五月人形の飾り方と手入れの方法
目次
― 直射日光、エアコンの風が当たらない場所
― 兜飾り
― 大将飾り
五月人形は、端午の節句を祝うために飾られる伝統的な人形で、男の子の健やかな成長と幸福を願う意味が込められています。この記事では、五月人形の正しい飾り方やお手入れの方法について詳しく解説します。五月人形を飾る際には、配置や意味に気を配りつつ、家族の幸せと子供の健やかな成長を祈る心を大切にしていきましょう。
いつからいつまで飾る?
端午の節句は5日5日です。3月20日の春分の日から4月中旬ごろに飾りはじめるのがよいとされています。5月中旬ごろまでには片付けるとよいです。下旬になると、梅雨の時期にさしかかり湿気が高くなってしまいます。五月人形は、湿気が強くなってしまうと傷んでしまうので注意が必要です。
どこに飾る?
五月人形は、家の中で最も格式が高いとされている和室の「床の間」(とこのま)に飾られるのが昔ながらの風習ですが、アパートやマンションには「床の間」がないご家庭も少なくありません。飾る場所に迷ったら、以下の2つのポイントをおさえて決めてみてください。
1. 子どもや家族の目に入る場所
マンションやアパートに住んでいて「床の間」がない場合は、「子どもの成長を見守ってもらえる場所」としてリビングや子ども部屋などの家族の目にとまる場所に飾りましょう。
2.直射日光、エアコンの風が当たらない場所
五月人形は、直射日光あるいはエアコンの風があたると、色あせたり変色が起きやすくなります。また、湿気に弱くカビが生えやすいため、台所や浴室などの水回りや玄関は避けましょう。手入れがしやすく風通しのよい場所に飾ることが大切です。
どうやって飾る?
鎧飾り
① 佩楯(はいたて)を飾る
五月人形が入っている箱から鎧や兜、付属品を取り出します。鎧櫃(よろいびつ)の中心と佩楯の中心を合わせ、佩楯の帯の両端を鎧櫃のふたの間に挟みこみ、しっかりと蓋をします。佩楯は、あとから調整することが難しいため、中心を意識し、左右対称になるようにきちんと整えてください。
② 銅を飾る
鎧を支える芯木(しんぎ)を通した胴を鎧櫃の上に置きます。胴は、鎧櫃のやや手前に置き、鎧のバランスや腕の曲がり具合などに注意してください。
③ 面頬(めんぽう)を置く
鎧のお顔の部分である面頬を芯木の上部に掛けます。兜を置いたときのことを考慮し、眉庇(まびさし)と面頬との間に隙間ができないように紐を調節してください。
④ 兜を飾る
兜の受け口に鍬形(くわがた)を差し込みます。竜頭(りゅうず)がある場合は、鍬形台の間に差し込みます。
※鍬形の左右は間違えやすいので注意してください。
鍬形を差し込んだ兜を芯木の上部に乗せ、前後左右の傾きを整えてください。
⑤ 脛当(すねあて)と毛沓(けぐつ)を置く
靴にあたる部分の毛沓に脛当を差し込み、鎧櫃の前に並べます。
⑥ 弓太刀を飾る
向かって左に弓を、右に太刀を置いてください。太刀は、柄を下向きにし、留める紐がついている場合は結んでください。少し離れた場所から全体のバランスを確認したら鎧飾りの飾りつけは完了です。
兜飾り
兜飾りは、その名の通り兜のみを飾る五月人形です。シンプルで品の良い兜飾りは、コンパクトに飾ることができます。
① 兜櫃(かぶとひつ)に芯木を置く
兜櫃の中から、兜、鍬形、袱紗(ふくさ)、芯木などを取り出します。芯木は中心よりやや手前においてください。
② 袱紗(ふくさ)をかける
袱紗を芯木にかけてください。絵柄や家紋がある袱紗は、絵柄が正面になるようにします。
③ 兜に鍬形(くわがた)を差し込む
鍬形を兜の差し込み口に差します。竜頭がある場合は、鍬形台の間に差し込みます。鍬形の左右は、間違えやすいため、注意してください。
④ 兜を袱紗の上に飾る
兜を袱紗の上に乗せます。左右の傾きや全体のバランスを整えます。
⑤ 弓太刀を飾る
弓太刀を置く場合は、向かって左に弓、右に太刀を置いてください。刀は柄が下向きになるように飾ってください。最後に離れたところから全体のバランスを確認して飾りつけは完了です。
大将飾り
大将飾りは、かわいい子ども大将などのお人形を中心に飾る五月人形です。近年では、お人形やデザインもさまざまな種類がありますので、人気の五月人形です。また、飾りつけも比較的簡単なお人形が多いのも特徴の一つです。
① お人形を飾る
お人形本体を飾ります。兜の鍬形(くわがた)を受け口に差し込みます。鍬形の左右を間違えないように注意してください。
大将の手に持たせる道具がある場合は、適切に持たせてください。持ち道具は、采配(さいはい)や軍配(ぐんばい)の場合もあります。
② 付属品を飾る
台や屏風、弓太刀などがある場合はバランスよく飾ってください。
どうやって保管する?
保管するときには、いくつか注意してもらいたいポイントがあります。
①手袋を着用する
片付けをする際にまず注意したいのは、人形を素手で触らないということです.
手の皮脂や指紋が人形につかないように手袋をはめてから作業するようにしましょう。触ってしまった場合は、乾いた柔らかい布で拭き取ります。
②ホコリを払う
ホコリが付着したままで保管してしまうと、その部分がシミや虫食いの原因になるおそれがあります。毛ばたき等で全体のホコリを落とし、細かい箇所は筆や綿棒などで優しく払って汚れを落としましょう。金具部分は、乾いた布を用いてよく拭います。
③包み紙で包んで、収納箱に入れる
パーツごとに柔らかい布や紙で包み、ビニール袋に入れてひとつずつ密閉します。
人形に直接触れる紙には、色移りの心配がない白い紙を使用します。パーツを包むことができたら、箱の中にしまいます。ぎゅうぎゅう詰めにならないよう適度な隙間をつくり、その隙間には新聞紙などを詰め込みます。詰め込みすぎると、型くずれの原因になるため注意が必要です。
※防虫剤の使用には注意が必要
五月人形の鎧兜には防虫剤の使用はおすすめしません。使用する防虫剤によってはガスが発生し、メッキ等が浮いてきてしまうことがあります。またプラスチック製のものの場合は溶けてしまうこともあります。
近年の人形は、糊自体に防腐剤を使用していることもあり、虫がやってくる可能性は以前に比べてぐんと減っています。逆に異なる種類の薬剤を使用することによって化学反応を起こし、人形の劣化を早めてしまうこともあります。購入されたお店で確認するとよいでしょう。
どこにしまう?
五月人形は、直射日光と湿気を避ける必要があります。直接、日光に当たってしまうと色あせや変色の原因になります。また湿気は放っておくとカビが発生し、こちらも変色やシミの原因になります。
できるだけ湿気の少ない場所で保管するようにしましょう。押し入れやクローゼットの上段などがおすすめです。湿気は下にたまるので、部屋の上部に保管します。
また、過度な乾燥にも注意が必要です。エアコンの近くには保管しないようにしましょう。
時間に余裕があればぜひ実践してほしいのが、秋の虫干しです。10月ごろのよく晴れた日に風を当ててあげることで、湿気を取り除くことができます。ずっと箱の中にしまっておくと、どうしても湿気がこもりやすくなります。そのひと手間で人形の長持ちにもつながり、長い間綺麗な状態を保てるでしょう。
男の子の成長を見守ってくれる五月人形。正しい飾り方とお手入れの方法を用いて、毎年、五月人形とともに端午の節句を迎えましょう。
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