毎日使うことで、味わいも増す曲げわっぱ
おひつや酒器など、杉のもつ吸湿性や香りが重要な役割をもつ製品は白木にこだわる大館工芸社。
しかし、弁当箱の仕上げには、一部ウレタン塗装を使っています。
「香りにこだわれば、白木がよい。でもメンテナンスが大変です。カビもはえやすくなりますし。」
日常的に使ってもらうためには、扱いやすいことも重要なポイントだということです。だからこそ使う側のことを考えたウレタン塗装のお弁当箱が製造されているのでしょう。
毎日使うことで、味わいも扱いやすさも増す曲げわっぱ。
大館工芸社の製法からは、使いやすくすることで、長くその人の暮らしによりそうものになってほしいという、そんな作り手の思いも感じられます。
Buyer’s Voice 代表・松澤斉之より
300年後のわっぱ業界を考える職人意識
最近の手作り弁当ブーム、天然素材ブームも相まって、特に人気が高まっている大館曲げわっぱ。
大館工芸社の製品も、常に品薄状態で入荷待ちになることも少なくありません。
あるとき「作れば売れるし、もっと生産スピードをあげたら?」と提案したことがあります。すると、返ってきたのは「そう思って、今、杉を植えているんです」という言葉でした。
今作っている曲げわっぱの原料となっているのは、300年前に植えられた秋田杉。300年前の人ががんばって、杉を植えてくれたから、今、わっぱ製品を作ることができているというのです。
原料に限度があるからこそ、商品が作り続けられるような製造をすることも、伝統を残すためには大切です。そんな先を見据えた職人意識を教えてもらった気がしました。
今、植えられた杉が大館曲げわっぱになるのは、300年後になります。その頃に、今の職人さんの思いがこもった曲げわっぱが、次世代の人々の暮らしの一部となるよう、緒にがんばっていきたいと、心から思っています。