【佐賀県】
長く愛される木に想いを込め
長く使ってもらえるモノに
家具産地の技を活かし
暮らしに役立つものを
ミマツ工芸があるのは佐賀県神埼市。家具の町とて知られる福岡県大川市と、一級河川筑後川を挟んで対岸にある、大川と共に家具で栄えてきた地域です。
大川の家具メーカーの依頼を受け、テーブルの脚などろくろで加工する指物づくりから始まったミマツ工芸。分業制で製品を作る家具製造の工程の中で、加飾を主に手掛けてきたメーカーでした。
食器棚や婚礼家具など多くの家具部品の発注を受け、木材を加工する当時の業界は、値段が勝負の世界。必死で作業する日々の中、現在代表を務める實松さんは「この部品はどこの誰のところに行っているんだろう」と疑問を持っていたといいます。
「部品を作る自分たちはお客様に接する機会はない。僕の作っているものはお客様に本当に喜んでもらえているんだろうか。心から喜んでもらえるものには、どんなものがあるんだろうか」
そんな疑問の中、毎年刻まれる年輪の美しさを活かした「年輪丸太時計」を開発しました。地元佐賀の杉を使ったこの時計。節があったり木目に色ムラがあるなど、木材として美しくはないけれどそれぞれに個性が感じられる時計でした。
オーダーを受けてから一つずつ作られる商品は多くの人の心を掴み、地元だけでなく全国に広まっていきました。「想いがこもっているととても喜んでいただきました。買いに来てくれるお客様の顔が見えたと感じたときが、今のNenrinシリーズの始まりになりました」
世界に日本を伝えるために
地元の杉を使うモノづくり
Nenrinが評価を得たことでミマツ工芸では木を使った雑貨を作り始めます。携帯関連の小物やトレイなど世界共通のアイテムにはニーズがあるのではないかと世界へ飛び出しました。
パリの展示会でバイヤーから言われたのは「日本には木はないの?」という言葉でした。当時使っていた素材はアメリカの木。「安定して美しい木目が取れる素材として選んでいた木だけれど、世界に日本の魅力を伝えるためにはこれではいけない、と気づかされました」
丁度そのころ、TOYOTA自動車から年輪時計の注文が入ります。自社の「年輪経営」の理念を伝えるものとしてコンセプトに共感しても注文でした。「TOYOTAさんは社会貢献の一つとして森林保全に取り組んでおり、自分たちが携わった山の木を使いたいというオーダーでした」。
送られた杉の美しさに感激した實松さんは「日本の魅力を伝えるため、地元の山を見直そう」と佐賀の山を歩き素材を探すことにしました。
土地柄なかなか思うような素材に合えない中、佐賀県太良町の森林組合長と出会います。200年後を見据えた山の管理、林業を守る活動。その想いに共感し、求める質の杉の条件を伝え、計画的な伐採を依頼して新たなモノづくりが始まりました。
「そうやって手元に届く木だから、一本の杉を余すことなく使いたい。想いのこもった木の道具を愛用してほしい」。實松さんのそんな想いが、木目で描かれる伝統文様に込められています。
Buyer's Voice 代表・松澤斉之より
贈り手の想いを伝えるモノに
こだわり続ける心意気に惚れる
シンプルなデザイン。木目の美しさ。素材の良さをこれほどストレートに活かした時計は見たことがない。
そう思ったのがミマツ工芸さんにお声かけしたきっかけでした。一本の杉から吉祥文様を作るというこだわりにも、年輪に時計というアイテムを重ねたアイデアにも、すべてに意味があり、その想いが「贈り物」をより喜ばれるものにしていることに感動を覚えました。
一つひとつ色も模様も異なる素材。それを組み合わせて思うものを作り上げるには、木を目利きする力、思う紋様を描き出す技術力。一筋縄ではいかない創意工夫があったのではないかと思います。
それでも、そんな苦労を軽やかに語り「感謝の気持ちを込めて、暮らしに添うものを作りたい」と笑顔で話す實松さん。貪欲に自分の作るものを「どう見ているか」を知り、次のモノづくりに活かそうとする心意気に「惚れた」。その一言に尽きるのかもしれません。
>ko NENRIN/NENRIN CLOCK 175/NENRIN CLOCK 245