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記事: 「波佐見焼コーヒーフィルター」の開発秘話。燦セラ山口代表に聞く【工芸イノベーターインタビュー】

「波佐見焼コーヒーフィルター」の開発秘話。燦セラ山口代表に聞く【工芸イノベーターインタビュー】

「波佐見焼コーヒーフィルター」の開発秘話。燦セラ山口代表に聞く【工芸イノベーターインタビュー】

Youtube配信で開催される「工芸イノベーターインタビュー」。今回は、波佐見焼メーカー「燦セラ」の山口代表に製品開発について伺いました。長崎県・波佐見町の株式会社燦セラは、セラミックコーヒーフィルターの開発で知られる企業です。山口代表の熱意から設立され、独自の技術と品質を追求しています。日本工芸・代表の松澤と語った内容の一部をお届けします。

インタビュー動画は以下から(燦セラ・山口社長(左)と日本工芸堂・松澤(@燦セラ工房前にて)


※商品の形状が、動画撮影後に一部変更されました。動画内の商品は形状変更前になります。

 

 

燦セラの歴史について

松澤:今日はお時間をいただきありがとうございます。今回は、波佐見焼の燦セラ山口社長とお話をさせていただき、背景やものづくりのこだわり点といったことを直接お話をいただければ嬉しく思います。まず会社のご紹介から、波佐見焼の中で会社がどういうことを目指して起業したのか等教えていただいてもよろしいでしょうか。

山口さん:30で波佐見焼の陶磁器の一作窯として独立したわけですよ。それを25年間やってきまして、一度閉じたわけですね。それでまた15年ぶりに新商品、新素材を使った空気清浄機の光触媒の開発など色々なことで、新たな素材を使って波佐見焼業界に一石を投じようと事業を始めました。(燦セラの立ち上げ)

松澤:波佐見焼をご自身も作っていらっしゃって会社も経営されていたということで、何十年も波佐見焼に触られてきた中で、多孔質のセラミックに出会ったのはどのくらい前ですか?

山口さん:35年前ですね。

松澤:それはどういう経緯で?

山口さん:液晶テレビのマザーガラス搬送をするためのセラミックフィルターを作っていました。

松澤:メインの仕事は食器をやりながら、そういった新しい事業もやっていたんですね。1回会社は閉じられたということだったのですが、今の燦セラという会社を始められた思いとか、目指してるものについて、おそらく先ほどの話と繋がってくると思うのですが教えていただいてもいいですか?

山口さん:そうですね、新素材のアルミナ鉱石を使ったニューセラミックの開発をしていこうと立ち上げた次第ですね。

松澤:会社のビジョンとし てはどういう目的で立ち上げたのですか?

山口さん:人間が生活する上で、(大事なのは)水と空気ですね。これをやっぱり、美味しい水・美味しい空気を取り入れながら新しい食生活(を送れるよう)に寄与しようということで始めました。

コーヒーフィルターに着想した背景

松澤:その中で、多孔質のセラミックの技術を用いて今はコーヒーフィルターに取り組まれていらっしゃると思うのですが、ここに着想した背景とか、こだわっている点を簡単に教えていただけますか。

山口さん:昨今コーヒーの需要がものすごく増えていまして、日本のみならず東南アジア・欧米・ヨーロッパもすごい勢いで需要が出ているわけです。ろ過するためにはどうしても紙のフィルターをやっぱり使うことになりますから、 普通は約18億人が消費してるんですね。紙ですから、気候変更とかそういうのが全世界で出てきている中で、やはり(使い捨ての紙では環境に良くないので)うちの会社でもそういうSDGsを意識したこのフィルターを作ろうということで開発しました。

松澤:そのベースになる技術は元々ずっとご研究されていて、ちょうどこのコーヒーの需要と社会的な背景があって、こういうフィルターに取り組まれたと。(燦セラを)創業されてる前にだいぶ長く研究時間も持たれたそうですが

山口さん:5年間ずっとやっていましたね

松澤:5年間研究されてそしてやっとという感じですよね。

山口さん:出来上がって3年目ですね。

松澤:最初はこちらこの富士山フィルターですよね。簡単にこちらからご説明を いただけますか。

>こちらのお品について詳しく見る

 

富士山セラミックコーヒーフィルターについて

山口さん:富士山をかたどったもの、富士山といえば日本の代表ですよね。それで作れば面白いんじゃないかということで、着色したわけですが、これもまた業界初なんですね。石に着色するっていうのは未知の世界で、それをやはり着色して焼き付けたんです。

松澤:これすごい大人気で、数もすごい増えて、たぶんどこかで見られ たことがある方もいらっしゃるかもしれないですね。今日お持ちいただいたのはこの2色なんですけど、カラーは10色あります。これが大人気で、二重構造になっているというのが特徴かと思います。

 


コーヒーフィルターEkuboについて

松澤:それでこれ(富士山フィルター)をさらに進化させて新しくトライされていこうとするのがこちらですね。色は何パターンありますか?

山口さん:色は6パターンです。これはもう加飾をするのではなくて、うちの自社で独自に色を練り込んで本焼きして色を出すというような技術を用いています。形状もその特性を生かして作りました。

松澤:Ekuboは(サイズが)2種類、1ドリップと3人前用があって、それぞれの色が6パターンですよね。


製造工程について

松澤:僕も興味があるのはこの作り方で、いろんなこだわり点があると思います。どういう流れで商品を作られているか、配合と練り合わせ、土絞り、整形、仕上げという流れという風に伺っているのですがちょっと詳しく配合のところから教えていただけますか。

山口さん:配合は アルミナ鉱石を2種類、それに対してそのバインダー長石など含めて9品目を配合しています。

松澤:その割合はさすがに企業秘密だと思うんですけど、何度も繰り返し研究された上での特殊な配合ですよね。

山口さん:集大成ですね。アルミナ鉱石は石で被膜がありますから、当然着色っていうのは難しいんですね。色んなバインダーを入れていて、その物質が染まってこんな6種類の色が出たんです。

松澤:面白いですね。ちょっと話を戻すと、アルミナ鉱石はどんな役割を持っているのですか。

山口さん:アルミナ鉱石は、一番は遠赤外線、強く熱を発するというような特性があります。これはゴルフウェアとかで蓄熱効果や、いろんな効果があると言われています。(コーヒーフィルターの場合は豆の旨味を引き出す効果)

松澤:配合についてはステップ1として、次の流れとして練り込みはどんなことをするのですか?

山口さん:練り込みは顔料を水に溶きながら攪拌機でそれぞれの色を徐々に練り上げていきます。

松澤:先ほどの9つの配合したものと練り込んでいく感じですよね。(事前に伺った)お話の中では、研究をやれば色もいろんなバリエーションができるとおっしゃっていましたが、たぶんすごく技術が必要なんだと思います。それで、この練り込みが終わった後は土絞り、これはどんなことを?

山口さん:練り込みは攪拌機でやりますから、どうしても空気が入り込んでしまう、それを少しでも絞り出すんですね。

松澤:圧縮して空気を押し出して成形しやすくするということですね。その次に成形するっていうのはどのように?

山口さん:燦セラの商品はろくろ成形の富士山なんですよ。普通の多孔質は回転をしないでプレス成形が主力になっていて、それをあえて回転をさせながら成形しています。

松澤:それはやはり難しいんですか?

山口さん:ものすごい難しいです。

松澤:そこは何年もかかって実験を繰り返されたと。ろくろ自体が回っていて、でそこに土を入れて内側から金型で押し込んで成形していましたよね。

山口さん:特殊な技術ですね。それによって土も安定しますし、上から下までの 多孔質の穴の口径が均一にできるということが一番特徴ですね。

松澤:その一つ一つの技術の積み上げから特殊なものができてるという認識かと思います。次の流れではどうされるんでしたっけ?

山口さん:一度900℃で12時間焼いてガス抜きをして、それから冷却をして、また15時間の本焼成をします。手間はかかりますけど、それでも品質が安定して色味が出るようになります。

松澤:それが何度も試したうちの研究結果だと思います。少し話を戻りますと、具体的にものを見ながらご説明いただけるとありがたいのですが、(撮影後形状変更のため中略)…ダイヤモンドカット、これはどういうこだわりか教えていただけますか?

 

山口さん:これはやっぱり機能と美しさと、あとはメンテナンスですね。

松澤:繰り返しで言うと、①美しさ、②機能美、そして③使いやすさ、この3点がおすすめの理由だと認識しております。あと色によっては透明性というか、これ画面で映りづらいかもしれませんが目視すると透けて見えていますが。

山口さん:これはシリカという鉱物を入れていて、シリカいうのはガラス質で光を通す特性がありますから、色によってはそういう風に透けて見えています。

松澤:そのシリカが、先ほど言った配合のうちの1つのポイントで、それが透過性を高めていて、特に色の薄いサーモンピンクとイエローは少し光を通す、感じですかね。あとブルーも少し透けています。


他工房との違いについて

松澤:いやこれは非常に人気が出そうです。主にどこが他の産地の製法と違うと言えますか?

山口さん:まず第一に、ろくろ整形です。ほかはやはりプレス整形ですから、整形の段階で生地的に少しバランスが悪くなりやすいです。

松澤:そういう違いが出てくるのを、実際に使い分けて体感してもらうのもいいかもしれないですね。ありがとうございます。

 

使っていただきたいお客様とは

松澤:他にこんなお客様に使っていただきたいとか、こういう風なこと考えて取り組んでるんだっていうようなことはありますか?

山口さん:今から進めていかいとないのが、自然を大事にしなくちゃいけない、CO2削減、SDGsとか。そういう想いのお客様に使っていただきたいです。

松澤:僕もコーヒー大好きですが、コーヒー好きな方ってやはり飲む回数も多いですし、こだわりの自分の好きな豆を楽しみながら、そして自然にも害が少ないのは良いことですね。

山口さん:あとうちのコーヒーフィルターは紙と違って、旨味成分のオイルを抽出するんです。これがまた美味しくて、特徴的ですね。お湯を注いだときに、表面に油が乗りますから、これが一番美味しいんですよ。 紙の場合はみんな取ってしまいますから。

松澤:ここは大きな違いですね。香りが残っているっていうのは、たぶんこだわっていらっしゃる方だったらすぐにわかります。あとは、先ほど特徴の中で3つ目で言われていたメンテナンスの方法についても簡単に教えてもらってもいいですか?

山口さん:メンテは、ろ過した後に水道水で(フィルターの)口の周りをすすいでコーヒーの豆を出してもらって、あとはちょっと強めに水を出して水洗いでジャブジャブーっと。そして最後にコーヒーの粉がついたやつを水を注ぎながらたわしで取ってやると、それだけでいいです。

松澤:ざっくりと言うと、残ったコーヒー豆を水で捨てて、あとはブラシで少しはらうだけでOKですか。焼いたり、特別なメンテナンスとかは全くしなくていいと、これはほかとちょっと違うところかなと思います。メンテが簡単だとお客様にとっては嬉しいことですよね。

山口さん:これでだいたいもう200回ぐらいでも、そのまま水洗いで結構です。もしその後ちょっと出が悪くなったら、10分ぐらい煮沸すればいいです。湧いているところに入れて浸けるものもいいし、最初から浸けておいて沸かすのでもいいですから、究極の簡単です。

 

今後の製品開発について

松澤:会社としては新しい商材、このコーヒーフィルターも新しい商材だと思うんですけど、水と空気と食という観点にこだわって商品作りに取り組んでいらっしゃって、今後その他の商材も作られる予定ですか?

山口さん:こういうフィルターを作っていると残骸が出ますから、それをもう3年も4年もかけてストックしています。それをまた粉砕して、再利用して、それでキャンプとが流行っていますから、焼肉プレートを作成しようと思ってストックしてあるんです。

松澤:これをまた成形して、(焼肉プレートを作って)何が良いんでしたっけ?

山口さん:熱に対する遠赤外線が出て、お肉なんかが焦げないんですよね。より深くふわっと焼けるんです。温度が高くなくても、時間も短縮しておいしいお肉を焼ける。

松澤:じゃあこれでコーヒー飲みながら焼肉食べて、燦セラさんのものを全部使うと面白いかもしれないですね。なんかそういった感じで使っていただけるファンの方が増えていったらいいと思います。考えてみると、波佐見焼きをずっとやられていらっしゃって、ベースの技術があったからできたと思うんですけど、そのベースの技術は試験場の方ともいろいろと試行錯誤しながら作ってきたということですよね。これは波佐見焼の進化版と言えるのではないでしょうか。

山口さん:波佐見焼の進化版ですよ!400年に1回の商品です。今まではもうオールドセラミックですけど、うちはもうニューセラですからそこの大きな違いですね。

松澤:波佐見焼の技術のベースはあるけど、使う素材によってできるものが違って、進化したものができたっていう感じのイメージですかね。

山口さん:もうガラッと頭を変えてますから。今までは漏れないものを作っていましたけど、今は漏らすものを素材を作っていますから全く概念が違いますよ。

松澤:ありがとうございます。色々ご一緒できるの楽しみにしていますので、引き続きよろしくお願いします。

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