記事: 退職・昇進・節目に、なぜ贈り物が必要なのか

退職・昇進・節目に、なぜ贈り物が必要なのか
贈り物が「形式」ではなく「行為」になるとき
私たち日本工芸堂は、日々、個人のお客様や法人のご担当者から、退職祝いや昇進祝い、就任記念、周年の贈り物についてのご相談をいただきます。
「何を贈ればよいでしょうか」その問いの前に、実はもう一つ、必ず立ち上がる問いがあります。「そもそも、なぜ贈る必要があるのでしょうか」という問いです。
退職や昇進、就任、周年といった節目。人生や仕事の中には、「何かが切り替わる瞬間」が幾度となく訪れます。
そのたびに、私たちはなぜ「贈り物」を用意してきたのでしょうか。言葉をかけるだけでもよいはずなのに、あえて形のあるものを選ぶ理由は、どこにあるのでしょう。
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なぜ、節目に贈り物をするのか

「退職祝いはなぜ贈るのか」「昇進祝いは本当に必要なのか」こうした問いは、形式に疑問を持ったときに生まれます。そして多くの場合、その答えは 「昔からの慣習だから」「そういうものだから」と曖昧に処理されがちです。
しかし、節目に贈り物をする行為は、単なる習慣ではなく、人と人との関係を整理し、次へ進むための行為として機能してきました。
日本では古くから、餞(はなむけ)や進物、記念の品といったかたちで、言葉にしきれない想いを物に託してきた歴史があります。贈り物は、関係を曖昧に終わらせないための、ひとつの知恵だったのです。贈り物を選ぶとき、まずはどんな「意味」を届けたいのかを考えることから始めましょう。
例えば、贈る相手や節目となるタイミングから考えてみるのも、一つの方法です。
「いつ、どんな想いを託すのか」という視点で選びたい方には、贈るタイミングに目を向けたギフトのコレクションが、ひとつの手がかりになるかもしれません。
形骸化してしまう贈り物、意味を持つ贈り物
節目の贈り物選びがいつの間にか「ただの作業」になってしまう瞬間があります。
- 相場だけを調べる
- 無難さだけで選ぶ
- 誰にでも同じものを渡す
このとき、贈り物は
「意味を伝える手段」ではなくなってしまいます。
問題は、贈り物そのものではありません。
「なぜ贈るのか」を考えないまま、贈ってしまうことです。
贈り物の相談では、ときに金額や見栄えといった条件が先に共有されることがあります。もちろん、それらは大切な要素です。
ですが、その奥には本来、「どんな場で」「どんな意味を持つ出来事として」その品が手渡されるのかという背景があるはずだと感じることもあります。
実際に、何を贈るかで悩んでいたものの、その先にある出来事や位置づけを整理することで、「なぜ贈るのか」が見え、自然と選び方が定まっていく、そうした流れに立ち会うことも少なくありません。
贈り物がうまくいかなかったと感じられる多くの場面では、品物そのものではなく、意味をどこに置くかに迷いがあったように思います。
この点を考える手がかりとして、贈る理由や背景を「物語」として捉え直す、贈る理由を物語るギフトストーリーなどは、ひとつの参考になるかもしれません。
節目に、なぜ贈り物が必要だったのか
言葉を超えて、関係を区切り、つなぐために
節目には、感情が複雑に重なります。感謝、労い、敬意、寂しさ、そして期待。これらすべてを、短い言葉や定型文だけで伝えきるのは、決して簡単なことではありません。
私たちは、こうした問いに向き合う中で、 あらためて日本における贈り物の成り立ちに立ち返ることがあります。日本では古くから、言葉にしきれない感情を、物に託すという方法が選ばれてきました。
贈り物は感情の代替ではなく、感情を相手に手渡すための「媒介」として存在してきたのです。
退職祝いは、その構造が分かりやすいため、よく語られます。しかし本質的には、昇進、就任、周年の記念品も、同じ意味を持っています。
ある役割を終える。新しい立場へ移る。関係性が変わる。こうした変化を曖昧なまま流さず、一度きちんと区切る。そのための所作として、贈り物がありました。
そして重要なのは、贈り物が「関係を終わらせる」ためのものではないという点です。むしろ、形を変えて関係を残す役割を果たしてきました。
”使うたびに思い出される”、”ふと目にしたときに、過去の時間が立ち上がる”など贈り物は、相手の時間の中に入り込み、言葉以上に長く、記憶をつないでいきます。
私自身のことを少しだけ書くなら。かつて転職という節目を迎えた際、当時お世話になっていたお客様数名から、連名で時計を贈っていただいたことがあります。
その時計は、今も自宅に飾ってあります。ふと目にすると、その時の時間や関係性が思い出され、同時にどこか誇らしい気持ちが静かに立ち上がってきます。贈り物が、出来事そのものだけでなく、その後の時間にも寄り添い続けるものなのだと、 あらためて実感する瞬間です。
「残るもの」を贈るという意志
これからの時間に、どう関わり続けるか
節目の贈り物として、長く使えるもの、手入れしながら付き合えるものが選ばれてきました。それは、出来事を一過性のものにしないためです。時間とともに使われ、変化し、暮らしに馴染んでいく。そうして、節目そのものが、人生の一部として残っていきます。
工芸品が節目の贈り物と相性が良いのは、それが使われることを前提に生まれている道具だからです。特別な日だけの記念品ではなく、日常の中で役割を持ち続ける存在。
素材や技法、背景にある時間の積み重ねは、「これから先も続く時間」と自然に重なります。 だからこそ工芸品は、これからの時間に寄り添う贈り物として選ばれてきました。
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また、節目の贈り物は、 相手のためだけのものではありません。 贈る側が、自分の関わり方や時間を振り返る行為でもあります。何を大切にしてきたのか。どんな関係だったのか。贈るという行為は、それを自分の中で整理する時間でもあるのではないでしょうか。
日々、贈り物に向き合う中で、贈り物がうまく機能していると感じる場面ほど、その背景にある意志は、多くを語らず伝わっているように思います。
節目に贈り物をするかどうかは、人それぞれです。ただ、贈ると決めたとき、その行為がどんな意味を持つのかを、一度立ち止まって考えてみる、その小さな問いかけが、贈り物を、単なる慣習ではないものへと変えてくれるのかもしれません。
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