堤淺吉漆店
堤淺吉漆店は、1909年(明治42年)に創業し、京都の間之町通りに店を構える漆の精製・販売を行う老舗です。創業者・堤淺吉が掲げた「漆を一滴も無駄にしない」という理念を大切に守り、漆に対する感謝の心を持ちながら伝統技術を継承し続けています。同社は、漆樹液(荒味漆)の仕入れから生漆の精製、塗漆の調合、調色までを一貫して自社で行い、伝統的な工法と最新技術を融合させた漆製品を提供しています。
その中でも、独自に開発した高分散精製工法を活用し、国宝や文化財の修復に広く使われている漆「光琳(こうりん)」をはじめ、現代のニーズに応じた製品開発を進めています。また、伝統を重んじつつ、異業種メーカーとの共同開発にも積極的に取り組み、漆工材料や道具を現代の消費者にとって使いやすい形で提供しています。
さらに、2024年4月には、新たな文化拠点「Und.」をオープンし、漆を身近に感じられる金継ぎキットや拭き漆キットなどの商品を販売するほか、漆のサーフボードや自転車の塗装を手掛ける工房も併設しています。3階には若手漆芸職人のための工房やワークショップを開催するスタジオがあり、漆芸や工芸を学びたい人々のための「うるしの学校」も2024年6月より開講しています。これにより、伝統工芸を次世代に伝えると同時に、新たな表現の場を提供しています。
堤淺吉漆店は、2020年には「三井ゴールデン匠賞」を受賞し、その活動は国内外で高く評価されています。創業から100年以上の歴史を持つ老舗ながら、漆の未来を見据えた革新と挑戦を続けており、今後も漆文化を広め、次世代へと繋げていくことが期待されています。