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記事: 秋田県の伝統工芸品 樺細工はなぜ桜の樹皮を使うのか

秋田県の伝統工芸品 樺細工はなぜ桜の樹皮を使うのか
#工芸を知る

秋田県の伝統工芸品 樺細工はなぜ桜の樹皮を使うのか

秋田県の伝統工芸品である樺細工に焦点を当て、なぜ桜の樹皮が使われるのかみていきます。樺細工は、秋田県の自然豊かな環境と豊富な樺の木資源に育まれてきました。

その中でも、桜の樹皮は特に優れた素材として選ばれています。桜の樹皮は柔らかくて加工しやすいだけでなく、美しい色合いや独特の質感を持っており、樺細工の作品に独特の風合いを与えています。

また、桜は日本人にとって特別な意味を持つ木であり、その美しい花や豊かなイメージは日本の文化や心象風景に深く根付いています。そのため、樺細工に桜の樹皮が使用されることで、作品に日本の美意識や伝統的な価値観を表現することができるのです。

さらに、桜の樹皮は耐久性があり、湿気や湯気にも強いため、茶筒や小物入れなどの日常品として重宝されています。そのため、桜の樹皮を使った樺細工製品は、美しさだけでなく実用性も兼ね備えており、多くの人々に愛されています。このブログでは樺細工の基本的な姿を見つめ直してみます。

 

秋田県の伝統工芸品 樺細工

樺細工とは、山桜の樹皮を木地の表面に貼り付けた木工品のことで、現在は秋田県でのみ生産されています。樹皮特有の光沢を活かした渋い色合いが特徴的。「型もの」「木地もの」「たたみもの」の3種類の技法があり、それぞれ茶筒やお盆、ペンダントなど、製品によって使い分けられます。

18世紀末に武士の藤村彦六が、県北部の阿仁地方に技法を伝えたのが始まりとされています。伝えられた技術をもとに、下級武士の副業として樺細工の生産が開始され、地場産業として根付いていきました。

樺細工に用いられる木は10種類以上あり、用途によって使い分けられます。職人は一つひとつ手作業で作るので、同じ作品は1つとしてなく、すべて1点ものです。

 

樺細工は丈夫?特徴は?


樺細工は、原料であるヤマザクラの性質上、防湿、防乾、そして堅牢性に優れている工芸品です。ヤマザクラの樹皮特有の光沢と渋みのある色合い、樹皮の模様をそのまま活用した技法を活かして、茶筒や小物入れ、またストラップや髪留めなどのアクセサリーに樺細工は使われています。

あめ皮、ちらし皮、ひび皮など12種類にも分けられた山桜の皮を、用途によって使い分ける技法が特徴です。木地の表面に木の皮を貼ったものや、木の皮を何層にも貼り重ね、彫刻して磨き上げたものなど、木の皮が持つ独特の味わいが活かされる技法が多く存在しています。

自然由来である木の皮には一つとして同じものはないため、全ての商品が一品ものになるという点は樺細工の大きな魅力でしょう。世界でひとつだけの自然美を、自分の手元で味わうことができます。

経年変化も美しく、大切に使いこむほどに山桜の樹皮がもつ色素の赤みが増して、次第に飴色(あめいろ)になります。




 

樺細工にはなぜ桜の樹皮が使われているのか


「樺」という文字が入っていることから白樺を連想されることがあるかもしれませんが、樺細工には、桜の樹皮が使われています。ヤマザクラの樹皮を用いた木工品は、日本国内で秋田県にのみ伝承されています。

さて、樺細工にはなぜ桜の樹皮が使われているのでしょうか。

それは、歴史的に「樺」という字がヤマザクラを表していたことと深くつながりがあります。日本古典作品においていくつか事例をご紹介します。

古くは、万葉集に寄せている山部赤人の長歌でヤマザクラのことを「かには(迦仁波)」と表現していた例です。これがのちに「かば(樺)」に転化したと言われています。また、その他にも平安時代中期に紫式部が著した「源氏物語 幻」の一節にもヤマザクラを樺とした使用例があります。

「外の花は、一重散りて、八重桜 咲く花盛り過ぎて、樺桜は開け、……」

上記は引用文になります。

ただ、わかりやすくするために「桜皮細工」という表記をしているところもあります。

樺細工に使われているヤマザクラは、樹齢30年以上のもので、現在は秋田を含む東北6県の山々から樹皮を採取しています。野生種であるヤマザクラは、生命力が強く、一つのものを長く使うことができます。

また、ヤマザクラの樹皮独特の光沢は、大切に使いこむほどに飴色(あめいろ)に深まり、樺細工の魅力を引き立てています。

 

桜の皮細工で作られる茶筒のご紹介

樺細工といえば、茶筒。そう思われる方もいらっしゃるでしょう。

桜の樹皮を使った筒は、蓋と容器がぴったりと合わさり、どんな環境でも密閉性を保ってくれます。技法を活かしながら、現代の暮らしに馴染むものを作ろう、と生み出されたのがこの茶筒です。樺細工職人が長年培ってきた「型物」の製法が為せる技でしょう。

蓋を開けると、内側にも樺細工が施されています。
内側にまで広がる樺細工ならではの光沢からは、日本古来の「奥ゆかしさ」を感じられます。


樺細工には、さまざまな柄があり、そのどれも職人の意匠が込められています。



>樺細工 茶筒 | 総皮茶筒 | 散花 中長

濃い樺桜の皮に、異なる桜の皮で舞い散る桜の模様をあしらってあります。



>樺細工 茶筒 | 総皮茶筒 | 貝入散花 大

濃い樺桜の皮に、異なる桜の皮で舞い散る桜の模様をあしらってあります。さらに、貝を使った螺鈿細工も加え、上質感を増した逸品です。



>樺細工 茶筒 | 総皮茶筒 | 霜降 大

手に入りにくくなった樺桜の皮がもつ、自然な質感や表情をそのまま活かされています。

 

 

樺細工を扱う店舗のご紹介

江戸時代から下級武士の副収入源となっていた樺細工。その歴史は18世紀末からだと言われており、現在、製造されている工房でも100年以上の歴史のあるところも少なくありません。


角館 樺細工 製造販売元 八柳

1876年(明治9年)の創業以来、自然豊かな秋田県仙北市角館の地で、代々、樺細工の製造販売業を営んでいる工房です。
代々受け継がれてきたミリ単位の高い技術で、使いやすさと美しさを兼ね備えた暮らしの道具を通じてほっとするような自然のぬくもりをお届けしています。


藤木伝四郎商店

1851年(嘉永4年)に創業以来、初代伝四郎の「品を磨き、信頼を磨く」という精神を引き継いで、現在に至っている工房です。樺細工の産地を守るため、また、先人が築き発展させてきた伝統を次の世代へ受け渡すために日々取り組まれています。伝統的な茶筒や小物入れ以外にも、時計やステーショナリーなどさまざまな商品が展開されています。


冨岡商店

冨岡商店は、国指定伝統的工芸品である樺細工(桜皮細工)の製造元として、世界に類を見ない一属一種ともいうべきクラフトの価値を国内は元より広く世界に発信し、「一生に一つ」使い続ける豊かさを通じて、人々の潤いある生活に貢献できる企業を目指しています。

 

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