江戸木目込人形
東京
江戸木目込人形は、東京の伝統工芸です。雛人形や五月人形として節目を祝う品として知られていますが、今日では招き猫やだるま、動物をかたどったものなど、暮らしの中に置きやすい小さなオブジェも多く作られています。手のひらに収まるような大きさと、裂地の色や柄が生み出す豊かな表情が持ち味です。
起源は江戸時代中期の京都・上賀茂神社にあると伝えられています。祭事の道具づくりに用いた柳の残り材で人形を彫り、衣裳の端切れを溝へ押し込んだことが始まりとされています。「木目込み」という名は、布地を細い溝へ隙間なく「きめこむ」ことに由来します。
制作では、桐の粉に正麩糊を混ぜた「桐塑(とうそ)」などで素地をつくり、布を押し込むための筋彫りを施します。糊をつけた裂地をヘラで一本一本の溝へ入れていくため、衣裳は表面に重ねるのではなく、かたちにぴたりと沿うものになります。
布の選び方、丸みや姿勢のつくり方によって、同じ技法でも印象は大きく変わります。
江戸木目込人形はやや細面で、目鼻立ちのはっきりとした顔立ちが特徴とされています。こうした違いが生まれた背景には、江戸という都市の気風があるのかもしれません。
節目の贈りものとして、あるいは新築祝いや開店祝い、海外への土産として。飾る場所を選ばない大きさと、時代を経てもうつろわない品のよさが、渡す場面を選びません。願いを託す意味を持ちながら、日々のインテリアとして自然になじむことも、この工芸の持つ静かな強さだと思っています。
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