意味は?
五月人形は、男の子の健やかな成長と幸福を願って5月5日の「端午の節句」に飾る人形です。兜飾りや鎧飾りなど、さまざまな種類の五月人形があります。
端午の節句は、昭和23年に「国民の祝日に関する法律」で「こどもの日」として祝日に定められています。
端午の節句のもとになった中国では、この日は3月3日などと同様に「陰」にあたるよくない日とされ、邪気を払うために軒先に菖蒲(しょうぶ)をつるし、家族の無病息災を祈りました。「しょうぶ」という言葉が「勝負」または「尚武」に通じることから、日本でも武家にとって大切な年中行事になりました。そして現在まで男の子の健康と幸福を願う日として、その習慣が受け継がれています。
五月人形の種類と特徴
五月人形には、時代に合わせてさまざまな種類が生まれています。ご家庭のスペースや用途によって適したものを選ぶのがいいでしょう。
・兜飾り
煌びやかな装飾と洗練されたフォルムが男らしい威厳を感じさせる兜飾り。
鋭く伸びる鍬形をつけた兜や、戦国武士をモチーフにした兜などさまざまなデザインのものがあります。また、定番の平飾りタイプから、お手入れのしやすいケース飾りタイプ、飾り台に収納スペースを設けた収納飾りタイプなど、飾り方も多種多様です。
・鎧飾り
五月人形の中で最も豪華な鎧飾り。
美しく鮮やかな配色と煌めき、迫力満点の佇まい、その勇壮さは子どもの心をかきたてるのに十分すぎるほどです。鎧飾りも兜飾り同様、さまざまなタイプ・飾り方のものがあります。
・大将飾り
大将飾りは、鎧兜を身に纏ったかわいらしいお人形です。有名な武士のデザインや個性的なデザインまでさまざまあり、節句を華やかに彩ってくれます。ふっくらとした童顔で健やかな表情には、お子さまの幼いころからの無事と健康への願いが込められています。
このほかにも頭に被ることができる「着用鎧兜」やインテリアとして飾る「インテリア鎧兜」などもあります。
また、端午の節句に飾る「節句飾り」は、五月人形だけではありません。
鯉のぼりがこの時期に飾られているのを記憶している方は多いのではないでしょうか。屋外に飾るものは、「外飾り」とよばれ、鯉のぼりや武者絵のぼりなどがあります。五月人形は屋内に飾る「内飾り」に当たります。
五月人形・江戸と京
写実的で精巧なつくり 江戸節句人形
五月人形のつくりには、産地によって違った魅力があります。
江戸甲冑は、武士たちが戦場で用いていた甲冑がモチーフになっています。そのため、過剰な装飾はなく、実用性を重視したような作風であるのが特徴です。制作には5000にも及ぶ工程があると言われ、その細かなところまで手作業で行われています。
江戸甲冑の兜には、和紙小札(わしこざね)を用いて漆塗りを施し、皮革工芸や組紐、染織といった伝統的な技法を巧みに扱って作られています。京甲冑に比べて派手さはないものの、重厚感のある雰囲気がある江戸甲冑からは、洗練された美しさが感じられます。
華やかな貴族文化 京甲冑
京甲冑は、金箔や金属を用いた細工が施され、華やかな貴族文化を感じさせます。
純金箔が貼られた金小札(きんこざね)が多く用いられていて、そのほかにも縅糸(おどしいと)に組紐、金襴に西陣織を用いるなど、京都の伝統工芸品が惜しげもなく使われています。
また、兜の前立(まえだて)の中心には、龍頭など勇ましい意匠が配されていることも多いです。
気品が感じられながらも凛々しい雰囲気が魅力です。
この2つのほかにもどちらの様式にも属さない作り方をした甲冑もあり、「新型甲冑」と呼ばれています。例えば、材料にプラチナ箔を用いていたり、吹返(ふきかえし)や鍬形(くわがた)などの部位が現代的な意匠になっているものもあります。
現代における五月人形の意義と人気
五月人形は、男の子の健やかな成長や幸福を願って端午の節句に飾られるものですが、現代において新たな価値を生み出しています。
飾り物とはいえ、精巧に作られた武具は、日本の文化や歴史を次世代に伝える重要な役割を果たしています。海外の甲冑ファンにも人気を博しています。
また、家族や親子の絆を深めるきっかけとしても注目されています。五月人形を一緒に飾り、節句の意味や由来を語り合うことで、家族の間で会話が生まれ、親子の絆を深めることができるでしょう。
さらに、近年では大将飾りを中心としてデザインのバリエーションが増え、伝統的なものだけでなく、アニメやキャラクターをモチーフにした五月人形も登場しています。子どもに向けたものだけでなく、自分へのご褒美として購入する方も増えています。
五月人形を通じて学ぶ日本の文化と伝統
五月人形を通じて学ぶことができる日本の文化と伝統は多岐に渡ります。
・武士道精神
五月人形は戦国武士や将軍をモチーフにしています。兜から毛沓まで揃っている鎧飾りや兜飾りなど、精巧なつくりの五月人形からは武士道精神を感じることができるでしょう。身近にこうした工芸品があることで、当時の考え方そのものに関心がむき勇気や忠義、礼儀などの価値観を学ぶきっかけとなることもあるでしょう。
・節句の文化
五月人形は端午の節句に飾られるものであり、節句の文化を学ぶ機会となるでしょう。端午の節句は男の子の健やかな成長を願う行事であり、家族の絆を深める大切なイベントです。そのほかにも日本には、多くの年中行事があります。季節とともに年月を感じるよい機会にできるでしょう。
・職人技に触れる
五月人形は熟練した職人によって作られています。戦国時代ではない今、甲冑や鎧に触れることができるのは、この時期ならではかもしれません。その精巧な技術や細部へのこだわりを通じて、武士道精神の一端を感じることができるのも五月人形の魅力です。
五月人形は、男の子の健やかな成長と幸福を願って飾られる人形です。
家族みんなで一緒に飾ったり、その意味や由来について話し合う時間の中でご家庭内の絆を深めることができます。職人の意匠が込められた五月人形を飾り、素敵な端午の節句を迎えましょう。
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