【日本工芸コラボトークvol.8】京都の伝統文化発信・プロデュースの新しい取り組み

【日本工芸コラボトークvol.8】京都の伝統文化発信・プロデュースの新しい取り組み

インスタライブで開催される「日本工芸コラボトーク」。第8回は、Whole Love Kyoto溝部様、他2名(ナガサワ様、エガワ様)をゲストにお迎えしました。“Made in Kyoto”にこだわるデザイン・プロデュース集団と、日本工芸・代表の松澤と語った内容の一部をお届けします。


京都の伝統文化発信・プロデュースの新しい取り組み

溝部氏:私たちWhole Love Kyotoは、京都を拠点として、活動をしています。実店舗も京都左京区茶山の近くにあります。京都伝統文化イノベーション研究センター(KYOTO T5)という団体と共に、京都の伝統文化に携わる職人さんにリサーチさせていただき、得た発見を元に、職人さんのわざと知恵と技術を、現代の生活に取り入れ、身につけられるようなファッションとしての提案をさせていただいています。

日本工芸・松澤(以下、松澤):大きなくくりでいうと、何屋さんになるんですか?。メーカーになるのか、デザインプロデュース会社というくくりになるんですか。それともその両方でしょうか。

溝部氏:両方ですね。ファッションアイテムとしてのデザインの展開とともに空間のデザインもさせていただくこともあります。また、職人さん側から声をかけていただいてプロジェクトに取り組んだりもするので、結構、何にも囚われず、幅広く活動しています。


松澤:京都の様々な工房に赴いて、いろんな意見を聞かれているというのは、真摯な姿を心がけていらっしゃるのかなという印象でした。そういった点は何かこだわりを持たれて活動をされているんですか。

溝部氏:京都伝統文化イノベーション研究センター(KYOTO T5)のメンバーさんが毎月、京都の伝統文化に携わる職人さんのところへいって、お話を聞いてくださっています。私たちWhole Love Kyotoは、彼らが持ち帰ってくれた情報をもとに、デザイン、制作、販売をしているっていう流れになります。

Whole Love Kyotoと京都伝統文化イノベーション研究センター(KYOTO T5)

松澤:京都伝統文化イノベーション研究センター(KYOTO T5)は、どういう組織体もしくは構造になっているですか。
ボランティアチームなのか、なんらかのプロジェクトメンバーなのか、NPOなのか、それとも御社の社員なのか、、、

溝部氏:京都伝統文化イノベーション研究センター(KYOTO T5)は、京都芸術大学の中にある京都伝統文化イノベーション研究センターの略称でして、メンバーも京都芸術大学の教授と学生さんです。歴史学科や空間質デザイン学科の学生さんがいらっしゃったりとか、さまざまな学科の学生が参加しているプロジェクトです。

松澤:なるほど。サークル的な感じなんですか。

ナガサワさん:主な活動団体としては、研究センターです。京都の中で起こった出来事やニーズや問題だったりを京都伝統文化イノベーション研究センターが母体として、もしくは、受け皿となって、教授陣に学生を交えてそれらをどういうかたちで昇華させていくのか、っているのを考える場所になっていますね。

松澤:その団体に参加されている方達はみな、京都の方なんですか。

ナガサワさん:いえ、そんなこともなく。。実際に私自身は福岡出身なんです。

エガワさん:他にも神奈川からの学生さんが参加している人もいますね。京都に来たからには、京都についてもっと知りたい、といった意欲を持って参加してくれています。

「京都100年かるた」作成秘話

松澤:京都100年カルタについての取り組みが面白いなと思いました。

溝部氏:このプロジェクトは、京都の河原町を中心にして、碁盤の目周辺のお店さんの中でも100年以上の歴史があるところに私たちが歩いて訪ねてお話を聞いたことを元に絵札と読札の製作をしました。絵札は、表が歴史絵や模様で、裏側にはお店の店構えと年号が書いてあります。

*後日京都展示会場(パスザバトン・祇園)に伺った際の動画


松澤:それ(手にとったカルタ)ちょっと読んでもらってもいいですか?

ナガサワさん:「ほこりあるほうきぶら下げ200余年看板いらず内藤商店」

松澤:そこ、行ったことあるかもしれないです!ところで、実際にそれを作るのにもインタビューしてまわったという感じですか。

溝部氏:そうですね。まずは、京都の新しい地図を作るというところから始まったんですけど、そこから50軒お店を巡って話を聞いて実際にカルタを作るまでは3年半かかりました。

松澤:そんなにかかったんですね。ちなみに、どういう内容をインタビューしていくんですか。

溝部氏:皆さん、歴史の先生のように京都のあらゆることを教えてくださるんですけど、私たちは特に「100年続いた秘訣」について重点的に、聞きました。

松澤:100年以上続いている企業は、特に京都に多いという印象があります。共通するポイントは何かありましたか。

溝部氏:何かを継承するときにはデータで残すことがあると思うんですけど、店主さん、それぞれ継がれてきた方で、共通していたのは、目で見て盗んで、そして話を聞いて覚えるっていうことをずっと続けているということですね。あとは、「変えないために変わる。」というふうにおっしゃる方もいれば、一方で「変わるために守り続けるんだ。」という職人さんもいらっしゃいました。その時代に対しての想いも違ったりするんですけど、そういった時代の変化を享受しつつも大事なところは守りつづける点で、共通していると思いました。

松澤:そういう企業は、共通して、変化を受け入れながらも、守るべきものと進化するものを二つの階層として持っているといるというような感じなんですかね。とても興味深いです。



「HANAO SHOES」それぞれの工房と向き合う

松澤:「HANAO SHOES」について少し話をお伺いしたいです。各地の産品を紐付けた新しいファッションスタイルを作られているという話を伺いました。稚拙な質問ですが、どうして運動靴に鼻緒をつけようと思ったんですか。

溝部氏:実は、それは始めた本人も覚えていないんですよ(笑)ただ、一つ言えることは、最近は着物を着るひとが減っていますね。そうすると着物とセットの草履や下駄を履く人も自然と少なくなってしまっていて。それを現代の若い子たちが鼻緒を身につける、草履の文化を身につけたらどうか、と考えていたらこういった形がポッと出てきて、実際に作り続けていくと、「可愛い」「欲しい」といってくださる方が出てきました。

松澤:お客様はどういう世代の方が中心なんですか。

溝部氏:メインターゲットとしては、20代、30代の若い世代の方々に履いていただきたいというのが一番で、そういった方々に、ポップアップイベントで全国をまわっているときに見つけてくださる方やオンラインストアを通じて履いてくださいます。最近は、お着物を着ていらっしゃる方々からもご購入してくださる機会が増えています。

松澤:着物に似合うものですか。

溝部氏:それが似合うんですよ〜。洋服にも和装にもすごく合います。シューズの白色は白足袋をイメージしているので、遠目で見れば、草履・下駄を履いているみたいにもみえます。

松澤:当社のスタッフも、着物を着ているので、「履きやすそう〜」という声が聞こえてきました(笑)草履だと、痛くなっちゃうからちょうど良さようですね。

溝部氏:そうなんですよ。あとは、坂道で草履が脱げてしまったりとか、タクシーの乗り降りで脱げちゃったりということもみたいで、HANAO SHOESを通勤通学用に履いてくださる方もいらっしゃいます。

松澤:白足袋に見えてきましたというコメントもいただきました(笑)

松澤:最初から初めてこれは、どれくらいの時間がかかったんですか。全国の染め物って、調べるだけでもすごい時間がかかると思うんですけど、

エガワさん:一年ほどです。

松澤:各地を回ったり連絡をとったりしながら、適切なものを選んでという流れでつくり始めた感じですかね。

エガワさん:リサーチ方法としては、コロナ禍でしたので、インターネットを使って染め織物が行われている場所を調べていったかたちですね。検索して出てきた工房に直接コンタクトを取らせていただいてつながっていきました。

しかし、インターネットでは出てこない染め織物があったり、あとは職人さん自身もインターネット上に上がっていない方々もいらっしゃっることに気づき、途中からリサーチ方法を変更し、各都道府県の自治体や染め織物の施設があるところに、一軒一軒連絡をしまして、この地方ではどういうものがあるのかっているのをそれぞれで聞いていきました。


松澤:いくつか紹介していただけますか。

エガワさん:こちらは、新潟県の「小千谷縮」という織物です。仕上げの工程で、淡い色にするために新潟県の雪にさらして淡くするという技法を使っていまして、それが新潟の冬、春を呼ぶ風物詩にもなっているとても素敵なデザインになっています。

松澤:当社のオフィスの暖簾もそ小千谷縮を使っています。偶然ですね。

ナガサワさん:(各々手にとって説明)こちらは、和歌山県の「再織」という織物なんですけど、絨毯など日用品に使われるデザインでよく目にすることもあると思うんですけど、改めて、シューズというかたちにすることで気づくおしゃれさが印象的です。

また、こちらは、千葉県の「桜織」です。元々、何年か前に途絶えた織物だったんですけど、地元の方々で復興されたというものなんです。「この柄自体は直接的に伝統的な「桜織」ではない」と地元の方々は心もとなそうでしたが、実際に商品化したものをご覧に入れたらとても喜んでくださいました。「コロナが終息したら工房にも遊びにきてね。」とも声をかけてくださったとても印象深い工房さんです。

松澤:結果的に商品を通して新しい価値を生み出した事例ですね。いいですね。

溝部氏:秋田県の職人さんはメール・FAXもできないっていうおばあさまだったんですけど、電話でのやりとりで制作を進めていきました。サンプルを送ってくださるときも住所を電話口でお伝えして、本当に届くのか不安になったこともありました。

松澤:それを全国各地でやったというのは、最初にお話を伺ったときも思ったんですけど、想像を絶する大変さですよね。(当社も)一部、地域のメーカーさんともお付き合いしているので同じような状況になったこともあるんですけど、なかなか今はメールでのやりとりというのがほとんどですもんね。

溝部氏:やっぱり会いにいきたいですね。メールとか電話とか手紙でやりとりさせていただいてこのご縁を続けて、叶うならば全国の工房さんに直接お会いして自分たちの目で文化だったり気持ちとか、技術を見に行きたいなというふうに思っています。

松澤:世代や伝える手法が違っても、新しいことを生み出すと、(職人さん側も)違う価値を付加できるからファンづくりにもなるし、そういうことを実践していらっしゃるのかなと思いますね。


「HANAO SHOES」とこれからの展望

松澤:これからの取り組みについては何か思惑はあるんですか。メディアや旅行業、もしくはネットとの組み合わせなど、さまざまな業界とコラボの可能性があるように思えます。

溝部氏:そうですね。今までは製品ばかりを作っていたんですけど、去年から京都オンラインワークショップを始めています。職人さんと一緒にワークショップを体験できるキット作りを行って、お客さんが登録すると自宅に届いて、全国で、ズームを通じてワークショップを行うっていうものでこれまで小さいちょうちん作りをしたりだとか、切り箱に絵付けをしたり、藁の鍋敷き作り。来月は、12月の中旬に京都の老舗喫茶のイノダコーヒーと京都の伝統文化を学ぼうということでコーヒーを淹れる講座も予定しています。

松澤:そうなんですね!当社も混ぜて何かやらせていただけることがあればぜひ、コラボトークに限らず、何かやりましょう。ぜひ直接お話を伺ったり、職人さんの話とかもしていただいたりして、これから色々できたらなと思います。プロジェクトの制作秘話などもとても興味深かったです。
今回はどうもありがとうございました。

溝部氏:ありがとうございました!
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今後も隔週でInstagramで作り手とのコラボトークを予定しています。詳しくは、日本工芸堂のメルマガ登録で工芸に関する各種情報をあわせてお届けいたします。

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