コンテンツへスキップ

カート

カートが空です

記事: 日本のタオル産地と特徴|今治・泉州・おぼろの違いと選び方

#工芸を知る

日本のタオル産地と特徴|今治・泉州・おぼろの違いと選び方

日本のタオルは、単なる日用品ではなく、世界でも稀な技術と歴史を持つ「暮らしの工芸品」です。19世紀欧州発のテリー織りが日本に伝わって以降、泉州・今治・津(おぼろ)といった産地ごとに独自の技術が磨かれてきました。

日本工芸堂でも今治タオルを実際に取り扱う中で、その吸水性や仕上げの違い、産地ごとの思想の差を日々体感しています。本稿では、日本のタオルの歩みと主要産地の特色、そして用途による選び分けまでを、事実に基づいて丁寧に解説します。

 

<目次>


タオルの起源と日本での日常化

タオルは、私たちの暮らしに当たり前に存在する道具ですが、その歴史をたどると興味深い文化の変遷が見えてきます。現代のタオルの特徴である「ループ(パイル)」構造は、19世紀の欧州で機械化されたテリー織りに由来します。ループが糸の表面に多く取り込まれることで、優れた吸水性と柔らかな肌触りが生まれ、近代の衛生観念の高まりとともに生活布として世界に広まりました。

日本にタオルが本格的に伝わったのは明治期の1872年頃で、当時は英国製の綿タオルが輸入されました。これらは柔らかく暖かい布として珍重され、高級品として一部の人々に用いられていた記録が残っています。

それまでの日本では、綿や麻の平織り布である「手ぬぐい」が長く使われ、身体や生活のさまざまな用途に用いられてきました。手ぬぐいは軽く乾きやすい布として暮らしに根づいていましたが、厚みと吸水性に優れたタオルが入ってくることで、日常の布としての選択肢が広がりました。

このように、タオルは海外からの技術と日本の暮らしの中で受容・変容しながら、やがて国産化され、各産地の技術と文化の中で独自の発展を遂げていきました。次に代表的な国産タオルの歩みと産地の特色までを追っていきます。

 

産地別の風合い比較

日本の主なタオル産地を比較すると、それぞれの伝統や技術が風合いに反映されています。

産地 歴史 代表的特徴 イメージする使い方
泉州 明治後期より 後晒し製法による吸水性 家用・業務用
今治 明治後期より 軟水×先晒し、品質基準 暮らし用・ギフト
津(おぼろ) 大正期頃 細糸で軽量・速乾 旅行・スポーツ


同じ綿糸から生まれるタオルでも、水・仕上げ・産地の思想によって性格は大きく異なります。

 

泉州タオル ― 日本最初のタオル産地

大阪府泉州地域(現在の泉佐野市周辺)は、明治20年代(1887年頃)に日本で初めてタオルの織物生産に成功した産地として知られています。綿織物が盛んであったこの地で、織物業者がタオル製造の機械化に挑み、日本で最初のタオルが生まれました。

泉州タオルの特徴は「後晒し(あとざらし)」と呼ばれる仕上げ工程です。この工程では、織り上げた後に漂白・水洗いを行い、糊や不純物を丁寧に除去します。この「後晒し」製法により、綿本来の吸水性が最大限に引き出され、清潔感のある肌触りに仕上がります。

泉州タオルのおすすめシーン

・毎日の家用タオルとして:朝晩の洗顔、手拭き、バスタオルとして
・業務用としても活躍:飲食店やホテルでも選ばれる実用性
吸水性の高さと使い始めからの実用性が魅力です。


今治タオル ― 世界に知られる品質基準

愛媛県今治市は、日本最大規模のタオル産地として知られています。今治での本格的なタオルづくりは1894年(明治27年)に始まり、地元の伏流水や温暖な気候が繊細でしなやかな風合いを育んできました。

今治タオルは「先晒し」製法を採用し、織る前に糸を十分に処理して吸水性と柔らかさを引き出します。また、「今治タオルブランド」という独自の品質認証制度により、吸水性や耐久性などが数値化され、一定の基準をクリアした製品だけが認証ラベルを付けられます(例:5秒以内にタオル片が水に沈む基準など)。

今治タオルのおすすめシーン

・日常のバスタオル・フェイスタオル:肌触り重視の暮らし用
・赤ちゃん・敏感肌の方にも安心:やわらかさと安全性
・ギフト・贈答用:上質な時間を贈る一枚として
柔らかさと高い吸水性を求める「心地よい暮らし」向きです。


おぼろタオル ― 軽さという個性

三重県津市周辺でも、独自のタオル文化が育まれてきました。中でも「おぼろタオル」は、細い糸を活かした軽やかな風合いと高い速乾性が特徴です。一般的なタオルより薄手で軽く、絞りやすく乾きやすいという点で、使い勝手の良さが評価されています。

おぼろタオルのおすすめシーン

・温泉・スポーツ・アウトドア用:軽さと速乾性が活きる
・旅行や携帯タオルとして:かさばらず持ち運びやすい
・汗拭き・バスルーム用:乾きやすさが日常ストレスを減らす
「軽さと速乾性」を活かした使い方が魅力です。

 

てぬぐいとタオル ― 機能・素材の違いと使い分け

日本の暮らしには古くから「手ぬぐい」があります。手ぬぐいは 平織りの薄い綿布 で、経糸と緯糸を交互に織るシンプルで軽やかな生地です。

綿素材そのものの吸水性を持ちながら、薄手で乾きやすいため、拭いたあとすぐに乾燥し、清潔に保ちやすい点が特徴です。生地の端をあえて縫わず切りっぱなしにすることで、さらに早く乾く工夫もされています。

一方、タオルは 糸をループ状に織ったパイル織り によって作られます。パイル構造は糸が立体的に並ぶため、表面積が大きくなり吸水性が高いことが大きな特徴です。

こうした素材と織りの違いによって、手ぬぐいとタオルは得意なシーンが異なります。

手ぬぐいが向いているシーン

  • ハンカチや首に巻く布として持ち歩くとき
  • キッチンや掃除など、乾きやすさと多用途性を活かしたいとき
  • バッグに入れて邪魔にならないコンパクトさを優先するとき

タオルが向いているシーン

  • 入浴後やスポーツ後など、たっぷりの水分をしっかり吸い取りたいとき
  • バスタオルやフェイスタオルとして体全体を拭くとき
  • 綿の柔らかさと厚みを活かして快適さを求めるとき



このように、素材と織り方の違いがそれぞれの得意な使い方を生み出しており、用途に応じて使い分けることで、より快適に暮らしの布として活用できます。


まとめ ― 日常を支える静かな工芸

タオルは、派手さはなくとも、使うたびに技術と産地の個性を感じさせる「静かな工芸品」です。吸水性ややわらかさ、軽さといった性能は、使われ続ける中で磨かれてきた問いかけでもあります。

明治に輸入されたタオルから国産生産が始まり、泉州・今治・津という三大産地がそれぞれの色を育ててきた今、日本のタオルは暮らしの中で確かな価値を発揮し続けています。