記事: 結婚式の引き出物とは?歴史・意味・マナーを徹底解説

結婚式の引き出物とは?歴史・意味・マナーを徹底解説
引き出物とは?結婚式で贈られる理由
人生の晴れ舞台である結婚式。これまでお世話になってきた人たちを招待してふたりの未来を祝福してもらうかけがえのない時間。一般的に招待された人たちは、ご祝儀として金品や品物を贈ります。
引き出物とは、そうしたご祝儀の御礼として、迎える側である新郎新婦が用意するギフトのことを指します。メインの引き出物と引き菓子、縁起物を合わせて2~3品贈ることが一般的です。
引き出物は、結婚式当日に来場してくれたゲストに渡すものですが「内祝い」はもう少し幅広い方に贈ることができます。隣近所に住んでいる方や会社の知り合いなどこれまでお世話になった人たちに贈り、新郎新婦の未来を祝福してもらいます。
引き出物も内祝いも、感謝の気持ちと幸せのおすそ分けを形にして、ふたりの門出を祝福してもらおうという文化です。
引き出物の歴史をたどる
引き出物の起源は平安時代にさかのぼります。その時代において、貴族は頻繁に宴を開いていました。当時、宴を主催した側の人は客人へのもてなしの一環として馬を贈る文化がありました。
宴の会場に、庭から馬を連れ出して宴に招いた客人に贈ることが“庭に馬を引き出す”行為と呼ばれ、それが『引き出物』の語源とされます。「良好な関係をこれからも続けたい」という迎える側の想いが贈り物というかたちで表されています。
室町時代以降、馬に代えて金品を贈る習慣が出現し、これが『馬代(うましろ)』『代馬(だいば)』として語られるようになったという伝承が残っています。戦国時代になると、武運長久を祈るべく武具が贈られることもありました。
時代の変化に合わせて贈り物の形態も変わっていきますが、「あなたとの関係を続けたい」という想いは昔も今も変わりません。
江戸時代になると、「勝男武士(かつおぶし)」と読むことができる鰹節が選ばれるようになりました。鰹節には鰹の背側の身を使う「雄節」と腹側を使う「雌節」があります。雄節と雌節が対になるという象徴性から、夫婦の絆や円満の象徴として引き出物に用いられることがあります。
時代は下り、明治のころには貴族や武士などの区別がなくなり、結婚式の文化が多くの人の間で広まっていきました。披露宴の形式が整い、引き出物として贈る品々も多様化していきました。
かつては披露宴料理そのものが引き出物の一部とされていましたが、やがて記念品を贈るようになりました。その想いの根底にあるのは平安時代から変わらずこれまで自分たちを支えてくれた人たちへの感謝の気持ちでした。
現代の結婚式における引き出物
結婚式には、新郎側・新婦側それぞれで結婚式に参列してほしいと思う人を呼ぶことになります。学生時代の友人や会社の上司、同僚など招待客の顔ぶれは、年齢・性別さまざまになるかもしれません。相手に合わせた贈り物を選ぶことで、新郎新婦の心配りが伝わるでしょう。
- 親族や上司:高めに値段設定で、高級感のある品
- 友人や同僚:気軽に使える実用品やおしゃれで気の利いた品
- 遠方からのゲスト:持ち帰りやすさを重視した品
一例として
引き出物を贈り分ける場合には、贈り物の違いによって招待客同士で気を遣わずに済ませるために、「同じテーブルには同じ個数を配置する」「梱包物や大きさはなるべくそろえる」などといった配慮を加えるとよいでしょう。
人気のアイテム
現代の結婚式で特に人気がある引き出物には次のようなものがあります。
②山形鋳物 箸置き | 箸置き 心(ハート) | 3個セット | 鋳心ノ工房
③瀬戸焼 小皿 | 取皿2枚セット | さわやか | m.m.d.
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引き出物選びの留意事項
内祝いとの違い:
- 引き出物=結婚式当日に参列した方への贈り物
- 内祝い=お祝いをいただいた方へのお返し(結婚式の有無に関わらない)
地域差:
- 関東=2~3品を組み合わせて贈るのが主流
- 関西=「一品返し」が多く見られる
金額相場:
- ご祝儀・ご祝儀額や宴会費の3分の1~半分程度を引き出物代として考えるケースが多く見られます。
- 親族や上司=高めに、友人や同僚=実用的に、と関係性で調整
避けたい品物:
・刃物=「縁を切る」を連想
・櫛=「苦・死」を連想
これらを一つの参考にご判断してみてはいかがでしょうか。最終的にはご自身の思い入れのある品を選定されることをお勧めいたします。
マナーと選び方のポイント
おさえておくと安心できる引き出物にまつわるマナーです。
金額の相場
引き出物の金額は、ご祝儀に対して半分の額、または3分の1の額が目安とされています。例えば、ご祝儀が3万円なら1万円程度。相手との関係性や地域の習慣によっても違いがあるため、あらかじめ両家で確認しておくとよいでしょう。
メインの引き出物と引き菓子、縁起物を合わせて2~3品贈ることが一般的ですが、価格の内訳としては、メインの引き出物がご祝儀の10%程度の価格、引き菓子と縁起物がそれぞれ1,000円代であることが多いです。
- 30,000円のご祝儀の場合:メインの引き出物・3,000円前後、引き菓子と縁起物それぞれ1,000円代で合計5,000円前後
- 50,000円のご祝儀の場合:メインの引き出物・5,000円前後、引き菓子と縁起物それぞれ1,000円代で7,000円前後
- ゲストによってご祝儀の額が違うので、頂くご祝儀の額をだいたい予測して、それに合わせた金額の引き出物を用意することになります。
熨斗(のし)や包装の基本ルール
心を込めて選んだ品を丁寧に包むことでさらに記憶に残る贈り物になるでしょう。引き出物を包むのし紙の熨斗と水引についてのポイントです。
熨斗とは、贈り物贈り物の右上にそっと添えられた飾りのこと。のしという言葉は「熨斗鮑(のしあわび)」が由来です。アワビは海の恵み=命の象徴として、古来より長寿や繁栄を願う縁起物でした。贈答品に添えることで「心を尽くした贈り物」であることを表現していました。現在では、のし紙の右上に細長い飾り模様が印刷されています。
関連記事:熨斗(のし)とは?意味と由来・表書きの基本マナー|贈り物に込める想いと工芸のかたち
水引とは、紙を結んで留めるための装飾的な紐のことで、結ぶ形や色それぞれに込められた意味があります。結婚式でおすすめするのは「結び切り」の水引です。色はお祝いごとで用いられる紅白がよいでしょう。
結び切りとは、固く結ばれ解けない結び方のため、「一度きりであってほしいこと」に用います。結婚祝い、快気祝いなどが代表例です。特に結婚祝いでは、紅白10本の水引を使用するなど、より格式高く整えることもあります。
同じく慶事の水引に「蝶結び」がありますが、こちらは簡単にほどけてしまうことから結婚式ではあまり選ばれることはありません。何度も結びなおせることから「繰り返してよいこと」に使われます。出産、進学、開店祝いなど、何度あっても喜ばしいお祝いに最適です。
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熨斗紙に書く表書き
水引を中心として上の部分には「寿」「御礼」の文字を、下部には送り主である新郎新婦の名前を添えましょう。
- 両家の姓を書く
- ふたりの姓の下にそれぞれ名前を書く
- 名前のみ
の3パターンがあり、「両家の姓を書く」のがもっとも一般的です。
まとめ:歴史に学び、現代にふさわしい引き出物を選ぶ
平安時代からつづく引き出物文化。馬や縁起物を贈っていた時代から、少しずつ形を変えながら感謝を伝える大切な習慣として受け継がれてきました。大切なのは品物そのもの以上に、そこに込める心配りです。
熨斗や水引などのしきたりにもひとつひとつ意味があり、背景を知り、実践することで贈り物に想いが込められていきます。これまでのふたりを支えてくれた人たちとの縁がこれからも続いていくように、すてきな引き出物を選んでみてはいかがでしょうか。