佐賀県の伝統工芸品 肥前びーどろのグラスやアクセサリーの特徴,値段をご紹介
九州、佐賀県の伝統工芸品として知られているのが「肥前びーどろ」です。吹きガラスの柔らかい曲線やハンドメイドの温かみが人気ですが、その歴史や特徴はどのようなところなのでしょうか。
今回は、肥前びーどろについて徹底解説します!
目次
九州地方 佐賀県の伝統工芸品|肥前とはどこ?
「肥前びーどろ」の名前にある「肥前」は藩制時代の名称です。現在は、どのあたりにあったのでしょうか。肥前という土地から、「肥前びーどろ」をひもといてみましょう。
肥前はどこ?|肥前国について
肥前とは、かつて九州にあった旧国名で、現在の佐賀県と壱岐・対馬を除く長崎県が含まれていました。佐賀藩とも呼ばれますが、鍋島氏が地域一帯を治めていたことから、鍋島藩と呼ばれることもあります。
幕末には、困窮する財政の立て直しのため、藩主鍋島直正による改革が行われ、製鉄など西洋の技術を取り入れた産業振興や軍事技術の研究などが行われました。その力は「薩長土肥」という言葉にも表され、大隈重信や江藤新平などの人材が明治政府で活躍しました。
九州の「佐賀のガラス」とは
直正の産業振興の中で生まれたのがガラス製造でした。佐賀藩のガラス製造技術は非常に高く、佐賀ガラスとして知られるようになります。
けれど、佐賀ガラスの製法を継承した人材は多くありませんでした。現在では「肥前びーどろ」としてガラス製品を製造している「副島硝子」だけが、江戸時代から続く佐賀ガラスの技術を受け継いでいます。
肥前びーどろの特徴
肥前びーどろの特徴は長い竿に巻き取ったガラスに息を吹き込む「宙吹き」と呼ばれる吹きガラス製法で作られていることです。型を使わずさまざまな形を作るのは至難の業。それでも、100年以上受け継がれる技術である2本のガラス竿を使う「ジャッパン吹き」など、独自に編み出された技で、複雑な形のガラス器も作っています。
幕末から続く肥前びーどろの歴史と虹色に輝くグラスの魅力
幕末に始まった肥前びーどろには、どのような歴史があるのでしょうか。受け継いだ歴史の中から生まれた現在の肥前びーどろの魅力についても解説します。
肥前びーどろの歴史|佐賀藩の研究所が始まり
肥前びーどろの歴史は佐賀藩10代藩主の鍋島直正に始まります。当時財政難に陥っていた佐賀藩を立て直すこと、そして西洋の技術に触れ、技術の高さに驚いたことから、直正は製鉄や蒸気機関などの実験を行う「精錬方」を設置しました。
精錬方とは今でいうところの「理化学研究所」。藩を強くするために、大砲製造などの軍事製品の製造技術向上を目的に、西洋技術を学び、さらに高めるための研究が行われました。
研究や実験には、ビーカーやフラスコなどのガラス製品も必要になります。そのため、精錬方内にはガラス製造工場も作られました。ここで培われた技術は、次第にランプや食器の製造にも活用されるようになり、さらに技が磨かれていきます。
明治期になると、精錬方の運営は藩から民間会社へ移ります。精錬方から生まれたガラス工場は3社。それぞれ当時の暮らしに不可欠なランプのホヤ製造を中心に暮らしの道具を作るようになりました。
しかし、大量生産のガラスやプラスチック製品に押され、ガラス製造会社は次々に廃業。佐賀のガラスづくりは途絶える寸前でしたが、唯一残った副島硝子が「時代に合ったものを作ろう」と新たな商品開発に挑戦。「肥前びーどろ」として、佐賀のガラス製造技術を今に伝えています。
肥前びーどろの魅力
肥前びーどろの魅力はハンドメイドの素朴な味わいと鮮やかな色合い。一つひとつ少しずつ表情が異なるデザインは、110年以上受け継がれた技術だからこそ作り出せるものです。同じ商品でも手にしたものが世界に一つのガラスになる、手仕事ならではの特徴もあります。
さらに、ガラス表面が滑らかで艶やかなことも魅力の一つ。ガラスに空気以外のものが触れないように作る技術は手にしっとりと吸い付くような表面を生み出し、カラフルな色ガラスの発色をより鮮やかに見せてくれます。
ジャッパン吹きって何?肥前びーどろの制作過程
多くの特徴がある「肥前びーどろ」ですが。その製法の大きな特徴に「ジャッパン吹き」と呼ばれる製造方法があります。日本では唯一、肥前びーどろだけに伝わる製法です。
ジャッパン吹きとは、金属の竿ではなく、2本のガラスの竿を使って製品を作る方法です。この製法で作ることで、細い注ぎ口を持った「かんびん」などの複雑な形状の製品を作ることも可能になりました。
ジャッパン吹きの製法は大きく6つに分かれています。
1 ガラス竿にガラスの原料を取る
まず、ガラスの竿に溶けたガラスの原料を巻き取ります。「玉取り」と言われる工程で、宙吹きの準備段階です。
2 形を滑らかに整える
次に、丸いボウルのような道具に巻き取ったガラスを当て、でこぼこな表面を滑らかに整えます。「リン掛け」と呼ばれる工程です。
3 宙吹きで成形する
ガラスが丸く成型できたら、息を吹き入れて形を作っていきます。
4 板に当てて成型する
ある程度の大きさが整ったら、板に当てつつ息を吹き込んでいきます。底の部分と取っ手になる部分が成形できます。
5 2本のガラス竿で口を付ける
ガラスの竿をもう一本用意し、成形したガラス器に口を付けます。これがジャッパン吹きの最も大きな特徴です。2本のガラス竿を操り、なめらかな口の曲線を作るには、10年以上の修行が必要と言われています。
6 不要なガラスを切り落とす
最後に口元の不要なガラスを切り落とします。まだ柔らかいガラスはハサミで切ることができます。これでガラスのかんびんが出来上がります。
肥前びーどろを代表する虹色グラスやアクセサリーと価格の例
肥前びーどろの技術で作られる代表的な商品と主な価格をご紹介します。
「肥前びーどろと言えばコレ」と言われるのがカラフルな色ガラスのグラデーションが美しい虹色シリーズです。透明なガラスに赤、黄色、青、紫、水色の色ガラス粒をまとわせて息を吹き込みます。すると、色ガラスも一緒に伸びていき、色が混じって幻想的なグラデーションを作るのです。色ガラスの付き方は商品によって異なるので、同じ色になるものは1つとしてありません。
使い勝手のいいタンブラー3,630円、ビールの泡立ちを良くするビアグラス3,630円、大きな氷もスッキリ入るロックグラス3,630円などがあります。
最近肥前びーどろの製品として人気を呼んでいるのがガラスと金属を組み合わせたアクセサリー「TERASU」シリーズです。「真空蒸着」という技術で作られた物。異なる素材を密着させるには高い技術と繊細な温度調整が要求されます。その甲斐あって、肥前びーどろのアクセサリーは表情豊かなきらめきが魅力。どこにもない宝石のような輝きで装いのアクセントになってくれます。
値段はペンダントで6,600円~。リングやイヤリングなども揃っています。
日本工芸堂バイヤーおすすめの肥前びーどろをご紹介
ここからは、日本工芸堂のバイヤーがおすすめの肥前びーどろをご紹介します。
日常使いにもギフトにもピッタリ!「虹色しずく型」 3,630円
虹色シリーズの中でも人気が高い「しずく型」は、飲み口が少しすぼまった、独特のスタイルがかわいいグラスです。淡い5つの色ガラスが混ざり合い、テーブルにカラフルな色を落とすのは見ていて楽しい気持ちになります。
表面にゆるやかなでこぼこが残るように仕上げることで、光の反射が複雑になり、輝きが増す仕掛けも。ギフトに使う方も少なくありません。
口がすぼまっているので、ワインやリキュールなど香りを楽しみたいものを入れると、豊かな香りを深く味わえるのも魅力の一つ。アイスクリームやゼリーなど冷たいデザートを入れたり、ちょっとした副菜を入れるのにも使えるサイズ感もポイントです。
キュートな縄文模様のロングセラー「縄文ロックグラス」4,620円
肥前びーどろの名前が全国に知られるきっかけになったのが「縄文ラインシリーズ」です。点と点を線で結んだようなユニークな模様がグラスに並んだデザインは、キュートで素朴な、ハンドメイドならではの魅力を伝えてくれます。
この模様はガラス表面に描かれたものではなく、溶けた色ガラスを透明なガラスに巻きつけ、溶着させることで作っているもの。手書きのような温かみがありながら、決してその模様が消えることがないのもうれしいですね。
ロックグラスは口径8cm×高さ8.5cmと小ぶりなサイズなのも特徴の一つ。持ちやすく、洗いやすいので、毎日使う日常のガラス器になってくれます。飲み物だけでなく、夏のそうめんやお蕎麦と共に使うつゆ入れやデザートカップとしても使えます。
柔らかい曲線がワインの香りをキープ「銀彩トールワイン」 7,700円
素朴なデザインが多い肥前びーどろの中でも、上品で高級感も感じさせてくれるのが銀箔を表面に施したワイングラスです。ガラスに銀箔を貼った後、表面をさらにガラスでコーティング。銀の輝きが酸化してくすむことはありません。
なめらかなグラスの曲線は宙吹きで作られる肥前びーどろならでは。ワインの香りを口元で広げ、より豊かに感じさせてくれます。口にあたる柔らかいガラスの感触も、ワインをスムーズに味わわせてくれます。
まとめ
佐賀で生まれ、育まれてきた「肥前びーどろ」。今では唯一、副島硝子だけがその技術を受け継いでいますが、ジャッパン吹きなどの技術はそのままに、虹色シリーズや縄文ラインシリーズなど、今の暮らしに合ったテイストの商品を次々に生み出しています。
日常使いにぴったりのお値段も肥前びーどろの魅力の一つ。いつもの飲み物をより美味しく味わわせてくれる器として、使うことで気持ちをアゲてくれるアイテムとして、ぜひご愛用いただきたい伝統工芸品です。