森工芸
「ツキイタ」の組み合わせが魅せる
新しい木目の美
「ツキイタ」は、木材を0.2~0.6mmに薄く削った素材のこと。合板の表面や家具の仕上げに使うことで、ナチュラルな木の道具や家具を作る技術です。その魅力は、無垢材などの木材で作るものに比べ手に入れやすい家具ができるというだけではありません。軽い板にツキイタを貼ることで、軽量で扱い安い道具を作ることができます。
さらに、もう一つの利点は長く使っても割れや歪みができないこと。木材のわれやっ歪みの原因となるのは木の含水率です。どんなに加工しても天然木を含水率0%にすることはできません。さらに、中心部と外側で含水率が異なれば木が歪み、割れの原因となります。これを解決するのが薄く削って乾燥させること。水分量は均一になり、歪みや割れは極限まで防止できるのです。
このツキイタを70年にわたり作り続けているのが「森工芸」です。さまざまな天然木を買付、その木目が最も美しくでるようにスライスし、合板や家具の表面に貼る。この技術を積み重ね、磨き上げるうちに、木によって異なる色味や削る方向で変わる木目の表情を組み合わせ、新たな木目の美しさを表現する技術を見出しました。
木目と光との共演が
日々使えるアートな木の道具に
木を薄く削り、染め、乾かし、組み合わせて、貼る。言葉にするとその工程はとてもシンプルです。ですが、一つ一つの作業は、イメージする木目になる方向で木を削る、ムラなく染める、違和感なく組み合わせ、隙間なく貼る、など繊細な技術を必要とする工程が続いています。
その中でも森工芸が注目したのは「組み合わせる」技。木目を考えながらツキイタを組み合わせることで、ストライプや矢羽、サイコロ、網代、市松などの伝統模様のほか、アラビアのモザイク模様にも似た木象嵌も開発。木目でアート作品のような模様を描きだしました。
さらに、そこに光を加えたのが森工芸の特徴。光があたると色目が変わる木目の特徴を活かして、木目と光の共演が楽しめる道具を作り出したのです。
最近では海外へも進出。パリの展示会ではナチュラルでアートな新しい木の道具が多くの来訪者の心を捉えました。木に親しみ、木とともに生きてきた日本人の暮らしに、新たな木製品の彩りを添える森工芸のアイテム。今だからこそ楽しみたい、木のある毎日を演出してくれます。
Buyer's Voice 代表・松澤斉之より
藍に目を惹かれ、思わず手に取ったトレイ
森工芸との出会いは生活の道具を展示する展示会だったと記憶している。さまざまな道具が並ぶ会場で、鮮やかで深みのある藍色のトレイが目にとびこんできて、思わず手に取った。おもてなしやパーティーシーンで、このトレイを見た人同士が交わす会話が聴こえてくるような、そんな気がした。
さまざまな色に染められたツキイタの中でも、藍は森工芸がある徳島県で伝統的に作られているものだということも教えてもらった。「木」と「藍」。日本を代表する2つの素材が出会い、日本の、そして森工芸のアイデンティティを作っているのだなと感じた。
建材などの素材として使われることが多かった「ツキイタ」を使って、暮らしの道具を作っている点もいいなと思う。暮らしの中に息づく技術が、新しく暮らしを彩る技術になるのは、工芸が受け継がれていくための一つの強みになると感じている。しかも、木を薄く削ることで、1つの木材と同じ雰囲気を持つ道具がたくさんできるというメリットもある。「資源を大切に使う」というSDGsの観点からも注目したいメーカーだ。
暮らしを彩る木製トレイRays Tray5分41秒(動画制作:森工芸。了承済転載しています。)