SDGs視点での工芸への想い【日本工芸コラボトーク Vol.1 山下工芸】
「日本工芸コラボトーク」がインスタライブでスタートしました。記念すべき第 1 回目のゲストは、株式会社山下工芸の代表・山下謙一郎さん。大分県で竹細工を中心とした工芸品を手掛け、日本全国・海外に向けて展開しています。竹細工についての現状を、日本工芸の代表・松澤と語った内容の一部をご紹介します。
日本工芸・松澤(以下、松澤):
今日は、築地から配信しています。山下さんとの関係は、僕の前職(Amazon)時代から関わりがあり、当時から九州の様々な工芸品を紹介していただきました。竹細工をはじめとするものづくりの現場から、SDGsについても積極的な取り組みを行っているのが山下さんです。
山下工芸・山下氏(以下、山下氏):
山下工芸の山下です。大分県別府市に拠点を持ち、九州の工芸品や大分県の竹細工を中心に扱っております。松澤さんとは、ヨーロッパで開催された、ウルトラトレイスレースも一緒に参加した仲です(笑)。
松澤:
九州は、工芸が盛んな地域です。竹細工に関して現状どういった課題がありますか?
山下氏:
コロナ禍でも作家さんたちは頑張っていますよ。環境という視点でみると、竹はすごくフォーカスされています。竹って3年間で成長するんです。多くの木が60年かかるところ、3年間です。特に、外食産業では、環境面から竹製品が注目されていますね。
松澤:
脱プラで天然素材という動きが出てますよね。
山下氏:
プラスチックは特に反対というわけではないです。プラスチックの便利さはある。でも、環境のことを考えると、江戸時代の生活ってSDGsですよね。昔の生活文化を見てみると、竹製品はすごく多いんです。それを今のライフスタイルに合わせて展開していけば、かなり需要があるし、若い方にとっては逆に新鮮な気持ちで受け入れられるのではと考えてます。
松澤:
竹製品が注目される点として、成長が早いことと、長く使えるというところでしょうか。
山下氏:
そうですね。別府の商品とはカテゴリーは違うんですが、例えば同じ竹というところで、今はデスクの天板まで竹で作られているんです。竹が3年で素材として使えるため、持続可能素材として考えられているということです。それとは別に、カーボンニュートラルの動きも出ているなかで、竹は3年で成長してどのくらい二酸化炭素を吸収するのか、ということを研究しています。
松澤:
山下さんは大学でも講義をされることがありますが、どのような話をされるんですか?
山下氏:
環境関係のテーマが多いです。竹というものを環境的に見たときに、放置竹林という問題が非常に大きく、重要と供給がアンバランスになっている現状を伝えています。また、私たちが取り組んでいるSDGsの話をすることもあります。
松澤:
初めてお会いした時から、放置竹林についてはかなり問題視されていて、九州全体の問題であるとおっしゃられていたのが印象的です。
山下氏:
課題解決=社会課題の解決です。ビジネス的な観点とはまた違うので非常に難しい。ビジネス的に考えれば、売れるか売れないか。竹の成長は3年程度で、3年以上の竹は加工しにくいとみなすので、じゃあ、成長しすぎた竹は誰がカットするのか?という問題になってきますね。我々1社だけではどうにもならないので、さまざまな企業や個人の方と協力しながら進めていければと思っています。
松澤:
放置竹林の解決として、どのような取り組みがあるのでしょうか?
山下氏:
炭化にするのがいいと思います。特殊な方法で炭のパウダーを作れるので、それを工芸品に吹きかけたり、食べ物(ロールケーキやカレー)に混ぜて利用しています。いま、立命館アジア太平洋大学の学長とコラボして炭のストローを作っています。
松澤:
最後に今日ご参加の方からのご質問です。「竹細工を最初に買うなら何がおすすめですか?」
山下氏:
それは、お箸ですね!
松澤:
一番気軽に使えますね。何年か1回に買い替えるもので、それが社会課題の一端を担っていると感じてもらえたらいいですね。
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