【職人・工房を訪ねて】山と森の恵みを暮らしの道具に。大館工芸社

【職人・工房を訪ねて】山と森の恵みを暮らしの道具に。大館工芸社

日本工芸堂では、取り扱い商品を決める際、バイヤーが工芸品を作っている職人に話を聞きに行くことにしています。どんな思いをもって、どんな作品を届けようとしているのか。それにバイヤーが共感したものを取り扱うことにしているのです。

バイヤーが職人や工房を訪ねたとき、聞いた話や商品を作る様子などをご紹介するのが「職人・工房を訪ねて」。

今回は、曲げわっぱのお弁当箱で人気の大館曲げわっぱの工房「大館工芸社」。丸太の買い付けから仕上げまで一貫して行っている職人の想いを伺いました。

 

 

曲げわっぱ制作体験もできる工房

大館工芸社があるのは大館市。大舘は秋田犬の里としても有名。なんと、渋谷のシンボルになっているハチ公像のハチ公のふるさともここ大館市だそうです。大舘駅でも秋田犬の像が出迎えてくれました。

大館工芸社は大館駅から車で10分ほどの奥羽本線沿いにあります。工房とショップを兼ねたショールームがあります。赤い屋根の建物に近づくとほのかに木の香りが漂いました。

工房の一角には曲げわっぱの制作体験ができるハンディクラフトスタジオも。パン皿、七寸盆、丸弁当箱から1つ選べば、わっぱに板をはめ込むなどの体験ができるとあって、観光客にも人気だそうです。

大館工芸社の工房には伝統的工芸品産業振興協会が認定した伝統工芸士5人を含む26人の職人が、日々曲げわっぱを製作しています。伝統的な弁当箱やお盆のほかにも、マグカップやそばちょこ、などこれまでにない曲げわっぱ製品も。その時代に寄りそう製品づくりを心掛けている、そんな姿勢がショールームに並ぶオリジナル商品からも見えてきました。

 

継続的に商品を作り、次にバトンを渡す

大館工芸社の曲げわっぱは白木、漆、ウレタン塗装の3種類を生産しています。曲げわっぱのもっとも大きな特徴である香りや調湿機能。そこにこだわるのであれば白木で作るのが一番。それでもウレタン塗装のお弁当箱を作る理由も聞いてみました。

「大館曲げわっぱの原材料は秋田杉。杉の香りが一番です。香りを重視すると白木のお弁当箱がいいことはわかっています。でも、白木はカビが生えやすいというデメリットもあります。メンテナンスに手間がかかるんです。それでは、今の暮らしには受け入れられません。コーティングすれば曲げわっぱの特徴は失われます。でも、お手入れが簡単になって使いやすくなります。曲げわっぱのある暮らしにまずは触れてもらって、『次は白木を使ってみよう』となれば、いいと思うんです」。

そう語るのは大館工芸社の三ツ倉社長。「伝統工芸を継承することは、継続的に商品を作り、次にバトンを渡すことだと思っています。そのために、誠実なものづくりをモットーにしているんです」。

大館曲げわっぱの技術を未来に残すために取り組んでいるのは今の暮らしにあった製品づくり。その成果はグッドデザイン賞を20商品以上が受賞していることにも表れています。さらに、曲げわっぱの修理にも対応。曲げわっぱは大切に使えば長く使い続けられることをその活動で伝えようとしているのです。

 

過去の人の想いを未来へ受け継ぐ植林活動

SNSで写真映えすると話題になり、人気を呼んだ曲げわっぱ。一時は手に入りにくい状態が続きました。「生産スピードをあげれば、もっと売れるのではないか?」というと、三ツ倉社長は「そう思って、杉の植林をしているんです」と教えてくれました。実は2012年、国は資源保護を目的に天然杉の伐採を禁止。それまで大館曲げわっぱの原料として使われていた天然の秋田杉が使えなくなりました。曲げわっぱの危機。そのとき、大館工芸社では山林を取得。天然秋田杉を同様の材質をもつ杉を植林することで、未来に渡って曲げわっぱを作り続けられる体制を整えたというのです。

「1本の秋田杉の丸太のすべてが曲げわっぱにできるわけではありません。外側と中心部分の50%程度は使えません。使える部分は樹齢にして100~120年くらいの場所。樹齢100年でようやく材料になりえるのです」と三ツ倉社長は言います。

「今、私たちが曲げわっぱを作ることができるのは、150年以上前の人たちが杉を植えてくれたから。大館曲げわっぱの伝統を守り、後世に受け継ぐためには、150年後の職人たちが安心して曲げわっぱを作れるよう、原材料を供給できる体制を作っておくべきだと思っています」。

伝統工芸を世界に発信して、後世に受け継いでほしい。その思いは日本工芸堂も大館工芸社も同じ。ですが、作り続けるためには、消費者の存在だけでなく、原材料も重要。生産する側ならではの気づきに驚かされました。

緑に覆われた秋田杉の山。そこにある木々が曲げわっぱになるころ、私たちはこの世にはいないかもしれません。その時代にも大館曲げわっぱが、伝統工芸がこの世で愛されているよう、頑張っていかないといけないと決意を新たにした訪問でした。

 

<ちょっと足をのばして>
秋田犬と大館の魅力の触れる
大館市観光交流施設「秋田犬の里」

大館駅の近くに2019年にオープンしたのが「秋田犬の里」。秋田犬について学べる施設です。館内には秋田犬と触れ合えるコーナーもあり、犬好きにはたまらない場所になっています。
お土産コーナーには曲げわっぱも。秋田犬と曲げわっぱ。二つの大館名物から、大館市の魅力が体感できます。

大館市観光交流施設「秋田犬の里」
秋田県大館市御成町1丁目13-1
0186-59-4649
開館時間:9:00~17:00(秋田犬展示室は9:30~16:15(犬の休憩時間あり))
https://akitainunosato.jp/

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