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記事: 【伝統工芸の旅】越前1500年の工芸、職人の美と技

【伝統工芸の旅】越前1500年の工芸、職人の美と技
#伝統工芸の旅

【伝統工芸の旅】越前1500年の工芸、職人の美と技

日本各地に息づく伝統工芸。その土地の風土と人の手が生み出す品々には、地域の歴史と誇りが宿っています。今回の「伝統工芸の旅」の舞台は、福井県の丹南エリア。鯖江市・越前市・越前町を中心に、越前漆器・越前和紙・越前打刃物といった伝統工芸の産地が半径10kmほどの範囲に集積しています。

さらに眼鏡や繊維などの地場産業も根付き、工芸と工業が共存する希有なエリアです。これまで、この地を何度も訪れ、職人の現場に足を運び、作り手たちの声に耳を傾けてきました。

産地で感じたのは、長い歴史に甘んじることなく、今も挑戦と進化を続けるものづくりの姿です。

(写真:全国の紙業界から崇敬を集める紙祖神。日本一複雑とされる屋根が特徴の岡太神社・大瀧神社)


見て・知って・体験する─「RENEW」で繋がるものづくり

丹南エリアでは毎年、「RENEW(リニュー)」という体験型の工房見学イベントが開催されています。私はこのイベントにこれまで3回参加しています。訪れるたびに取引先の工房を改めて訪ね、これまで知らなかった職人の想いや新しい試みに出会える貴重な機会です。

印象的なのは、若い世代の運営スタッフたちが、楽しそうに、そして誇りをもって来場者を迎え、案内している姿です。産地に新しい風が吹いていることを肌で感じます。

また、この広い産業クラスターを効率的に回れるよう、会期中は割安なタクシーが用意されており、気軽に工房を巡れるのもRENEWの魅力のひとつです。職人の息づかいが感じられる現場を、少し足を伸ばして体験してみる価値は大いにあります。



越前漆器─1500年を超える漆の美

少し移動して、うるしの里へ。鯖江市河田地区には漆器工房が集まり、私自身も何度か訪れ、製造工程を見学させていただきました。土直漆器さんや越前漆器株式会社さんといった工房は、いずれも地域全体の進化を象徴する存在です。業務用としての実用性を軸に、長年培われた技術を基盤にしつつ、現代の多様なニーズに応えてきた歴史があります。

たとえば土直漆器は、1500年の伝統を受け継ぎながらも、現代の暮らしに寄り添う新たな漆器の形を探求しています。丈夫さと美しさを両立する高度な塗りの技術に、若手デザイナーや職人たちの新たな発想を加え、タンブラー、マグボトル、スマートフォンケースといった日常に溶け込むアイテムを次々と生み出しています。

一方、越前漆器株式会社は、「暮らしを楽しむ、食卓を楽しむ」をコンセプトに、木製品を中心とした商品展開で現代の食卓に調和する漆器を提供しています。伝統の技に裏打ちされた確かな品質でありながら、生活に溶け込むやさしいデザインが印象的です。

越前漆器の伝統美と現代の暮らしに寄り添う、日本工芸堂の厳選取扱品をぜひご覧ください。

越前漆器の歴史は、継体天皇がまだ皇子だった6世紀に始まると伝わります。壊れた冠の修理を地元の塗師に命じ、その出来栄えに感動した皇子が漆器づくりを奨励したことが、越前漆器の起源とされています。それ以来、越前の地では漆の文化が脈々と受け継がれ、花開いてきました。

これらの漆器の歴史や技法を深く知るなら「うるしの里会館」は最適な場所です。館内では、木地から加飾までの製造工程や歴史資料が展示され、越前漆器の歩みと、職人たちの想いを感じ取ることができます。数々の漆の品々にふれ、手仕事の力強さと繊細さをあらためて実感することができるでしょう。



越前和紙──世界に選ばれる和紙の極み

越前和紙は、日本三大和紙のひとつに数えられ、1500年の歴史を誇ります。その起源は、継体天皇の時代に川上御前が紙漉きを村人に伝えたという伝承にさかのぼります。豊かな水と恵まれた自然環境が、和紙づくりに最適な条件を育んできました。

越前和紙のなかでも「越前生漉奉書」は、緻密な手作業で漉かれる最高級品です。九代目・岩野市兵衛氏の手によるこの和紙は、その均一な厚みと優れた耐久性、保湿性で、ルーヴル美術館の修復用紙に選ばれました。世界の文化財を守る現場で、越前の技が確かな価値を放っているのです。

和紙の美しさと技術を知るなら、越前和紙の里での体験がおすすめです。工房見学や紙漉き体験を通じ、和紙の魅力を身近に感じることができます。

以下、1875年創業の滝製紙所の工房への訪問した際の動画。


越前打刃物──火づくり鍛造、700年の魂

また、車で訪れたのが越前打刃物の産地です。特に職人たちが集う「タケフナイフビレッジ」は、越前打刃物の象徴ともいえる場所で、工房を訪ねると鍛冶場に響く火の音や、鉄を叩く力強い音が印象に残ります。刃物の柄だけを専門に手がける山謙木工所のような工房もあり、それぞれの職人のこだわりが細部にまで息づいていることを感じます。

越前打刃物の職人技が光る、日本工芸堂の厳選取扱品をぜひご覧ください。日々の暮らしに息づく逸品を集めました。

南北朝時代、刀匠・千代鶴国安が越前の地に移り住み、農民のために鎌を鍛えたのが越前打刃物の始まりとされ、以来700年、火づくり鍛造と手仕上げの技を守り続け、日本の暮らしに寄り添う刃物が作られてきました。

今ではその高い技術と品質が評価され、海外からの人気も非常に高く、需要に応えるための取り組みが続けられています。

(写真:自由見学可能なタケフビレッジ 。訪問時に筆者撮影)


結び──技と心が生きる越前の旅

越前の工芸は、過去の栄光にとどまることなく、今を生きる作り手たちの手で新たな価値を生み出し続けています。RENEWのようなイベントを通じて、職人と使い手が直接つながり、ものづくりの未来を共に考える動きも広がっています。

工房の扉を開け、職人の語りに耳を傾け、手から生まれた品を手に取るとき、そこには確かに「技をつなぐ」想いが宿っています。

越前の旅は、工芸の魅力とともに、人の温もりと地域の力強さを感じる時間となるでしょう。ぜひあなたも、越前のものづくりとその心に触れてみてください。


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