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記事: プロバイヤーの視点、アマゾン・afternoon teaバイヤー経験から家具/工芸/雑貨のオンラインでの拡販の可能性【日本工芸コラボトークVOL.10】

プロバイヤーの視点、アマゾン・afternoon teaバイヤー経験から家具/工芸/雑貨のオンラインでの拡販の可能性【日本工芸コラボトークVOL.10】
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プロバイヤーの視点、アマゾン・afternoon teaバイヤー経験から家具/工芸/雑貨のオンラインでの拡販の可能性【日本工芸コラボトークVOL.10】

インスタライブで開催される「日本工芸コラボトーク」。第10回目は、ロックウッド株式会社代表取締役小野仁さんをゲストにお迎えしました。ロックウッド株式会社は、家具やインテリアなどに関わる企業を中心としたマーケティング支援やEC事業構築に関して当社と協業するパートナー企業です。“日本に於ける古来からの技術や製法などを、国内はもちろん世界へ発信して地球上全ての人の暮らしを豊かにする”という理念のもと事業を推進されています。
  今回はそんな小野さんに、アマゾンでの経験を中心に、バイヤーとしての視点から「小売業の変化」「EC・工芸メーカーの進化」などについて話を伺いました。日本工芸・代表の松澤と語った内容の一部をお届けします。


サザビーリーグからアマゾンバイヤーへ

小野さん:私は、以前、株式会社サザビーリーグという会社に20年ほどおりました。この会社は衣食住の全てのライフスタイルを提案するたくさんのブランドを運営している会社です。いくつかブランドを点々としましたが、最終的にはAfternoon teaというブランドで、家具に関する事業に携わりはじめました。また、Afternoon teaは家具だけではなく雑貨も扱っていまして、主にオリジナル商品の開発をやっていました。

その後、松澤さんと会うきっかけになるんですけれども、2010年にAmazonJapanに入社をしました。「今後大型商品もECで売れ始めるだろう」と予見していたAmazon側が、初の家具専任バイヤーとして私を採用しました。Amazonのバイヤーは営業の要素も強く、北海道から沖縄まで直接行脚してAmazonで商売をしてみませんかと声をかけることが多かったです。自分の経験として、ものづくりの現場に直接訪れて生の声をヒアリングすることができたのは貴重な財産です。

そして、2020年にロックウッド株式会社を立ち上げました。ECでの販売や運営を行なっています。また、これまでの知見を活かして、Eコマースのコンサルティングもやらせていただいております。さらに、メーカー様同士のマッチングをお手伝いするということもやっています。

Afternoon tea 「感度の良い売り場づくり」

松澤:Afternoon teaは「感度の良い売り場づくり」として定評があると思いますが、小野さんの雑感として、特徴的なメーカーや素材などはありましたか。

小野さん:私がアフタヌーンティの商材を扱っていたのは10年以上前のことなので、今ほど地球環境への配慮が重視されていませんでした。ただ、その中では手作りのものや木工のものは人気でした。そういう意味では、丁寧にものづくりをするというのを、いかにお客さんに紹介していくかというのはコンセプトとしてあったと思います。

取り扱いの商品選定は「商品決定会議」内で、企画した商品のコンセプトや商品の特徴がAfternoon teaブランドに合っているのかを話し合う必要がありました。

松澤:Afternoon tea的なカルチャーフィットができているメーカーや商品が選ばれるという感じですね。

小野さん:やはり、ブランドのイメージカラーやコンセプトがある程度決まっているので、それらをこなしていったみんなの共感を得られたものが最終的に店舗に入っていきます。ある意味、商品的には決まったラインに乗せていく必要はありました。

松澤:店舗に出すという点では、ブランドとして統一感を出すことは重要だと思います。メーカー様も店舗に出すというところまで意識してものづくりをしないとなかなか万人に受けていくのは難しいのでは?と思います。

小野さんもたくさんの商品を見てきたと思いますが、その中で伸びがよかったと感じるメーカーや商品はありますか。

小野さん:記憶を辿ると例えば、観葉植物です。観葉植物はその当時まだ店頭であまり販売していないものだったんですけど、Afternoon teaのロゴが入ったマグカップに多肉植物を入れて販売するという企画をやりました。今ではそんなに珍しくはないですが、当時としては面白い取り組みでした。ものを作っていくプロセスはメーカーさんの知恵をいただきながら一緒にやっていきました。

松澤:直接、店舗に置くという点では、注意するべきところもありますね。

小野さん:リアル店舗では、商品を作る上で棚の幅や奥行きにも考慮する必要があります。サイズ感に合わせて、カラーバリエーションを3色にするのか10色にするのかが変わってきます。また、季節ごとに商品を入れ替える棚には何を置くかも考えていきました。ショップのマーチャナイザーの方と相談しながら僕たちバイヤーは、そこに合わせた商品をはめ込んでいくイメージです。


「伝統」と「トレンド」を両立させる柔軟性

松澤:リアルなショップとECの場合で、商品の並び方や選ばれ方は全く異なりますね。これまで売れにくかった家具が徐々にECで売れ行きが向上していった点について小野さんはどのように感じますか?

小野さん:私がAmazonでバイヤーになったのは10年以上前の2010年です。当時はAmazonに商品を出店をしてもらうメーカーさんを増やす営業の仕事をしていました。まだECでの販売が浸透しておらず、塩を撒かれる勢いで断られたことも多い時代でした。

ただ、徐々に世の中も変化していると思います。また、家具業界ではリアルショップの売り上げが芳しくないことから必然的にECに興味を持つ方が増えてきたのではないでしょうか。

昨今のデータによれば、この業界のEC化率は、2020年で25%を占めています。家具市場自体が1.5兆円ぐらいあると言われているんですけれども、そのうちの四分の一はECの売り上げであると言われています。10年前は十数%だったので数値から見てもECで商品を販売する人が増えていることが分かります。また、コロナがECの普及率を追い上げているという見方もできます。それでも、飲食関連やドラッグストア関連に比べたら少ない方なのですが。

松澤:ECで商品を扱うにあたり家具に限らず、物流効率について考えるのは肝だと思いますが、その辺の話を背景を含めて伺ってもよろしいですか。

小野さん:はい。家具は、商品の規模が大きいので、運賃や倉庫保管料など、物流費用について考えることはとても重要になってきます。少し細かい話にはなるんですが、運送屋さんが規定する荷物の大きさについて意識してものづくりをすると効率化が図れます。あくまで一例ですが、ある規定の大きさが160cmまでで区切られているとして、完成した家具が162cmだと「惜しい」と思ってもどうしようもありません。商品を作る前に寸法に気を配っておくことは物流効率を上げる上で重要な要素なんじゃないかなと思います。

松澤:Amazonの同じカテゴリーで仕事していた際に「モダン仏壇」という商品を手かげていらっしゃいましたね。当時は仏壇といえば、大きいものが主流でしたが、そういったものが路面店で売れなくなってきました。そこでオンラインに置き換えられてきたときに「モダン仏壇」が発表されたんですよね。この商品の出現も物流効率の話と共通点が見られますね。

小野さん:物流費ももちろんそうなんですけど、暮らし方も変わってきているように思います。今でも地方は家が大きいですから従来の仏壇のかたちでもいいかもしれませんが、都会暮らしの人々は、床置きのものですと置く場所がありませんので、他のかたちを求める気持ちも生まれるはずです。

例えば、仏壇だったら棚の上に置くタイプや壁に取り付けるタイプが流行っています。物流の効率化も大事ですし、こうした暮らしの変化に伴うニーズの変化にも敏感になることは重要だと思います

松澤:仏壇だけではなく様々なメーカーさんが都心部の暮らしを中心にものづくりの形を変化させています。技術や文化的背景は残しつつ、形や大きさ、色など形状を変えることでよりファンが広がることは良いことです。当社が扱っている商品の中でもできる限りそういった商品を選ばせていただいています。

小野さん:日本の伝統的なものはこれからも受け継がれていくべきだと考えています。一方で暮らし方がどんどんと変化しているのも事実だと思います。「伝統」と「トレンド」を両立させる柔軟性がものづくりをするメーカーさんにとって、すごく重要になってくると感じます

工房とお客様をつなぐSNS

松澤:ものづくりメーカーと最終消費者・お客様との間にかなり距離があると感じることがあります。直接話を伺うとすごく良いものを作っているのに、お客様にうまく情報が届いていない現状も見られます。こうした状況に対してどのようなことが必要だと思いますか。

小野さん:現代の良い点としては、もちろん大型百貨店などの大手もありますが、それぞれの工房が直接SNSで情報を発信できることが必須だと思います。

メーカーさんの立地も関係ありません。自社にSNSを上手にやれる人がいるのは強みになりますし、いないのであれば外部のパートナーから知見を得ることもできます。そしてゆくゆく自社の力でSNSの活動をするのも「ちょっとした知識」と「やる気」があればできる時代になってきていると思います。

松澤:南部鉄器のメーカーさんがTwitterでとてもわかりやすい発信の仕方をされています。商品のアイデアや売れ筋商品を飾らない自然な形で発信されています。生活や仕事のワンシーンに商品をうまく溶け込ませている様子は参考になります。

個人的なことですがつい先日もその方のSNSを見ていて、”いいな”と感じ母親に南部鉄器をプレゼントしました。工芸品を渡すことでつながりも新たにできますし、背景を知ってからものを届けられると渡す側と貰った側の両方の暮らしが豊かになりますね。

小野さん:南部鉄器、素敵ですよね。カラフルなものもあったりして、今のトレンドにあった映える写真をよく見かけます。特に感じるんですが、インテリア系は趣向性が高いので洋服とかに近い感覚なんですよ。

そういう意味ではインスタグラムとの親和性が強いのかもしれません。コンバージョンにどこまで繋がるのかっていうのは一言では言えませんが、やはり画像で使用シーンを実際に目にするとかっこいいなと思います。

松澤:工房が直接工法や使い方を発信するのは、その工房の商品をお客様がより身近に感じるという点ですごく重要な役割だと思います。


情報発信をコーディネイトする媒体の可能性

松澤:情報を届ける、新しい形の商社というかメディアというか、横断的にそういった場所やコーディネイトする役割を担う存在が必要なのではないかと考えています。デザイナーさんやプロデューサーさん、動画の見せ方が上手い人と現地の工房をマッチングさせていくような立ち位置、、小野さんはどう思われますか?

小野さん:おっしゃる通りだと思います。メーカーさん、工房を見にいくとどこのメーカーさんに行っても、ものづくりをされている方はみなさんこだわりを持たれていて、実際、とてもよいものを作られています。ただ、これをどのように発信してエンドユーザーであるお客様に届けるのかというのは重要な課題です。

こうやっていうと怒られてしまうかもしれませんが、実は家具業界のデジタルリテラシーはそんなに高い方ではなく、いまだに受発注をFAXで行っているところもあります。だから情報がうまく届かないっていうことがあります。そこは、僕だったり松澤さんが寄り添って手を引っ張れたらいいなと思います。

松澤:こだわっている部分を上手に汲み取ることも重要ですね。元々、私は商材にそんなに詳しくなかったのですが、小野さんとAmazonで一緒に全国巡るなかでものづくりの視点を横で聞いていきました。そうする中で、気づいたことはたくさんありました。

小野さん:旭川の木工家具の工房を訪れた際には、木を触ったときの手触りにこだわっていらっしゃいました。また、形状に関しても、デザインの視点からももちろんなんですけど、実際に使用する際に小さなお子様への配慮から角の丸みの角度を決められたりしていました。

松澤:その場に確か私もいた気がします(笑)職人さんのこだわりもそうなんですけど、経営者の考え方や商品に対しての愛情というのは商品に投影されているような気がします。

そのことから、商品のこだわりを理解するのには、モノ自体をどう見るかっていうのも重要ですが、同時に経営者の理念というのは注目に値するように思います。そして、魅力的な理念を持っている人と付き合っていくと、結果的にいいものができ上がるという経験があります。

小野さん:椅子の職人さんから話を伺ったときには、座椅子の角度のこだわりについてお聞きしました。実際にこだわっている点を聞いてみると、自分が使ったときにも「これだ!」と納得する瞬間があります(笑)そういう点を消費者にも伝えてきたいと思っています。

松澤:やはりそういうポイントを知っているのと知らないのとでは、商品の印象が大きく変わるように思います。だからこそ、僕たちからすると、できるだけ多くそうしたこだわりのある商材を探し出し、ものづくりの背景がより伝わる形を模索して届けていく場所を作っていきたいと考えています。

小野さん:BtoCはいかにエンドユーザーさんとものづくりの現場が近い距離感で結ばれるかということが重要になります。作り手さんのこだわりポイントを、余計な中間要素を入れずに、なるべくダイレクトに届けるためには何が必要かということを考えることが大事だと思います。


リアルな暮らしをイメージした新しいコラボの形

松澤:お酒や和食と工芸品など他の産品同士でのコラボも考えています。家具や雑貨もシーンに合わせるというのはすごく重要なことだと思います。

小野さん:飲料や食事も同じ線上で考えるべきですね。実際の生活ってそうだと思うんですよ。かっこいい家具だけあって生活感が何もないのかっていうと実際そんなわけはなくて、実際はそこで食事をしたりお酒を飲んだりとかしているわけですね。

例えば、一枚板のテーブルにお気に入りの酒器を使ってお気に入りのお酒を飲んで、さらに食べるものも〇〇県産のこだわりのものとを置く。これはダイニングのトータルコーディネイトになると思います。自分の時間を豊かに過ごすために必要な1セットです。そういう意味では、どれかひとつではなくて全てが合わさってリアルな暮らしを実感できるのではないかという風に思います。

松澤:場所や空間を共有したり学びの場を作ったりというのは、すぐにやってみたいと思っています。そういうのを小野さんとやっていきたいですね。

小野さん:ぜひぜひ。最近だと、木を原料の一部にした日本酒とかもあるみたいなんですよ。木のどこかの成分を使っていて、香りは木によってそれぞれ少しずつ異なるそうです。

そういう意味では、いろんな組み合わせがまだまだありそうですね。家具だから食器だからといって限界を決めるのではなくて、異業種間で融合させていくと意外なものがスパイスになって面白いことができるかもしれません

松澤:以前議論したときに、ある余っている素材を、ユーザーさんや新しい商品を提案したい人と、メーカーさんとで商品コンセプト会議を開いて討議するっていう話をしていたじゃないですか。新しい売り方や見せ方としては面白いなと思っています。

小野さん:家具のメーカーさんでは、少なくない端材を廃棄しているところがほとんどです。こういったものの新しい用途をメーカーさんに提案するのは僕たちに求められていることかもしれません。SDGsという概念もありますし、そういう取り組みは世の中に求められていることだと思っているので、そういったことをディスカッションできたらすごくいいなと思っています。

松澤:よし、それはやりましょう!
話は尽きないのですが、そろそろお時間となりました。本日もたくさんの方に聞いていただいてありがとうございました。

小野さん:こちらこそありがとうございました。
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