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福井県の伝統工芸品、越前打刃物は、刃物産地で最初に伝統的工芸品の指定を受けた、700年の歴史をもつ刃物です。ペティナイフから菜切包丁までさまざまな場面で使える包丁があります。日本古来の火づくり鋳造技術「手研ぎ」という工程をいまも継承しており、国内外から注目を集めています。
越前打刃物の特徴は、「薄くて軽い」ことと「丈夫である」ことを両立していることです。日本古来の鋳造技術[「手研ぎ」の手法を用いているだけでなく、越前打刃物ならではの手法を持ち合わせています。
包丁に用いられる「二枚広げ」という技法は、刃を二枚重ねたまま裏と表からハンマーで叩く技法です。二枚重ねることで厚みが倍になり、ハンマーの力がよくかかり、包丁の刃が薄くのびます。また、鎌には「廻し銅付け」という技法が用いられています。刃先にあたる鋼(はがね)を片隅から全体を菱形に斜めにつぶしていき、薄く研ぎやすい鎌の刃を作ります。これら独特の技法は、軽くて薄く、優れた切れ味が長く続く刃物を作り出しています。
越前打刃物の歴史は、約700年前の1337年(南北朝時代)までさかのぼります。京都の刀匠、千代鶴国安が刀剣の制作に適した場所を求めて、府中(現在の越前市)を訪れ、近くに住む農民のために鎌を作ったことがその始まりとされています。
国安にまつわる逸話もあります。彼は刀を造る度に研石を使って狛犬を彫り、井戸に沈めていたと伝えられています。この行為には、「刀は人を殺すための武器ではなく、武士の象徴として存在してほしい」という彼の「職人としての願い」が込められていました。この精神は、「最高の道具」をつくるというかたちで越前打刃物の職人たちに受け継がれています。
打刃物とは、日本刀の製法を源流とした刃物のことです。ハガネや鉄などを炉で熱してハンマーで打ち、作りたいかたちに鍛えていきます。これが「手研ぎ」と言われる手法です。
打刃物に対比されるのは「抜刃物」という技法で、こちらは金型を用いますが、打刃物は、形見本に合わせて、職人の手で金属を鍛えていきます。そのため、大量生産には向きませんが、一方で、型がないため、多様なつくりの包丁をつくることができます。
越前打刃物のほかにも全国の産地には、新潟県三条市・燕市、岐阜県関市、大阪府堺市、兵庫県三木市、島根県安来市、高知県香美市などがあります。
越前打刃物は、薄く美しい刃をもち、その切れ味のよさから料理人にも高い人気があります。この魅力の理由には、日本古来の鋳造技術である「手研ぎ」に加えて、越前打刃物独自の技術があります。
包丁に使われる「二枚広げ」という技法は、刃を裏と表からハンマーで叩く方法です。この技法により、刃の厚みが倍になり、ハンマーの力がよく伝わり、刃が薄く伸びます。また、鎌には「廻し銅付け」という技法が使われています。この技法では、刃先の鋼を斜めにつぶし、薄く研ぎやすい鎌の刃を形成します。これらの特別な技術によって、軽くて薄く、そして長く優れた切れ味を持続させる刃物が生み出されています。
また、打刃物は、そのかたちを職人の手でつくっていくため、多種多様な形状があります。自分が使いたいかたちをした包丁を見つけることができるでしょう。
代表的な製造方法はこちらです。
① 鋼づくりと地鉄づくり
850~900度に熱した鋼を、必要な大きさに鋳造します。ハンマーなどで金属を叩いてかたちづくることで、金属を鍛えていきます。
② 割り込みと沸かし付け
加熱した地鉄の中央に溝をつくって、鋼を入れます。そのまま叩いて、鋼と地鉄をつけていきます。
③ 先付けと切り落とし
包丁の先端を造形します。平らな部分をかたちづくり、この段階では、製品の2/3の大きさになるように調整します。そのあと、包丁一丁分の大きさに切り落とします。
④ 中子取り
包丁の柄の部分をつくります。
⑤ 二枚広げ
越前打刃物独特の技法です。包丁の鋼を二枚重ね、裏と表の両方からハンマーで打ちます。二枚重ねることで厚さがうまれ、ハンマーの力がよく伝わります。
⑥ 焼きなまし
加工を行いやすくするための工程です。一度、製品を700~800度に熱したあと、自然に冷ますことで金属組織を安定させます。
⑦ どろ落としと荒ならし、仕上げならし
刃の付着物を落とし、ハンマーで刃の表面をなめらかにします。反りもこの段階で直します。
⑧ たち回し
特定のかたちに合わせて余分なところを切り落とします。
⑨ 焼き入れ
泥を塗り、800度に加熱したあとにすばやく水で冷やし、焼きを入れます。
⑩ 焼き戻し
鋼に粘りをつけるために、刃を150~220度という低温で熱して、室温でゆっくり冷まします。鋼が硬いだけでは、一方向に力が加わると折れてしまうため、この工程で粘りや強靭性を高めます。
⑪ 荒研ぎと中研ぎ
目の荒い砥石でかたちをつくり、目の細かい砥石で刃先を鋭利にしていきます。
⑫ 仕上げ研ぎ
包丁全体を磨いたあとに研ぎ幅の部分をぼかし、切れ味を保つために小刃合わせをして完成です。
越前打刃物の体験・購入ができる場所を紹介します。
・タケフナイフビレッジ | Takefu Knife Village
タケフナイフビレッジは、新潟県の越前市にある共同組合で、観光客にもひらかれたスペースです。13社の刃物会社が共同で運営しています。
体験教室や工房見学も行っており、個人向けの「包丁教室」では、ハンマーで鍛え打つ「火造り鍛造」から最後に柄をつける仕上げまで、ほとんどの工程を体験できます。ギャラリーも併設されているため、刃物を購入することも可能です。
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包丁を選ぶときに気にしておきたいポイントは、次の4つです。
① 用途に合った包丁の種類
② 素材(ステンレス・ハガネ・セラミック)
③ サイズ
④ 手入れの方法
特に素材によって、切れ味のよさや刃こぼれのしにくさ、手入れの仕方などが変わってくるので違いをおさえておきましょう。
①の「用途にふさわしい」かどうかについては、家庭用の包丁の場合、結論から言うと「三徳包丁」がおすすめです。
「三徳包丁」は、大きな肉を切るのに適している「牛刀包丁」と、野菜を切りやすい「菜切包丁」のいいとこ取りな包丁です。野菜も肉も魚も、食卓によく出てくる食材をオールマイティに切ることができる「三徳包丁」。家庭で使われている包丁の9割を占めているといいます。特定の用途がなければ、この「三徳包丁」と、果物ナイフ(ペティナイフ)の2つを選ぶのがよいでしょう。
ただ、他にもさまざまな種類の包丁があります。料理の傾向などに合わせていろいろな包丁を検討してみてください。
包丁には、両刃包丁と片刃包丁の2種類があります。両刃包丁は、刃先が左右対称で右利き・左利き関係なく使うことができます。素材の大きさによって包丁の種類もありますが、基本的には一本でなんでも切ることができます。片刃包丁は、日本の伝統的な形式の包丁です。刃先が左右非対称で、右利き・左利きでそれぞれ違う型があります。食材の味を最大限引き出すために、素材によってさまざまな包丁が使い分けられています。
まず、両刃包丁の種類をみていきましょう。
【三徳(さんとく)包丁】
>越前打刃物 包丁 | STYLE-K | 三徳
迷ったらこの包丁を選ぶとよいでしょう。一般的な家庭用料理包丁です。肉・野菜・果物・魚(切り身) など、何でも切れる優れものです。
【菜切(なきり)包丁】
>越前打刃物 包丁 | STYLE-K | 菜切
昔ながらの四角いかたちの包丁です。刃の面積が広いため、大きな野菜を切るときも安定感があります。
【牛刀(ぎゅうとう)】
>越前打刃物 包丁 | STYLE-K | 牛刀
三徳包丁と同じく何でも切れる万能な包丁です。肉の塊などを切る包丁として外国から入ってきたものです。
【ペティ】
>越前打刃物 包丁 | STYLE-K | ペティ
「果物ナイフ」と言われることも多い、小回りのきく包丁です。ペティとは、フランス語で「小さい」という意味を表しています。
【筋引(すじひき)】
牛刀よりもさらに長く刃先がより細い包丁です。筋や骨から身を切り離すための包丁です。
次に、片刃包丁について見ていきましょう。家庭で使用するには、少しハードルが高いものかもしれませんが、料亭の料理人にとっては、身近な仕事道具でしょう。
【出刃(でば)】
>出刃包丁| 両刃 13cm | 四郎國光
刃が分厚い出刃は、主に魚をさばく際に使います。尾を落としたり骨も断つことが出来ます。厚みがある分、ずっしりと重量があるのが特徴です。
【柳刃(やなぎば)】
スッと長細い柳刃は、「刺身包丁」とも言われるように、主に切り身を切るのに適しています。一引きで切れるよう、長さがあります。
【舟行(ふなゆき)】
舟行は、漁師が漁に出る際に持って行ったと言われています。出刃と柳刃の間の厚さと大きさのためこの1本があればどちらの用途にも使えます。
【味切(あじきり)】
味切は、出刃より厚みが薄く小ぶりです。小回りが利くので、小さいイワシやアジなどの小魚を裁くのに、使い勝手がいいことが特徴です。
【薄刃(うすば)】
>越前打刃物 包丁 | 彩流 | 薄刃
「かつら剥き」と聞けばピンとくるひともいるかもしれません。刃先から刃元まで直線になっているのが特徴です。主に和食の料理人に使われています。
このほかにも調理する食材や方法によって、松刃・見卸・骨スキ・蛸引き・貝裂など、たくさんの種類があります。
こ見た目は同じでも、刃物に使われる素材にはたくさんの種類があります。特に「研ぎやすさ」と「錆びにくさ」は、素材によって違いが出てきます。包丁選びのなかでも最も重要な観点だといっても過言ではありません。自分の性格や、調理スタイルに合わせて、どの素材を選ぶかを決めましょう。
>菜切り包丁 | 安来鋼入り ステンレス | 先尖り 両刃 | 四郎國光
代表的な素材は、ステンレス・ハガネ・セラミックの3種類。「研ぎやすさ」と「錆びにくさ」の2つの観点からみていくと、違いが分かりやすいです。
研ぎやすさ |
錆びにくさ |
|
ステンレス |
〇 |
〇 |
ハガネ |
◎ |
× |
セラミック |
△ |
◎ |
ステンレスは、この3つの中だと最もバランスのとれた素材です。ステン(錆び)+レス(ない)という名前の通り、錆びにくく、手入れも簡単なので、家庭用包丁では、一番一般的です。
また、ステンレスのなかでも「ステンレス三層鋼」という素材もあります。柔らかいステンレスで、硬いステンレスを挟んだ鋼材で、 通常のものと比べ、切れ味が長続きすることが特徴です。
ハガネは、ステンレスと比べると、研ぎやすいのが特徴です。そのため、鋭い切れ味を維持することができます。一方で、とても錆びやすく、手入れに手間がかかってしまいます。
ハガネのなかでも「ハガネ三層鋼」という素材は、ステンレスでハガネを挟んだ鋼材です。刃先はハガネなので、刃先の錆びには注意が必要ですが、純正のハガネよりも錆びにくく扱いやすいのが特徴です。
最後にセラミックです。セラミックは、金属ではなく、陶器です。そのため、「錆び」にはほぼ無縁です。錆びないまま、切れ味が持続するため、お手入れに時間がかかりません。ただ、他の2つの素材と比べると、強度が低く、刃こぼれのしやすさが難点です。また、砥石を使用せず、シャープナー(包丁研ぎ器)を使うことも覚えておきましょう。
自料理をつくるとき、刃渡りがあまり長いと作業がしづらくなってしまうことがあります。ご自宅のキッチンの大きさやまな板のサイズを考慮したうえで、使い勝手のいい包丁を見つけましょう。
>越前打刃物 包丁 | STYLE-Kシリーズ
家庭用の包丁では、刃渡りが15から21cmの長さの包丁を選ぶのがおすすめです。包丁の種類ごとの代表的なサイズは、ペティナイフが15cm、三徳包丁が17cm、少し大きめの牛刀が21cmになります。
また、用途によっては、他の包丁の出番がくる場合もあります。
例えば、刺身を切るときは、刃渡り全体を使う切り方をするため、長さのある「刺身包丁」を使用するとよいでしょう。また、21cmの牛刀でも代用できます。
食パンなどの食材を切りたいときには、パン切り包丁が役に立ちます。三徳包丁で切ろうとすると、力が全体に加わってパンが潰れてしまいます。波刃のパン切り包丁をつかうことで、力が分散されてキレイに切ることができます。波刃の包丁はのこぎりのように使うため、少し長めの刃渡り21~24cmぐらいのものが一般的です。
魚を捌くときに適しているのは「出刃包丁」です。家庭向けのものであれば、刃渡りが15~16.5cmほどが使いやすいでしょう。基本的には大きければ大きいほど、その分大きな魚を捌くことができるのですが、重さがあるものなので、その人の体格に合わせて選ぶことをおすすめします。
包丁にも寿命は当然ありますが、どれくらいの頻度で使用するかや普段どのように手入れをしているかによって、寿命を伸ばすことも可能です。 適切な手入れをすれば、10年、20年と長く使い続けることができます。
包丁にとって、酸・アルカリ・塩分は、錆びの原因です。使用後のお手入れをしっかりとおさえ、いいものを長く使いましょう。
〇日々のお手入れ
①洗う
洗剤は、中性の食器用洗剤がおすすめです。包丁の背の部分からスポンジではさんで擦ります。このとき、柄の部分もしっかり洗いましょう。忘れがちですが、料理をした手で握った柄にも汚れが付着します。刃のつなぎ目の部分も汚れが残りがちなので念入りに洗います。
②乾燥・保管
すすぎ終わったら、清潔な布やペーパータオルで十分に水気を拭き取ります。仕上げに熱湯をかけて消毒しておくとなおいいです。風通しのよいところに保管しておきましょう。
また、保管時に他の金属と長く触れていると、その金属の錆びが移り「もらい錆」ができてしまうことがあるため、注意が必要です。
※セラミックの包丁の場合は、錆びることはありませんが、野菜の汁などの着色汚れが気になりはじめることもあります。その場合は、漂白剤をつかって汚れをとりましょう。
〇切れ味が悪くなったら
包丁を研ぐ方法は、砥石で研ぐ場合とシャープナー(包丁研ぎ器)で研ぐ場合の2種類があります。お手入れをする頻度としては、月に1~2回を目安に切れ味が気になってきたら取り組むことをおすすめします。
価格帯と手軽さを求めたい・セラミック包丁を購入する場合はシャープナーを、包丁を長持ちさせたいならば砥石がよいでしょう。
シャープナーを使用する場合の注意点として、刃こぼれしやすいという点があります。包丁の刃先だけを削り取りながら研ぐので一ヵ所に力が入りやすいためです。砥石を使う場合は刃先の角度を保ったまま研ぐことができるため、包丁が長持ちします。
〇砥石を使った研ぎ方
①洗面器やボウルの中に砥石を入れ、10~20分ほど水に浸す。
②包丁は砥石に対して45°にして、手前から奥へ軽く押し出すように研ぐ。
このとき、砥石が滑らないよう下にふきんなどを敷いておきましょう。砥石に当てる刃の部分は約15°(割り箸1本分程度)浮かせつつ、手前から奥へ軽く押し出すように研いでいきます。慣れないうちはこの角度を保つのが難しいですが、初心者向けに「角度固定ホルダー」という道具もあります。
③気になるところを順番に研いでいく。
刃の先端、中心、根本の3回に分け、指を添えながら研ぎます。10~20回ほどが目安です。そのうち削れた砥石が水と混じって泥のようになってきますが、そのままにします。
④「バリ」という刃のめくれを確認する。
バリができているかどうかは、刃先に軽い引っかかりを感じるかどうかで確かめます。刃先から根本までしっかりバリができたら反対面も研いでいきます。
⑤反対側も同様に研ぐ。
⑥「バリ」をとる。
角度を15°に保ちながら、根本から先端にかけて軽く滑らせます。新聞紙で擦ってとることも可能です。机など平らな面に新聞紙を広げ、数回擦ります。
〇錆びをとる方法
どんなに念入りに使っていても錆びてしまうことはあります。錆びができてしまった場合は、重曹やクレンザーを使用します。錆びは放置しておけばおくほど、落ちにくくなるため早めの対応がとても大切です。
①包丁を軽く水で濡らし、重曹またはクレンザーを錆びた部分に乗せる。
②スポンジやふきんでごしごし擦る。
ナイロンのスポンジを使用する場合は、硬い面を使用しましょう。ちなみに、ワインのコルク栓を使うこともできます。円を描くように擦ります。
③水で洗い流す。
④しっかりと水気をとり、乾燥させる。
ただ、「ハガネ」素材の包丁のようにものによっては、特性上錆びやすいものもあります。職人にお手入れを依頼することもできるので、ご安心ください。
いかがだったでしょうか。「研ぎやすさ」や「錆びにくさ」などさまざまな観点から包丁について紹介してきましたが、自分に合った包丁を見つけてください。
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その中でも、桜の樹皮は特に優れた素材として選ばれています。桜の樹皮は柔らかくて加工しやすいだけでなく、美しい色合いや独特の質感を持っており、樺細工の作品に独特の風合いを与えています。
また、桜は日本人にとって特別な意味を持つ木であり、その美しい花や豊かなイメージは日本の文化や心象風景に深く根付いています。そのため、樺細工に桜の樹皮が使用されることで、作品に日本の美意識や伝統的な価値観を表現することができるのです。
さらに、桜の樹皮は耐久性があり、湿気や湯気にも強いため、茶筒や小物入れなどの日常品として重宝されています。そのため、桜の樹皮を使った樺細工製品は、美しさだけでなく実用性も兼ね備えており、多くの人々に愛されています。このブログでは樺細工の基本的な姿を見つめ直してみます。
目次
樺細工とは、山桜の樹皮を木地の表面に貼り付けた木工品のことで、現在は秋田県でのみ生産されています。樹皮特有の光沢を活かした渋い色合いが特徴的。「型もの」「木地もの」「たたみもの」の3種類の技法があり、それぞれ茶筒やお盆、ペンダントなど、製品によって使い分けられます。
18世紀末に武士の藤村彦六が、県北部の阿仁地方に技法を伝えたのが始まりとされています。伝えられた技術をもとに、下級武士の副業として樺細工の生産が開始され、地場産業として根付いていきました。
樺細工に用いられる木は10種類以上あり、用途によって使い分けられます。職人は一つひとつ手作業で作るので、同じ作品は1つとしてなく、すべて1点ものです。
樺細工は、原料であるヤマザクラの性質上、防湿、防乾、そして堅牢性に優れている工芸品です。ヤマザクラの樹皮特有の光沢と渋みのある色合い、樹皮の模様をそのまま活用した技法を活かして、茶筒や小物入れ、またストラップや髪留めなどのアクセサリーに樺細工は使われています。
あめ皮、ちらし皮、ひび皮など12種類にも分けられた山桜の皮を、用途によって使い分ける技法が特徴です。木地の表面に木の皮を貼ったものや、木の皮を何層にも貼り重ね、彫刻して磨き上げたものなど、木の皮が持つ独特の味わいが活かされる技法が多く存在しています。
自然由来である木の皮には一つとして同じものはないため、全ての商品が一品ものになるという点は樺細工の大きな魅力でしょう。世界でひとつだけの自然美を、自分の手元で味わうことができます。
経年変化も美しく、大切に使いこむほどに山桜の樹皮がもつ色素の赤みが増して、次第に飴色(あめいろ)になります。
「樺」という文字が入っていることから白樺を連想されることがあるかもしれませんが、樺細工には、桜の樹皮が使われています。ヤマザクラの樹皮を用いた木工品は、日本国内で秋田県にのみ伝承されています。
さて、樺細工にはなぜ桜の樹皮が使われているのでしょうか。
それは、歴史的に「樺」という字がヤマザクラを表していたことと深くつながりがあります。日本古典作品においていくつか事例をご紹介します。
古くは、万葉集に寄せている山部赤人の長歌でヤマザクラのことを「かには(迦仁波)」と表現していた例です。これがのちに「かば(樺)」に転化したと言われています。また、その他にも平安時代中期に紫式部が著した「源氏物語 幻」の一節にもヤマザクラを樺とした使用例があります。
「外の花は、一重散りて、八重桜 咲く花盛り過ぎて、樺桜は開け、……」
上記は引用文になります。
ただ、わかりやすくするために「桜皮細工」という表記をしているところもあります。
樺細工に使われているヤマザクラは、樹齢30年以上のもので、現在は秋田を含む東北6県の山々から樹皮を採取しています。野生種であるヤマザクラは、生命力が強く、一つのものを長く使うことができます。
また、ヤマザクラの樹皮独特の光沢は、大切に使いこむほどに飴色(あめいろ)に深まり、樺細工の魅力を引き立てています。
樺細工といえば、茶筒。そう思われる方もいらっしゃるでしょう。
桜の樹皮を使った筒は、蓋と容器がぴったりと合わさり、どんな環境でも密閉性を保ってくれます。技法を活かしながら、現代の暮らしに馴染むものを作ろう、と生み出されたのがこの茶筒です。樺細工職人が長年培ってきた「型物」の製法が為せる技でしょう。
蓋を開けると、内側にも樺細工が施されています。
内側にまで広がる樺細工ならではの光沢からは、日本古来の「奥ゆかしさ」を感じられます。
樺細工には、さまざまな柄があり、そのどれも職人の意匠が込められています。
>樺細工 茶筒 | 総皮茶筒 | 散花 中長
濃い樺桜の皮に、異なる桜の皮で舞い散る桜の模様をあしらってあります。
濃い樺桜の皮に、異なる桜の皮で舞い散る桜の模様をあしらってあります。さらに、貝を使った螺鈿細工も加え、上質感を増した逸品です。
>樺細工 茶筒 | 総皮茶筒 | 霜降 大
手に入りにくくなった樺桜の皮がもつ、自然な質感や表情をそのまま活かされています。
江戸時代から下級武士の副収入源となっていた樺細工。その歴史は18世紀末からだと言われており、現在、製造されている工房でも100年以上の歴史のあるところも少なくありません。
1876年(明治9年)の創業以来、自然豊かな秋田県仙北市角館の地で、代々、樺細工の製造販売業を営んでいる工房です。
代々受け継がれてきたミリ単位の高い技術で、使いやすさと美しさを兼ね備えた暮らしの道具を通じてほっとするような自然のぬくもりをお届けしています。
1851年(嘉永4年)に創業以来、初代伝四郎の「品を磨き、信頼を磨く」という精神を引き継いで、現在に至っている工房です。樺細工の産地を守るため、また、先人が築き発展させてきた伝統を次の世代へ受け渡すために日々取り組まれています。伝統的な茶筒や小物入れ以外にも、時計やステーショナリーなどさまざまな商品が展開されています。
冨岡商店は、国指定伝統的工芸品である樺細工(桜皮細工)の製造元として、世界に類を見ない一属一種ともいうべきクラフトの価値を国内は元より広く世界に発信し、「一生に一つ」使い続ける豊かさを通じて、人々の潤いある生活に貢献できる企業を目指しています。
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五月人形は、端午の節句を祝うために飾られる伝統的な人形で、男の子の健やかな成長と幸福を願う意味が込められています。この記事では、五月人形の正しい飾り方やお手入れの方法について詳しく解説します。五月人形を飾る際には、配置や意味に気を配りつつ、家族の幸せと子供の健やかな成長を祈る心を大切にしていきましょう。
端午の節句は5日5日です。3月20日の春分の日から4月中旬ごろに飾りはじめるのがよいとされています。5月中旬ごろまでには片付けるとよいです。下旬になると、梅雨の時期にさしかかり湿気が高くなってしまいます。五月人形は、湿気が強くなってしまうと傷んでしまうので注意が必要です。
五月人形は、家の中で最も格式が高いとされている和室の「床の間」(とこのま)に飾られるのが昔ながらの風習ですが、アパートやマンションには「床の間」がないご家庭も少なくありません。飾る場所に迷ったら、以下の2つのポイントをおさえて決めてみてください。
マンションやアパートに住んでいて「床の間」がない場合は、「子どもの成長を見守ってもらえる場所」としてリビングや子ども部屋などの家族の目にとまる場所に飾りましょう。
五月人形は、直射日光あるいはエアコンの風があたると、色あせたり変色が起きやすくなります。また、湿気に弱くカビが生えやすいため、台所や浴室などの水回りや玄関は避けましょう。手入れがしやすく風通しのよい場所に飾ることが大切です。
① 佩楯(はいたて)を飾る
五月人形が入っている箱から鎧や兜、付属品を取り出します。鎧櫃(よろいびつ)の中心と佩楯の中心を合わせ、佩楯の帯の両端を鎧櫃のふたの間に挟みこみ、しっかりと蓋をします。佩楯は、あとから調整することが難しいため、中心を意識し、左右対称になるようにきちんと整えてください。
② 銅を飾る
鎧を支える芯木(しんぎ)を通した胴を鎧櫃の上に置きます。胴は、鎧櫃のやや手前に置き、鎧のバランスや腕の曲がり具合などに注意してください。
③ 面頬(めんぽう)を置く
鎧のお顔の部分である面頬を芯木の上部に掛けます。兜を置いたときのことを考慮し、眉庇(まびさし)と面頬との間に隙間ができないように紐を調節してください。
④ 兜を飾る
兜の受け口に鍬形(くわがた)を差し込みます。竜頭(りゅうず)がある場合は、鍬形台の間に差し込みます。
※鍬形の左右は間違えやすいので注意してください。
鍬形を差し込んだ兜を芯木の上部に乗せ、前後左右の傾きを整えてください。
⑤ 脛当(すねあて)と毛沓(けぐつ)を置く
靴にあたる部分の毛沓に脛当を差し込み、鎧櫃の前に並べます。
⑥ 弓太刀を飾る
向かって左に弓を、右に太刀を置いてください。太刀は、柄を下向きにし、留める紐がついている場合は結んでください。少し離れた場所から全体のバランスを確認したら鎧飾りの飾りつけは完了です。
兜飾りは、その名の通り兜のみを飾る五月人形です。シンプルで品の良い兜飾りは、コンパクトに飾ることができます。
① 兜櫃(かぶとひつ)に芯木を置く
兜櫃の中から、兜、鍬形、袱紗(ふくさ)、芯木などを取り出します。芯木は中心よりやや手前においてください。
② 袱紗(ふくさ)をかける
袱紗を芯木にかけてください。絵柄や家紋がある袱紗は、絵柄が正面になるようにします。
③ 兜に鍬形(くわがた)を差し込む
鍬形を兜の差し込み口に差します。竜頭がある場合は、鍬形台の間に差し込みます。鍬形の左右は、間違えやすいため、注意してください。
④ 兜を袱紗の上に飾る
兜を袱紗の上に乗せます。左右の傾きや全体のバランスを整えます。
⑤ 弓太刀を飾る
弓太刀を置く場合は、向かって左に弓、右に太刀を置いてください。刀は柄が下向きになるように飾ってください。最後に離れたところから全体のバランスを確認して飾りつけは完了です。
大将飾りは、かわいい子ども大将などのお人形を中心に飾る五月人形です。近年では、お人形やデザインもさまざまな種類がありますので、人気の五月人形です。また、飾りつけも比較的簡単なお人形が多いのも特徴の一つです。
>兜飾り | YAYA | 金ちゃん・銀ちゃん
① お人形を飾る
お人形本体を飾ります。兜の鍬形(くわがた)を受け口に差し込みます。鍬形の左右を間違えないように注意してください。
大将の手に持たせる道具がある場合は、適切に持たせてください。持ち道具は、采配(さいはい)や軍配(ぐんばい)の場合もあります。
② 付属品を飾る
台や屏風、弓太刀などがある場合はバランスよく飾ってください。
保管するときには、いくつか注意してもらいたいポイントがあります。
①手袋を着用する
片付けをする際にまず注意したいのは、人形を素手で触らないということです.
手の皮脂や指紋が人形につかないように手袋をはめてから作業するようにしましょう。触ってしまった場合は、乾いた柔らかい布で拭き取ります。
②ホコリを払う
ホコリが付着したままで保管してしまうと、その部分がシミや虫食いの原因になるおそれがあります。毛ばたき等で全体のホコリを落とし、細かい箇所は筆や綿棒などで優しく払って汚れを落としましょう。金具部分は、乾いた布を用いてよく拭います。
③包み紙で包んで、収納箱に入れる
パーツごとに柔らかい布や紙で包み、ビニール袋に入れてひとつずつ密閉します。
人形に直接触れる紙には、色移りの心配がない白い紙を使用します。パーツを包むことができたら、箱の中にしまいます。ぎゅうぎゅう詰めにならないよう適度な隙間をつくり、その隙間には新聞紙などを詰め込みます。詰め込みすぎると、型くずれの原因になるため注意が必要です。
※防虫剤の使用には注意が必要
五月人形の鎧兜には防虫剤の使用はおすすめしません。使用する防虫剤によってはガスが発生し、メッキ等が浮いてきてしまうことがあります。またプラスチック製のものの場合は溶けてしまうこともあります。
近年の人形は、糊自体に防腐剤を使用していることもあり、虫がやってくる可能性は以前に比べてぐんと減っています。逆に異なる種類の薬剤を使用することによって化学反応を起こし、人形の劣化を早めてしまうこともあります。購入されたお店で確認するとよいでしょう。
五月人形は、直射日光と湿気を避ける必要があります。直接、日光に当たってしまうと色あせや変色の原因になります。また湿気は放っておくとカビが発生し、こちらも変色やシミの原因になります。
できるだけ湿気の少ない場所で保管するようにしましょう。押し入れやクローゼットの上段などがおすすめです。湿気は下にたまるので、部屋の上部に保管します。
また、過度な乾燥にも注意が必要です。エアコンの近くには保管しないようにしましょう。
時間に余裕があればぜひ実践してほしいのが、秋の虫干しです。10月ごろのよく晴れた日に風を当ててあげることで、湿気を取り除くことができます。ずっと箱の中にしまっておくと、どうしても湿気がこもりやすくなります。そのひと手間で人形の長持ちにもつながり、長い間綺麗な状態を保てるでしょう。
男の子の成長を見守ってくれる五月人形。正しい飾り方とお手入れの方法を用いて、毎年、五月人形とともに端午の節句を迎えましょう。
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五月人形は、男の子の健やかな成長と幸福を願って5月5日の「端午の節句」に飾る人形です。兜飾りや鎧飾りなど、さまざまな種類の五月人形があります。
端午の節句は、昭和23年に「国民の祝日に関する法律」で「こどもの日」として祝日に定められています。
端午の節句のもとになった中国では、この日は3月3日などと同様に「陰」にあたるよくない日とされ、邪気を払うために軒先に菖蒲(しょうぶ)をつるし、家族の無病息災を祈りました。「しょうぶ」という言葉が「勝負」または「尚武」に通じることから、日本でも武家にとって大切な年中行事になりました。そして現在まで男の子の健康と幸福を願う日として、その習慣が受け継がれています。
五月人形には、時代に合わせてさまざまな種類が生まれています。ご家庭のスペースや用途によって適したものを選ぶのがいいでしょう。
煌びやかな装飾と洗練されたフォルムが男らしい威厳を感じさせる兜飾り。
鋭く伸びる鍬形をつけた兜や、戦国武士をモチーフにした兜などさまざまなデザインのものがあります。また、定番の平飾りタイプから、お手入れのしやすいケース飾りタイプ、飾り台に収納スペースを設けた収納飾りタイプなど、飾り方も多種多様です。
五月人形の中で最も豪華な鎧飾り。
美しく鮮やかな配色と煌めき、迫力満点の佇まい、その勇壮さは子どもの心をかきたてるのに十分すぎるほどです。鎧飾りも兜飾り同様、さまざまなタイプ・飾り方のものがあります。
大将飾りは、鎧兜を身に纏ったかわいらしいお人形です。有名な武士のデザインや個性的なデザインまでさまざまあり、節句を華やかに彩ってくれます。ふっくらとした童顔で健やかな表情には、お子さまの幼いころからの無事と健康への願いが込められています。
このほかにも頭に被ることができる「着用鎧兜」やインテリアとして飾る「インテリア鎧兜」などもあります。
また、端午の節句に飾る「節句飾り」は、五月人形だけではありません。
鯉のぼりがこの時期に飾られているのを記憶している方は多いのではないでしょうか。屋外に飾るものは、「外飾り」とよばれ、鯉のぼりや武者絵のぼりなどがあります。五月人形は屋内に飾る「内飾り」に当たります。
五月人形のつくりには、産地によって違った魅力があります。
江戸甲冑は、武士たちが戦場で用いていた甲冑がモチーフになっています。そのため、過剰な装飾はなく、実用性を重視したような作風であるのが特徴です。制作には5000にも及ぶ工程があると言われ、その細かなところまで手作業で行われています。
江戸甲冑の兜には、和紙小札(わしこざね)を用いて漆塗りを施し、皮革工芸や組紐、染織といった伝統的な技法を巧みに扱って作られています。京甲冑に比べて派手さはないものの、重厚感のある雰囲気がある江戸甲冑からは、洗練された美しさが感じられます。
京甲冑は、金箔や金属を用いた細工が施され、華やかな貴族文化を感じさせます。
純金箔が貼られた金小札(きんこざね)が多く用いられていて、そのほかにも縅糸(おどしいと)に組紐、金襴に西陣織を用いるなど、京都の伝統工芸品が惜しげもなく使われています。
また、兜の前立(まえだて)の中心には、龍頭など勇ましい意匠が配されていることも多いです。
気品が感じられながらも凛々しい雰囲気が魅力です。
この2つのほかにもどちらの様式にも属さない作り方をした甲冑もあり、「新型甲冑」と呼ばれています。例えば、材料にプラチナ箔を用いていたり、吹返(ふきかえし)や鍬形(くわがた)などの部位が現代的な意匠になっているものもあります。
五月人形は、男の子の健やかな成長や幸福を願って端午の節句に飾られるものですが、現代において新たな価値を生み出しています。
飾り物とはいえ、精巧に作られた武具は、日本の文化や歴史を次世代に伝える重要な役割を果たしています。海外の甲冑ファンにも人気を博しています。
また、家族や親子の絆を深めるきっかけとしても注目されています。五月人形を一緒に飾り、節句の意味や由来を語り合うことで、家族の間で会話が生まれ、親子の絆を深めることができるでしょう。
さらに、近年では大将飾りを中心としてデザインのバリエーションが増え、伝統的なものだけでなく、アニメやキャラクターをモチーフにした五月人形も登場しています。子どもに向けたものだけでなく、自分へのご褒美として購入する方も増えています。
五月人形を通じて学ぶことができる日本の文化と伝統は多岐に渡ります。
五月人形は戦国武士や将軍をモチーフにしています。兜から毛沓まで揃っている鎧飾りや兜飾りなど、精巧なつくりの五月人形からは武士道精神を感じることができるでしょう。身近にこうした工芸品があることで、当時の考え方そのものに関心がむき勇気や忠義、礼儀などの価値観を学ぶきっかけとなることもあるでしょう。
五月人形は端午の節句に飾られるものであり、節句の文化を学ぶ機会となるでしょう。端午の節句は男の子の健やかな成長を願う行事であり、家族の絆を深める大切なイベントです。そのほかにも日本には、多くの年中行事があります。季節とともに年月を感じるよい機会にできるでしょう。
五月人形は熟練した職人によって作られています。戦国時代ではない今、甲冑や鎧に触れることができるのは、この時期ならではかもしれません。その精巧な技術や細部へのこだわりを通じて、武士道精神の一端を感じることができるのも五月人形の魅力です。
五月人形は、男の子の健やかな成長と幸福を願って飾られる人形です。
家族みんなで一緒に飾ったり、その意味や由来について話し合う時間の中でご家庭内の絆を深めることができます。職人の意匠が込められた五月人形を飾り、素敵な端午の節句を迎えましょう。
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日本酒を楽しむ酒器としてぐい呑みとおちょこがありますが、実はそれぞれ違った特徴があります。日本酒をさらに楽しむために、ぐい呑みとおちょこの定義やそれぞれの違いを説明します。
ぐい呑みとは、主に日本酒を飲むときに使用する酒器のことです。名前の由来は「ぐいっと呑む」や「ぐいっと掴んで呑む」などからきているとされていますが、明確にはわかっていません。
一般的には1〜2口では飲みきれないサイズのものが多いです。「ぐいっと呑む」などの由来からお酒をぐいぐい楽しめる大きさで作られているのかもしれません。素材は陶器やガラス、錫、木製など、さまざま素材で作られています。
>江戸切子 ぐいのみ | 菊七宝 | 琥珀纏 瑠璃 | 山田硝子
おちょことは、ぐい呑み同様に日本酒を楽しむための酒器で、徳利とセットで使われることが多いです。
おちょこは漢字で「お猪口」と表記します。お猪口は、「ちょく(猪口)」が転じた言葉であるとされています。「ちょく(猪口)」とは、ちょっとしたもの表す「ちょく」や、飾り気のない安直なことを意味する「直(ちょく)」が語源となったと考えられています。
大きさは一口で飲み干せる程度のサイズが一般的です。
>肥前吉田焼 酒器 | 副久GOSU hana | 徳利・猪口箱入セット
ぐい呑みとおちょこの定義で説明したように、一番の違いは「大きさ」にあります。大きさといっても具体的に「何cm〜ぐい呑み」といった定義はありません。一口で飲み干せそうなのが「おちょこ」で、ぐいぐいと飲めそうなのが「ぐい呑み」といった程度の認識で大丈夫です。
また、猪口と言っても「そば猪口」のように、蕎麦つゆを入れる大きめの容器もあるので、一概にも大きさだけが違いだというわけではありません。
基本的には好きなデザインや素材など、好みの器で楽しむことをおすすめしますが、お酒をより楽しむためにぐい呑みとおちょこの使い分け方も紹介します。
一口で飲み干せる大きさのおちょこには、冷たいままで飲みたい冷酒や香りを楽しみたい吟醸酒などがおすすめです。お酒は温度によって旨味や香りが変化するので、おちょこで少しずつ飲む方が、適温を保った状態でお酒が楽しめます。
反対に温度によって変化する味わいを楽しみたい方にはぐい呑みがおすすめです。純米酒は温度によって味や香りが変化するので、ぐい呑みで飲むことで一口ごとに変化が楽しめます。
ここまでは、ぐい呑みとおちょこの違いを紹介し、お酒の種類やシーンによって適した器あることを説明しました。伝統工芸品のぐい呑みはさまざまデザインや形がありますので、お酒の種類やシーンによって使い分けられます。おすすめの伝統工芸品のぐい呑みをいくつか紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
繊細な紋様のつながりが美しい山田硝子のぐい呑み。江戸切子伝統の「菊つなぎ」に、青海波と波のような曲線が組み合わさり、見る角度によって異なる表情を楽しめます。瑠璃色とアンバーのグラデーションが美しい色被せグラスに刻まれた文様は、キラキラと光を反射し、切子ならではの輝きが美しいです。
>江戸切子 ぐいのみ | 漣 | 琥珀纏 瑠璃 | 山田硝子
日常の晩酌を特別にする、森銀器製作所の銀のぐい呑み。純銀のぐい呑みに日本酒を注ぐことで、日本酒が銀の輝きを反射し、いつもの日本酒がきらきらと輝く特別な一杯に感じられます。
宝石のように美しく、万華鏡のように輝く天満切子。「天満切子」は色被せガラスにU字型のカット(蒲鉾彫り)を施し、底の厚みを利用したカット模様が側面部分に映り込むことでいっそう輝きが増します。
ぐい呑みだけでなく、伝統工芸品のおちょこにもさまざまな素材やデザインのものがあります。形や大きさなどを比較して、自分だけのとっておきの酒器を選びましょう。
鮮やかな色彩と一点物の輝きを放つ、薩摩切子のおちょこ。色ガラスと透明ガラスを高度な技術で密着させ、表面に繊細な文様を刻み込むことで生まれるグラデーションは、薩摩切子ならではの美しさです。
>薩摩切子 冷酒おちょこ | 伝匠猪口 | 藍 | 薩摩びーどろ工芸
日本酒をより美味しく彩ってくれる肥前吉田焼の美しい酒器セット。徳利と猪口には点描で花が描かれています。5つのブルーから色の組み合わせを選んでいただけるのもポイント。
>肥前吉田焼 酒器 | 副久GOSU hana | 徳利・猪口箱入セット
四季の花を表現し、手作業で作られた錫のそば猪口「花ことば」シリーズ。そば猪口や向付にも使える仕様ですが、酒器として転用ができます。
冬から春にかけてフレッシュな新酒が出回り、お正月など日本酒が飲みたくなる季節になります。おちょこで丁寧に味わうのもいいですし、ぐい呑みで豪快に飲むのも素敵です。伝統工芸品の酒器は種類も豊富なので、いつもの晩酌を特別な時間にする自分用にも、大切な人へのプレゼントにも最適です。
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産地の特性を活かし、職人が丁寧に仕上げた伝統工芸品。近年、伝統と現代性が融合した建築が注目され、工芸品はインテリアや家具としても人気があります。
多くの人々が工芸品に魅了される理由は、手仕事ならではの温かみと、世界でひとつだけの希少性です。機械生産された無機質なインテリアとは違い、工芸品は職人が手作業で仕上げているので、一つひとつ微妙に表情が異なります。また、使い込むほどに味わい深くなるので、世界にひとつだけのオリジナルへと変化します。
洋風な近代建築が多くなったことで、昔ながらの日本建築で使われていたような工芸品は減少傾向にありました。しかし、最近では現代の暮らしにも合うモダンデザインの工芸品も作られるようになり、生活に取り入れる人も多くなってきました。その証拠として、日本を代表する建築家・隈研吾が、職人やデザイナーとコラボレーションした商品を開発するなど、伝統を活かしたものづくりにも取り組んでいます。
それでは、インテリアにおすすめの伝統工芸品を8つ紹介します。暮らしを彩るモダンな工芸品を選ぶ際は、ぜひ参考にしてみてください。
花六ツ目ランプシェードは、花六ツ目編みを愛し、ひたすらに花六ツ目編みで竹細工を生み続けている熟練の職人が編み上げたもの。竹ひごにもこだわりがあり、職人が自ら竹を厳選し、一本一本ひごにつくったものを使用しています。編まれた竹の隙間から柔らかく漏れる灯りは、一瞬で慌ただし時間を忘れさせてくれます。(>商品について詳しく)
縁起の良いモチーフとして世界中から愛される「クマ」に有田焼の様々な加飾をしています。インテリアとして日常に寄り添ってくれるだけでなく、結婚祝いや出産祝いなど人生の節目の贈り物としても人気です。(>商品について詳しく)
廣田硝子は明治32年から続く、東京で最も古い硝子メーカーです。駄菓子を入れる容器や金魚鉢、キリンビールやカルピスの宣伝用グラスを生産するなど、古くから日本の硝子産業を第一線でリードしてきました。今でもさまざまな専門家とコラボレーションすることで、全く新しい製品を生み出しています。
そんな廣田硝子の「義山 膠硝子」は、懐かしさを感じる温かい灯りが特徴のキャンドルホルダー。膠硝子とは、ガラスの表面に膠の溶液を塗って作る加工法のことで、膠が乾燥して収縮する際に立体的な模様を作り、すりガラスのように表面を曇らせます。膠硝子の向こうに柔らかくにじむキャンドルの灯りは、人々の心を温めてくれます。(>商品について詳しく)
色も素材も新しい木目込み人形の招き猫。江戸木目込み人形の招き猫は、東京手仕事の1つとして生まれました。そのなかでも柿沼人形は1950年の創業以来、雛人形や五月人形など、木目込み人形を作り続けています。
柿沼人形の招き猫は、手触りのよいちりめんを身に纏い、鮮やかな色にはそれぞれに風水的な意味もあります。高さ10cmほどのコンパクトサイズは、リビングや寝室などの狭いスペースにもぴったりです。(>商品について詳しく)
リビングで優しく見守ってくれる、コンパクトな五月人形の鎧飾り。鈴甲子は、明治時代から続く人形工房で、弓や太刀などを作る武器職人から始まり、徐々に甲冑を手掛けるようになりました。今ではその完成度の高さから甲冑ファン、歴史ファンの間でも人気があります。
そんな鈴甲子が手掛ける鎧飾り『タンゴ侍』や『天賦の兜』などのシリーズは、コンパクトサイズながら細部にまでこだわった本格的な作りが特徴。マンションなど限られたスペースにも収まります。色合いも、ナチュラルなものからシックなものまで、落ち着いた色味が和室洋室問わず馴染みやすいデザインです。五月の節句の時期だけでなく、一年を通して家族を守るアイテムとして飾っておくのもおすすめです。(>商品について詳しく)
洋風の現代建築が普及するとともに、伝統工芸品もモダンデザインのものが多くなりました。今では値段も安く、お部屋に彩りを与えるアクセントとしてもおすすめです。手作りで温かみのある、個性豊かな伝統工芸のインテリアを、暮らしに取り入れてみてはいかがでしょうか。
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ひな祭りは、3月3日に行われる日本の伝統行事で、女の子の健やかな成長や幸福を祈る日です。「桃の節句」とも呼ばれ、旧暦の3月3日がちょうど桃の花が咲く時期だったことに由来すると言われています。また、この日にあわせて家庭では、雛人形の飾り付けをします。雛人形は、皇室の婚礼をもとにした、お内裏様や三人官女、五人囃子などを模した人形で構成され、7段に飾るのが基本です。近年では男雛・女雛のみを一段に飾るコンパクトな雛人形も増えていますが、段数は縁起の良い1・3・5・7と奇数段にするのが一般的です。
ひな祭りは、娘の成長と幸運を祈ると同時に、邪気を払い、災厄を避けるための行事でもあります。また、古くは農耕祭としての側面もあり、豊作を願いながら行われてきました。各家庭では、ちらし寿司やひなあられ、菱餅などが供され、行事食とともに家族でお祝いをします。
こうした習慣や行事は、日本の歴史や文化を継承し、子どもたちに伝統を大切にする心を育む一環とも言えます。ひな祭りは、春の訪れとともに日本各地で賑やかに行われ、美しいひな人形や華やかな雰囲気が日本の文化を彩っています。
雛人形は、3月3日のひな祭りに合わせて、この日よりも前に飾ります。雛人形の飾り付けは一般的に2月3日節分明けです。ひな祭りが終わる3月4日以降には早めに片付けるのが一般的です。
雛人形の飾り付け方は、七段のそれぞれに配置する人形や飾りが決まっており、人形ごとに決まった道具や向きで飾ります。また、上の段から飾るのが良いとされています。飾り付けが整ったら、ひな祭り当日には家族や親しい友人を招いてお茶を楽しむこともあります。このような雛人形を飾る風習は、日本の伝統文化を重んじる一環として、今なお多くの家庭で受け継がれています。
雛人形の飾り付けは、春の訪れや子どもたちの成長を祝福し、同時に邪気を払い、災厄を避けるという意味もあります。そのため、ひな祭りの期間中は特に慎重に雛人形を扱い、祝福の気持ちを大切にします。
>節句人形 | 草木染絞り | ざくろ・茜 | 工房 縫nui
これまでご紹介したように雛人形は、日本のひな祭り(3月3日)に飾られる伝統的な人形です。ひな祭りは、女の子の成長と幸せを願うために行われるお祭りであり、雛人形はその一環として用いられます。では、なぜ雛人形が飾られるか、もう少し詳しく見てみましょう。
ひな祭りは、女の子の成長と健康を願う行事であり、雛人形はその象徴でもあります。雛人形には、さまざまな役割をもった人形とともに、嫁入りや婚礼の道具が付随するのが一般的で、子どもから一人前の大人へ成長することへの願いが表れています。
ひな祭りは季節の変わり目に行われることが多く、その時期には風邪や病気が流行りやすいです。昔は、子どもを無事に育てることが今よりも困難でした。雛人形を飾ることで、雛人形が身代わりとなって災いから守ってくれるとも言われており、邪気を払い、健康を祈るとされています。また、縁起物としての意味もあります。家庭に雛人形を飾ることで、家族全体の幸せと繁栄を願う習慣があります。
ひな祭りと雛人形は、日本の文化や伝統の一部であり、これを次の世代に伝えるためにも飾られます。家庭で雛人形を飾ることで、ひな祭りの風習とともに、季節の移り変わりや年中行事に応じて家族の幸せを祈る、日本の伝統的な心が継承されます。
総じて、雛人形は日本の文化や家庭において、女の子の成長や家族の幸せを祈る象徴的な存在として重要な役割を果たしています。
自然派の方におすすめの雛人形は、伝統的な趣を残しつつ、自然由来の素材や柔らかな色合いを取り入れたものです。合成染料を使用しない草木由来の染料を用いたものや、職人が丁寧に手染めした衣装をまとった雛人形など、素材の風合いにこだわったものがおしゃれで人気です。
伝統的なデザインに、自然な風合いがマッチした草木染の雛人形は、シンプルでありながらも温かみが感じられます。また、有害な材料を極力避けたエコフレンドリーさや、熟練の職人が手がけた丁寧な手仕事も見逃せない逸品です。
これらの自然派雛人形は、環境にも配慮した選択として、伝統とモダンなスタイルを融合させた飾りとして好まれています。
草木染めは、自然の植物や草木から抽出された天然染料を使用して布や糸を染める伝統的な技法です。この方法では、合成染料では得られない優しく奥深い色合いが生まれ、環境にも優しい側面があります。
天然染料100%の魅力は、まずその豊かな色彩です。植物や果実、木の皮などから抽出される染料は、穏やかで深い色合いを持っています。また、使われる植物によって微妙な色のバリエーションが生まれ、一点一点が独自の表情を持ちます。
環境への影響の少なさも大きな魅力の一つです。合成染料に比べて製造過程で発生する有害な化学物質が少なく、廃液も比較的安全です。これにより、草木染めはエコフレンドリーでサステナビリティを重視する消費者に支持されています。
手仕事や伝統的な技法を重んじる文化にもマッチし、ストールやバッグなどに限らず、あらゆるアイテムに応用できる染色技法としての価値も高まっています。そのため、天然染料100%のアイテムは、自然の美しさと環境への優しさを同時に感じさせる魅力的な選択肢となっています。
草木染めの経年変化は、独特で美しい特徴を持っています。最初は鮮やかな色合いが目立ちますが、時間とともに経年変化が起こり、染めた素材が風合い豊かな味わいを帯びます。
光や空気、摩擦などの影響で、色が柔らかく変化し、独自の風合いが生まれます。これは草木染めならではの魅力で、使い込んだ時間を感じさせ、愛着を増幅させることができます。
草木染めの雛人形を制作されている工房はこちらです。
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「工芸体験の新しい接点をつくる」という当社のビジョンから生まれた、不定期開催の出張バーです。
全国各地の工芸品酒器で、日本酒などこだわりのお酒を味わう懇親の場。
工芸品(陶磁器、金属、ガラスなど)での酒器体験を通して工芸についての親しみと理解を深めていただくことが目的です。
今後はお酒だけでなく、和食やお茶などともコラボレーションを企画しています。
・工芸x越境EC
・工芸xマーケティング
・工芸xEC
・工芸xお酒
・工芸x地域活性
工芸バーの詳細はこちら
肥前びーどろ(佐賀県)
薩摩切子(鹿児島県)
大阪浪華錫器(大阪府)
大谷焼(徳島県)
小鹿田焼(大分県)
琉球ガラス(沖縄県)
津軽びいどろ(青森県)
東京銀器(東京都)
益子焼(栃木県)
江戸硝子(東京都)
SYUKI(日本工芸オリジナル)
高岡銅器(富山県)
越前漆器(福井県)
萩焼(山口県)
*当日配布の酒器一覧ページ(こちら)
工芸品(モノ)を提供するだけでなく、工芸品や工芸に関する製作工程や素材についての理解を深めるための体験や学びの場「工芸体験ラボ」の詳細はこちら
工芸バーについて詳細はこちら
富士山柄工芸品のお取り扱い一覧はこちら
昔から富士山は「霊峰」と呼ばれ、修験道の霊場になるなど、信仰や崇拝の対象になってきました。その不思議なパワーにあやかろうと、多くの絵師もその姿を作品に描いています。江戸時代には吉祥のシンボルとしての富士山のイメージも定着。日本人の心と深く結びつくモチーフとして人気を博しました。
富士山が、縁起がいいと言われる理由はその形と言われています。山頂から山裾にかけて大きく広がる姿は「末広がり」につながります。子孫繁栄や成功につながる形を身近に持つことで、良運を引き寄せよう、と多くの人は思ったのでしょう。
また、富士は「不死」にもつながります。戦国時代、多くの武将は陣羽織や兜、刀に富士のデザインを取り入れていました。富士山を身に付けることで「死」を遠ざけようという思いが感じられます。
良く知られているのは、初夢に見ると縁起がいいと言われる「一富士、二鷹、三茄子」。徳川家康が好んだモチーフ、という説もありますが、富士山がもつさまざまなパワーを、夢からもらうことで一年間の幸福を願う気持ちも受け継がれたのかもしれませんね。
波佐見焼 セラミックコーヒーフィルター | 富士山 | 燦セラ
さまざまな意味を持つ富士山のモチーフは、今もギフトの定番です。繁栄や発展の意味はは結婚や新居のお祝いにもぴったり。起業のお祝いにも、富士山に込めた想いが伝わるでしょう。
敬老の日や還暦など、長寿祝いにも富士山は好まれます。高齢の方であれば、富士山が持つ縁起の良さは知っておられるはず。「富士=不死」に込めた願いも嬉しく感じていただけます。
富士山の形の美しさもギフトとしておすすめできるポイントです。日本全国に「●●富士」の別名を持つ山や、和風庭園に富士を模した築山が作られてきたように、日本の風景に富士のシルエットはなぜかなじみます。毎日の暮らしに自然に取り入れられる縁起ものとして伝統デザインと言えるでしょう。
富士山モチーフの伝統工芸の中でもグラスやタンブラーは、見た目の美しさだけでなく、使いやすさも兼ね備えたものが多くあります。日本工芸堂でも人気の富士山モチーフの商品をご紹介します。
葛飾北斎の「冨嶽三十六景」のシリーズのひとつ、「山下白雨(さんかはくう)」山田硝子の工房がある東京・墨田は、葛飾北斎の生誕の地として知られ、そのご縁から生まれた作品です。
「白雨」とは、夕立のこと。くっきりとした富士山と夏の積乱雲を描いた躍動感のある作品を、山田硝子のアレンジで美しいグラスとして表現しました。山田硝子の職人だからこそ実現した、至高の手仕事をお楽しみください。
江戸切子 ロックグラス|山下白雨|琥珀 瑠璃|山田硝子
昭和31年創業の老舗江戸硝子メーカー「田島硝子」の名前を世界に知らしめたのが、グラスの底に富士山が浮き上がったように見えるグラスでした。富士山の世界文化遺産登録を記念して作られたこの商品。グラスの底に富士山の特徴である宝永火山のくぼみまで忠実に形作り、さらに富士山が一番美しい頃の雪化粧をサンドブラストで表現しました。
受け継がれてきた江戸硝子の技法を使い、一つひとつ手づくりで作られていることにも驚くのですが、見る人の心を魅了するのは、グラスに飲料を注いだときです。透明度の高い江戸硝子は、注いだものの色をそのまま底面の富士に映します。青い飲みものを注げば、富士は青く染まり、赤い飲み物を注げば赤富士の姿がグラスの底に現れるのです。
美味しい飲み物を楽しみながら、自分だけの富士山の美しさを愛でる。そんな時間の過ごし方も一緒に贈る、特別感のあるギフトになります。
ロックグラス | 江戸硝子 富士山ロックグラス | 田島硝子
人の暮らしに昔から根付いてきた金属の一つが錫です。錫はイオン効果が高く、注いだ水やお酒の中にある不純物を吸着してくれると言われて、お酒の風味をまろやかにし、美味しくしてくれると言われています。そのため、お酒を美味しくする酒器として古くから用いられており、特に宮中では日本酒を「おすず」と呼ぶこともあるそうです。
そんな錫を使い、青富士と赤富士の形に鋳造したタンブラーです。使うときには、青と赤のペアタンブラーなのですが、伏せて置くと雪をかぶった富士山の姿に早変わりします。使っているときはもちろん、使わず置いておくときも楽しめる、まさに二度美味しいタンブラーです。
御祝の席に欠かせない日本酒をいただく盃としてのプレゼントにおすすめなのが、富士山を模したガラスの盃です。鮮やかな赤と青のガラスに雪をかぶった様子がサンドブラストで表現されています。色ガラスと白い摺りガラスのバランスは、富士山が最も美しいと言われる黄金比を模しているとか。いつでも最高の富士山を、しかも青富士と、さらに珍しく縁起が良いとされる赤富士を並べて愛でる贅沢。手の中でいつまでも見つめていたくなる、そんな盃です。
富士山モチーフのグラスやタンブラーは、なかなか見られない美しい富士山の姿を手元で楽しむ贅沢を感じさせてくれます。繁栄や長寿の願いも込めて、祝う気持ちを伝えるのにぴったり。いろいろな贈り物に、富士山モチーフの伝統工芸を選んでみませんか?
*丹沢大山国定公園から日本工芸堂スタッフが撮影した富士山
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日本文化、工芸の循環と発展の一端を担うためには、 ビジネスとしてただ商品を販売するだけでなく、工芸体験の機会創出に取り組み、ファンを増やす必要があると考えてきました。
この問題意識は、「工芸体験の新しい接点をつくる」という当社のビジョンとして言語化しました。
「新しい接点」とは工芸についての”理解する”、”知る”、”伝える”の3つのアクションがあるのではないかと思います。それぞれのアプローチの仕⽅で「⼯芸への関⼼」へと昇華させることを目指します。
今挙げたアクションの⼀つ⼀つはシンプルですが、これらが自然発生的に繋ぎ合わせられるようなプロセスを創り出すことで、無関心から興味、興味から関心、関心からファンへと有機的な進化を後押しできるのではないでしょうか。
”理解する”:実際に職人さんからお話を伺う場を設け、対象の工芸品の歴史や制作の裏側、使い方等をお伝えすること。私たち自身も共に学んでいます。
”使う”:日常生活で使える工芸品を集め、主にECサイトを通して販売しております。当然ながら自身の生活のなかで工芸品を使いながら利便性や豊かさを伝えられるよう発信しています。
伝える:職人さんとのコラボトークをSNSで発信していたり、工芸品制作の体験会を開催しています。 ご関心ある方が直接、体験する機会を提供しています。他方、スキルあるプロ人材と工芸品の素晴らしさを伝えながら発信手法を継続して磨いていきます。
関心を持っていただける方、協力していただける方を増やすために、型にとらわれず挑戦し続けること。それが”工芸体験の新しい接点をつくる”というビジョンです。
以下は、微力ながら取り組みの一部をご紹介いたします(適宜追加していきます)。
当社は日本のものづくりの発信・育成の知見を持つ企業として「CoCo JAPAN」*パートナー企業に認定いただきました。工芸品の展示・販売及び良品の発掘発信の支援をご一緒してまいります。
※「CoCo JAPAN」は森トラスト株式会社が運営し日本各地の良品を発掘し国内外に魅力を発信する産業支援プロジェクト。
商品としての工芸品(モノ)だけでなく、工芸品や工芸についての製作工程や素材への理解を深めるための体験や学びの場を提供しています。
江戸切子職人の山田さんをお迎えしてのワークショップ風景
「四季の美」と共催「漆芸作家、伊藤ミナ子さんによる弟子入り体験」の様子
"想いをつなぐ"をテーマに歴史を刻み進化を続けるホンモノの工芸品を体験できる展示を実施しました。
新宿マルイを訪れる方に、当ブランドの世界観を体験していただくとともに、大切な方への贈り物を選ぶことを想像しながら、これらの展示品を手に取っていただき、不易流行の逸品である工芸品の魅力を再発見していただく機会となりました。
期間中は各地の職人さんとのトークライブ配信・ライブコマースを実施。お客様に工芸品をより身近に感じてもらうため、オンライン×オフラインでの接点づくりを目指しました。
展示の様子は以下の動画にてご覧ください。
開催のコンセプトは、①切子、銀器、錫器、漆器など各地の酒器を使ってお酒と会話を楽しみます。②紹介制。テーママッチする方のみの参加③伝統文化や工芸の世界への発信に貢献に関心のある方々の参加。
これまでの実施テーマ:工芸x商品開発、工芸xマーケティング、工芸x動画、工芸x地域活性
以降テーマ案:工芸x和食、工芸xお酒、工芸x越境EC、工芸x新規事業、工芸x Amazon、工芸xドラッカー、工芸xメタバース
> 伝統工芸士、上川さんご参加で、「飲み比べ思い描く銀器の姿が見えた!」詳細はこちら
”伝統工芸の素晴らしさを発信したい同志を募集”とし、全国7名の大学生に参加いただいています。「伝統工芸に関する知識」のほかEC運営の基礎 、新規事業開発の基本、WEBデザイン、画像加工のような具体的な実践スキルが身に付くための学びの場を業務時間とは別に設定してます。
これはビジョンに共鳴して参画いただいた方が、よりスキルをつけ、ご自身の意思と方法で工芸発信をしていただくことを願っての場の設定です。
> 学生インターン募集の告知ページ
日本の伝統工芸品の魅力を発信していただくアンバサダーを募集し、たくさんのご応募をいただきました。これまで使ったことがなかったような工芸品を生活の中に取り入れ、伝統工芸についての理解が深めていただき、ともに発信していただくのが目的。さらに、伝統工芸に関心のある方同士の繋がりをつくり、知見を高め合う場つくりもしていこうとしています。
会津の工芸と文化を楽しむ!限定人数での工芸体験イベント開催。会津塗実演見学、東山芸妓の体験、会津塗のマイグラスでの食事とお酒。6月9,10日開催いたしました!詳細はこちら
インターネットフリマ・オークションサービス「モバオク」にて「『工芸職人が、 かっこいいアートを作ってみた。』日本工芸堂meetsモバオクチャリティーオークション」を12/8-17に開催。
鈴甲子雄山による五月人形や鎧兜をテーマにした歴史的アート作品が出品され、オークション期間中に東京神谷町の「CoCo JAPAN」で展示を行いました。売上金は「1% for 日本の工芸育成」プロジェクトを通して、伝統工芸の育成や産地活性化に活用されます。
第17回杭州文化創意産業博覧会に出展し、その中で行われた「杭州国際手工芸創新発展討論(International handicraft innovation development forum)」に代表の松澤が登壇しました。日本の工芸品として、金沢箔、山中塗、京焼を展示・販売し、海外の方に向けて日本の工芸品の魅力を発信しました。
当該サイト、日本工芸堂の想いをまとめています。
今回は、今だから知っておきたい、日本のガラス工芸をご紹介します。
目次
日本最古のガラスは、縄文時代末期の青森県の亀ヶ岡遺跡から出土しています。発見された小さなガラス玉は、日本で作られたものかどうか、はっきりしていませんが、ガラスがなんらかの形で、当時の人々の暮らしに入っていたことは間違いないでしょう。
弥生時代の中期から後期になると、日本でもガラスが製造されるようになります。福岡県の三雲南少路遺跡からはガラスの勾玉が出土しています。勾玉は、中国や朝鮮などにはない日本独自の形状。ガラス炉も発掘されており、日本でガラス製造が始まっていたと考えられています。
奈良時代以降も、ガラスは高級品として日本の上流階級を中心に利用されていました。有名な正倉院の「瑠璃杯(るりのつき)」など、高い技術で装飾を施したガラスもありますが、それらは海外からの輸入品。日本のガラス製造技術は、複雑な形状のものを作れるほどではなかったのでしょう。
その後、日本のガラスの歴史は、平安時代に途切れてしまいます。陶器の技術が高まり、薄く、丈夫な陶器が日本で作られるようになり、神事や祭事、暮らしの中から、ガラス製品は消えてしまいました。
次に、日本の歴史の表舞台にガラスが登場するのは16世紀。キリスト教の伝来と共に伝わったガラス製品は、領主など位が高い人への贈り物として普及していきました。それにつれ、ガラスの製造技術も日本に伝わり、17世紀にはガラス製造に取り組む職人がでてきました。「和ガラス」と呼ばれた国内産のガラスは、厚く脆いものではあったが、高級なギフトとして人気を集めたといわれています。
そして、日本のガラス工芸は、海外に開かれていた長崎に始まり、大阪、京都、江戸、薩摩へと広がっていきました。先人に学びつつ、少しずつ製造方法の改良を加え、その技術を磨く職人たち。そして、今につながるような、高い技術と、芸術性を誇る、さまざまなガラス製品を生み出すようになっていったのです。
日本のガラスというと「ぎやまん」「びーどろ」の二つの言葉を思い起こす人が多いのではないでしょうか。この二つの言葉は、江戸時代にガラス工芸品をさす言葉として使われており、吹きガラスの製法で作られた一般的なガラス製品を「びーどろ」、海外からの輸入品やカットを施したものを「ぎやまん」と呼んでいたともいわれています。
ちなみに、びーどろは、ポルトガル語でガラスを表す「Vidro」(ビードロ)から、ぎやまんは、同じくポルトガル語でダイヤモンドを表す「Diamante」(ディアマンテ)からきているらしいです。
2つの言葉が表すガラスの技術は、そのまま、日本のガラス工芸の特徴につながっています。日本を代表するガラス工芸は、「吹きガラス」の技法を使ったものと、「カット技術」を活かしたものに分かれます。
さまざまな形を生み出し、華やかな色合いで日本人の感性を表現する吹きガラスと、繊細なカット技術で光輝く世界を刻むカットガラス。それぞれの代表的な産地を紹介しながら、日本のガラス工芸の魅力を紐解いていきましょう。
日本におけるガラスの伝統工芸品として、世界に知られているのが「切子」ではないでしょうか。色ガラスを被せ、カットを施した、芸術品ともいえる逸品に、古くはペリーも驚いたといわれます。削り出される繊細な紋様の組み合わせは、作家の感性によって異なる世界を生み出していきます。ガラスと光が織りなす思いもかけない美しさに、ファンが世界に広がっています。
切子の代表的なものは「江戸切子(東京)」「薩摩切子(鹿児島)」「天満切子(大阪)」です。
東京スカイツリーのエレベーターのうち、「夏」のエレベーターを彩る工芸品にも選ばれている江戸切子。江戸時代末期に始まったもので、曲線や花鳥風月のデザインで、柔らかな日本の美意識を表現します。最近では、細かい伝統紋様に、現代的な感性を加えたデザインのカットも多いです。2002年には国の伝統的工芸品にも指定されました。
> 「江戸切子」について詳しく見る江戸切子と比べられることの多い薩摩切子は、薩摩藩の産業政策の一環として生まれ、発展した、という特徴を持ちます。江戸切子より厚く色ガラスをかぶせることで生まれる、繊細なグラデーションが特徴で、重厚感のある手触りのファンも多いです。
薩摩切子は、幕末に一度途絶えましたが、現在は復刻され、鮮やかな色合いに大胆なカットを施した新しい商品も生まれています。
> 「薩摩切子」について詳しく見る大阪天満宮正面脇にひっそりと立つ「大阪ガラス発祥之地」の碑。長崎に伝わっていたガラス製法が持ち込まれ、大阪でガラス製造が始まったのは江戸中期の1700年代中頃といわれています。
江戸にガラス製造が伝わったのは、1800年代初期といわれているので、大阪の方が江戸より早くガラスを製造していたことになります。その後、昭和初期まで、大阪のガラス産業は発展を続け、ガラスのビー玉を最初に制作したのも大阪のガラス工場だったといわれています。
そんな歴史の中で生まれたのが、薩摩切子の流れを受け継ぐ「天満切子」。カットによって生まれる光の反射は、グラスに飲み物を注ぎ、口元に持ってきた時、最大限に美しさを感じさせます。
シンプルに見えるデザインが、実は計算されたものだったことに、驚く人も少なくないです。飾って美しいだけでなく、使いやすさを追求した、新しい切子として注目を集めています。(>天満切子はこちら)
日本の吹きガラスは、世界に注目されるほど高い技術を誇ります。江戸時代から続く技術を受け継いでいる代表的な産地が「肥前びーどろ」(佐賀)と「琉球ガラス」(沖縄)です。
肥前びーどろの始まりは、佐賀(鍋島)藩主鍋島直政が設置した精錬方(たんれんがた)。薬瓶や酒瓶のほか、科学実験のためのビーカーやフラスコを作るガラス窯がありました。肥前びーどろの最大の特徴は、「ジャッパン吹き」と呼ばれる日本独特の宙吹き技法で作られていることです。
鉄ではなくガラスの吹き竿で作られるガラスは、空気以外のものに触れることがなく、よりなめらかに仕上がります。また、赤や青の鮮やかな色合いも特徴の一つ。最近では、金箔やピンクや黄色の色粒を使った華やかなグラスも作られています。
長い歴史を持つ吹きガラスとして、もう一つあげておきたいのが琉球ガラスです。明治中期に始まったといわれる沖縄のガラスが注目を集めたのは、戦後。戦前から廃瓶を原料に作られていた沖縄のガラスは、戦後、アメリカから入ってくる色付き瓶で作られるようになりました。
これに興味を持ったのが、米軍兵士たち。帰国時のお土産に、琉球ガラスを選ぶようになったのです。琉球ガラスは、今も廃瓶を原料としているものが多いです。緑や淡青、茶色など、基の瓶を彷彿とさせる色合いの商品には、廃瓶を使っているからこそ生まれる、くすんだ色や気泡があり、それが琉球ガラスの大きな魅力の一つとなっています。
> 琉球ガラスのページへ
ガラス細工とは、和ガラスやガラス美術品などガラスで作られた作品の総称と言えます。ガラス工芸品ともほぼ同じ意味で使われています。時代背景の中で、生活に活用されるびいどろグラス、切子グラスなどの作品を主にガラス工芸品と区別される場合も見れます。
ガラスの放つ美しさや、加工された表面の神秘さが多くの人を魅了し、ガラス職人、ガラス作家たちは新しい作品を生み出し続けています。
日本のガラス製造の目的は、グラスや皿、花瓶や酒瓶など、庶民の暮らしに密着したものだけではありません。明治から昭和にかけ、日本では漁業の現場でガラスが活用されていました。それがガラスの浮き玉です。
それまで利用されていた木材に比べ、浮力があり、水圧に強く、加工しやすいガラスの浮き玉は、多くの漁業者に利用されるようになりました。しかし、壊れやすいという欠点もあったため、浮き玉は、その後プラスチック製に変わっていきます。
しかし、丸く、薄くガラスを形作る技術を活用し、なにか作れないか。そんな思いから生まれた新しいハンドメイドガラスが人気を集め始めました。「小樽ガラス」(北海道)と「津軽びいどろ」(青森)です。
ガラスの浮き玉や石油ランプを盛んに製造し、北海道の産業発展に貢献したのが小樽。小樽が「ガラスの町」として知られるようになったのも、これら実用的なガラス製品が、全国に流通したことが理由です。
しかし、時代の移り変わりと共に、浮き玉やランプの需要は激減。グラスや皿、花瓶などの生活用品などを作るようになりました。浮き玉づくりで磨かれた、柔らかな曲線づくりは、ハンドメイドガラスの温かい雰囲気をより引き立て、安らぎを感じさせるガラス工芸品として、人気を集めています。
津軽もまた、浮き玉づくりで名を馳せていた産地の一つ。その丈夫さで知られるメーカーもあり、国内トップの生産高を誇っていました。その技術に、青森の自然をイメージさせる色ガラスを組み合わせたのが津軽びいどろです。
日本ならではの色合いを表現するため、色ガラスも自社で生産するというこだわりは、鮮やかな色合いながら落ち着いた雰囲気を感じさせる製品を生み出します。
気軽に日常使いできる、ガラス工芸品として、若いファンも増えています。
「日本のガラス工芸」といっても、一言ではくくれないほど、それぞれの産地がそれぞれに特色を持っています。それぞれの製品を見比べながら、自分好みの逸品を探すのも楽しいでしょう。もちろん、ガラスの輝きは、誰にも愛されるもの。こだわりのある方へのギフトにもぴったりです。
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沖縄でのガラス製造は明治時代中期頃に始まり、約100年の歴史があるといわれています。ところがその製造は、第二次世界大戦をきっかけに大きく変化を遂げることとなりました。
第二次世界大戦の敗戦によってガラス工房やガラスの原料がなくなってしまったことで、ガラス職人たちは、駐留米軍による廃瓶に注目しました。職人たちはその廃瓶を再利用し、琉球ガラスとして復活させたのです。このガラス製品が、現在の琉球ガラス製作の3割を占める「再生ガラス」による琉球ガラスです。
資源不足から発展した再生ガラスを使う製法は、時を経るごとにその独特の美しさに注目されるようになり、平成10年に沖縄の伝統工芸品に指定されました。
琉球ガラスは、戦後の資源不足の歴史を背景に生まれましたが、現在は伝統工芸品としてのその独特な美しさに注目が集まっています。
沖縄でのガラス製品づくりは明治時代中期頃に始まり、現在まで約100年の歴史があります。沖縄でガラス製品づくりが始まる前は、ほとんどのガラス製品を本土から輸入していました。
しかし、輸送途中にガラスが破損してしまうことが多かったと言われています。
そこで、長崎・大阪からガラス職人を沖縄に招致することで、沖縄でのガラス製造が始まりました。当時は主に食品を入れるための瓶やホヤ(火を使ったランプに用いられるガラス製の円筒)が作成されていました。
ところが、その頃に建てられたガラス工房や製品は冒頭に御紹介したとおり、第二次世界大戦により甚大な被害を受けてしまいます。
第二次世界大戦中の1944年10月10日の空襲(10・10空襲)により那覇市街は焦土と化し、多くのガラス工房が無くなるとともにガラス資源も失うことになりました。
第二次世界大戦が終戦を迎え、日本が復興に向かうなかで沖縄県の那覇市与儀周辺にて戦後の1947年頃からガラス製造が再度開始されたと言われています。
しかし、駐在兵や米軍関係者を中心にガラス製品の需要が高まったものの、物資不足の中でガラス製品の原料不足が続きます。そこで当時のガラス職人たちは駐留米軍によるジュースやお酒の廃瓶に目を付けました。
現在見ることができる「再生ガラス」による、琉球ガラス製品の誕生です。当時は米軍関係者からの需要が多く、ワイングラスや花瓶などアメリカ的なデザインの製品が多かったといわれています。
1960年代のベトナム戦争によりガラス製品の戦争特需が発生し、沖縄県内で数多くのガラス工房が建てられます。
1972年5月15日に、ついに沖縄が米国から日本に返還されると、沖縄の返還を記念して1975年に開催された「沖縄海洋博覧会」を契機に、本土からの沖縄観光ブームが巻き起こります。
観光ブームで沖縄に訪れた人々の土産物として、沖縄の伝統工芸品にも多くの注目が集まるようになりました。琉球ガラスも例外ではなく、商業用としてではなく観光客向けのお土産品として定着していったのもこの時期だと考えられます。
また、この時期には琉球ガラスの人気が高まると同時に、着色剤の開発や原料ガラスの使用により徐々に製品も種類を増やしていきます。その後の1998年(平成10年)、琉球ガラスは「伝統工芸品」として指定されました。
現在では、沖縄が観光地として豊かになると同時にガラス工房やメーカーも増え、多彩なガラス製作が行われるようになってきています。2014年には、県内では303人の職人たちが、17か所のガラス工房で琉球ガラスを作り上げています。
2020年には宙吹き職人である末吉清一が、琉球ガラス職人として「現代の名工(厚生労働省による、卓越した技術を持つ技能者を表彰する制度)」に選ばれるなど、現在でも伝統工芸品としての琉球ガラスへの注目や知名度は高まっています。
戦争や観光ブーム等の多大な影響を受けて変遷を遂げてきた琉球ガラスですが、時代を超えて愛され続ける特有の魅力や特徴があります。
琉球ガラスといえば、その厚みと丸みのある形が特徴です。
琉球ガラスは職人によって一つ一つ手作りされており、ほどよい厚みやぽってりとした丸さがあります。特有の丸さは、吹き竿で空気を送り込む工程に由来しています。それにより、通常の冷たい印象のあるガラス製品とは異なり、琉球ガラスは職人それぞれの味わいやぬくもりが伝わる形状になっています。
職人による手作りのあたたかみを感じることができる、丸みや厚みは琉球ガラスの魅力の一つといえるでしょう。
琉球ガラス特有の特徴として人気を集めているのが、ガラスに残されている沢山の気泡です。
本来のガラス製品の作成においては気泡が入ってしまった製品は失敗とされています。特に再生ガラスを使用した製作ではラベル等の不純物が残りやすく、必然的に気泡が入りやすくなります。
しかし、琉球ガラスの気泡はその豊かな魅力の一部として、多くの人々から受け入れられ、愛されているのです。現在はガラスの攪拌や巻きつけ、剣山の針などを用い、わざと気泡を含ませることもあります。
どことなく沖縄の海や涼しさを感じさせてくれる気泡は、まさに琉球ガラスならではの魅力といえるのではないでしょうか。
琉球ガラスのもう一つの特徴として、そのカラフルな色合いが挙げられます。
琉球ガラスが色とりどりな色彩を帯びているのは、敗戦後のガラス製造に使用された廃瓶によるものです。当時は廃瓶の約6種類の色(オレンジ・茶色・緑・水色・青・紫)がガラスの色として使われていましたが、現在ではカラフルな色を人工的に着色することで豊かな色彩や濃淡を生み出しています。
更に色とりどりの魅力のある琉球ガラスには、色ごとに意味が込められています。
- 赤
鮮やかな赤色の琉球ガラスは「太陽」を表しています。赤色は恋愛運や金運の向上、そして幸福・健康・願いを実現してくれるといわれています。
- オレンジ
オレンジ色は、沖縄の美しい「朝夕」が表現されています。オレンジの琉球ガラスは、忘れてしまいがちな感謝の心や反省の心を表してくれます。それに加え、金運や商売繁盛、健康や豊かな人間関係に導き、人生を幸福にしてくれるとされます。
- 黄色
他の色と比べ、明るい印象のある黄色は「前進」を意味します。そのため、前向きに生きること、努力が表現されています。また、平和・家庭円満も意味しています。
- 緑
多くの方が想像されるように、緑は沖縄の豊かな「大地」を表します。その雄大な緑色の「大地」から、平和や生命力、安定への想いが込められています。
- 青
琉球ガラスを代表する色である青は、同じく沖縄を代表する「海」を意味しています。そんな海のように深い愛があるよう、青色のガラスでは愛情運向上が表現されています。また、仕事運や学問運も表しているそうです。
- 水色
さわやかな水色は「空」を表しています。琉球ガラスの水色は出逢いの色とされており、友情や健康も意味しています。
- 透明
透明は「開運」を象徴しています。そのガラスの透明さから、素直や正直、先を見通す力が養われるとされています。また、その透明な正直さから信頼、ひいては成功まで導くといわれています。
使用する方の願い事に合わせて、使う琉球ガラスを変えてみるのも素敵ですね。沖縄らしいカラフルな色彩の中から、あなただけの琉球ガラスを探してみてはいかがでしょうか。
近年、SDGsへの関心の高まりとともに「持続可能性」に注目が集まっていますが、その潮流のはるか前の第二次大戦後から、琉球ガラスづくりでは「再生ガラス」が使われています。
再生ガラスによるガラス製品づくりは、その原料となる瓶の色によって色味が異なり、さまざまな仕上がりになるのです。例えば、泡盛の一升瓶やビールを原材料とする場合はブラウン系のガラス製品、コーラなどはグリーン系、ジャムの瓶はクリア系などその色合いは多種多様です。
琉球ガラスには、「宙吹き法」と「型吹き法」の主に二つの製法があります。どちらの技法を用いるかは、製造するものの形などにより決められます。
- 宙吹き法
約1300~1500℃の高温で溶けたガラスを、筒状の「吹き竿」と呼ばれる道具で巻き取ります。その吹き竿に息を吹き込み、ガラスをふくらませながら製品の形を創りだしていく技法です。
この技法では、ドロドロに溶けたガラスに働く重力とガラスが巻き付いた吹き竿を回す遠心力だけで整形します。高温のガラスが冷める前に成形をする必要があるため、異なる模様や形が加工の過程で偶然つくこともあります。
そのため、宙吹き法では、加工過程での数多くの偶然や吹き竿に吹き入れる職人の加減により、同じものが一つとして存在しない多種多様な製品をつくることが可能です。
- 型吹き法
宙吹き法と同じく、ガラスを約1300~1500℃で溶かします。その後、溶かしたガラスを吹き竿につけ、金属型、木型、石型に差し込みます。その状態のまま竿に息を吹き込むことで、型通りに成形することができます。
この技法では型通りの同じ形状の製品を沢山作ることができます。型で同じ形を成形しているとはいえ、工房や材料・職人によって一点一点異なる味魅力を楽しむことができます。
- 製造工程
どちらの工程においても、琉球ガラスの製造工程としては主に5つ段階があります。これらの工程の中で、ガラスを溶かしておく窯(坩堝、るつぼ)、製品を仕上げる窯(整形窯)、製品を冷ます窯(徐冷窯:じょれいがま)の三つの窯が使われるため、2~3人の職人が連携して一つの作品が作成されます。
1. 色を調合する
原料を色ごとに調合します。廃瓶を使用する場合は、調合の前に色別で分けて洗うことからスタートします。
2. 原料を溶かす
調合済みのガラス原料を約1300~1500℃で溶かしておく窯(坩堝、るつぼ)に入れ、一晩溶かします。
3. 形を作る
ここで、「宙吹き法」・「型吹き法」のどちらかの製法を用いて成形していきます。最終的には、製品を仕上げる窯(整形窯)を用いながら形をしっかりと整えていきます。
4. 冷やす
約600℃で常温になるまで、ゆっくりと製品を冷ます窯(徐冷窯:じょれいがま)に一晩入れておきます。そうすることで、急速な温度変化によるガラスの損傷を防ぎ、成形した琉球ガラスを製品へと仕上げます。
5. 検品する
徐冷窯より取り出された製品を水洗いしてヒビや割れがないか、期待した形に成形されているかを検品し、皆さんのもとに届く琉球ガラスが完成します。
こうした、職人や工房の丁寧なひとつひとつの手作業によって、一つとして同じものがない琉球ガラスが生まれるのです。
日本工芸堂では、全国各地のガラス工芸品を取り扱っています。その中から、日本工芸堂スタッフが自信をもっておすすめするガラス工芸品をご紹介します。
日本を代表するガラス工芸として、国内外の人々を魅了し続けている江戸切子。
江戸切子とは、ガラスの表面に華やかな文様を加工した工芸品のことで、東京都江東区・隅田区を中心に江戸時代から技術が受け継がれています。その特徴は、表面に施されたシャープで独特な文様や色味にあります。
江戸っ子に愛され続け、2002年に伝統工芸品に指定された江戸切子は、その美しさから多くの人々に親しまれています。
> 詳細はこちらです。
切子の中でも長い歴史を持つ薩摩切子。薩摩切子はカットの緩やかさや美しいグラデーションのぼかしが特徴です。江戸切子よりも厚めの色ガラスを重ね、そこに緩やかにカットしていく薩摩切子は、江戸切子とは異なる風合いで人気を博しています。
江戸時代の藩主たちから愛された薩摩切子で、癒しの時間を彩ってみませんか。
佐賀県の重要無形文化財として受け継がれている肥前びーどろ。
型を全く使わない「宙吹き」という技術で知られる肥前びーどろは、その表面の艶とやわらかな形状が特徴です。継承された高い技術力が必要となってくる肥前びーどろづくりは、他にない類まれなその柔らかな風合いがあります。
江戸時代より続く高い技術によって作成された肥前びーどろで、大切なひとときを過ごしてみてはいかがでしょうか。
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目次
九谷焼とは、石川県金沢市一帯で作られる陶磁器のこと。九谷焼は、「上絵付け」と呼ばれる技法により表現される豪快で色彩豊かな模様が特徴。上絵付けとは、本焼きした陶磁器の釉薬の上に顔料で模様を描き、再び高温で焼き上げる技法のこと。九谷焼は赤・黄・緑・紫・紺青の5色の絵の具によって描かれる山水や花鳥などの絵画的な柄が代表的です。
九谷焼は、1655年に大聖寺藩の初代藩主の前田利治が、有田で陶技を学んでいた後藤才次郎に有田村で開窯させたのが始まりとされています。しかし、後藤才次郎の窯はわずか100年で閉窯。閉窯の理由は明確になっていませんが、この期間に焼かれたものを「古九谷」と呼んでいます。閉窯から100年後、加賀藩が陶磁器の製造を奨励したことにより、古九谷再興の動きが始まり、再び九谷焼が作られるようになりました。その後、文人画家の青木木米や豪商の吉田屋伝右衛門などの活躍により、現在のような九谷焼が誕生しました。
現在、九谷焼はその色彩の多さを活かして、アニメとのコラボ商品を数多く販売。機動戦士ガンダムやドラえもん、ウルトラマンなど、世界的に有名な日本アニメとコラボレーションすることで、日本だけでなく海外からも注目を集めています。
山中漆器とは、石川県加賀市で作られる漆器のこと。山中漆器は、優れた木地挽物技術が特徴で、自然の木目をそのまま活かしたデザインと優美な蒔絵が魅力のひとつ。石川県には3つの漆器産地があり、それぞれの特徴から「木地の山中」「塗りの輪島」「蒔絵の金沢」と言われています。
山中漆器の誕生は、今から約400年前。安土桃山時代に木地師の集団が、上質な材料を求めて移住してきたのが山中漆器の起源と言われています。木地師の集団は、山中温泉上流の真砂という集落に定着し、ろくろ挽きを開始。ろくろ挽きで作られる椀や盆などは、山中温泉に訪れる湯治客のお土産として人気がありました。江戸時代に入ると、京都や会津から塗りや蒔絵の技術が導入され、現代の山中漆器の基礎が築かれます。
現在は、天然木に漆を塗って仕上げる伝統的な「木製漆器」だけでなく、ウレタン塗装をしたプラスチック素材の「近代漆器」も開発。低単価で普段使いしやすい近代漆器が誕生したことで、多くの人が気軽に使えるようになり、漆器を魅力を身近に感じられるようになりました。
輪島塗とは、日本の石川県輪島市周辺で伝承される、漆を使った塗り物技術のこと。先述の「木地の山中」に対して、「塗りの輪島」と称される、精度の高い塗りが特徴です。高い技術力と品質により、輪島塗製品は美術工芸品や家具、建築材料などに幅広く用いられており、高い評価を得ています。
漆は、縄文時代から人類が使い続けてきた貴重な素材で、その優れた特性は一万年以上経っても変わらずに現代まで受け継がれています。また、その塗り技術は石川県輪島市で代々伝承され、丈夫で美しく、修理も容易な「輪島塗」という素晴らしい技術が生まれました。 「輪島塗」という名を冠する製品は、約120の独自の工程を経て作られます。そして加飾の工程に分かれ、職人たちが分業することでそれぞれの技術を最大限に引き出すことができ、高品質な輪島塗製品が完成します。
特に、ノミで塗の表面を彫刻する技法「沈金」は、輪島は他の産地よりも深さ・秘密さがあり、人間国宝、芸術院会員の両最高峰を輩出しています。
>輪島塗について詳しく見る
金沢箔は、文禄2年(1593年)に加賀藩初代藩主前田利家によって製造が命じられ、その後加賀藩の美術工芸振興策により箔の製造が奨励されました。元禄9年(1696年)には江戸幕府が箔の製造を江戸・京都以外で禁止しましたが、加賀藩の庇護のもとで密かに製造が続けられ、元治元年(1864年)には藩の御用箔の製造が許可され、金沢箔は質・量ともに大きく発展しました。
藩政の崩壊に伴い箔の統制がなくなり、江戸箔に代わって金沢箔が品質の良さで市場を独占し、現在では全国生産の99%以上を占めています。金沢箔の特色は、純金に微量の銀や銅を加えた合金を使用し、1万分の1ミリ程度の厚さまで均一に広げる技術です。
金沢箔は工芸材料として広く利用されており、仏壇・仏具、水引や西陣織などの金銀糸、漆器の沈金や蒔絵、陶磁器の絵付けに使用されています。その高い品質と幅広い用途により、金沢箔は日本全国で不動の地位を築いています。
>金沢箔について詳しく見る
加賀友禅とは、石川県金沢市で作られる染織物のこと。加賀友禅は、落ち着きのある写実的な草花模様が特徴で、絵画のような美しさがあります。加賀友禅は、「加賀五彩」と呼ばれ、藍、臙脂(えんじ)、黄土、草、古代紫の5色を基調していることや、あえて虫食い葉を描く「虫食い」の技法、外側から中心にむかってぼかす「ぼかし」の技法によって、絵画のような模様が表現されます。
加賀友禅は、今から約500年前に存在していた「梅染」の技法にまで遡ります。また17世紀中頃には、兼房染や色絵・色絵紋の技法が確立され、「加賀の御国染」と呼ばれていました。江戸時代中期に、京都の宮崎友禅斉が、これらの技法をベースに加賀友禅の技術を発展させたと言われています。
近年、友禅染の多くの産地が技法を合理化するなかで、加賀友禅はあくまで手作りにこだわり、多くの工程を手作業でおこなっています。
金沢仏壇とは、石川県金沢市で作られる仏壇のこと。金沢仏壇は、蒔絵や彫刻の技術の高さと金沢の良質な金箔をふんだんに使った豪華さから、美術工芸品として高く評価されています。
金沢仏壇の歴史は17世紀にまで遡ります。加賀藩2代目藩主の前田利常が大阪や京都から多くの職人を招き、細工所を築いて美術工芸品の制作を開始しました。その後、徳川幕府の宗門改にのっとって、加賀藩が各家庭に仏壇を持つように勧めたことで仏壇の需要が急増。また、当時加賀藩は加賀百万石と呼ばれるほど豊富に財力があったので、現在のような豪華絢爛な加賀仏壇が作られるようになりました。
室町時代に蓮如上人という浄土真宗の僧侶が北陸地方で普及したため、もともと北陸地方には浄土真宗を信仰している人が多く、仏壇の需要が高かったことも、金沢仏壇が発展した大きな理由です。
現在も金沢仏壇は、木地師、宮殿師、木地彫師、金具師、塗師、蒔絵師、箔彫師などの職人が手作業で丁寧に作っています。金箔や蒔絵などの華やかさのなかに、手作りの温かさを感じられる仏壇です。
越前焼とは、福井県福井市、あわら市、丹生郡越前町などで作られる陶磁器のこと。越前焼は、「六古窯」と呼ばれ、平安から鎌倉時代に始まった歴史ある焼き物のひとつに数えられます。越前焼の特徴である、土の温かさを感じられる素朴な風合いは、薪の灰がかかり溶けて自然の釉薬となる「自然釉」などの技法によって表現されます。また、越前焼に用いられる土には鉄分が多く含まれ、耐久性に優れているので、日用品としても人気が高いです。
越前焼の歴史は古く、800年以上前の平安時代末期にまで遡ります。もともとは須恵器の製造を主におこなっていましたが、常滑(愛知県)の技術を導入したことで、釉薬をかけずに高温で焼いた、焼き締め陶の製造が始まりました。当時は、壺・甕・すり鉢など日用雑器をメインに製造していました。その後、安土桃山時代に入ると、茶道が誕生したことで茶器の需要が拡大。しかし、越前焼は変わらず生活雑器を作り続けていたことで、一時は衰退の一途をたどりました。
その後、1942年、東洋陶磁研究の第一人者・故小山冨士夫さんが越前焼の古窯跡調査をおこなったことで、越前焼の歴史的価値が見直され、瀬戸、常滑、信楽、丹波、備前とともに『日本六古窯』の1つに位置付けられました。
今では若い職人も多くなり、現代風にアレンジした作品も多くなっています。
越前漆器とは、福井県福井市、鯖江市、越前市を産地とする漆器のこと。越前漆器は、漆を塗り重ねることで生まれる上品で落ち着いた光沢と、丈夫で使いやすい実用性が特徴。越前漆器はその使いやすさが評価され、今では業務用漆器の国内シェア80%以上を誇ります。
越前漆器の歴史は、今から約1500年前にまで遡ります。古墳時代末期に後の第26代継体天皇が片山集落(現在の福井県鯖江市)の塗師に冠の修理を命じました。塗師は漆で冠を修理し、さらに黒塗の椀を一緒に献上したところ、その出来栄えに感動した天皇が漆器作りを奨励したのが、越前漆器の始まりとされています。
山林に囲まれ豊富な資源があった越前には、古くから漆の木から樹液を採取する職人が多く存在し、全盛期には全国の漆掻きの約半数が越前の人だったと言われています。その後、江戸時代に入ると、京都から蒔絵、輪島から沈金の技術が導入され、実用性に優れていた越前漆器に華やかさが加わりました。
江戸時代までは、椀や盆など「丸物」と呼ばれる製品を中心に作っていましたが、明治時代には盆、重箱など「角物」も作られるようになりました。現在は、新しい技術や機械の導入によって大量生産が可能になり、業務用漆器の産地として名を馳せています。
越前和紙とは、福井県越前市を中心に作られている和紙のこと。越前和紙は、その用途によって原料が異なり、楮を用いた書道用和紙や三椏を用いた襖紙など、高い品質と種類の幅広さが特徴です。
越前和紙は、海外から日本に紙が伝来した1500年前にはすでに、現在の福井県越前地方の岡太川流域で生産されていたと考えられています。奈良時代には写経用和紙として和紙が使われていました。その後、武士が紙を大量に消費するようになったことで、技術・生産量ともに向上し、産業として大きく発展。江戸時代には、福井藩の藩札として紙幣にも用いられるようになりました。
今では多くの芸術家たちから愛用され、便箋や名刺などの日用品から格式高い高級和紙まで、幅広い種類の和紙を製造しています。
高岡漆器とは、富山県の高岡市で作られる漆器のこと。高岡漆器は、伝統的な技法によって表現される文様と、文様をより際立たせる漆塗りが特徴。
高岡漆器には「勇助塗」「彫刻塗」「青貝塗」の代表的な3つの技法があります。
花鳥、山水、人物などの錆絵が描かれており、青貝、玉石、箔絵などを施した、赤を基調した唐(中国)風の作品。
素地の表面に朱や黒の漆を塗り重ねて、雷文や亀甲の地紋を表し、その上から草花や鳥獣、青海波、牡丹、孔雀などを彫り出した作品。
「鮑」「夜光貝」「蝶貝」「孔雀貝」などの貝を薄く削り、ひし形や三角に加工し、これらを組み合わせて三水や花鳥などを表現した作品。一般的に貝殻の厚さは0.3mmですが、高岡漆器では0.1mmの貝殻も使用します。ごく薄い貝殻を使用することで、下地の漆が透けて青く光って見えるのが特徴です。
高岡漆器は、江戸時代初期に加賀藩初代藩主の前田利長が高岡城を築き、全国各地から職人を招いて、武具や仏壇、箪笥などを作らせたのが始まりと言われています。その後も文化の発展とともに技術も大きく進化。数多くの名工が誕生し、名工によって勇助塗や青貝塗などのさまざまな技法が開発されました。
高岡銅器とは、富山県高岡市を産地とする金工品のこと。高岡銅器は、銅器の国内シェア90%以上を占めており、学校の銅像や、大仏、除夜の鐘などのほとんどが高岡で製造されています。高岡銅器は、小物から大仏まである種類の多さと、さまざまな大きさの製品を加工する技術の高さが特徴です。
高岡銅器も高岡漆器同様の歴史的背景から生まれました。江戸時代初期に加賀藩主の前田利長が高岡城を築き、城下の発展のために7人の鋳物師を高岡に招いたのが、高岡銅器の始まりとされています。当初は、農具や生活用品などの鉄鋳物を中心に製造していましたが、江戸時代中期に入ると、大仏や鐘などの銅器も作られるようになりました。
明治時代には、パリやウィーンなどの万国博覧会に出展したことで、高岡銅器の名が世界に知れ渡り、今では日本屈指の産地となりました。
越中和紙とは、富山県下新川郡朝日町、富山市、南砺市で作られる和紙のこと。越中和紙は、下新川郡朝日町の蛭谷紙、富山市の八尾和紙、南砺市の五箇山和紙を総称した和紙のことを指します。これらはそれぞれ特徴が異なり、越中和紙は、産地によって多種多様な種類があります。
越中和紙の起源は、産地によって異なります。まず、下新川郡朝日町の蛭谷紙は、1688~1704に書かれた書物に、蛭谷村「中折紙少々漉申候」と記されていることから、その頃にはすでに製造されていたのがわかります。
南砺市の五箇山和紙の製造がいつから始まったかは定かではありません。しかし、江戸時代の公文書に五箇山和紙に関する記録が残っていることや、年貢として和紙が納められていたことから、17世紀〜19世紀にはすでに製造されていました。
八尾和紙の発展は17世紀。1688~1704年に富山二代藩主前田正甫が売薬を奨励したことで、薬の袋や、薬の配置先を記録する懸場帳が使われるようになり、和紙が活発に製造されるようになりました。
越中和紙は、全国的にも若い職人が多く、伝統的な和紙だけでなくモダンなデザインの製品を製造するなど、新しい取り組みにも積極的に取り組んでいます。
北陸地方では多くの文化が花開き、時代とともに変化してきました。人々の生活に近いところで親しまれてきた伝統工芸品は、当時の文化や生活が色濃く反映されています。
伝統工芸品を通して当時の人々の生活を想像してみたり、何百年後も同じ工芸品が使われている未来を思い描いてみるのも伝統工芸品の楽しみ方のひとつです。
・対象ブランド
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伝統工芸品の魅力について少し覗いてみませんか。
そもそも「伝統工芸」とは何でしょうか。「工芸品」とは、辞書的な意味で言えば、日常生活において使用される道具のうち、その材料・技巧・意匠によって美的効果を備えた物品、およびその製作の総称を指します。
最も理解しやすい伝統工芸品は経済産業大臣が指定する”伝統的工芸品”ではないでしょうか。令和5年11月現在、全国で241品目あります。この他にも都道府県が定めた工芸品などを足し合わせると1000品目は超えます。
伝統工芸品のジャンルは、陶磁器や木工品・竹工品、漆器や金工品、その他ガラス工芸など多岐に渡ります。さらに産地によって背景にある文化や歴史が異なり、理解すればするほど奥の深さを味わえます。今回はその伝統工芸の魅力の一部を主観に基づきご紹介していきます。
本記事では伝統工芸のよさを6つに分けてご紹介します。
それぞれ見ていきましょう。
伝統工芸品の魅力は、なんと言ってもその製品の多くに職人の長年の修練した技術と、心に響く意匠が凝らされている点でしょう。代々受け継がれてきた技法の精巧さと手作りならではのぬくもり。その妙技は、一目見るだけで惚れ惚れするものばかりです。
伝統工芸品が長年人々から愛されてきたのには、理由があります。そのひとつに使いやすさとデザイン性の両方が備わっているという点があります。
例えば、江戸切子のぐい呑みは、お酒を嗜むのにちょうどいい形状をしている上、表面には職人による洗練されたカットが施されています。「目で見て楽しい、呑んで美味しい」のが江戸切子の魅力です。
このように、伝統工芸品は、単純に機能的に優れているというだけでなく、職人の意匠が込められたデザインにも価値があります。
同じものを長く使っていると、いつかは古くなってしまうものです。伝統工芸品もいろいろな素材が使われており、日が経つと色や性能が変わることがあります。しかし、長く使っている分、愛着も湧き、経年変化そのものを楽しむことができます。
例えば竹細工の場合、購入したての頃の生き生きとした竹は、だんだんと落ち着いた飴色に変わっていくでしょう。また、陶磁器なども長く食卓に置いていると落ち着いた色合いに変化したり、貫入が進んだりします。さらに特徴的なのは、南部鉄器や山形鋳物などの金工品です。使用するにつれて生まれる「錆び」は、適切な手入れを行えば、鉄分を多く含むお湯を作る大切な変化となります。
大切に扱っていたとしても、壊れてしまうことがあります。しかし、伝統工芸品を生み出す職人はその品のことを熟知しているので、修理をお願いすることもできます。つくる技術があれば修理する技術もある、ということです。修理して使い続けられる点も伝統工芸品の魅力です。
例えば、お使いの陶器や磁器が割れてしまった場合には「金継ぎ」と呼ばれる、割れた箇所を漆などを用いて修理する技術で、修繕することができます。また、漆器が剥げてしまった場合は、塗り直しの処置をしてくれるところも多くあります。使い捨てではありません。
関連記事:修理・補修で長く使う伝統工芸の技
伝統工芸品やその土地ゆかりの産業は、その土地の気候や歴史の変遷に紐づいて引き継がれてきました。そのため、それぞれの工房や技術の背景には、その土地の文化やそこで暮らしていた人たちの思いがたくさん詰まっています。
そして、さまざまな地域の伝統工芸品について知ることは、日本各地の歴史を知ることに繋がっていきます。工芸品を通して、地域の歴史への理解を深めていくことはきっと楽しいでしょう。
伝統工芸品を知ることは、日本の歴史と地域の特性を知る機会になるのです。
伝統工芸品は、その土地の特性に合わせた原材料を用いています。例えば、漆の木の育成には湿度が高い環境が良いことから、漆器産業は盆地で栄えていることが多いです。石川県加賀市の山中漆器や福島県会津若松市の会津塗りなどがあります。
また、限られた資源の中で「必要な分だけつくる」という意識があり、自然資源の無駄遣いをしていないということもあります。
関連記事:伝統工芸とSDGsの関係とは?
ここまで伝統工芸品の魅力をお伝えしてきましたが、いくつか抱えている課題も考えられます。本記事では、以下の5点を取り上げていきます。
それぞれみていきましょう。
「伝統」という言葉から、現代の日用品とは違った古くささを感じるという若い世代の方もいらっしゃるでしょう。若い世代が新しいものを追い求めるのは世の常ですので、仕方のない現象なのかもしれません。
しかし、伝統工芸品が現在まで多くの人々に使われてきたことも事実です。長い間、続いてきたものの価値は、信用に値します。ものづくりの革新とそれをいかに伝えるかという流通側の力量あわせて必要でしょう。
生活習慣が変化したことにより、人々の購入するものも変化していきました。傾向として、安価で扱いが簡単な商品が好まれるようになっていきました。
伝統工芸品産業がひとつのピークを迎えたのは、バブル期でした。その頃は結婚式の引き出物やイベントのギフトに選ばれることが多々ありましたが、バブルが崩壊後、少しずつ市場が縮小してしまいました。他事例では核家族化が進んだことでこどもの日やひなまつりなどの儀礼の規模が小さくなるなど様々な現象がみられます。
しかし、それぞれの工房では、時代のニーズに合わせた製品の在り方を日々模索しています。例えば、こどもの日に飾る「兜」には、カラフルな色合いかつ設置に複雑な工程が要らない製品も販売され、子育て世代に人気を博しています。
親世代が安価で便利なものを家庭に取り入れるようになってから、日常生活で伝統工芸品に触れる機会は減ってしまいました。そのため、次の世代には、伝統工芸品がどのようなものなのかそもそもよくわからないという人が少なくありません。
使い勝手をよく知らないものは、なかなか手に取りにくいため、いつの間にか人々と伝統工芸品との距離が生まれてしまったのかもしれません。
人々の購入方法が、実店舗からネットショッピングに移行しているのもひとつの要因でしょう。現代のお客さんは、気になるものがあったらネットで検索して、ヒットした商品を購入しています。
ピーク時は百貨店に陳列することで、お客さんとの接点を持ってきた伝統工芸品でしたが、徐々にネット上での露出が重要になってきました。オンラインでうまく表現されていなければ、いい品であってもお客さんに見つけてもらえません。
自社サイトで販売しているメーカーは、多く存在しています。ただ、このような時代の変化にうまく対応できているメーカーとそうでないところで、差が生まれていることは確かです。
単純に機能的な側面で比較したとき、伝統工芸品とそうでない製品では、後者の方が安価なことは多いです。”ジュースを飲む”、”お酒を呑む”という行為だけならば、百均で売られているコップで事足ります。
機能的な側面だけでは言い尽くせないのが伝統工芸品なのですが、その魅力をよく知らない方は、「安さ」を基準に手に取るでしょう。
他方、工芸品を利用することで地域への理解が深まったり、文化的な背景を味わったり、技術の精巧さに想いを馳せたりすることができるのです。
職人の意匠、思いなど伝統工芸品に詰まっている魅力を発信し、そうした奥深さに触れる機会を人々に提供することが、我々伝統工芸品を扱う人間の今後の課題であることは間違いありません。
伝統工芸品の代表的なジャンルを5つご紹介します。
1.陶磁器
2.漆器
3.金工品
4.ガラス工芸
5.日本刀
以下それぞれをみていきましょう!
陶磁器とは、焼き物の種類である「陶器」と「磁器」のことです。
日本の焼き物産業は、室町時代から安土桃山時代にかけて流行した茶の湯の文化をきっかけに、華々しく発展を遂げていきました。
日本一の流通を誇り「特徴がないことが特徴」と表されるほどいろんな焼き物が生産される、岐阜県の美濃焼や、日本初の磁器の産地である、佐賀県の有田焼。また九谷五彩と呼ばれる鮮やかな絵付が特徴の、石川県の九谷焼など、さまざまな産地や窯元があります。
産地によっては定期的に陶器市が開催されているところもあるので、ぜひ現地でお気に入りの焼き物を見つけてください。
独特の艶感が美しい漆器は、漆を塗った器のことです。断熱性が高く、熱々のスープを入れてもおいしく頂くことができます。また、重ね塗りをすることで耐久性も上がり、陶磁器に比べて頑丈であることも特徴です。
全国には、伝統的工芸品として登録された産地が、現在のところ、23ヶ所あります。石川県の輪島塗や山中漆器、ものづくりの街として有名な、福井県鯖江市の越前漆器。
また、堅牢な印象を抱く富山県の高岡漆器、そして福島県会津若松市の会津塗りなど各地で生産されています。現在、日本工芸堂では、売上の1%を会津塗りの後継者育成活動に寄付をする取り組みを行なっています。
関連記事:オンラインショップ売上の1%を工芸産地へ寄付。
日本伝統の想いをつなぐ「1% for 日本の工芸育成」
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金工品とは、金属を加工してつくる工芸品のことです。皆さんの身近にある鍋や釜も金工品のひとつです。
有名な金工品に、岩手県の南部鉄器や山形県の山形鋳物があります。ずっしりとした重厚感を持ち、飲むと鉄分が取れることで人気の工芸品です。「金」で有名なのは、石川県の金沢金箔です。
また、「銀」では1979年に伝統的工芸品に指定された東京銀器があります。さらに「銅」では、新潟県燕市の燕槌起銅器と富山県高岡市の高岡銅器があります。燕三条は、オープンファクトリーの先がけとしても注目されています。
日本のガラス工芸は大きく分けて「吹きガラス」と「カットガラス」の2つです。
ガラスの表面に花鳥風月などの紋様をカットしていくカットガラスでは、東京の江戸切子と鹿児島県の薩摩切子、そして大阪府の天満切子があります。
関連記事:薩摩切子と江戸切子はどう違うの?そもそも切子とは?
「吹きガラス」では、鉄ではなくガラスの棒を用いる「ジャッパン吹き」の技法に寄ってなめらかな仕上がりが人気の、佐賀県の肥前びいどろや、浮き玉から着想を得た青森県の津軽びいどろ、また、廃瓶を再利用して美しい工芸にする、沖縄県の琉球ガラスが有名です。
日本刀は、洗練された刀姿を美術品として高く評価され、国内外で人気を博しています。日本刀として認められるには、原材料が「玉鋼」と呼ばれる鉄の塊であることと「鍛錬」と呼ばれる、職人によって鉄を打ち付ける工程を経ていることの2つの条件が必要になります。
人斬りの道具から美術品・工芸品として役目を移していった日本刀。上野の国立博物館で展示物として見ることもできます。
関連記事:日本刀文化を伝えるエヴァンジェリスト【日本工芸コラボトーク Vol.3 studio仕組】
日本各地で、伝統工芸産業と地域が連携して、工房見学やトークショーなどのイベントが開催されています。4事例をご紹介します。
それぞれをみていきましょう。
RENEW(リニュー)は、持続可能な地域づくりを目指した工房見学イベントを主催する団体です。イベントは2016年から毎年、福井県鯖江市・越前市・越前町の3地域を跨いで開催しています。
会期中は、越前漆器・越前和紙・越前打刃物・越前箪笥・越前焼・眼鏡・繊維の7産地の工房・企業を一斉に開放し、見学やワークショップを体験することができます。作り手の想いや背景を知り、商品の購入を楽しめる特別な工芸体験が可能です。
(詳細サイト:https://renew-fukui.com)
五感市は、「人々の五感を刺激し、いわて県南の地場産業を活性化させる!!」をビジョンに掲げ、イベント参加者に「五感」で体感する機会を提供することによってこの地の工芸品のファンになってもらおうという取り組みをおこなっています。
場所は、岩手県県南地域<一関市・平泉町・奥州市>各地の工房です。本イベントでは、工房見学・制作体験、また職人トークなどに参加することができます。
(詳細サイト:https://gokan-ichi.com)
Koubaの正式名は「燕三条 工場の祭典」といいます。燕三条は、新潟県にある金属加工を中心としたものづくりの街です。取り組みは2013年から行われており、地域の人々や外からきた人たちにものづくりの背景や奥深さを現場で直接、伝える場を提供しています。
イベントの参加者の中には、職人を志す若者も出てきており、ものづくりの技術を次の世代に継承するきっかけにもなっています。
イベント中、参加者は地図を手にして、地域内の工房を見学をすることができます。2022年度は3年ぶりに、オンラインではない形でのイベントが開催されました。
(詳細サイト:https://kouba-fes.jp/)
職人の技と志を体感する香川発の展示博覧会です。香川県の伝統工芸や地場産業を支える職人(アーティザン)と、日本を代表するアーティストやクリエイターとの共創によるアートプロダクトをはじめ、個性あふれるアーティザンが多数出展しています。
2022年は香川県高松市にある、高松城跡(玉藻公園)内の重要文化財「披雲閣」にて、アートプロダクトの観覧、トークショーの拝聴、工房見学などが実施されました。
(詳細サイト:https://s-remix.jp)
伝統工芸品の魅力についてご紹介していきましたが、いかがだったでしょうか。伝統工芸品の背景には、これまで培われてきたその土地の文化と歴史が紐づいています。そしてそれを後世に残そうとする取り組みは各地で行われています。
「百聞は一見に如かず」ということわざの通り、気になった工芸品について調べてみて、実際に手にとってみたり、現地を訪れてみたりしてみてはいかがでしょうか。きっと自分にピッタリの工芸品が見つかるはずです。
この記事では、当方視点でまとめた内容ですが、ぜひご自身での視点で背景を探ってみてください。あなたにとっての工芸品との出会いのきっかけになればうれしいです。
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しかし、海外で南部鉄器の需要が増加するにともなって、日本製の南部鉄器に似せたコピー商品が流通するようになりました。さらに、最近では、Amazonなど大手通販サイトに中国業者が参入し、粗悪品や日本製を装った偽物の販売が散見されます。
今回は、岩手県で南部鉄器の製造を続ける「及富」の菊地さんに、中国業者参入による被害と対策方法をうかがいました。菊地さんのお話をもとに、日本製の南部鉄器を購入する際に、押さえておきたいポイントをまとめました。偽物購入の被害に遭わないために、ぜひチェックしてみてください。
南部鉄器とは、岩手県の盛岡市と奥州市で作られる鉄鋳物のこと。鉄鋳物とは、溶かした金属を砂などで作った型に流し込む技法で作ったものを指します。
南部鉄器は、「孫の代まで使える」と言われるほど丈夫で長持ちするのが特徴です。愛情を持って使用すれば、一生ものの道具になります。
南部鉄器には、急須や鍋、フライパンなど幅広い種類の商品があります。なかでも鉄瓶は特に有名で、南部鉄瓶で沸かしたお湯は味がまろやかで健康にいいと、多くの人が愛用しています。
大手通販サイトの普及により、今では多くの南部鉄器がインターネットで販売されています。なかには中国製品を南部鉄器と語ったページも見受けられます。
これらを見極めることは難しいのでしょうか?
結論としては、見た目で判断するのはかなり難しいようです。中国製の商品はかなりクオリティが上がっており、一般のお客様ではではなかなか判別できません。
日本製の商品とは違い、色味がかなり派手だったり、蓋とつまみに接合面があったりとディティールに違いはありますが、通販サイトに掲載されている写真から判断するのは至難の技のようです。
また、日本のメーカーの画像を無断転載している場合もあるため(当社撮影画像も無許可で転用されていたりします、指摘しても梨のつぶてです)、写真で区別するのは非常に困難でしょう。
見た目で中国製を判別するのはかなり難しいことがわかりました。それでは、どういった点に注意すれば、日本の南部鉄器が購入できるのでしょうか。
南部鉄器の職人、菊地さんが教える、インターネットで購入する際に注意すべき5つのポイントを紹介します。
インターネットで南部鉄器の商品を選ぶ際、破格な値段設定の商品には注意が必要です。日本メーカーの鉄瓶は、安いもので8000円程度。1-2万円の商品が多く、伝統工芸士が作る個人作品は5-20万円程度するものもあります。値段が安すぎると、粗雑ですぐに壊れてしまうだけでなく、サポートの対応が悪い可能性があります。
鍋敷きや風鈴など、小物類は数千円程度で購入できたりと、商品の種類によって金額も大きく違います。そのため、購入を検討する際は、さまざまなメーカーのホームページを見て、相場を確認しておくことも重要です。
次に注意しておきたいのが、生産国の表記です。岩手県で作られた南部鉄器には基本的に“岩手県産”や“日本産”と記入してあります。サムネイルや商品説明欄、登録情報のどこにも生産地の表記がない商品は、中国製の商品である可能性が高いです。
少しでも怪しいなと感じたら、メーカー名で検索してみましょう。記載されてるメーカーやブランド名で検索して、ホームページがなかったり、Amazonや激安サイトしかヒットしない場合は、中国製の可能性が高いです。日本製かどうか確かめるためには、まずメーカーのホームページがあるか確認してみてください。
サムネや画像の文字が常用漢字でない商品は、中国製といってほぼ間違いありません。ぱっと見ただけでは、気付かないこともありますが、よく読んで見慣れない漢字が使われていたら要注意です。
また、中国業者は商品説明欄の日本語がおかしい場合があります。日本語に違和感を感じたら、メーカ名を検索するなど、他の方法を試してみるのがおすすめです。
疑わしい商品を見つけたら、レビューやQ&Aを見てみるのも1つの手段です。中国業者が出品している商品は、カスタマーの質問に対して、あいまいな返事をしていることがあります。評価が低かったり、Q&Aに違和感のある商品は注意が必要です。
見た目では判別できないほど、中国製品のクオリティも日々上がっています。しかし、日本の南部鉄器には、手にしたときに感じる確かな重さと温かさがあります。それは、職人の想いや一つひとつ丁寧に仕上げる温かさで、中国製品では決して真似できないものです。
いいものを長く使い続けるためには、「どこで」「誰から」購入するかが特に重要です。同じ値段の商品でも、困ったときに助けてくれたり、丁寧に修理してくれたりする職人や店舗で購入することで、結果的に長く使い続けることにつながります。
岩手県で製造されている南部鉄器は、重厚感のある伝統的なデザインだけではありません。現代の生活にも合うカラフルな商品も多く販売しており、見た目のお洒落さから若者からも人気があります。毎朝のコーヒーや束の間のティータイムなど、ふとした普段の日常に日本の南部鉄器を取り入れてみてはいかがでしょうか。
・対象ブランド
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日本を代表する綿織物「久留米絣」をご存知ですか。戦時中に、作業着として利用されてきた「もんぺ」もこの技法で作られたものが多数あります。
「絣(かすり)」とは、紋様の縁がドット柄にぼやけていることをそう呼んだもので、この、柄が「かすれ」ている様子がこの技法の最大の特徴です。
福岡県久留米市とその周辺地域で生産されており、伊予絣と備前絣と並んで、日本の三大「絣」のひとつ。1957年には国の重要無形文化財に指定されています。
「久留米絣」の最大な特徴は、名前にもある通り、「絣」の紋様です。
「括り(くくり)」の工程や「織り」の工程を経て、独特の「かすれ」模様が生み出されます。また「染め」の工程にも特徴があります。それは、「藍色」です。藍染めは久留米絣の代表的な色合いです。
一方、現在は、伝統的な技法に捉われすぎないモダンなデザインの製品も多く見られます。紋様や色合いに工夫を凝らしたり、ハンカチやスカーフなどの、衣服以外の製品も生産され、さまざまな形で久留米絣の技法に触れることができます。
そんな「久留米絣」のルーツは1800年頃といわれ、久留米の米屋にいた井上伝(いのうえでん)という当時12歳の少女の発案とされています。
着古した着物に現れる白い斑点模様に着目した彼女は、その模様が生まれた過程をたどり、糸を括る・染める・織り上げるという、久留米絣の元となる技法を考案したと伝えられています。
当初は「加須利(かすり)」と名付けられ、販売したことが「久留米絣」のはじまりです。
さらに、のちに絣に絵の紋様を入れる技術も発明され、明治期には庶民の衣服として全国に親しまれるようになりました。
戦後、洋服が急速に普及したことによって需要の厳しい時期がありましたが、現在では再び、ファッションへの関心が高い人を中心に注目されています。
久留米絣の魅力は、なんといっても「絣」の美しさといえるでしょう。
複数の工程のなかで織り出される紋様と一緒にドット柄の「かすれ」が現れます。
もんぺの代表的な絵柄である「井型」をはじめ、モールス信号などのモダンなデザインも多く生み出されていますが、そのデザイン全てに「かすれ」を見てとることができます。
また、伝統的な織物でありながら、日常生活で使いやすいことも魅力です。
綿素材のため、夏は涼しく、冬は暖かい、という特性があります。
また、丁寧に織り込まれた生地は、丈夫で扱いやすく、普段着に適しています。
着るほどに肌に馴染んでくる久留米絣は、一つのものを長く使うことの大切さが再確認されている昨今、愛されるべき織物と言えます。
さらに、久留米絣の技法を用いた豊富な製品バリエーションも魅力です。
和のイメージが強い絣ですが、もんぺだけでなく、ハンカチやスカーフなどの小物やインテリアにも使われています。さまざまなものに形を変え、私たちの生活を豊かに彩るアイテムとして注目されています。
久留米絣のもんぺは、「日本版のジーンズ」と言われるほど密かに人気が高まっていることをご存知ですか?
もんぺとは、ゆったりとした腰回りに、裾がキュッとすぼまっている形が特徴的な作業着です。その動きやすさから、明治から昭和の初めまで、女性たちの間で愛用されてきました。
現在、ファッションに関心が高い層を中心に、久留米絣のもんぺに再び注目が集まっている理由は、その機能性だけでなく、色やデザインのバリエーションにあります。
伝統的な和柄からモダンなデザインの紋様まで、また、定番の藍色をはじめ、カラーバリエーションも多様化してきています。
ジェンダーレスな作業着として、今求められるスタイルに合っているのもうなずけます。
すべて手作業でつくられる久留米絣のもんぺは、大量生産こそできませんが、オンラインショップでの購入が可能です。工房やショップによってそれぞれ特色がありますので、お好みのもんぺを探してみてください。
地域文化商社として、新たな取り組みを行っているECショップです。カラーバリエーションが豊富なオリジナルデザインのもんぺが多数取り揃えられています。
久留米絣はどのような工程を経て作られるのでしょうか。一つの反物ができるまでに多くの工程がありますが、その中でも特に「括り」「染色」「織り」は、完成度を左右する重要な工程です。
1. 図案の作成
絣の特性や完成イメージを踏まえて、絣糸と地糸を計算してデザインを決めます。その際に、糸が伸びたり縮んだりすることも考慮に入れます。
2. たて糸の整経
デザインに合わせて、絣糸と地糸の糸数を割り出し、それぞれで整経を行います。
3. 括り
染色を行わない部分に、染料が染み込まないように経糸を括ります。手括りと機械括りの2パターンがあり、手括りの場合は、水に浸した麻の一種であるアラソウで、1箇所ずつ固く括ります。
4. 綛上げ(かせあげ)
次の工程である「染色」がしやすいように、輪の状態に束ねます。
5. 染色(藍染・化学染料)
薄い色の甕(かめ)から濃い色の甕へと順番に浸して、染色します。伝統的な色合いは「藍」ですが、近年ではその他の色も用いることもあります。ムラができないように細心の注意を払います。
6. 絣解き(かすりとき)
括り糸をほどきます。これによって染色した部分と、染色されていない部分(絣部分)ができます。この工程の前に、蒸したり、糊付けをしたりして、糸が不用意に乱れるのを防ぎます。
7. 経割(たてわり)
経糸をそれぞれの紋様に合わせながら束ねていきます。
8. 割り込み・筬通し(おさとおし)
図案に沿って、地糸と絣糸を並べます。並べた糸を一羽に2本ずつ通していきます。
9. 織る
経巻と緯巻が完了したら、完成イメージに沿って経糸と緯糸を織り込みます。手織りと機械織りがあります。
旅先での素敵な思い出づくりに、日本の工芸技術に触れてみませんか。
久留米絣の工房では、製造に加えて、手織り体験、染めもの体験、また工房見学を行なっているところがあります。ここでは5つの工房をご紹介します。
1. 野村織物
広川地区の工房です。工房見学ができます。また工房で販売も行っています。工房開きは4月下旬の平日です。予約の受付は3日前まで。人数は電話でご相談ください。
2. 下川織物
八女市にある工房です。工房見学とセミナーが行われています。また、インターン等職業見学も相談可です。また、工房で販売も行っています。工房開きは、11月第4金土日で、1〜8名まで(5名から要相談)まで訪れることができます。
3. 有限会社 久留米絣 山藍
広川地区の工房です。手織り体験、染めもの体験、そして工房見学をすることが可能です。また、自社で販売も行なっているので、実際に手に取って商品を選ぶことができます。工房開きは5月で、2〜20名(要相談)まで訪れることができます。体験・見学は予約制で、7日前までの予約を受け付けています。
4. 森山絣工房
広川地区の工房です。手織り体験、染めもの体験、そして工房見学が可能です。手織り体験は無料です。藍染め体験は、ハンカチとTシャツで行います。自社販売も行なっています。工房は、正月を除く通年で開いており、1〜40名まで受け入れ可能です。また、フランス語・英語・韓国語・中国語での対応も可能なので、海外の方の見学も歓迎されています。
5. 久留米かすり 池田絣工房
筑後地区の工房です。染め物体験と工房見学が可能です。工房に併設されている展示場では、反物や小物などさまざまな絣製品が販売されています。工房は、正月を除く通年で開いており、体験・見学の予約は前日まで受け付けています。1〜50名まで受け入れ可能です。
ご紹介した5箇所以外にも多くの工房があります。久留米絣協同組合のサイトをご覧いただくと、「見学可」「体験可」などの項目別に工房がまとめられています。福岡に旅行する際は、ぜひ久留米絣の工房をたずねてみてください。
当社で取り扱っている久留米絣のもんぺをご紹介します。
野村織物は、明治31年創業、現在四代目のもと伝統と革新を両立させて久留米絣製造一筋125年の工房です。「久留米かすりのある暮らし」を提案し、巧みな技術からうまれる伝統模様と色合いが楽しめるもんぺを展開しています。
「染め」と「織り」の工程のどちらも手作業で行なっている工房は、現在は珍しく、野村織物ならではの仕上がりを生み出しています。特に「染め」の技術は、「のむらカラフル」と呼ばれ、伝統的な藍色以外のもんぺも多くあります。
・久留米絣 現代風もんぺ | グラデーション | うぐいす S/M/L | 野村織物
・久留米絣 現代風もんぺ | グラデーション | 濃藍 S/M/L | 野村織物
・久留米絣 現代風もんぺ | 梅鉢 | 濃紺 S/M/L | 野村織物
・久留米絣 現代風もんぺ | 花菱格子 | 濃紺 S/M/L | 野村織物
・久留米絣 現代風もんぺ | 十字 | 濃紺 S/M/L | 野村織物
繊細な「織り」の技術に、独自の「染め」の技法が合わさった野村織物のもんぺ。令和の時代にぴったりのモダンなアイテムです。おしゃれ好きの方へのギフトにもおすすめです。
日本三大絣の一つ、久留米絣。精密に織り込まれた紋様の周縁にできる、淡いかすれ。少しでも「絣」の良さに気づいてもらえたら嬉しいです。工房見学や体験ができる工房も多くありますので、福岡に旅行に訪れた際は、ぜひ「久留米絣」にも注目してくださいね。
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目次
おじいちゃんやおばあちゃんへの日頃の感謝を伝える日本の祝日、敬老の日。
敬老の日は、1942年に兵庫県多可郡野間谷村で村主催の「敬老会」を開催したのが敬老の日の始まりとされています。もともと敬老の日は、2002年までは9月15日と決められていましたが、ハッピーマンデー制度によって9月の第3月曜日へと変更されました。
近年は新型コロナウイルスの影響により県をまたぐ移動が制限され、離れて暮らすおばあちゃんやおじいちゃんに、なかなか会えない方も多いと思います。普段伝えられてない感謝や健康を願う気持ちをカタチあるものに乗せてプレゼントしてみるのはいかがでしょうか。
ギフト選びに迷ったときには、定番のお菓子やお花などがありますが、最近ではこだわりの一品として伝統工芸品を選ぶ方も多くなってきました。毎日の生活に役立つ伝統工芸品は、長く使えて、いくつあっても困らないので贈り物として人気です。また、いつもよりちょっと上質なものをプレゼントするだけで、何気ない日常に華やかさが生まれたり、コミニケーションのきっかけになったりします。
日本工芸堂では風呂敷ラッピングが可能な品を豊富に用意しています。
ミニオールド ペア |ミツワ硝子工芸 ¥10,800[税込]
手のひらの中で輝く宝石のような美しさを放つ、江戸切子のペアグラス。赤と青のペアグラスになっているので、夫婦に贈るプレゼントとしてぴったり。細い直線と太い直線、そして柔らかな曲線は、江戸切子の技術が遺憾なく発揮されています。大きすぎない小ぶりのグラスは、お酒や飲み物だけなく、デザートや小物を入れる小鉢としてもおすすめです。さりげなく食卓に馴染む江戸切子は、夫婦のいつもの時間にアクセントを与えてくれます。
銀の輝きを暮らしの中で味わう東京銀器の酒器。暮らしの中で使われる銀器を作り続ける東京銀器は、銀の価格が4倍になった今でも日用品にこだわり、人々の暮らしに寄り添った銀製品を作り続けています。
銀器で飲むお酒は、銀イオンの効果により味がまろやかになると言われており、見た目だけでなく味もより一層楽しめます。東京銀器の酒器は、職人が2万回以上金槌を振り下ろして作られています。職人の金槌によって浮かび上がる模様は、ひとつとして同じものはなく、ひとつひとつ手作業で作られたのが感じられます。東京銀器の酒器は、銀器でありながら手作業の温かさが感じられるので、贈り物としてもおすすめです。
別府竹細工のなかでも代表的な竹かごは、伝統的な編み方で縫い上げることで、高い強度と実用性に優れた竹かごが完成します。
また、あえて大きな八つ目編みで作ったバッグは、実用性だけでなくインテリアにもなる見た目が人気のバッグです。編み目の隙間から中身が見えるのも大きな魅力で、無造作に野菜や果物を入れれば、まるで絵本のような可愛さがあります。
別府竹細工 野点籠セット(小)| 山下工芸 ¥28,519[税込]
アウトドアでも伝統を楽しむ別府竹細工の茶器セット。最近ではアウトドアや自宅でも、気軽に抹茶を点てて楽しむ方が多くなってきました。
カラフルな布をあしらった竹籠に、抹茶碗と茶筅、折りたたみ式の茶杓、棗など、抹茶を点てるの必要な道具が全てコンパクトにまとまったセットです。自宅はもちろん近所の公園など、作法やスタイルに気を使わずどこでも楽しめます。抹茶を点ててみたいけど、教室に通うのはハードルが高いと感じる方におすすめです。
宝石のような輝きを放つ七宝焼の飾皿。一般的に「〜焼」と名の付く焼き物の原料が土や石なのに対して、七宝焼は金属とガラスでできているのが大きな特徴。七宝焼は、仏教の経典の七つの宝に由来し、金、銀、瑪瑙(めのう)、珊瑚(さんご)、瑠璃(るり)、玻璃(はり)、硨磲(しゃこ)の七つを表しています。
その美しさから七宝焼は、古くから美術品として愛されてきました。なかでも七宝焼の飾皿は、大切な日のプレゼントや記念品として世界中で注目を集めています。「豊かな生活」を意味する「梅」と「長寿」を意味する「鶴」の絵柄を施した飾皿は、おじいちゃんやばあちゃんへの贈り物として人気が高いです。
煌びやかや七宝焼をモダンな額装で楽しむ額絵。木目のモダンな額装は、現代の建築様式にもよく馴染むデザイン。昔ながらの和室から現代的な洋室まで、部屋の雰囲気によって全く違った表情を見せてくれるので、どんな家でも気軽に七宝焼を取り入れられます。全ての工程を卓越した職人が手作りで仕上げているので、いつもと違った、上質なプレゼントとしておすすめです。
「墨をする」という文化を楽しむ、白磁の硯の書道セット。有田焼の技法を用いて作られた白磁の硯は、これまでの黒くて重い、硯のイメージを覆してくれます。摩擦に強い耐久性を持つ磁器の硯は、長く使ってもすり減ることはなく、プロの書道家も納得のすり心地です。
コンパクトに収納された書道具は、硯と収納式の筆、墨のセット。なめらかに文字が書けると好評の広島の熊野筆に、伝統的工芸品に指定された三重県鈴鹿墨の中でも、高い技術をもつ伝統工芸士が作った墨など、硯だけでなく筆や墨にもこだわりがあります。コンパクトに収まるので、旅先など場所を選ばず楽しめる書道セットです。
直接会って感謝の気持ちを伝えるのが一番の贈り物かもしれませんが、新型コロナウイルスの影響でなかなか会いに行けない方も多いのではないでしょうか。そういったときに想いをプレゼントに乗せて伝えるのも手段のひとつです。
今回紹介した伝統工芸品はどれもギフト対応しているので、遠く離れたおじいちゃんやおばあちゃんの贈り物として最適です。
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■応募期間:2023年8月19日(土)~30日(水)
■当選人数:20組40名さま
■プレゼント内容:映画『バカ塗りの娘』映画鑑賞券(1組2名さま)
※対象のツイートは2023年8月19日(土)に投稿いたします。
映画『バカ塗りの娘』の公開を記念して、Twitterキャンペーンを実施します。
応募期間中、日本工芸堂公式Twitterアカウントをフォローのうえ、対象の投稿をリツイートしていただいた方の中から抽選で20名さまに「映画『バカ塗りの娘』映画鑑賞券(1組2名さま)」をプレゼント!
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皆さまからのたくさんのご応募をお待ちしております。
【応募方法】[1]日本工芸堂公式Twitter(@japanesecrafts1)をフォロー▼日本工芸堂公式Twitterアカウント 学べる日本の工芸@日本工芸堂 https://twitter.com/japanesecrafts1 [2]対象のツイートを期間内に選んでリツイート ※下記キャンペーン注意事項、応募条件、参加規約にご同意のうえ、ご参加をお願いします。 |
当選発表
応募期間終了後、厳正なる抽選のうえ、当選者を決定いたします。ご当選者さまにのみ2023年8月31日に、Twitterダイレクトメッセージをお送りいたします。こちらのダイレクトメッセージをもって当選発表とさせていただきます。
※抽選方法・結果などについてのお問い合わせにはお答えいたしかねます。
※落選された方へのご連絡はいたしません。あらかじめご了承ください。
※ダイレクトメッセージを受信できる設定にされていない場合、当選通知をお送りすることができませんのでご注意ください。
監督 鶴岡慧子(「まく子」) × 主演 堀田真由 × 共演 小林薫
『バカ塗りの娘』
塗っては研いで、塗っては研いでを繰り返す――
日本が誇る伝統工芸 津軽塗が繋ぐ父娘の物語
9 月 1 日(金)全国公開
8 月 25 日(金)青森県先行公開
海外では「japan」と呼ばれることもある“漆”。漆は時代を問わず、工芸品、仏像、社寺建築、芸術品など日本の歴史と文化を象徴するものに使用され、世界中の
人々を魅了する。
耐久性があり、たとえ壊れてしまっても修理してまた使うことができる漆器は、昔から日本人にとって大切な日用品として私たちの暮らしに寄り添ってきた。本作はその中でも、青森の伝統工芸・津軽塗をテーマに描かれる物語。
タイトルにある“バカ塗り”は、津軽塗のことを指す言葉で、完成までに四十八工程
あり、バカに塗って、バカに手間暇かけて、バカに丈夫と言われるほど、“塗って
は研ぐ”を繰り返す。
漆が丁寧に塗り重ねられるように、本作も津軽塗の完成までの工程を 1 カット 1 カットじっくり映し出す。そして津軽塗職人を目指す娘・美也子と寡黙な父・清史郎が、漆や家族と真摯に向き合う姿を、四季折々の風景や、土地に根付く食材と料理、そこに生きる人々の魅力を織り交ぜ描く。
主人公・美也子役に堀田真由。将来への不安やほのかな恋心に揺れる等身大の女性をたおやかに演じる。津軽塗職人の父・清史郎には、日本映画界には欠かせない俳優、小林薫。二人は実際に地元の職人から津軽塗の技法を教わり撮影に挑んだ。
監督は、初長編作『くじらのまち』でベルリン国際映画祭、釜山国際映画祭などで高い評価を得たのち、西加奈子の小説『まく子』の映画化も手掛けた鶴岡慧子。
つらい時、楽しい時を塗り重ねるように日々を生きる父娘が、津軽塗を通して家族の絆を繋いでいく。
【ストーリー】
「私、漆続ける」その挑戦が家族と向き合うことを教えてくれた――
青木家は津軽塗職人の父・清史郎と、スーパーで働きながら父の仕事を手伝う娘・美也子の二人暮らし。家族より仕事を優先し続けた清史郎に母は愛想を尽かせて出ていき、家業を継がないと決めた兄は自由に生きる道を選んだ。
美也子は津軽塗に興味を持ちながらも父に継ぎたいことを堂々と言えず、不器用な清史郎は津軽塗で生きていくことは簡単じゃないと美也子を突き放す。それでも周囲の反対を押し切る美也子。その挑戦が、バラバラになった家族の気持ちを動かしていく――。
【クレジット】
出演:堀田真由 坂東龍汰 宮田俊哉 木野 花 坂本長利 / 小林 薫
監督:鶴岡慧子 脚本:鶴岡慧子 小嶋健作
原作:髙森美由紀「ジャパン・ディグニティ」(産業編集センター刊)
配給・宣伝:ハピネットファントム・スタジオ
(C)2023「バカ塗りの娘」製作委員会
映画公式サイト:https://happinet-phantom.com/bakanuri-movie/
「工芸体験の新しい接点をつくる」という当社のビジョンから生まれた、不定期開催の出張バーです。
全国各地の工芸品酒器で、日本酒などこだわりのお酒を味わう懇親の場。
工芸品(陶磁器、金属、ガラスなど)での酒器体験を通して工芸についての親しみと理解を深めていただくことが目的です。
今後はお酒だけでなく、和食やお茶などともコラボレーションを企画しています。
<これまで実施のテーマ>
・工芸x越境EC
・工芸xマーケティング
・工芸xEC
・工芸xお酒
・工芸x地域活性
詳細はこちら
肥前びーどろ(佐賀県)
薩摩切子(鹿児島県)
大阪浪華錫器(大阪府)
大谷焼(徳島県)
小鹿田焼(大分県)
琉球ガラス(沖縄県)
津軽びいどろ(青森県)
東京銀器(東京都)
益子焼(栃木県)
江戸硝子(東京都)
SYUKI(日本工芸オリジナル)
高岡銅器(富山県)
越前漆器(福井県)
萩焼(山口県)
会津・福島に関連する和食をご提供いただいた料理人、陽介さん(写真右)
下記お酒の選定は株式会社オープンゲート様にご協力いただきました。
①山の井 HOME(純米)
②曙酒造 天明 槽しぼり 黒ラベル
③宮泉銘醸 会津宮泉 純米吟醸
④男山酒造 回 純米大吟醸
⑤宮泉銘醸 会津宮泉 純米
⑥ほまれ酒造 からはし 純米吟醸
⑦白井酒造 風が吹く 山廃純米生酒
⑧会津名倉山酒造 月弓 純米吟醸夏酒
⑨末廣酒造 末廣 純米吟醸夏酒
⑩鶴乃江酒造 会津中将 夏酒
工芸品(モノ)を提供するだけでなく、工芸品や工芸に関する製作工程や素材についての理解を深めるための体験や学びの場「工芸体験ラボ」の詳細はこちら
九州、佐賀県の伝統工芸品として知られているのが「肥前びーどろ」です。吹きガラスの柔らかい曲線やハンドメイドの温かみが人気ですが、その歴史や特徴はどのようなところなのでしょうか。
今回は、肥前びーどろについて徹底解説します!
]]>今回は、肥前びーどろについて徹底解説します!
目次
「肥前びーどろ」の名前にある「肥前」は藩制時代の名称です。現在は、どのあたりにあったのでしょうか。肥前という土地から、「肥前びーどろ」をひもといてみましょう。
肥前とは、かつて九州にあった旧国名で、現在の佐賀県と壱岐・対馬を除く長崎県が含まれていました。佐賀藩とも呼ばれますが、鍋島氏が地域一帯を治めていたことから、鍋島藩と呼ばれることもあります。
幕末には、困窮する財政の立て直しのため、藩主鍋島直正による改革が行われ、製鉄など西洋の技術を取り入れた産業振興や軍事技術の研究などが行われました。その力は「薩長土肥」という言葉にも表され、大隈重信や江藤新平などの人材が明治政府で活躍しました。
直正の産業振興の中で生まれたのがガラス製造でした。佐賀藩のガラス製造技術は非常に高く、佐賀ガラスとして知られるようになります。
けれど、佐賀ガラスの製法を継承した人材は多くありませんでした。現在では「肥前びーどろ」としてガラス製品を製造している「副島硝子」だけが、江戸時代から続く佐賀ガラスの技術を受け継いでいます。
肥前びーどろの特徴は長い竿に巻き取ったガラスに息を吹き込む「宙吹き」と呼ばれる吹きガラス製法で作られていることです。型を使わずさまざまな形を作るのは至難の業。それでも、100年以上受け継がれる技術である2本のガラス竿を使う「ジャッパン吹き」など、独自に編み出された技で、複雑な形のガラス器も作っています。
幕末に始まった肥前びーどろには、どのような歴史があるのでしょうか。受け継いだ歴史の中から生まれた現在の肥前びーどろの魅力についても解説します。
肥前びーどろの歴史は佐賀藩10代藩主の鍋島直正に始まります。当時財政難に陥っていた佐賀藩を立て直すこと、そして西洋の技術に触れ、技術の高さに驚いたことから、直正は製鉄や蒸気機関などの実験を行う「精錬方」を設置しました。
精錬方とは今でいうところの「理化学研究所」。藩を強くするために、大砲製造などの軍事製品の製造技術向上を目的に、西洋技術を学び、さらに高めるための研究が行われました。
研究や実験には、ビーカーやフラスコなどのガラス製品も必要になります。そのため、精錬方内にはガラス製造工場も作られました。ここで培われた技術は、次第にランプや食器の製造にも活用されるようになり、さらに技が磨かれていきます。
明治期になると、精錬方の運営は藩から民間会社へ移ります。精錬方から生まれたガラス工場は3社。それぞれ当時の暮らしに不可欠なランプのホヤ製造を中心に暮らしの道具を作るようになりました。
しかし、大量生産のガラスやプラスチック製品に押され、ガラス製造会社は次々に廃業。佐賀のガラスづくりは途絶える寸前でしたが、唯一残った副島硝子が「時代に合ったものを作ろう」と新たな商品開発に挑戦。「肥前びーどろ」として、佐賀のガラス製造技術を今に伝えています。
肥前びーどろの魅力はハンドメイドの素朴な味わいと鮮やかな色合い。一つひとつ少しずつ表情が異なるデザインは、110年以上受け継がれた技術だからこそ作り出せるものです。同じ商品でも手にしたものが世界に一つのガラスになる、手仕事ならではの特徴もあります。
さらに、ガラス表面が滑らかで艶やかなことも魅力の一つ。ガラスに空気以外のものが触れないように作る技術は手にしっとりと吸い付くような表面を生み出し、カラフルな色ガラスの発色をより鮮やかに見せてくれます。
多くの特徴がある「肥前びーどろ」ですが。その製法の大きな特徴に「ジャッパン吹き」と呼ばれる製造方法があります。日本では唯一、肥前びーどろだけに伝わる製法です。
ジャッパン吹きとは、金属の竿ではなく、2本のガラスの竿を使って製品を作る方法です。この製法で作ることで、細い注ぎ口を持った「かんびん」などの複雑な形状の製品を作ることも可能になりました。
ジャッパン吹きの製法は大きく6つに分かれています。
まず、ガラスの竿に溶けたガラスの原料を巻き取ります。「玉取り」と言われる工程で、宙吹きの準備段階です。
次に、丸いボウルのような道具に巻き取ったガラスを当て、でこぼこな表面を滑らかに整えます。「リン掛け」と呼ばれる工程です。
ガラスが丸く成型できたら、息を吹き入れて形を作っていきます。
ある程度の大きさが整ったら、板に当てつつ息を吹き込んでいきます。底の部分と取っ手になる部分が成形できます。
ガラスの竿をもう一本用意し、成形したガラス器に口を付けます。これがジャッパン吹きの最も大きな特徴です。2本のガラス竿を操り、なめらかな口の曲線を作るには、10年以上の修行が必要と言われています。
最後に口元の不要なガラスを切り落とします。まだ柔らかいガラスはハサミで切ることができます。これでガラスのかんびんが出来上がります。
肥前びーどろの技術で作られる代表的な商品と主な価格をご紹介します。
「肥前びーどろと言えばコレ」と言われるのがカラフルな色ガラスのグラデーションが美しい虹色シリーズです。透明なガラスに赤、黄色、青、紫、水色の色ガラス粒をまとわせて息を吹き込みます。すると、色ガラスも一緒に伸びていき、色が混じって幻想的なグラデーションを作るのです。色ガラスの付き方は商品によって異なるので、同じ色になるものは1つとしてありません。
使い勝手のいいタンブラー3,300円、ビールの泡立ちを良くするビアグラス3,300円、大きな氷もスッキリ入るロックグラス3,300円などがあります。
最近肥前びーどろの製品として人気を呼んでいるのがガラスと金属を組み合わせたアクセサリー「TERASU」シリーズです。「真空蒸着」という技術で作られた物。異なる素材を密着させるには高い技術と繊細な温度調整が要求されます。その甲斐あって、肥前びーどろのアクセサリーは表情豊かなきらめきが魅力。どこにもない宝石のような輝きで装いのアクセントになってくれます。
値段はペンダントで3,000円~。リングやイヤリングなども揃っています。
ここからは、日本工芸堂のバイヤーがおすすめの肥前びーろどろをご紹介します。
https://japanesecrafts.com/collections/hizen-vidro/products/hv-sg-1
虹色シリーズの中でも人気が高い「しずく型」は、飲み口が少しすぼまった、独特のスタイルがかわいいグラスです。淡い5つの色ガラスが混ざり合い、テーブルにカラフルな色を落とすのは見ていて楽しい気持ちになります。
表面にゆるやかなでこぼこが残るように仕上げることで、光の反射が複雑になり、輝きが増す仕掛けも。ギフトに使う方も少なくありません。
口がすぼまっているので、ワインやリキュールなど香りを楽しみたいものを入れると、豊かな香りを深く味わえるのも魅力の一つ。アイスクリームやゼリーなど冷たいデザートを入れたり、ちょっとした副菜を入れるのにも使えるサイズ感もポイントです。
https://japanesecrafts.com/collections/hizen-vidro/products/hv-sg-8
肥前びーどろの名前が全国に知られるきっかけになったのが「縄文ラインシリーズ」です。点と点を線で結んだようなユニークな模様がグラスに並んだデザインは、キュートで素朴な、ハンドメイドならではの魅力を伝えてくれます。
この模様はガラス表面に描かれたものではなく、溶けた色ガラスを透明なガラスに巻きつけ、溶着させることで作っているもの。手書きのような温かみがありながら、決してその模様が消えることがないのもうれしいですね。
ロックグラスは口径8cm×高さ8.5cmと小ぶりなサイズなのも特徴の一つ。持ちやすく、洗いやすいので、毎日使う日常のガラス器になってくれます。飲み物だけでなく、夏のそうめんやお蕎麦と共に使うつゆ入れやデザートカップとしても使えます。
https://japanesecrafts.com/collections/hizen-vidro/products/hv-sg-6
素朴なデザインが多い肥前びーどろの中でも、上品で高級感も感じさせてくれるのが銀箔を表面に施したワイングラスです。ガラスに銀箔を貼った後、表面をさらにガラスでコーティング。銀の輝きが酸化してくすむことはありません。
なめらかなグラスの曲線は宙吹きで作られる肥前びーどろならでは。ワインの香りを口元で広げ、より豊かに感じさせてくれます。口にあたる柔らかいガラスの感触も、ワインをスムーズに味わわせてくれます。
佐賀で生まれ、育まれてきた「肥前びーどろ」。今では唯一、副島硝子だけがその技術を受け継いでいますが、ジャッパン吹きなどの技術はそのままに、虹色シリーズや縄文ラインシリーズなど、今の暮らしに合ったテイストの商品を次々に生み出しています。
日常使いにぴったりのお値段も肥前びーどろの魅力の一つ。いつもの飲み物をより美味しく味わわせてくれる器として、使うことで気持ちをアゲてくれるアイテムとして、ぜひご愛用いただきたい伝統工芸品です。
]]>皆さんは七宝焼と聞いてどんなものを思い浮かべますか?「焼」という字がついていることから、土を捏ねたりろくろを回したりする様子が頭をよぎる方もいるかもしれません。
本記事では、 “金属とガラスの工芸“、七宝焼について特集していきます。
目次
七宝焼の起源は古く、紀元前の古代エジプトだと言われています。日本へ伝わってきたのは、古墳時代だと推定されています。シルクロードを通じて、仏教とともに中国から伝来してきました。ちなみに七宝焼の「七宝」も仏教の説話に出てくる7つの宝物のように美しい焼き物というのが由来です。
現在、知られている七宝焼は、江戸時代の尾張七宝に縁があります。尾張国の梶常吉が、オランダ船から輸入された七宝の皿を手がかりに独自の製法を見出し、一躍「七宝焼」の名が有名になりました。
明治時代には、パリ万国博覧会にも出展しています。戦後に至っても、その技術は、校章や社章などの徽章に用いられていました。また現在ではインテリアやアクセサリーにまで進化し、愛用者に美しいデザインが喜ばれています。
七宝焼は、技法によっていくつかの種類分けをすることができます。日本における代表的な技法としては、「有線七宝」「無線七宝」「透胎七宝」「省胎七宝」「箔七宝」などがあります。
日本で主に制作されているのは「尾張七宝」と「京七宝」と「東京七宝」です。そのうち、愛知県名古屋市の「尾張七宝」は経済産業大臣による指定を受けた日本の伝統的工芸品です。
七宝焼の魅力について2点ご紹介します。
まず一つ目としては、「美しさが長く保たれる」という点です。七宝焼はガラス質の釉薬を用いているため、一度完成したものは、色や模様が色褪せることがほとんどありません。
七宝焼の起源とも言える、ツタンカーメンのお面が現代まで輝きを保ったまま残っていることからも分かります。そのため、自分へのご褒美として手にすれば買ったときの美しさのまま長く手元に置いておくことができます。また、親から子へ、さらに孫の世代へ、同じものを受け継いていくことも可能です。
次に二つ目としては、「異なる技法によって様々な表情を持っている」という点です。七宝焼には、「有線七宝」や「無線七宝」「省胎七宝」などいくつかの技法があります。
それぞれの技法を用いてつくられた品々は各種多様な輝きで私たちの目を楽しませてくれます。それだけではなく、制作体験も行われているため、ハンドメイド特有の、自分の手で世界に一つだけしかない模様を作ることができるところも魅力でしょう。
七宝焼の作り方について見ていきましょう。七宝焼にはいくつかの技法がありますが、ここでは代表的な技法である「有線七宝」の制作過程を詳しくご説明します。
工程は大きく分けて素地づくり、植線、施釉、焼成の4つです。
土台となる素地を作っていきます。作る大きさに合わせて銅板を切り出したら、木槌で叩いてカーブをつけます。こうすることで施釉するときに割れにくくなります。
そのあとは「裏引き」と呼ばれる、裏部分に釉薬を施す作業に移ります。表だけに釉薬を塗るとバランスが悪くなり割れやすくなってしまうため、素地には裏表両方に塗ります。次に銀箔を貼り付ける「銀張」を行います。後の工程で割れてしまうことが無いようにする工夫が詰まっています。
作りたい模様の輪郭に合わせて銀線を立てていく作業を行います。この工程は有線七宝のメインとも言える、工程の中で最も手間をかける部分になります。
金属線はピンセットでつまんで欲しい形に変形していきます。時折、熱しながら適度に柔らかくして変形しやすくします。
先ほどの工程でかたどった模様に、釉薬の色を差していきます。このとき釉薬は、金属線の背を少し超えたところまで乗せていきます。手作業になるので、はじめのうちは表面に凹凸ができてしまいます。しかし、最終的には表面の高さが均一になるように研磨をして滑らかにします。
焼成は重ね塗りをしたり、調整したり、納得のいく出来になるまで繰り返し行います。釉薬の色を重ねていくほど、色は深みを増していきます。
以上が七宝焼(有線七宝)の制作過程です。
この工芸品、実は、法人ギフトの定番の一品であることをご存知でしたか?
特に選ばれるのは、飾り皿や花瓶、額縁など大ぶりのものでしょうか。銀線を一つずつ手作業で張っていく有線七宝の手法で描かれた、繊細でありながら豪奢な絵柄は、オフィスを華やかにしてくれます。そんな品の良い高級感が人気の理由かもしれません。
おすすめの逸品:七宝焼き | 飾皿 | 桜 15x21
法人向けの七宝焼は、高価な物が多いですが、自分へのご褒美や友人・家族へのギフトにぴったりの物も制作されています。例えば、タイピンやカフスボタン、もしくはピアスやネックレスなどの身につけるものであったり、小ぶりの飾り皿やペン皿も人気があります。最近では、七宝焼の技法を取り入れたハンドメイド作家さんもたくさんいらっしゃいます。重厚感のある和テイストのアクセサリーは、古風な感じとモダンなイメージが合わさってとても素敵です。特に着物や浴衣にぴったりです。
これまで商社や外務省、大手金融機関などからのギフト対応も多数行ってきました。その中から選ばれるポイントを数点で整理していみました。
一度制作体験してみるのはいかがでしょうか。以下に制作体験できる窯元をご紹介いたします。(各所には事前に予約申し込みなど確認をしてから訪問してください)
加藤七宝製作所(愛知)
あま市七宝焼アートヴィレッジ(愛知)
坂森七宝工芸店(東京)
ヒロミ・アート(京都)
七宝工房くじゃく(山形)
その他でも制作体験ができる場所が全国各地に存在します。「百聞は一見にしかず」ということわざがあります。ご興味がある方は実際に訪れてみてくださいね。
七宝焼き | 飾皿 | 丸富士桜 30φ ¥44,000[税込]
七宝焼き | 飾皿 | 波涛鶴 18x24 ¥16,500[税込]
七宝焼き | 額 | 赤富士 40×61×5 ¥110,000[税込]
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日本の代表的な伝統工芸品の一つである江戸切子。江戸時代から現在まで途切れることなく継承されてきました。職人技によって形作られる独特の文様や、照明のあたり具合で、雰囲気が変化する色合いが魅力的です。
これまで大切な人からのプレゼントや自分へのご褒美などで手に取られる機会があった方も多いかと思います。店頭でよく見かけるのは、「瑠璃色」や「赤色」でしょうか。
いくつか種類があり、他にもさまざまな色合いの江戸切子が存在し、流通しています。一覧を以下に示します。
・赤色、青、金赤、青紫、黒、黄色、透明、緑、瑠璃色(青に近い)
同じ文様でも色が違うと印象が変わりますし、同じ色だとしても製法によって濃淡が異なるなど、奥が深いです。また、カットが難しいことで有名な「黒」は値段が高く、価格は色の違いの影響を大きく反映しています。
どの観点から見ても魅力がある江戸切子ですが、「色の違い」という点を中心にご紹介していきたいと思います。本記事が、江戸切子について知るきっかけ、またはご自分の好みに合う切子を探す一助にしてください。
「江戸切子」は、江戸切子協同組合の登録商標。東京都伝統工芸品産業指定、国の伝統的工芸品指定を受けています。
以下写真は江戸切子協同組合催事での展示です(掲載承諾済)。
最も値段が高いのは「黒色」でしょう。透明なガラスと合わせたモノトーンが魅力です。この色が持つシックな印象には「高級感」という言葉がしっくりきます。この色が高価なのはなぜでしょうか。その秘密は、切子の文様をカットする工程が関わってきます。
「黒」やそのほかの“濃い”色を持つガラスをカットするには、職人の技術・感覚が不可欠になります。あらかじめ書いておいたガイド線に沿ってカットしていくのですが、ガラスの色が濃いほどその線が見えづらくなります。
そのため、濃い色を仕上げる場合、ガイドの線以外にも、手の傾きかたや感触などのこれまでの経験を頼りにする必要があります。
充分な経験を積んだ職人にしかできない技術になりますので、その分希少価値が高くなります。希少価値が高くなれば相対的にそれ自体の値段も向上していく、ということです。
”江戸切子”と言われて何色のグラスを思い浮かびますか?「瑠璃色」や「赤色」を頭に浮かべた方は、少なくないのではないでしょうか。
そうです。この2色が、江戸切子を代表する人気の色だと言ってもよいと思います。よく店頭にも並べられていたり、通販サイトでも頻繁に目にすることがあることから認知度が高いのではないでしょうか。
お祝いごとでペアで選ばれる事例が多いです。定番の色ですので、江戸切子を初めて購入される方が「まずは」ということで選ばれることが多いです。また、ペアグラスとして贈答用にも好まれています。
女性の方から人気があるのは、赤を薄めたピンクのような感じの「金赤」です。優しい印象を感じさせる色合いです。
一方で、緑や青紫、青、黒、黄色、白といったような少し珍しい色合いのものや、琥珀色と瑠璃色、琥珀色と緑色など異なる色同士がグラデーションになっているものにも注目と人気が集まっています。二つの色が重なっているものには「2色被せ」という手法が用いられています。酒器として日本酒のみならずウィスキーなどにもあうロックグラスは人気が高いです。
江戸切子には、さまざまな種類の色があることを見てきました。今挙げた色は代表的なものですが、同じ色でも文様によって印象が違う場合がありあす。「色」自体もガラス成形の方法や成分の調合によって少しずつ変わったりするので実際の色味の種類はもっと多様だと言えます。
「色」というのは、その土地の文化を大きく反映しています。そして「色」をどれだけ細かく分類しているかは、言語によって異なっています。日本の伝統的な色を知るということは、日本人の文化に触れることに繋がると言っても良いでしょう。
日本には、400種類以上の「色」があると言われています。四季があり、自然にも恵まれた環境で生きてきた人々は、日々移り変わる植物の色や天気の色に関心を向けてきました。
平安時代には、多様な色合いの着物を身につけるようになりました。植物が由来の色では、「浅葱(あさぎ)色」「唐紅(からくれない)」「萌黄(もえぎ)」などがよく知られています。また、階級ごとに「色」を区別することもありました。聖徳太子が定めた冠位十二階では、一番高貴な色は、「紫」でした。
さまざまな過程で細かく分類分けされていった「色」ですが、日本古来の色は「赤・青・白・黒」の4色であるという説もあります。代表的な根拠を3つご紹介します。
・単体で形容詞として使える「色」がこの4色であるという点。「赤い・青い・白い・黒い」が成り立つ一方で「緑」い、や「紫」いといった言葉は存在しない。
・色を表す言葉のうち、対になる表現がこの4色だけであるという点。「赤と青」「赤と白」「黒と白」。
・「色の名前を重ねた副詞」があるのがこの4色だけという点。「赤々と」「青々と」「白々と」(しらじらと)「黒々と」。
このように「赤・青・白・黒」の4色は、さまざまな点で他の色とは異なる特別な点が見られることから日本古来の色がこの4色だという説があります。あなたはどう思われたでしょうか。
さて、江戸切子の中でも人気の色であった「瑠璃色」にはどのような背景があるでしょうか。瑠璃色とは、紫の色合いが濃い青色です。「瑠璃」というのは仏教世界の中心にある須弥山(しゅみさん)で産出される宝石で仏教の七宝の一つです。
その宝石にちなんだ色として瑠璃色も至上の色だと神聖視されてきました。産出地は西方アジアで、日本には、シルクロードを通り、中国を経て伝わりました。奈良時代に建てられた宝物殿である正倉院にはこの宝石がはめこまれた宝物が残されています。
平安初期には、「竹取物語」の一節に「金、しろかね、るりいろの水、山より流れたる」という記述が見られます。当時から美しい色の一つとして人々の間で知られていたことが分かります。
普段はあまり気に留めない「色」の歴史について立ち止まって考えてみることで、周りの色彩が少しだけ豊かに見えてくるかもしれません。
江戸切子には無色透明な「透きガラス」と、外側に色付きガラス、内側に透明やアンバ ーなどの素地のガラスの複数構造 になっている「色被せガラス」の2種類があります。
現在では「色被せガラス」を目にすることが多くなっていますが、昔の切子は「透きガラス」だったので「透明」でした。ガラスの色がないとあらためて江戸切子の文様の繊細さに魅せられることでしょう。
江戸切子の歴史は、1834(天保5)年江戸大伝馬町のびーどろ屋・加賀屋久兵衛が、英国製のカットグラスをまねて、金剛砂を用いて透明なガラスの表面に細工を施したのが始まりだとされています。技術は進化継続して磨かれ、1853(嘉永6)年、黒船来航の際にはペリーへの献上品の中に加賀屋の切子瓶があったという記録が残されいます。その瓶の見事さに彼が驚いたという話も残っています。
明治時代になると、政府の殖産興業政策の一環として、振興されるようになりました。近代的な品川硝子製造所が建設されたり、イギリスから切子(カット)指導者として英国人エマニュエル・ホープトマン氏が来日したりするなどして、カット技術は進歩し、ガラス器の普及が加速していきました。
大正時代になるとカットグラスに使われる素材の研究や、クリスタルガラスの研磨技法が開発されるなどして、江戸切子の品質はさらに向上していきます。このような経緯を経て、大正から昭和初期にかけて江戸切子の第一次全盛時代を迎えました。カットグラスは人気を博し、グラスや器、照明器具のセードなど多様な形で普及しています。
現代では、昭和60年に東京都の伝統工芸品産業に指定、平成14年には国の伝統的工芸品にも指定されました。これからも、江戸時代の商人が編み出した、美しいガラス工芸品、江戸切子は、人々の間で愛され続けていくでしょう。
「切子」という名の通り、江戸切子といえばカットされた伝統的文様が大きな特徴です。実は、ガラスの表面が濃い色であるほど、カットが難しくなります。そのため「黒」は、職人の技量が最も問われる色になります。
それでは、なぜ濃い色の切子はカットに技術を要するのでしょうか。そのことを説明するためにまずは江戸切子がどのようにして作られるのかを見ていきましょう。
江戸切子の製作過程は大きく分けて5段階です。
・はじめに「割り出し」という工程です。文様をカットする前のグラスに気泡や鉄粉などがないかを確認したのちに、目安となる線を入れていきます。
・次に「荒摺り」という工程で、デザインの大枠である太い線を、回転する円盤状ダイヤモンドホイールで、削っていきます。
・そのあとに「中摺り」という工程で、先ほどより細かいところをカットしていきます。
・それが終わると「石掛け」という工程に入ります。砥石で作られた円盤を回転させ、中摺り面を滑らかに整えます。この工程の良し悪しが、次の磨きの輝きを大きく左右します。
・最後に「磨き」という工程です。円盤状の木盤(桐)、コルク盤、ゴム盤などで、水分を持たせた細かい磨き砂をつけながら石掛け面を磨いていきます。仕上げに布製のバフ盤でバフ掛けすれば完成です。このような「手磨き」作業ではなく「酸磨き」をしている工房もあります。
記載の通り、前半工程でカットは、あらかじめベースとなるガラス生地に引かれた目安線に沿って行います。つまり、濃い色のガラスをカットする場合は、目安の線が透けにくいため、中心を取ったり、均等にカットしていくのが難しくなるということです。
また、目安の線が引かれるのは、カットするガラス生地の外側であるのに対し、職人が目安の線を確認するのは内側からになります。電灯で照らして覗きながらカットしますが、濃い色だと本当に線が見えづらくなります。そのため、仕上がりの美しさに、職人の腕や長年の経験によるところが大きくなります。これが「黒」がもっとも技術の問われる色と言われる所以です。
江戸硝子に切子(文様)を入れた製品を江戸切子と言います。現在、江戸硝子によく使われているガラス素材は大きく分けて2種類あります。
一つ目は「クリスタルガラス」です。透き通るような輝きと持った時の重厚感が特徴です。江戸切子以外では、バカラなどのガラス製品にも使用されています。指先で軽く弾いてみると、金属のような澄んだ音がするのが特徴です。
もう一つは「ソーダガラス」です。飲食店のコップや窓ガラスなどに使用される一般的な素材です。クリスタルガラスと比較すると、硬くて丈夫なことが特徴です。叩くとクリスタルガラスよりも低く濁ったような音が見分けるポイントです。
切子に使われているガラス加工の技術は「透きガラス」と「色被せガラス」の2通りあります。
「透きガラス」は初期からの江戸切子に多く見られる技術で、完成品には色がありません。この無色透明のガラス活用した切子(文様)には、繊細で洗練された印象があります。
「色被せガラス」は、江戸切子の発展とともに海外の技術が導入されたことで用いられるようになった技術です。透明なガラスに色付きのガラスを重ねることで製品に色を付けます。この技術によってさまざまな色合いの江戸切子が作られるようになり、その魅力は多様化していきました。
「色被せガラス」の手法についていくつかご紹介します。
一つ目は、はじめに型の中に色付きガラスを薄く吹き入れたのち、さらに透明のガラスを吹く方法です。
二つ目は、宙吹きの状態で、透明なガラスに薄く延ばした色付きガラスをさっと被せて型の中で膨らませる方法です。
三つ目は、色付きガラスを粉にしておいて、これを満遍なく透明なガラスに振りかけ、溶融させて表面に着色する方法です。
これらは、切子職人が手がけるガラスの表面をカットする工程の前段階に当たります。「江戸切子」の完成には、切子職人の他にも多くの職人の意匠が込められていることがわかりますね。
二色被せという色被せガラスを使った切子をご覧になったことはありますか?透明なガラスの上に異なる二色のガラスがさらに被せられる手法のことです。通常の被せガラスに対して二つの色が重ねられているため、グラデーションが美しいことが特徴です。
下地の色には「琥珀色」が使われることが多いです。ちなみに、琥珀とは、太古の樹脂類が土中で石化した鉱物のことで透明感のある黄褐色をしています。天然では大変貴重な琥珀ですが、ガラスの成分の配合によって人工的に類似の色味を生み出すことができます。
三重のガラスに二重の色。二色被せのよさの一つは、通常の被せグラスよりも重ねるガラスが一色多いために、味わい深い雰囲気を醸し出すところだと言われています。
「二色被せ」のグラスで楽しむひとときは、普段とは違う重層的な喜びを感じられるかもしれません。
これまでさまざまな視点から江戸切子の「色」について見てきました。「瑠璃」や「銅赤」、「黒」など、多様で魅力的な色合いがありました。こうした「色」がどのようにして生み出されているのか、気になった方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ここでは「色被せガラス」の材料となるガラスについてご紹介いたします。江戸切子の「色」はガラスがさまざまな金属成分と化学反応を起こす過程でを生み出されています。「色」を外から塗ったりする工法ではありません。
主原料のソーダ灰に、発色性のある金属酸化物を混ぜ、2000℃ほどで溶解させます。金発色の仕方や加工のしやすさは、配合する成分の割合で決まるため、ガラス工房の腕の見せ所になります。
主な成分とその色はこのようになります。
・赤色:「銅」「金」
・セレニウム青色:「コバルト」「銅」
・黒色:「コバルト」「マンガン」「鉄」
・緑色:「銅」「クロム」「鉄」
・黄色:「鉄」「セリウム」「チタン」「銀」
・桃色:「マンガン」「セレニウム」「金」
・紫色:「マンガン」「ニッケル」
などです。こうして成形を終えたガラス・グラスが江戸切子職人のもとに届けられ、5つの製作工程(上記記載の通り「割り出し」「荒削り」「中摺り」「石掛け」「磨き」)をたどるのです。
写真は江戸切子協同組合催事での展示です(掲載承諾済)。
江戸切子の文様にはいくつも種類がありますが、今回はその中でも代表的な伝統文様の10種類をご紹介します。
魚子紋(ななこもん)・菊つなぎ紋(きくつなぎもん)・菊花紋(きっかもん)・笹の葉紋(ささのはもん)・六角籠目紋(ろっかくかごめもん)・八角籠目紋(はっかくかごめもん)・七宝紋(しっぽうもん)・麻の葉紋(あさのはもん)・矢来紋(やらいもん)・亀甲紋(きっこうもん)の主な特徴と込められた意味を中心にまとめてみました。
・魚子紋は、江戸切子の中でも基本的な文様の一つで、魚の卵のように連なった細かなカットが特徴的です。江戸切子以外にも織物や金工品など、さまざまな日本の伝統工芸品に使われてきました。魚の卵が隙間なく並ぶ様子から、子孫繁栄の意味が込められています。ちなみに、“ななこ”から7月5日は「江戸切子の日」と定められています。
・菊つなぎ紋は菊の花が連なっているような文様が特徴です。非常に細かい線を連続させて彫らなくてはならないため、江戸切子の中でも難易度の高い文様だといわれています。菊は薬として使われてきたことから菊つなぎ紋には不老長寿の意味あいがあります。またこのほかにも一説には、きくを「喜久」と書いて「喜びを久しくつなぐ」という、意味も込められています。
・菊花紋は、江戸切子には小さい柄が連続する文様が多い中、一つだけで華やかに目を引くのが特徴です。グラスの底の部分にこの文様を大きく使ったものは「底菊」と呼ばれ、花が浮かんでいるようにも見えます。
・笹の葉紋は、菊花紋と同様、単独でも見栄えのする文様が特徴です。笹は根がとても広く張り、暑さ寒さにも強く、冬でも緑の葉のある植物です。そのため、笹は生命力の強さの象徴とされています。
・六角籠目紋は、竹を60度に交差させて作られた竹籠のような文様が特徴です。籠の文様は「籠目」と言い、一つひとつが「魔を見張る目」であるとして日本では古くから魔除けの意味合いがありました。
・八角籠目紋は、六角籠目紋と同じように籠の文様が特徴です。こちらは直線を45度に交差させているため、真ん中にできる図形は八角形です。1本1本の線の刻み方が細かく、手間と技術が必要とされることから、高級なものによく使われる文様です。六角籠目紋と同様、魔除けの意味が込められています。
・七宝紋は、円を4分の1ずつ重ねて作られる文様が特徴です。四方という音が転じて、仏教用語の七宝につながりました。円が重なって続くことから、円満・平和の意味が込められています。高い技術が必要な曲線が多用されていることも特徴です。
・麻の葉紋は、日本の文様の中でも非常に伝統のある文様の一つです。麻がまっすぐにすくすくと育っていく性質を持つことから、成長を願う思いが込められています。
・矢来紋は、竹を交差して作られる囲いである「矢来」をイメージした文様が特徴です。外敵から防ぐ意味から、魔除けの意味があると言われています。シンプルで素朴な文様ですが、カットの深さによって印象が異なり、他の文様の引き立て役としても活躍します。
・亀甲紋は、亀の甲羅をモチーフにした六角形の文様が特徴です。またきっこうが転じて「吉向」という字になり吉に向かうという意味もあります。長寿吉兆を願う意味が込められています。
代表的な文様とその意味を紹介してきました。それぞれに願いや意味が込められている文様です。これらは、同じ文様でも線と線の幅や彫りの深さによって印象が大きく変わりますし、文様同士を組み合わせて用いることもあります。
さらに、伝統的な文様だけでなく、現在、活躍している職人の中には、新しいデザインも考案されている方々もいらっしゃいます。伝統的な文様と現代の職人のアイデアが融合することで生み出される、多様なデザインは、江戸切子の文化をより味わい深いものにしています。
一つご紹介しますと、山田硝子の切子に「細菊玉繋ぎ紋」という文様があります。グラスに艶を出す「磨き」の技術で刻まれた小さな玉のデザインが特徴です。細い線と小さな玉が連続する文様は「つながり」を表し、縁起がよいと言われています。
元々、ある文様を組み合わせて新しいデザインをつくる姿勢は、伝統を継承しながらも未来に向かって進歩していく様子を思わせてとても魅力があります。文様について知っていれば、江戸切子探しをするときの楽しみの最大のポイントでもあります。
江戸切子は、繊細で個性豊かなガラスのカット面が特徴的です。長く活用するためには使用の際と洗浄の際に、いくつか注意が必要な点があります。
まず、使用時の注意点。
・もともと、ガラスは、傷つきやすい性質を持つ素材です。ガラス同士を直接当てないようにしてください。
・急激な温度変化により、割れたり欠けたりする場合があります。熱湯を注ぐと破損する恐れがあります。また、氷を入れる場合は、水を先に入れてようしてください。
・電子レンジ・オーブンなどには使用できません。
・直射日光があたる場所での長時間のご使用・保管はお控えください。火災の原因になる場合があるようです。
次に、洗浄時の注意点です。
・食器洗浄器では洗うことはできません。
・ガラスを傷つける恐れがあるため、研磨剤入りの洗剤や金属たわしなどで洗わないでください。食器用洗剤を溶かしたぬるま湯に浸し、やわらかいスポンジか布で丁寧に洗ってください。
・カット面はときどき、やわらかいブラシで軽く洗ってください。
・水垢やくもりを防ぐため、洗浄後はぬるめのお湯ですすいでください。仕上げに、やわらかく乾いた布で、水滴を拭き取ってください。
江戸切子の魅力でもある、職人技が詰まった繊細な文様が施された表面部分は、丁寧に扱う必要があり、普通のグラスと比べると少々手間がかかります。ただ、大切に扱えば、かけた時間とともに愛着が湧いてくるはずです。使う時も使い終わった後も、切子と豊かな時間を過ごすことができますように。
江戸切子は、人生の節目である「栄転祝い・昇進祝い」や「還暦・長寿祝い」のプレゼントにおすすめです。さまざまな色や文様がありますので、その時々にぴったりのものが見つかるはずです。また、日本を代表する伝統的工芸品の一つですので、海外の方々へのお土産として贈ったら喜ばれるかと思います。
江戸切子 ロックグラス | hibana火華 | 琥珀・瑠璃 | haku硝子
江戸切子 オールドグラス | 漣 ミニ | 琥珀 グリーン | 山田硝子
江戸切子 グラス | 菱魚子文様 天開タンブラー |赤 | ミツワ硝子
いかがだったでしょうか?本記事では「色」を中心に、江戸切子の魅力について述べてきました。ほかにも江戸切子の伝統文様、製造過程、素材の種類、切子グラスそのものの色付けの方法などをご紹介してまいりました。
これらを背景に、「黒」や濃いめの色の切子グラスは職人の技量が問われるという点、そして難易度や工数が値段に反映されているということがご理解頂けるのではないでしょうか。江戸切子を選ぶときの参考情報として、もしくは伝統工芸への理解が深まっていただければ幸いです。
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「日本六古窯(にほんろっこよう)」とは、古来の陶磁器窯のうち、中世(平安時代末期〜安土桃山時代)から現在まで生産が続く代表的な6つの窯(瀬戸・常滑・越前・信楽・丹波・備前)の総称です。
1948年頃、古陶磁研究家・陶芸家である小山冨士夫氏により命名され、平成27年に「日本遺産」に認定されました。
日本遺産への認定を機に六市町(越前焼:福井県越前町、瀬戸焼:愛知県瀬戸市、常滑焼:愛知県常滑市、信楽焼:滋賀県甲賀市、丹波焼:兵庫県丹波篠山市、備前焼:岡山県備前市)では、六古窯日本遺産活用協議会を発足しました。
各窯では独自の技術や文化を育んできました。その歴史や文化、技術を詳しく御紹介します。
陶器の代名詞「せともの」を担う、日本屈指の窯業地(ようぎょうち)
「瀬戸」の瀬戸焼は愛知県瀬戸市を中心に作られている焼き物です。日本で陶器一般を指す「せともの」という言葉は、長い歴史のなかで、焼き物づくりを牽引してきた瀬戸焼からきています。
日本六古窯の中でも一度も途切れず焼き物の生産を続けてきた産地となっています。
瀬戸焼の起源は、古墳時代から鎌倉時代初期にかけて現在の名古屋市・東山丘陵周辺で始まった「猿投窯(さなげよう)」です。猿投窯は陶器を焼くために用いられた窯の遺構、古窯跡のことを指します。
最盛期では名古屋市東部の約20km四方にわたり 1,000基をこえる数多くの瀬戸焼の窯があり、当時は須恵器(すえき)が生産されていたようです。
瀬戸市は猿投窯の隣市に位置し、平安時代末期から藁などの植物の灰を原料にして釉薬(うわぐすり)をかけて仕上げる、灰釉陶器(かいゆうとうき)を生産した瀬戸窯が登場します。
鎌倉時代になると灰釉陶器に代わり、無釉の椀・皿・鉢を主体とする「山茶碗(やまぢゃわん)」が生産されるようになり、日常食器として流通していきます。
山茶碗と併せて「古瀬戸」と呼ばれる新たな施釉陶器(せゆうとうき)の生産が始まります。施釉陶器とは釉薬を器面全体に施した焼き物のことを指します。当時、鎌倉や東海地方の寺院からの瓦・仏具・蔵骨器等の需要があったため、大型の壺や瓶類、仏花瓶・香炉といった宗教関係の器種を生産されました。なかでも瀬戸窯は、国内唯一の施釉陶器生産地となります。
室町時代は古瀬戸の最盛期となり、碗・小皿が多様になり、供膳具・調理具などの「使う」製品が生産の中心となっていきます。
中国の青磁や白磁のような白く美しい素地が特徴です。なぜここまで白い焼き物を作り出すことが可能になったのでしょうか。それは丘陵地帯の瀬戸層群と呼ばれる地層から採れる、木節粘土(きぶしねんど)と蛙目粘土(がえろめねんど)に特徴があります。
これらの良質な粘度は耐火性が高く、柔らかく成形しやすいという特性に加え、鉄分がほぼ含まれないことから白く美しい陶器ができたのです。また、瀬戸焼は「赤津焼(あかづやき)」と「瀬戸染付焼(せとそめつきやき)」と2種類あり「赤津焼」は7種類の釉薬と12種類の多様な装飾を駆使した技法が特徴です。「瀬戸染付焼」は白い素地に青く発色するコバルト顔料での絵付けが特徴です。
日本六古窯で最も古い歴史をもつ最大規模の産地
常滑焼は愛知県知多半島にある常滑市を中心に作られている焼き物です。日本各地の焼き物に大きな影響を与え、越前焼・信楽焼・丹波焼のルーツにもなっています。半島という立地を生かし、伊勢湾に面していることもあり、海路を利用して東北から九州に至る日本各地に運ばれていたことから、六古窯最大規模の産地と言われています。
常滑焼は古くから作られている焼き物であり、古墳時代に中国から朝鮮を経て「窯」の技術が伝えられます。「穴窯(あながま)」が作られ、そこで須恵器が焼かれていたようです。
平安時代から鎌倉時代には常滑を中心に知多半島全域に穴窯が築かれ、山茶碗や壺が作られます。この時代に作られた焼き物は「古常滑」と呼ばれ、常滑焼の原型となっています。碗は食器、鉢は調理具として用いられ、壺や甕は貯蔵具として使われていたようです。
酒蔵があったと言われている地域から大量の甕が出てきており、鎌倉時代の記録で酒造りに壺がたくさん使われていたという記述があることから、酒の保存にも使っていたとも言われています。酒以外でも油の貯蔵や藍染にも使われたようです。
江戸時代には「朱泥急須(しゅでいきゅうす)」がつくられるようになり、常滑焼の主力商品となっていきます。明治時代以降は、常滑で焼かれたレンガが使われた帝国ホテル旧本館は関東大震災で崩壊を免れたことで、建築用の陶器生産としても有名となります。
常滑焼は日本六古窯の中でも、時代の変容とともに幅広い製品が作られ、他産地の焼き物に大きな影響を与えます。
常滑焼の特徴のひとつが、鉄分を多く含んだ良質な土を活かして、鉄分を赤く発色させる技法です。最も代表的なものは、赤い色をした「朱泥急須」です。
また、太さ7〜10cmの棒に近い粘土紐を肩に担ぎ、陶工自身がロクロのように回りながら粘土を積み上げていく、今なお受け継がれる伝統技法「ヨリコづくり」で甕(かめ)や壺など大物製品を成形しています。
越前は北陸最大の窯業産地
越前焼は福井県の越前町を中心に作られている焼き物です。日本六古窯の中で唯一、日本海沿岸一帯へと発展することができました。越前の港に越前焼をはじめとした物資が集約され、日本各地に運ばれる仕組みができていたため、北海道から島根県まで商圏を拡大することができたと言われています。
平安時代末期、常滑窯から技術を導入して越前焼の生産が始まりました。
それまでは越前焼と直接的な関係はないものの、越前周辺では須恵器が作られており、越前は古くから焼き物作りの町として越前焼の技術を受け入れられる土壌があったようです。
戦国時代には越前焼は大量生産を行うようになりました。当時に気付かれた全長25mにおよぶ大きな“岳の谷窯跡群”は現在、越前町指定文化財になっています。
江戸時代中頃になると、越前焼特有の鉄分を多く含んだ土を生かした「越前赤瓦(えちぜんあかがわら)」が作られるようになります。
瓦の生産は近代にかけて衰退していましたが、1948年に越前焼を日本六古窯の一つとして認定し、1965年に福井県内で生産される各窯元の焼き物の名称を「越前焼」と統一することにより、越前焼の名は全国に定着していきます。現代でも土の風合いを生かした越前焼を生みだす伝統技法は引き継がれ、その温かさ・渋みが多くの人に愛されています。
越前焼の特徴は、越前地域特有の土が多く含む鉄分により、耐火性が高く、焼き締まりが良い点です。硬くて丈夫な越前焼は水漏れしにくいため、壺・甕・すり鉢を中心に生活雑器として使用されます。
また、初期の越前焼は釉薬を使わない代わりに、薪が焼かれるときに素地についた灰が天然の釉薬となり素朴な風合いを作り出しています。
「形になるものは何でもつくる」という伝統と創造が共存する窯業地
信楽焼は滋賀県甲賀市信楽町を中心に作られている焼き物です。信楽焼と言えばたぬきの置物ですが、かつては茶の道具、近年では植木鉢や傘立て、タイルなどあらゆる焼き物が生産されていました。時代の変容に合わせて人々の暮らしに寄り添う姿に発展しています。
日本六古窯の一つである常滑焼の技術的な影響を受けて、鎌倉時代に信楽焼が始まります。当初は常滑焼と区別かつかないほどよく似ていましたが、次第に信楽焼独自の作風となり、甕、壺、鉢など生活に寄り添った焼き物作りが盛んに行われるようになります。また、信楽焼は土味を生かした素朴さがわび茶の精神に通じると考えられ、見立て茶器で用いることして高く評価されています。
江戸時代になると登り窯が築かれたことにより、大量生産が行われるようになります。この時代は施釉陶器(せゆうとうき)が一般的になり、信楽でも施釉陶器が作られ始めます。江戸時代後期から製造がはじまった火鉢は、急熱急冷に強いことが評価され主力商品となっていきます。
代名詞ともいえる“たぬきの置物”が誕生したのは1951年です。昭和天皇の信楽行幸にて、主力商品である火鉢を積み上げてアーチをつくり、信楽たぬきに日の丸の旗を持たせて並べ奉迎したようです。それを見た昭和天皇は喜ばれ「おさなとき あつめしからに なつかしも しがらきやきのたぬきをみれば」と歌に詠まれました。これを機に全国で人気となります。
1970年に開催された大阪万国博覧会のモニュメント「太陽の塔」の背面にある直径約8メートルの「黒い太陽」は、信楽の当時の技術を駆使して制作されたものです。このように伝統と芸術とあらゆる場面で信楽焼は展開されるようになります。
信楽焼は古琵琶湖層から採れる耐火性に優れた土を使用しているため、タイルから大甕まで幅広く作らています。また、釉薬を施さず焼き締めるため、長焼成の過程で素地が変化して作り出される、独特な味わいを醸し出すのが特徴だとも言われています。
人々の暮らしに寄り添った窯業地として有名な丹波
丹波立杭焼は兵庫県篠山市今田で作られている焼き物です。開窯以来800年の間、一貫して飾り気のない素朴さと生活に根ざした焼き物を作り続けています。主要な窯が並ぶ立杭地区は地形に恵まれ、丹波特有の霧が早々に晴れ上がることから、焼き物の乾燥には適した土地だったようです。
丹波立杭焼の起源は平安時代末期と言われています。当時は山腹に溝を掘り込み、穴窯を用いて、釉薬を使用しない大型の甕や壺、すり鉢の焼き物の生産が盛んに行われていたようです。
江戸時代には朝鮮式半地上の登り窯が導入され、短い焼成時間で大量生産が可能になります。江戸時代中期には、茶入・水指・茶碗などの茶器や小型の徳利など生活に寄り添った多種多様の製品が作られるようになります。
1970年代には窯業指導所や民藝運動家のはたらきかけによって、丹波焼の持つ美しさが大きな位置を占め、世界的評価も高まっていきます。
丹波立杭焼の特徴は、「灰被り(はいかぶり)」という独特の色と模様です。登り窯で最高温度約1,300度の高温のなか約60時間焼かれるため、焼成時にかかった灰と、土に含まれる鉄分や釉薬と化合され、独特の模様が現れます。また炎の当たり方や灰のかかり方によって、ひとつひとつ異なった表情が生み出されるのも特徴です。また日本六古窯の多くが右回りのろくろで作られるのに対し、丹波立杭焼は日本では珍しい左回転ロクロ「蹴りロクロ」と呼ばれる独特の伝統技術で作られています。現代もなお、蹴りロクロは継承されています。
豊かな山々に育まれた窯業地
備前焼は、岡山県備前市で作られている焼き物です。山々から流出した一部が堆積した「干寄(ひよせ)」と呼ばれる良質な土が取れたことから、焼き物産地としても適しています。
また瀬戸内海に面した温暖な気候を有し、山に囲まれた自然に恵まれた産地となっています。
備前焼の起源は、古墳時代の須恵器にあると言われています。須恵器の生産が終わる平安時代後期に生活用器の椀、皿、瓦などが生産されたのが始まりです。
鎌倉時代の中期、主に壺。甕・すり鉢が作られるようになります。備前焼特有の赤褐色の焼き物も作られるようになっていきたのもこの時代からです。室町時代は最も広範に備前焼が使われ、南・北・西に本格的大規模な共同窯が築かれます。
江戸時代になると藩の保護・統制もあり小さい窯が統合され、大きな共同窯が築かれました。共同窯は窯元六姓(木村・森・頓宮・寺見・大饗・金重) による製造体制が整えられます。共同窯は大窯と呼ばれるため、江戸時代を大窯時代と呼ばれていました。
近年は伝統的な作風に加え、作家性のある個性豊かな備前焼が作られています。またビールタンブラーなどライフスタイルに合わせたものも生産されるようになります。
備前焼の最大の特徴は窯変 (ようへん)です 。約2週間もの時間をかけて1200度以上の高温で焼き締めるため強度が高くなります。すり鉢として活躍するのもその強度ゆえと言われています。その他にも保温力が高く、熱しにくく冷めにくいため、飲み物の適温を維持したままゆっくりと味わえます。
また、絵付けや施釉をせず焼き上げる備前焼は、窯の中の状態や炎の当たり方により焼き物の色や表面の仕上がりが変わってきます。その特徴ごとに胡麻(ごま)、棧切り(さんぎり)、緋襷(ひだすき)などに分類がされます。
旅する、千年、六古窯
日本六古窯の公式WEBサイトで2018年から始動したプロジェクトです。
千年という年月をかけて継承されてきた6つの産地の技術・文化を詳しく掘り下げています。
また各産地の陶器市開催やその他情報を発信しています。
『やきもの』を通し、人と自然、モノづくりの関わりを改めて考えてみませんか。
詳しくはこちら
機会があればぜひ各産地へ足を伸ばしてみてはいかがでしょうか。目安となる生き方を示しておきます!季節によって各地でイベントや体験会などを開催していることもあります、直接職人さんや地元の方々と触れ合いながら歴史と焼き物をお楽しみください。
愛知県の北東に位置する瀬戸市、電車ですと名古屋の中心栄町駅から出ている名鉄瀬戸線で一本でいけます。終点である「尾張瀬戸(おわりせと)駅」まで30分ほどです。瀬戸でのオススメは「窯垣(かまがき)の小径です。約400m続く「窯垣」は、窯道具を積み上げて作った塀や壁のことで、全国でも瀬戸でしか見ることのできない珍しい景観です。
名古屋南に位置する「知多半島」中央、西側の海沿いに面しています。立地環境が良く、車や電車はもちろん、飛行機や船など様々な交通機関を利用し訪れることができます。電車ですと名鉄名古屋より名鉄常滑線特急で35 分、「常滑駅」で下車をします。駅から徒歩5分ほどの場所に「常滑やきもの散歩道」があり、歴史的産業遺産を巡る観光スポットとなっています。
近畿のほぼ中央、滋賀県の最南端に位置する、標高300メートル前後の高原の町です。
京都駅からJR琵琶湖線で「草津駅」、その後草津線で「貴生川(きぶかわ)駅」、そして信楽高原鐵道で「信楽駅」におよそ2時間ほどで到着します。駅から徒歩10分にある、「信楽陶芸村」はリーズナブルに陶芸体験できることで好評な施設となっています。
福井県丹生郡(にゅうぐん)越前町で作られています。大阪駅からですとおよそ2時間ほどで着き、JR特急で「鯖江駅」もしくは「武生(たけふ)駅」で下車します。
越前焼のすべてを体感するための総合施設「越前陶芸村」や越前焼の歴史や特徴を学べる「福井県陶芸館」など越前焼の魅力に存分に触れることができます。
兵庫県篠山市今田(こんだ)周辺で作られています。電車では大阪駅よりJR福知山線快速で70分ほど「篠山口駅」に着きます。この地域には「立杭陶の郷(たちくいすえのさと)」や「兵庫陶芸美術館」など陶芸好きには見逃せない施設があります。陶の郷では、展示即売場があり陶芸作家の丹波焼を見て購入することもできます。
主な産地は岡山県内南東部方面、備前市内の伊部(いんべ)地区で備前焼作家の窯元や陶芸店が集中しています。電車で向かうとすると、JR岡山駅から赤穂線で約40分、「伊部駅」で下車します。 窯元や関連施設のほとんどがJR伊部駅から徒歩圏内にあるため、工房めぐりを気軽にできます。
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大分県別府市は、温泉と同様に竹細工でも有名です。別府を中心によく採取されるマダケは熱にも強く、丈夫、かつ劣化しにくいことから古くから数多くの用途で使用されてきました。そんな竹を用いて作られるのが別府竹細工です。
本記事では、別府竹細工の特徴や作り方、編み方そして職人の方に聞いた竹細工が人々を惹きつける理由についてご紹介していきます。
]]>本記事では、別府竹細工の特徴や作り方、編み方そして職人の方に聞いた竹細工が人々を惹きつける理由についてご紹介していきます。
竹細工の発祥は室町時代にまで遡ります。当時は商人が使用するためのかごが作られており、江戸時代に温泉地として人が多く訪れるようになると、湯治客が滞在中に使う台所用品や温泉グッズを入れるかごが作られるようになりました。これらは次第に土産物として持ち帰られるようになり、竹細工製作を後押ししました。このようにして竹細工は地場産業として成立していったのです。
日本では、別府竹細工に使用されるマダケを含め、約626種類、そして世界には1250種類もの竹があるとされています。マダケはその中でも日本で栽培される竹の60%を占め、そのほとんどが大分県で生産されています。20メートルに及ぶこともあるマダケは、弾力性があり竹細工に最適です。
しなやかで丈夫なマダケは竹細工だけでなく、建築にも使用されています。その他にも、モウソウチク、クロチクと呼ばれる竹が使用されることもあります。昨今では昔からの日用品に加え、美術的価値が付加され、市内の旅館の内装に竹細工の技法が使われています。
別府竹細工の最大の特徴は、竹ひごの編み方です。「編組」と呼ばれる編み上げ技法は、すべて職人の手作業で行われます。
基本の8つの編組は、経済産業省によって指定される日本伝統的工芸品の一つで、大分県では昭和54年から唯一指定されています。
この基本の編組は、組み合わせ次第で200通り以上の編み方があり、職人の個性と技術の見せ所です。
別府竹細工商品一覧ページはこちら
続いて、竹細工を作るための材料と作り方についてご紹介します。
まずは、竹細工の材料である竹の伐採と油抜きが行われます。
3年から4年ほどかけて成長した高品質の竹を伐採します。竹は伐採時期によって質が変わるため基本的に秋冬の伐採が良いとされています。これは成長が緩やかになり、水分養分共に少なくなるため伐採後の腐食や虫を防ぐためです。雨後の筍といわれるように、春夏の雨の多い時期の竹は水分養分を多く含みすぎており、竹細工には適していないのです。
伐採後に行われるのは、油抜きと呼ばれる作業です。
一般的には苛性(かせい)ソーダを入れた水の中で煮沸させることで染み出す油を拭き取るという方法が主流です。
油抜きを行う理由としては、余分な油分を抜くことで腐りにくくし、耐久力を上げ、さらに表面の艶出しになるためです。
油抜きの工程を経た竹は、冬に天日干しされると元々の緑色から美しい白色の竹となります。天日干しを終えた竹は、白竹もしくは、晒竹(さらしだけ)とよばれます。職人は主にこの晒竹を買い付け、竹細工を作ります。
天日干しされた竹は、「菊割」と呼ばれる専用の道具で適切な長さに切断されます。まず、盛り上がりを削り、平らにしたのち竹割包丁で半分に割ります。「竹を割った性格」といわれるように、竹は一度刃を入れると、繊維にそって綺麗に割れます。
そしてさらに、その半分を縦に割る「荒割り」の工程を何度も繰り返し行います。
籠やざるを編むための竹ひごを作るため、割られた竹は剥ぎの工程が必要です。「荒剥ぎ」→「小割り」→「薄剥ぎ」の順に薄くして、竹ひごの厚みを整えていきます。熟練の職人は手の感覚だけで、剥いだ竹の厚みが分かるようになると言われるほど難しい技術です。
厚みを均一にした竹ひごを2本の幅とり小刀で幅を揃えます。そして面取り刀で面を取り、竹細工を作りやすい竹ひごに仕上げていきます。
竹ひごを作り終えるといよいよ竹細工の製作です。まずは底の方から編んでいきます。編む過程の中では底編みが1番難しく技術を要します。なぜこの過程が難しいかと言うと、平面の底を立体にするため竹ひごを熱しながらゆっくりと立ち上げていかなければならないからです。これを「腰の立ち上がり」と言います。
立ち上がった竹ひごをさまざまな編み方でデザインしながら編み上げていきます。
編み上げられた竹細工は、最後に縁仕上げを行います。縁仕上げの方法はさまざまで、編み上げてきた竹ひごをそのまま縁にしようとする「共縁」や縁となる竹を竹ひごや針金などで固定する「当て縁」、藤などを巻く「巻縁」と言った仕上げ方があります。
作品によっては取手を付ける場合もあります。
編み終えた竹細工は、染料が入った鍋で煮沸され下地染めされます。染色を施さない青竹のままの竹細工は「青物」、油抜きをした細工は「白物」と呼ばれ、染色を施すものと区別されます。染色するものの中でも、漆塗りをするものは「黒物」と言います。
下地染めされた作品は乾燥させ、絶妙な力加減で均一に磨かれます。力を入れすぎると竹に傷が付き、艶が失われてしまうため注意しなければいけません。
続いて、竹籠の編み方について紹介します。
伝統工芸品に指定されている別府細工には基本の8つの編み方があります。
その8つとは、「四つ目編み」、「六つ目編み」、「網代編み」、「ござ目編み」、「輪弧編み」、「菊底編み」、「八つ目編み」、「松葉編み」です。
今回は四つ目編みから菊底編みまでの編み方の特徴と、それ以外の編み方の特徴を紹介します。
四つ目編みは、太さの同じ平たい竹ひごを交差させるように編んでいきます。等間隔で四角い目が出来ることから、四つ目編みと呼ばれています。真っ直ぐに交差させたり、斜めに交差させたりすることで、さまざまな模様が生み出されます。
通常より広く隙間を開けたものを「レンジ組み」、間隔を通常より狭くしたものを「市松組」と呼ぶこともあります。四つ目編みは竹を編むときの初歩的な編み方の一つです。
六つ目編みは6本の竹ひごを、左右斜め横に組み六つ目模様に編み上げていきます。網目が六角形に見えることから「六角編み」と呼ばれたり、とてもポピュラーな編み方のため「籠編み」と呼ばれることもあります。
斜めの編みを加えることで、四つ目編みよりも強度が高く頑丈なため、竹ざるや竹籠に用いられました。また、差し紐の色や太さ、差し方を工夫することでさまざまな模様を編み出せます。
網代編みには、太めの平たい竹ひごを使用します。目をずらしながら編む技法で、隙間なく編み込んで行くため、とても頑丈です。並べ方に変化をつけることで個性を出すことができるため、竹細工だけでなく天井装飾や屏風などにも用いられる美しい編み方です。
ゴザ目編みは太い竹ひごを縦に、それよりも少し細い竹ひごを横にして、隙間を開けずに編んでいきます。そのため、横ひごが縦ひごよりも多くなり、ゴザのように見えることからゴザ目編みと呼ばれています。この編み方も強度が高く、竹ざるや竹かごに使われてきました。
輪弧編み、もしくは輪口編みと呼ばれる編み方は竹ひごを放射線状に組みながら中央に輪が出来るように編み上げる技法です。
菊底編みは名前の通り、円形の底を菊の花のように作り上げていく編み方です。太めの竹ひごを放射線状に並べ、細い竹を中心から外側に向かって編んでいきます。底が円形の竹かごや竹ざるに多く使用されてきました。大きな竹かごなどを作る場合には、竹ひごの本数を増やして編んで行く「二重菊底編み」と呼ばれる技法を用います。竹ひごは十字組や扇子組などで重ねられます。
続いて基本の編組以外の編み方もいくつかご紹介します。
亀甲編みは、六つ目編みと同じく計6本の竹ひごを編み込み作ります。
しかし、六つ目編みとは異なり、交点を組まずに中心に寄せることで小さな六角形を作り出すのが特徴です。その形が鉄線という花にも似ていることから、「鉄線編み」と呼ばれることもあります。
やたら編みは、長さも太さをさまざまな竹ひごを不規則な方向から編み込んでいく編み方です。バランスが取りにくく、独特の編み方のため「みだれ編み」とも呼ばれます。編み目を隠しつつ、隙間を埋めるようにきっちりと編み上げていくことで美しい仕上がりになります。
ねじり編みは、竹ひごを2枚重ねて1本と数え、2本を交互に一目ずつ飛ばし、掬い上げながら編み上げます。これにより波打つような模様を生み出す特徴的な編み方です。
名前の通り、底編みの際に網代編みを用います。その後、竹ひごを立ち上げざるや籠に仕上げていく編み方です。網代編みにすることで隙間なく埋められた底は米とぎざるなどに使用されており、お米が落ちないようになっています。
筏底編み(いかだぞこあみ)は、底編みの中でも簡単な編み方で、「角底編み」とも呼ばれ、多く使用されています。四つ目編みの間に平たい幅広の竹ひごを入れて仕上げていきます。菊底編みや網代底編みは円形の底に用いられますが、筏底編みは四角い底の籠などに使用されます。また、四つ目編みの間に竹ひごを入れるこの技法は、底編みだけでなく胴編みに用いられることもあります。
別府竹細工商品一覧ページはこちら
まとめ
いかがでしたか?
大分県別府市の竹細工について知っていただけたでしょうか?日本人は古くから、自然の竹をさまざまな手を加え工夫することで、日常生活を豊かにするための道具作りを行なってきました。またさまざまな編み方を考え出し、美しさをも追求してきたのです。
皆さんも生活の中に美しい竹細工を取り入れてみませんか?
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目次
SDGs(エス・ディー・ジーズ)とは、「Sustainable Development Goals(サステイナブル・デベロップメント・ゴールズ)」の略称で、「持続可能な開発目標」のことです。2015年9月の国連サミットにて全会一致で採決され、2016年から2030年の15年間で達成する目標として掲げられました。
SDGsは、持続可能な社会を実現するための17のゴールと169のターゲットで構成されています。例えば、17のゴールには、2番の「飢餓をゼロに」や5番の「ジェンダー平等を実現しよう」、13番の「気候変動に具体的な対策を」など、先進国・途上国どちらもが抱えている世界的な問題が多く含まれています。
多角的な目標を通じて、国連加盟国193カ国は持続可能な未来を目指し、「誰一人取り残さない(Leave no one behind)」ことを誓っています。
一見関わりのないSDGsと日本の伝統工芸ですが、伝統工芸の在り方は SDGsの掲げる目標と深い繋がりがあります。
伝統工芸品とは、伝統的な技術や材料を用いて、主に手作業で一定の地域の職人に製造される品のことであり、日常生活で使われていること、そして、長い歴史や伝統も必要不可欠です。そんな伝統工芸ですが、近年その環境へのやさしさや持続可能性などのSDGsとの関連性にも注目が集まっています。
伝統工芸において使われ続けている材料は、昔ながらの伝統的なもの且つ地域に適したものであることが多く、環境にやさしいと考えられています。
また、伝統工芸の特徴の一つである手作業も、工芸品のエコな生産と綿密に関わっています。
大部分の工程が手作業で行われることから、電気などのエネルギーの消費はごくわずかです。それに加え、手間暇のかかる手作業の品々だからこそ、大量生産による余分な品々やそれに伴う多大な環境への負荷が発生しづらくなっていなります。その為、伝統工芸品は環境に優しい生産として受け継がれているのです。
伝統工芸における持続可能性は、生産・消費のどちらの過程でも観察できます。生産地域にあった資源を必要なだけ活用・保存し、それを基に技術や製法を発展・継承している伝統工芸の在り方は、まさに持続可能な生産といえるでしょう。
消費・実際に使う過程においても、サステイナブル(持続可能な)活動が受け継がれています。日本の多くの伝統工芸では、「新しいものを買う」より「壊れたものを直して使い続ける」ことが良しとされてきました。つまり、伝統工芸品の在り方はSDGsで掲げられている目標と共鳴する部分が多くあるのです。
日本の伝統工芸品はSDGsと深い繋がりがあるだけではなく、工芸品自体がSDGsの多くの目標を体現しています。
中でも、伝統工芸品の「ものを大切にする」精神や文化から生じた生産者・消費者の取り組みが、SDGsの様々な目標に該当していると考えられます。
日本では、高度経済成長に伴い、消費文化や機械による大量生産・大量消費が普及しました。21世紀の現在にもその潮流は受け継がれており、多くの物を消費することが当たり前の世の中になりました。
しかし、そんな世の中の大量生産・大量消費の仕組みにも限界が見えてきています。資源やエネルギーは決して永遠でなく、徐々に枯渇している現在の状況を受け、「持続可能性」や「ものを大切にすること」に注目が集まっています。
一方で、日本の伝統的な文化の中では「ものを大切にする」ということが当たり前に行われてきていました。大規模な大量生産ではなく、手作業で一つ一つ丁寧に選ばれた少ない資源から作りあげられる伝統工芸品は、品質が高く、長い間使い続けることができます。
また「ものを大切にする」日本の文化は、年月を経て見た目に独特の「味」が出た品々に価値を見出します。そのため、破損した工芸品も金継ぎなどの修復を加えて使い続けることが一般的です。
伝統工芸品のそのような側面は、SDGsの12番の目標「つくる責任つかう責任」とまさに合致しています。また、伝統工芸はこの12番の目標以外にも、環境に関連する様々な目標に取り組み、達成していると考えられています。
SDGsが設定される遥か前から存在している日本の伝統工芸品ですが、現代にも活きる大切な価値観を含んでいたのですね。
日本の伝統工芸品は、その伝統的な文化からSDGsの様々な目標に当てはまっています。それに加え、近年の環境問題や持続可能性への注目の高まりにより、SDGsの目標に対して積極的に取り組む伝統工芸が増えてきました。
そんな日本の伝統工芸が該当するSDGsの目標の事例に関してご説明します。
日本の社会、そして伝統工芸においては、性別や年齢によって活躍の幅が限られており、労働環境が優れない会社・工房も少なくはありません。そんな中で、3の目標である「あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する」ことを実践している事例があります。
株式会社能作では、性別・国籍・年齢問わず健康に働くことのできる環境を目指し、有休制度や産休、雇用条件の見直し等を積極的に行なっています(詳細はこちら)。
8の目標は「すべての人々のための持続的、包摂的かつ持続可能な経済成長、生産的な完全雇用およびディーセント・ワークを推進する」こと、そして、11の目標は「都市と人間の居住地を包摂的、安全、レジリエントかつ持続可能にする」こととされています。
伝統工芸の主な材料となる森林や陸の豊かさを育てる活動が、周りに巡って人にも優しい住環境や雇用の創出、経済成長にまでつながることがあります。
上記の例に挙げた6つの目標以外にも、目標9や13のなど伝統工芸品の別の側面と関連している目標は数多くあります。環境にやさしく、持続可能性のある日本の伝統工芸品は、「持続可能な社会」をつくる沢山の可能性を秘めているのですね。
SDGsの17個の目標のうち、日本伝統工芸と一番深く関わっている目標は12番だと考えられるのではないでしょうか。12の目標である「持続可能な消費と生産のパターンを確保する」ことは、「ものを大切にする」それぞれの伝統工芸の歴史の中で徐々に培われてきているといえます。
それと同時に、最近のSDGsの注目により、伝統工芸の生産・消費の両過程において「持続可能性」を促進する積極的な活動が行われています。
例えば、蒔絵作品のメーカーであるHARIYA(詳細はこちら)は、12番の目標のうちの「つくる責任」を三つの要素に分けてSDGsに取り組んでいます。その三つとは「Reduce(減らす)」「Reuse(再利用)」「Recycle(再資源化)」です。
この3つのRに則して、素材や創りだす製品、不要とされるようなものまで全てを大切にし、工夫をすることで付加価値をつけ、長く無駄なく使ってもらえる品を生み出しているのです。
このように、伝統工芸における「つくる側」の責任を持った行動が進んでおり、12番の目標が積極的に果たされていることが伺えます。
伝統工芸品を消費する利点として、現在の日用品に比べ、長持ちしやすいという点があります。これは、伝統工芸品ならではの品質の良さと修理が可能だという点が影響しています。
長持ちしやすい伝統工芸品を使用することで廃棄物が少なくなり、海を含めた環境の保全や整備が行われやすくなると考えられます。
また、伝統工芸品で使用する天然の素材を使用することで、海に流入しても環境を汚染し続けることはなくなります。
例えば、漆製造のURUSHI NEXTで原材料として使われている漆は、紫外線と海水によって分解されるといわれています。現在主流であるプラスチックと異なり、伝統工芸品は環境への負荷が少ないとされています。(詳細はこちら)
このような、伝統工芸品ならではの品質や自然な素材へのこだわりが、「海洋と海洋資源を持続可能な開発に向け保全し、持続可能な形で利用する」という目標を達成する一助となっているのです。
日本の伝統工芸品の多くの材料は陸から採られています。そのため、陸の豊かさが損なわれれば、当然伝統工芸の生産も不可能になります。
つまり、SDGsの15番の「陸上生態系の保護、回復および持続可能な利用の推進、森林の持続可能な管理、砂漠化への対処、土地劣化の阻止および逆転、並びに生物多様性損失の阻止を図る」という目標は、伝統工芸の生産にも深く関わっているのです。
実際に数多くのメーカーが、陸の豊かさを守るための活動などを行なっています。漆製品の製造を行うURUSHI NEXTは、漆の持続可能性について啓蒙しています。
漆はウルシノキと呼ばれる木から採取されており、木々を植え適切に育てることで、豊かな陸環境の維持が可能です。また、漆製品は修理をしながら長く使うことが可能なため、ゴミやプラスチックの使用を減らすことから環境への負荷が軽いとされています。
このように、伝統工芸は陸の豊かさと深く結びついており、数多くのメーカーが陸の環境保全を日々意識していると考えられます。
竹細工を中心とする九州の民芸や工芸品を多数取り扱う山下工芸では、3・12・14・15の目標を中心に様々な取り組みをおこなっています。
例えば、障がい者の方々の働く機会を作業委託によって設け、選び抜いた原料を使用することによる安全な商品開発は目標3に繋がっています。また、現在問題となっている放牧竹林などの活用や自然素材由来の商品開発、プラスチックの削減なども積極的に取り組んでいます。
(詳細はこちら)
能作は富山県高岡市にて錫器の製造をおこなっている会社です。「誰もが住みやすくなれる」を目標に5つの軸を基に、 SDGsの問題に多角的にアプローチしています。
5つの軸とは、「1. 自然環境・社会に配慮したものづくり2. 地域への恩返し・住み続けられるまち 高岡に3. 地域の未来を担う子どもたちへ4. 100年先も続く伝統工芸に5. 社員の笑顔を大切に 働き続けられる環境づくり」です。
それらの軸を通じ、環境問題への配慮だけでなく、地元との連携や支援、地域社会での次の世代との関わり、広い世界や未来への発信と伝承、そして自社内での平等な働く環境づくりなど、日本社会や伝統工芸産業が抱える大きな問題の解決を目指しています。
漆製品に使用される漆は、原料そのものがサステイナブルな資源だと考えられています。漆の活用によって、陸・水環境の整備、街や社会、産業の活性化、そして環境問題の改善を促進ができると言われています。
漆製品を製造しているウルシネクストでは、そんな漆の利用を促進すべく、特定の商品の売上を、ウルシの森づくりのための活動に使用しています。
(詳細はこちら)
HARIYAは、蒔絵の製造を行なっており、つくる側としての責任を「3R」に照らし合わせて考え、取り組んでいます。そのうちのReduce(減らす)側面では、「素材を大切にする」ことが核とされていると考えられます。
例えば、蒔絵は作業過程で木の筋やヒビが見えてしまうことがありますが、その素材を捨ててしまうのではなく、新たに蒔絵を加えることで、新しい命を吹き込むのです。また、蒔絵に使う道具自身も自然の素材から作られることがあります。
熊野筆の製造を行う晃祐堂は、主に4つのポイントからSDGsにアプローチしています。その4つとは、伝統工芸士による筆づくりやアップサイクル、環境への配慮、働く環境の整備と地域社会との連携です。
そのそれぞれの軸にSDGsの多くの目標が関わっています。例えば、地域社会への貢献として、地元の間伐材を利用した商品の開発や熊野筆のセミナーや体験会を行なっています。(詳細はこちら)
その他にも、小樽の深川硝子工芸(詳細はこちら)、越前和紙の山田兄弟製紙株式会社など(詳細はこちら)多数の取り組みが見受けられます。
SDGsは、メーカーによって取り組まれているだけでなく、伝統工芸士個人が発信・取り組んでいる場合もあります。
伊勢根付職人の梶浦さんは、自身のブログでSDGsに関して発信をしています。
その中で、根付をはじめとした伝統工芸は、職人によって完成されるものではなく、使う人よって長く使われることによって価値を増すものだと述べています。
日本の風土の中で育まれてきた伝統や考え方自身が、現在の消費文化中心の社会の中で「持続可能な社会」を目指す上で必要だと考えられます。(詳細はこちら)
ジェレミーパレジュリアンさんによって考案されたプロジェクトです。このプロジェクトで有田焼の幸楽窯の中で忘れられてきた多くの焼き物を復活させました。放置されていた焼き物は、外気の湿気によってミミズのような筋ができることから、ミミズプロジェクトと呼ばれました。この忘れられていた素材を大切にする精神は、SDGsや持続可能性に沿っているものがあります。(関連記事はこちら)
日本工芸堂では、「つかう」側として持続可能な消費やSDGsに貢献することのできる、様々な商品を取り揃えております。今回おすすめする5点の伝統工芸品は、高品質で長く使うことができるだけでなく、修復することが可能であり、実際に修復の作業などが体験できる製品です。
伝統工芸品そのものの良さを感じながら、一消費者として伝統工芸を通じて「持続可能な社会」に貢献して見るのはいかがでしょうか。
山中漆器のお椀の中でも、伝統的なサイズ感で持ちやすく重ねやすいお椀がこの「サブロク椀・仙才」。昔から伝わってきている三寸六分(13.6cm)のサブロク椀は、汁物を盛る際にピッタリのサイズとなっています。仙人のように様々な才能がある形、といわれる仙才のこの椀は欅でできており、漆茶で仕上げられています。
この上品な山中漆器のお椀は、その質の高さから長く使い続けることができるだけでなく、漆が剥がれた際の修理まで可能になっています。同じものを長く使い続けることのできる山中漆器の漆器は、消費者としてもSDGs実現への一歩となることでしょう。
また、この山中漆器の中で、白鷺木工は「丸物(円形の器のこと)」を3代に渡ってつくり続けています。そんな白鷺木工は森を守り、未来へと受け継ぐためのクラウドファンディングも実施するなど、伝統工芸を超えた「持続可能な社会」づくりにも貢献しています。
上記漆器と同じ、白鷺木工による山中漆器の木製ボウルです。サブロク椀同様に、高い品質を誇ると同時に、長い年月の経過による漆の剥がれの修復も行われています。
何を盛っても良し!なこのボウルは、手に沿うカーブとなっており使い勝手は抜群です。また、原材料としては栗が使われていて、その圧倒的な耐水性の強さと木目が、美しい赤い漆によって際立っています。
お湯を沸かす際に、中の飲み物を美味しくする作用のある鉄瓶が、丸みを帯びたケトルとなり、現在の日常に溶け込みやすくなったものがこちらの商品です。
鉄瓶は「三代使える道具」と言われるくらい丈夫と言われており、長く使えることから、その環境へのやさしさや持続可能性が窺えます。一方、鉄瓶に比べ、耐用年数が短い木製のつまみ部分ですが、付属品によって簡単に取り外し・交換ができるようになっています。そのため、長く同じ伝統工芸品を受け継いでいくことが可能になっています。
3代に渡ってこのモダンな鉄瓶を受け継いでみてはいかがでしょうか。
割れてしまった食器を修理し、使い続けることができるようになる金継ぎ体験キットです。大切なものを長く使い続ける工夫をご自身で体験できることから、SDGsやサステナビリティへの貢献にもなります。
また説明書や動画がセットになっているため、腕に自身のない方でも楽しんでお気に入りの品々を再生することができます。「つかう」側としてだけではなく「つくる」側に寄った体験をすることで、SDGsや伝統工芸への理解をより深められるのではないでしょうか。
体験キット | 拭き漆 | ふきうるしキット 箸2膳お碗2脚付き | 堤淺吉漆店
漆の製法の中で、最も手が届きやすいのが「拭き漆」の技法と言われています。拭き漆とは、製品に生漆を刷り込み、拭きあげる作業を繰り返す技法の子です。この体験キットでは、そんな拭き漆の技法が、二膳のお箸・お碗2脚で体験することができます。
普段とは異なる「つくる」側に回ってみることで、今まで得ることのなかった伝統工芸に対する視点、環境や持続可能性に関する視点が発見できるかもしれません。
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目次
経済産業省の定義として以下の5つの項目を全て満たし、伝統的工芸品産業の振興に関する法律(昭和49年法律第57号、以下「伝産法」という)に基づく経済産業大臣の指定を受けた工芸品のことをいいます。
・主として日常生活の用に供されるもの
・その製造過程の主要部分が手工業的
・伝統的な技術又は技法により製造されるもの
・伝統的に使用されてきた原材料が主たる原材料として用いられ、製造されるもの
・一定の地域において少なくない数の者がその製造を行い、又はその製造に従事しているもの
対象の伝統的工芸品数は2022年3月18日時点237品目です。指定年代を見てみると昭和53年までに123品目(現品目の50%以上)が指定されていた。以降も少しづつ対象品は増えています。
経済産業省対象詳細はこちらです。
“100年の歴史が必要性である”と記憶していたのですが明記がありません、確認してみようと思い、経済産業省に連絡してみました。
”それ自体の記載は法律「伝産法」にはないが、工芸産地の新規申請で100年の歴史がないと伝統的工芸と認定していない”
というのが実質的な運用だそうです。
伝統的工芸品237品目(2022年3月18日時点)は業種別に区分されています。品目の多い順に並べると以下になります。
織物 38品目
木工品・竹工品 33品目
陶磁器 32品目
漆器 23品目
その他の工芸品 22品目
仏壇・仏具 17品目
金工品 16品目
染色品 13品目
文具 10品目
人形・こけし 10品目
和紙 9品目
その他の繊維製品 5品目
石工品 4品目
工芸材料・工芸用具 3品目
貴石細工 2品目
例えば、久留米絣は織物、有田焼や九谷焼は陶磁器、南部鉄器は金工品、江戸切子はその他の工芸品に区分されています。
さて、伝統的工芸品の人気ランキングをどのように考えるか思案した際に、この業種別の検索数を指標にしてみようとリスト化を試みました。それは多く人が活用する「検索」は人々の関心の高さが現れます。業種別産地の人気を計るひとつの指標として以下のよう進めてみました。ひとつの指標・参考としてみたいと思います。
上記の業種に属する品目名を区分とする。
以上をもとに伝統的工芸品の業種別産地ランキングを見ていきます。
現在、伝統的工芸品として認められている織物の産地は下記の通り北から、38あります。これらの織物の原料や製法、出来上がりの見た目は産地によって大きく異なり、その違いゆえに多くの人々からいまでも愛され続けています。北から都道府県ごとに列挙してみると...
風谷アットゥシ(北海道)
羽越しな布(山形)
置賜紬(山形)
奥会津昭和からむし織(福島)
小千谷縮(新潟)
塩沢紬(新潟)
十日町絣(新潟)
十日町明石ちぢみ(新潟)
信州紬(長野)
牛首紬(石川)
桐生織(群馬)
読谷山花織(群馬)
伊勢崎絣(群馬)
結城紬(茨木)
秩父銘仙(埼玉)
村山大島紬(東京)
多摩織(東京)
本場黄八丈(東京)
近江上布(滋賀)
西陣織(京都)
弓浜絣(鳥取)
阿波正藍しじら織(徳島)
博多織(福岡)
久留米絣(福岡)
本場大島紬(鹿児島)
宮古上布(沖縄)
久米島紬(沖縄)
知花花織(沖縄)
琉球絣(沖縄)
八重山ミンサー(沖縄)
首里織(沖縄)
与那国織(沖縄)
読谷山ミンサー(沖縄)
喜如嘉の芭蕉布(沖縄)
南風原花織(沖縄)
まとめると以下のことをわかりました。
以下が詳細な数値となります。伝統工芸品業種別産地名占有率%
久留米絣 23%
西陣織 17%
小千谷縮 16%
結城紬 7%
宮古上布 5%
博多織 4%
牛首紬 4%
塩沢紬 2%
久米島紬 2%
現在、伝統的工芸品として認められている染色品の産地は下記の通り13あります。北からそれを都道府県ごとに並べ替えてみると以下のようになります。産地によってそれぞれ異なった技術が使われ、独自の質感や模様がうまれています。
加賀友禅(石川)
東京染小紋(東京)
東京手描友禅(東京)
東京無地染(東京)
名古屋友禅(愛知)
名古屋黒紋付染(愛知)
有松絞・鳴海絞(愛知)
京小紋(京都)
京友禅(京都)
京鹿の子絞(京都)
京黒紋付染(京都)
浪華本染め(大阪)
琉球びんがた(沖縄)
まとめると以下のことをわかりました。
以下が詳細な数値となります。
加賀友禅 74%
京友禅10%
琉球びんがた 7%
古くから日本人の身近に存在している陶芸ですが、伝統工芸品として指定されているものは現在32あります。北は福島から南は沖縄まで、全国各地の産地がそれぞれの豊な材料を活かし陶芸品を作り続けてきたことが想像できます。北から列挙してみると...
大堀相馬焼(福島)
会津本郷焼(福島)
九谷焼(石川)
益子焼(栃木)
笠間焼(茨城)
美濃焼(岐阜)
越前焼(福井)
常滑焼(愛知)
赤津焼(愛知)
瀬戸染付焼(愛知)
三州鬼瓦工芸品(愛知)
信楽焼(滋賀)
伊賀焼(三重)
四日市萬古焼(三重)
京焼・清水焼(京都)
丹波立杭焼(兵庫)
出石焼(兵庫)
備前焼(岡山)
石見焼(島根)
萩焼(山口)
大谷焼(徳島)
砥部焼(愛媛)
上野焼(福岡)
小石原焼(福岡)
唐津焼(佐賀)
伊万里焼・有田焼(佐賀)
波佐見焼(長崎)
三川内焼(長崎)
天草陶磁器(熊本)
小代焼(熊本)
薩摩焼(鹿児島)
壺屋焼(沖縄)
まとめると以下のことをわかりました。
詳細な数値は以下の通りです。伝統工芸品業種別産地名占有率%
九谷焼 25%
信楽焼 12%
波佐見焼 11%
備前焼 10%
美濃焼 10%
益子焼 6%
砥部焼 5%
萩焼 4%
伝統的工芸品として現在指定されている漆器の産地は下記の23あります。それらを都道府県ごとに北から並べ替えてみると、本州を中心に東西南北多様な産地があることがわかります。産地によって異なる技法を発展させ、現在でも活きている漆器は貴重な伝統工芸品のひとつです。
津軽塗(青森)
秀衡塗(岩手)
浄法寺地塗(岩手)
鳴子塗(宮城)
川連漆器(秋田)
会津塗(福島)
鎌倉彫(神奈川)
小田原漆器(神奈川)
村上木彫堆朱(新潟)
新潟漆器(新潟)
高岡漆器(富山)
輪島塗(石川)
山中漆器(石川)
金沢漆器(石川)
越前漆器(福井)
若狭塗(福井)
木曽漆器(長野)
飛騨春慶(岐阜)
京漆器(京都)
紀州漆器(和歌山)
大内塗(山口)
香川漆器(香川)
琉球漆器(沖縄)
まとめると以下のことをわかりました。
詳細な数値は以下の通りです。伝統工芸品業種別産地名占有率%
輪島塗 36%
鎌倉彫 11%
越前漆器 7%
山中漆器 6%
木曽漆器 5%
若狭塗 4%
琉球漆器 4%
香川漆器 4%
川連漆器 3%
木工品・竹工品の中でも下記の32産地が日本の伝統工芸として認められています。北海道も含め、全国各地に木工品・竹工品である伝統工芸品の産地が存在しているのは、国土面積の6割以上が森林など自然豊かな日本ならではです。産地名を北から都道府県順に並べると...
二風谷イタ(北海道)
大館曲げわっぱ(秋田)
樺細工(秋田)
秋田杉桶樽(秋田)
岩谷堂箪笥(岩手)
仙台箪笥(宮城)
奥会津編み組細工(福島)
加茂桐箪笥(新潟)
松本家具(長野)
南木曽ろくろ細工(長野)
春日部桐箪笥(埼玉)
江戸指物(東京)
江戸和竿(東京)
箱根寄木細工(神奈川)
井波彫刻(富山)
越前箪笥(福井)
一位一刀彫(岐阜)
駿河竹千筋細工(静岡)
名古屋桐箪笥(愛知)
豊岡杞柳細工(兵庫)
大阪欄間(大阪)
大阪金剛簾(大阪)
大阪唐木指物(大阪)
大阪泉州桐箪笥(大阪)
紀州へら竿(和歌山)
紀州箪笥(和歌山)
京指物(京都)
高山茶筌(奈良)
勝山竹細工(岡山)
宮島細工(広島)
別府竹細工(大分)
都城大弓(宮崎)
まとめると以下のことをわかりました。
詳細な数値は以下の通りです。伝統工芸品業種別産地名占有率%
箱根寄木細工 25%
岩谷堂箪笥 22%
仙台箪笥 14%
大館曲げわっぱ 11%
樺細工 6%
江戸指物 3%
金工品の中で、伝統工芸品として認められているものは16産地あります。それぞれの産地が豊かな特色をもった技法を受け継いでいます。北から並べると、下記のようになります。
南部鉄器(岩手)
山形鋳物(山形)
越後三条打刃物(新潟)
越後与板打刃物(新潟)
燕鎚起銅器(新潟)
信州打刃物(長野)
高岡銅器(富山)
東京銀器(東京)
東京アンチモニー工芸品(東京)
千葉工匠具(千葉)
越前打刃物(福井)
堺打刃物(大阪)
大阪浪華錫器(大阪)
播州三木打刃物(兵庫)
土佐打刃物(高知)
肥後象がん(熊本)
まとめると以下のことをわかりました。
詳細な数値は以下の通りです。伝統工芸品業種別産地名占有率%
南部鉄器 57%
高岡銅器 22%
土佐打刃物 6%
仏壇・仏具の中でも17産地が日本の伝統工芸として認められています。各地の歴史に根付いた文化背景に影響を受けた産地の特徴がある。産地を北から都道府県順に並べると、下記のようになります。
山形仏壇(山形)
長岡仏壇(新潟)
三条仏壇(新潟)
新潟・白根仏壇(新潟)
飯山仏壇(長野)
金沢仏壇(石川)
七尾仏壇(石川)
名古屋仏壇(愛知)
三河仏壇(愛知)
尾張仏具(愛知)
彦根仏壇(滋賀)
京仏壇(京都)
京仏具(京都)
大阪仏壇(大阪)
広島仏壇(広島)
八女福島仏壇(福岡)
川辺仏壇(鹿児島)
まとめると以下のことをわかりました。
詳細な数値は以下の通りです。伝統工芸品業種別産地名占有率%
大阪仏壇 25%
名古屋仏壇 25%
彦根仏壇 11%
広島仏壇 9%
京仏壇 8%
京仏具 7%
数多く存在する和紙の中で、日本の伝統工芸として認められている産地は9つあります。水資源や木の資源が多く、自然豊かな都道府県が産地として認められていることがわかります。北から都道府県順に列挙すると...
内山紙(長野)
越中和紙(富山)
美濃和紙(岐阜)
越前和紙(福井)
因州和紙(鳥取)
石州和紙(島根)
阿波和紙(徳島)
大洲和紙(愛媛)
土佐和紙(高知)
まとめると以下のことをわかりました。
詳細な数値は以下の通りです。伝統工芸品業種別産地名占有率%
土佐和紙 29%
美濃和紙 25%
越前和紙 16%
因州和紙 13%
文具の中で、日本の伝統工芸品に認定されている産地は10つあります。北から列挙してみると、以下のようになります。
雄勝硯(宮城)
豊橋筆(愛知)
鈴鹿墨(三重)
奈良筆(奈良)
奈良墨(奈良)
播州そろばん(兵庫)
雲州そろばん(島根)
熊野筆(広島)
川尻筆(広島)
赤間硯(山口)
まとめると以下のことをわかりました。
詳細な数値は以下の通りです。伝統工芸品業種別産地名占有率%
熊野筆 57%
鈴鹿墨 12%
赤間硯 7%
播州そろばん 7%
石工品の中で伝統工芸品として指定されている産地は4つあり、それらを北から並べると以下のようになります。
真壁石燈篭(茨城)
岡崎石工品(愛知)
京石工芸品(京都)
出雲石燈ろう(島根)
まとめると以下のことをわかりました。
伝統工芸品として認められている貫石細工の産地は2つあります。
甲州水晶奇石細工(山梨)
若狭めのう細工(福井)
まとめると以下のことをわかりました
伝統工芸品として認められている人形・こけしの産地は9つあります。産地によって、見た目や技法が大きく異なってくる「人形・こけし」です。生産地域によって大きく異なる人形・こけしの様子は、産地の文化や人々に寄り添う伝統工芸品の精神の現れかもしれません。北からそれらの産地を並べてみると、以下のようになります。
宮城伝統こけし(宮城)
岩槻人形(埼玉)
江戸木目込人形(埼玉)
江戸押絵(東京)
江戸節句人形(東京)
駿河雛人形(静岡)
駿河雛具(静岡)
京にんぎょう(京都)
博多人形(福岡)
まとめると以下のことをわかりました
詳細な数値は以下の通りです。伝統工芸品業種別産地名占有率%
博多人形 64%
宮城伝統こけし 22%
伝統工芸品として認められている5つのその他繊維品の産地を、北から都道府県別にまとめてみました。
加賀繍(石川)
行田足袋(埼玉)
伊賀くみひも(三重)
京くみひも(京都)
京繍(京都)
まとめると以下のことをわかりました。
詳細な数値は以下の通りです。伝統工芸品業種別産地名占有率%
京くみひも 55%
行田足袋 26%
伝統工芸品として認められている3つの工芸材料・工芸用具の産地を、北から都道府県別にまとめてみました。
庄川挽物木地(富山)
金沢箔(石川)
伊勢形紙(三重)
まとめると以下のことをわかりました。
詳細な数値は以下の通りです。伝統工芸品業種別産地名占有率%
金沢箔 97%
その他の工芸品の主な伝統工芸品産地は22あります。この業種をランキングする意味はほぼないですが、せっかくですので調べてみました。まず産地名を北から都道府県順に列挙すると...
天童将棋駒(山形)
房州うちわ(千葉)
江戸切子(東京)
江戸硝子(東京)
江戸からかみ(東京)
江戸木版画(東京)
江戸べっ甲(東京)
岐阜提灯(岐阜)
甲州手彫印章(山梨)
甲州印伝(山梨)
越中福岡の菅笠(富山)
尾張七宝(愛知)
京表具(京都)
京扇子(京都)
京うちわ(京都)
福山琴(広島)
播州毛鉤(兵庫)
丸亀うちわ(香川)
八女提灯(福岡)
長崎べっ甲(長崎)
山鹿灯籠(熊本)
三線(沖縄)
まとめると以下のことをわかりました
詳細な数値は以下の通りです。伝統工芸品業種別産地名占有率%
房州うちわ:32%
江戸切子:24%
京扇子:17%
岐阜提灯:9%
丸亀うちわ:5%
京うちわ:4%
今回は伝統工芸品の業種別に、産地名の検索数のランキングを調べてみました。検索数により相対的な人気の割合を示すことができたのではないでしょうか。これはあくまで関心の参考になればと実施してみました。Googleでは完全一致での検索を数字の根拠にしました、関連ワードを足し上げる作業はしていません。またSNSでの検索などはこれらを反映しませんのであくまで目安のランキングとなります。
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製造過程や工法は工房によって異なる進化を遂げているためあまり公開されていませんが、今回は、「焼型」での南部鉄器の作り方をご紹介してまいります。
]]>製造過程や工法は工房によって異なる進化を遂げているためあまり公開されていませんが、今回は、「焼型」での南部鉄器の作り方をご紹介してまいります。南部鉄器を焼型(手づくり)で製作する薫山工房さんからご提供いただいた資料と、訪問した際に伺った点、撮影分をもとにまとめています。
一般的に鋳物とは溶解炉から溶けた金属を、製品の型となる鋳型に鋳込む技術(溶解、鋳込み)のことをいいます。南部鉄器も鋳物ですが、特に、鉄を溶かし製造されるので鋳鉄(ちゅうてつ)ともいいます。南部鉄器の製造技法は、2つの鋳鉄のタイプがあります。「焼型」といわれる古来より伝わる技法をとりいれた手づくりの技法と、「生型」といわれる大量生産型の技法です。
それぞれ見ていきましょう。
南部鉄瓶の製作に用いられる伝統的な鋳型です。川砂に水と粘土を混ぜ、これに文様を押したあと高温で焼いて使用することから、焼型と呼ばれます。細かい模様を刻めるというメリットがありますが、鋳型は壊れやすく、そのたびに新たに制作し直す必要があります。
その造型には長い時間がかかりますので、最終製品として数多くは供給できない面もあります。それだけ貴重な品であるとも言え、価格が比較的高額になります。
砂に粘結材として膨潤性を有する粘土やベントナイトを加え、これに水を添加して成型性をもたせた型砂で鋳型をつくる鋳造法(砂型)をいいます。その都度鋳型を壊して製品を取り出しますが、鋳型の製作は機械造型も可能で容易なため、量産性に長けています。
細かいデザインを施すのにはどちらかというと向いていないです。伝統の技と現代の鋳造技術がマッチした手法といえます。
では次に、南部鉄器ができるまでの大まかな手順をご紹介いたします。
詳細について写真ととも順にご紹介いたします。
鉄瓶をつくるには、まずデザインを考えることから始まります。独自の伝統形状や時代にマッチしたデザインなど、工房それぞれの主張はここから始まります。特に肌(鉄瓶の外側部分)は最も目に触れる面となるのでこだわりが垣間見れます。
デザインした形に木型を制作します。木型とは中心点を軸に回転させる道具のことです。現代では鉄板などの金属を使用しますが、昔は木を使用しており、その流れで現代でも木型と呼びます。実型(煉瓦素材)に、荒い型砂、中挽き、仕上げ挽きと、砂の荒さを3段階に分けて入れいきます。最後に絹真土(きぬまね)で挽き上げます。
型挽で挽き上げた鋳型が完全に乾く前に、霰・亀甲・松・桜や、雲龍・山水などの紋様を、アラレ棒やヘラを使って押していきます。鉄瓶の表面に浮き出る紋様を1つ1つ手作業で押す作業です。
紋様押しの道具は、工房ごとに異なり、自作しています。同じ製品の模様を表現する場合は、同じ道具で作業を進めます。新製品をつくる際や特徴あるデザインを施す場合は、職人ごとに工夫をこらし、自作の道具を用いています。
次は肌打ちです。肌打ちとは川砂に少量の粘土を水で溶いたもの混ぜて丸め、鋳型に軽く押していく作業です。布を丸めた道具などを用いて粒度の異なる砂を置いていく方法もあります。これにより、鉄瓶の表面に独特な味わいのある表情があらわれてきます。
紋様押し/肌打ちが終わった鋳型を、完全に乾かした後、約1200度の炭火で焼きます。鋳型の形状、大きさによって焼く時間、炭火の調整など微妙に異なります。
まさに長年の経験に裏打ちされた勘による作業といえます。(この鋳型は数度使って壊します。利用されていた砂は再利用され、新しい砂を追加して鋳型として再活用されていきます)
外側の型である鋳型とは別に、内側の型である中子を作ります。中子とは中子用の木型で挽きあげた型(鋳型用の木型より2mmほど小さく制作)に、川砂と粘土を混ぜたものを詰めて型をとったものです。
中子は焼かずに乾燥させ、型から外しやすくするための炭の粉を塗っておきます。この中子と鋳型の隙間の厚さが鉄瓶の厚みになります(製品によって異なりますが、当該文面の場合、完成する鉄瓶の厚さは2mmほど)。
型焼きまで終えた鋳型が完全に乾いた状態になったら、すす(油煙)をいぶし、コーティングします。すすが熱に強い性質を利用して鋳型の表面を覆うのです。鋳込んだ鉄の表面に、鋳型の表面の砂が焼付くのを防ぐためです。
一連の鋳込み作業を南部鉄器の工房では「フキ」といいます。製造工程の中で一番華やかな作業といわれるのが「フキ」で、緊張と高揚が交わる瞬間でもあります。
「フキ」はコークス(石炭を蒸し焼きにして作られる燃料)と鋳鉄を交互に入れて、こしき(溶解炉)の温度を約1400~1500度まで上げ、鉄を溶かしていきます。鉄の溶け具合(湯加減という)は長年の経験により判断します。
次に溶けた鉄を運ぶための“とりべ”にくみ取り、用意していた鋳型に流し込みます。この際、鋳型に板を渡して人が乗ることで重しになり、鉄の圧力で鋳型が浮き上がるのを防ぎます。
鋳込みを終えた鉄瓶を鋳型から取りはずし、中子を壊して取り除きます。次に約800度の炭火で30~40分程度蒸し焼きにして、酸化皮膜をつけます。酸化被膜をつけることにより鉄器を腐敗から守り、錆を防ぐ効果をもたらします。
これが南部鉄瓶、南部釜特有の錆び止め処理加工です。
炭火で焼いて真っ赤になった鉄瓶がチラッと見えているところ
釜焼きを終えたばかりの鉄瓶のゆがみを、専用の器具で矯正しているところ
釜焼きに使う炭火が真っ赤に燃えている様子(中に鉄瓶が埋まっています)
釜焼きを終えた鉄瓶の表面や、注ぎ口などの鋳ばりをヤスリや砥石等で細部に渡り手入れします。その後、着色していきます。鉄瓶を約300度程度に熱し、本漆(漆の木の樹液だけを使用した合成でない漆)を手作業で塗っていきます。高熱の鉄瓶に刷毛で均等に素早く焼き付ける作業は特に高度な技術が要求されます。
その後、おはぐろ(鉄片を漬けた酢酸鉄溶液に茶汁を混ぜ合わせた汁)を塗って仕上げていきます。おはぐろは混ぜる茶汁の量によって、黒や茶の微妙な色の違いを表現できます。
最後に鉉(つる)を取り付け完成となります。鉉は鉄瓶本体とは別に、鉉師という鉉を専門に作る職人が作ります。鉉にも本体と同じ着色を施して、本体に取り付けたら鉄瓶の完成です。
南部鉄器は、経済産業大臣の第一号の指定を受けた伝統的工芸品です。高岡銅器、土佐打刃物などとともに「金工品」のカテゴリーに属します。伝統的工芸品の中の知名度で、必ず上位に属する産地・産品であり、国内外問わず多くのファンの憧れの品でもあります。“祖母の時代から使っていて…”という南部鉄器ファンもいらっしゃいます。それほど長く使えますし、丁寧に扱えば100年以上使い続けることも可能です。
そして、南部鉄瓶はおよそ400年もの間、絶え間なく作り続け技術を向上させてきた、職人の技が受け継がれている製品なのです。職人として一人前になるには最低でも10年はかかるともいわれています。長年の経験による職人の手作業による数多くの工程と勘を経て作られる鉄瓶を製品としてのみならず文化としても残していきたいものです。
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自宅でもビールを飲むグラスや素麺を盛る器をガラスに変えるなどちょっとした工夫で、涼やかで透明感ある美しさを楽しむことができます。これからの暑い夏に涼やかなガラスの器で、自宅の食事に涼を取り入れてみませんか。
ガラスの器というと、飲むためのグラスを考える方が多いかもしれません。ですが、口の広いグラスは料理やデザートの食器としても使いやすいものです。
例えば「肥前びーどろ縄文ロック」や「肥前びーどろ虹色ロック」など。どちらも佐賀県の重要無形文化財に指定されている伝統工芸品で「肥前びーどろ」は、熱したガラス種に竿で息を吹き込んでつくる宙吹きガラス。宙吹きならではのぽってりとした滑らかな艶があり、素朴でレトロな雰囲気が特徴です。
どちらもロックグラスですが、丈が短く口が広いので、シャーベットやアイスクリームを入れたり、めんつゆを入れて素麺などを楽しんだりと幅広い使い方ができそうです。
>肥前びーどろ 縄文ロック のページへ
>肥前びーどろ 虹色ロック のページへ
そばや素麺などをガラスの器に盛ると涼しげですが、さらに藤や木のランチョンマットを下に敷いて使うことで、さらに涼しさ・透明感を盛り上げることが可能。
「土佐竜 ティーマット」は、四国の四万十川流域で取れた四万十ヒノキを使った贅沢なマット。その上にガラスの器に乗せたそうめんやそばを置けば、センスのよい涼しげな食事に早変わりします。良質なひのきなので、美しさだけでなく、丈夫でほんのり木の香りも楽しめます。ティーマットには大きいサイズのもの、小さなサイズのものがありますので、一人分でも、多人数でも、セッティングが決まります。
竹の葉を飾ったり、つゆを入れるちょこもガラスにしたりすると、さらに見栄えがよくなります。薬味や副菜などを工夫すれば、ちょっとした夏のおもてなし料理にも。「センスいいね」といわれる一品になりますよ。
手のひらサイズのガラスの盃やぐい呑などに料理を盛ると、涼しく賑やかな食卓を演出できます。
「津軽びいどろ 四季の盃」は、青森県津軽地方で作られる宙吹きのガラスで「花見酒」「涼見酒」「月見酒」「雪見酒」の4つの盃から成り立つシリーズ。きんぴらや白和え、冷やっこ、焼きなすなどの料理を、それぞれのカラフルな色合いに合わせて少しずつ盛れば涼しくておしゃれな一品になります。いくつか盃やぐいのみに料理を入れて並べれば華やかな雰囲気にも。
また、「江戸硝子ぐい呑 彫刻夢柄子 ぶどう紋 」には、冷たいスープやジュレなどを入れてもいいかもしれません。
小さな盃やぐい呑は使い方次第で、いろんな料理に使うことができます。ぜひご自宅でも素敵な使い方を見つけてみてください。
夏はやっぱりキンキンに冷やしたビール。そんなときに使いたいのが、やはりガラス製のグラスです。薄くて透明感あるガラス製のグラスは唇や舌に触れる感触も心地よく、目で見て、飲んで、楽しむことができます。
薄いグラスでおすすめなのが、「津軽びいどろ スリムグラス」。宙吹きのガラスですが薄めで細長く、ビールを飲む器としておすすめです。「津軽びいどろ」の特徴である鮮やかな色合いも特徴のひとつで、日本人の大好きな桜の色を眺めつつビールを楽しめます。
また「江戸硝子 富士山タンブラー」も透明で薄く、美しいグラス。このグラスの底の部分には雪を冠った富士山の姿が。飲み物を入れるとその色を反射して輝くのが特徴です。ビールを注ぐと黄金色に輝く富士山が見られるかもしれません。
>江戸硝子 富士山タンブラー のページへ
肥前びいどろは人気が高いです。淡い色味のグラスは宙吹きで作られ職人の心意気を感じながら、喉元を通り過ぎるビールを味合わます。
>ビアグラス | 肥前びーどろ 虹色 のページ
ビールののど越しを楽しむ以外にも、夏の暑い夜には、すっきりとした味わいの米焼酎やジンなどのスピリッツもおすすめです。スピリッツ類は透明な氷をたくさん入れてきりっと冷やすロックスタイルなら、味の変化も楽しめます。
そもそもロックグラスとは「オールドファッションドグラス」の略で、飲み口が広いグラスのこと。最近ではいろいろなロックグラスが売られるようになりましたが、ちょっと高級なロックグラスで飲むお酒の味は格別なものがあります。
例えば、「江戸切子」や「薩摩切子」のロックグラス。もともと江戸っ子たちは、切子の器で夏を感じていたそうですから、涼を感じるにもぴったりです。シャープな江戸切子に、重厚な薩摩切子。色やカットもいろんなものが揃っていますので、好みのものを見つけやすいでしょう。どちらもとっておきのお酒を飲むときに使いたいですね。
>江戸切子 のページへ
>薩摩切子 のページへ
>琉球グラスのページへ
キリリと冷やしたシャンパンなどのスパークリングワインや白ワインは、夏の定番。器が変わるとより一層華やかになります。
ワイングラスなら「津軽びいどろ台付きグラス」もおすすめ。シンプルで使いやすく、色合いが美しい津軽びいどろのグラスです。お皿やほかの器もガラスでコーディネートして、食事と一緒に楽しんでみてはいかがでしょう。
「ビールやワインもいいけど、やっぱり夏は冷酒」という方におすすめなのが、冷酒のおちょこや酒器のセット。
「薩摩切子 冷酒おちょこ」はちょっと珍しい冷酒専用のおちょこです。高度な技術で作られた薩摩切子は、重厚で淡いグラデーションが特徴。金赤・金紫・黄・藍など、7つの色があります。
「江戸硝子 青・赤 富士祝盃ペア」はおめでたい富士山をあしらった江戸硝子の盃。青と赤のセットになっているので、夫婦で晩酌をするときにもぴったりです。
また、「津軽びいどろ 酒器セット 」は、おちょこと冷酒器がセットになっており、冷酒器にお酒を入れ、冷やしてから飲むのに便利。3種類の模様があるので、お好みのものが選べます。
今回ご紹介したガラスの器は、すべて伝統工芸品。ガラスは急な温度変化や高温に弱いため、大切に扱う必要があります。食器洗い機などは使わず、手洗いし、乾燥させます。
洗うときは、はじめにぬるま湯につけ、やわらかいスポンジを使って中性洗剤で洗いましょう。洗い終わったら、グラスリネンなどを使って優しく拭きあげます。大切に使って、長い間伝統工芸品と長くお付き合いしたいものです。
料理を盛り付けたり、お酒を楽しんだりといろいろな使い方ができるガラスの器。夏の食卓を彩る名物でもあります。使い方次第でいろいろな楽しみ方ができますので、自分ならではの使い方をみつけてみませんか。うだるように暑い日には、清涼感を与えてくれるガラスの器で夏の夜を楽しみましょう。
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今年も年賀状やおせち料理の準備など、一年を振り返りもままならず新年の準備で忙しい方も多いと思います。今回は、新年を迎えるのがより楽しみになるような、お正月におすすめの伝統工芸品を紹介します。
]]>今年も年賀状やおせち料理の準備など、一年を振り返りもままならず新年の準備で忙しい方も多いと思います。今回は、新年を迎えるのがより楽しみになるような、お正月におすすめの伝統工芸品を紹介します。
毎年家族でおせち料理を食べる家庭も多いと思います。そんな毎年のイベントをより特別にしてくれる、お正月に使いたいテーブルウェアを紹介します。
最初に紹介するのは、越前漆器の日月椀。太陽と満月を表した金銀の模様は、シンプルで飽きのこないデザイン。祝い事だけのとっておきの器としても、普段使いの器としてもぴったりです。「木地呂塗り」という技法を使っており、飴色の透明な漆を何重にも塗り重ね、磨き上げることで、艶のある表面から木地の木目が透けて見えます。
もともと越前漆器は、漆を採集する職人が自分の使っている器に漆を施したことから始まりました。そのため、漆を知り尽くした職人が、器が一番美しく丈夫になるように漆を施した、暮らしの中で誕生した漆器です。
軽くて丈夫なので、お子さんや高齢の方でも安心して使えます。漆器のお椀にお雑煮を注げば、ハレの日の食卓に華やかさをもたらしてくれます。
お正月のおせちはオードブルを購入する派の人でも、料理やちょっとしたお菓子を運ぶ際に使ったりと、意外と出番の多いトレイ。こだわりのトレイを使うだけで、よりいっそう料理が映えて見えます。
森工芸のトレイは、自然由来の素材を活かした見てて飽きないデザインのトレイ。波紋状に広がる美しい木目の模様は『突板(つきいた)』という木材によって表現されています。『突板(つきいた)』とは、木を薄くスライスしたもの。その突板を三角形にカットし、年輪が広がるように貼り合わせることで、丸いトレイに仕上げています。さらに『発酵建て』という伝統的な技法で藍染することで、水面に広がる波紋をイメージしました。
光の当たり方によって違った表情を見せてくれるので、使いやすさはもちろん視覚的にも楽しいトレイです。
親戚や友だちなどを家に迎えるときにあると便利な箸置き。料理を選ばず使えるので、お皿やコップに比べて取り入れやすく、ひとつは持っておきたいアイテムです。
鋳心ノ工房の箸置きは、全国の地場産業のデザイン開発を手掛けたデザイナー、増田尚紀氏が手掛けました。暮らしに馴染むデザインを追求した箸置きは、いつもの食卓をさりげなくシックで上品な雰囲気にしてくれます。
上品な梅のデザインは、新年を迎える食卓や結婚祝いのちょっとしたパーティーなどにぴったり。可愛らしい桜のデザインは、どんなシチュエーションでも食卓に自然な華やかさをもたらしてくれます。
お正月などの祝い事には、いつもより少し贅沢な日本酒を特別な酒器で飲みたくなります。お酒の旨味が何倍にも上がるこだわりの酒器を紹介します。
いつもと違う気分を味わいたい、そんなときに使いたくなるのが田島硝子の富士祝盃。不死や長寿の象徴として知られる富士山のデザインをした日本酒グラスは、ハレの日にいっそう彩りを与えてくれます。
赤と青それぞれのグラスは、青空を映す青富士と夕日に燃える赤富士を表現。青富士と赤富士という、現実では決して同時には見られない夢の時間を実現してくれます。また、細部のデザインにもこだわっており、山頂に積もった雪のデザインは、富士山が最も美しくなる黄金比に設計されています。
食器棚に伏せて置けば富士山本来の姿に、お酒を注いで使うときは逆さ富士として、2つの面で楽しめるグラスです。
お酒は酒器によって口当たりや風味が大きく変化します。純銀製のぐい呑みにお酒を注ぐとことで、銀イオンの効果でお酒の味をまろやかにしてくれます。また、純銀のぐい呑みに注がれた日本酒は、光の反射によって銀の輝きをまとい高級感を感じさせてくれます。
職人が一つひとつ丁寧に打ち込むことで施された表面の槌目模様は、銀製品でもどこか温かさを感じます。
特別な日にいつもと違うぐい呑みを使うことで、特別感をさらに演出してくれます。ガラス製のぐい呑みが多い中で、ちょっとした変化をもたらしてくれる純銀製のぐい呑みを選んでみてはいかがでしょうか。
特別感を演出してくれる酒器といえば、薩摩切子も代表的なひとつ。表面に刻み込まれた繊細な模様と色のグラデーションは、江戸時代の技術を研究し忠実に再現した技術だけが表現できる美しさです。
ガラスの成形から模様のカットまで、職人が全て手作業で行っているため、一つひとつ色合いが異なります。お客様をおもてなしする用としても、自分だけのお気入りにアイテムとしても選んでいただきたいグラスです。
お客様にさりげない心遣いでおもてなしをする茶器と菓子器を紹介します。
親戚やお友だちなど、大切なお客様にはとっておきのお茶とお菓子でおもてなししたいですよね。樺細工の茶筒を使えば、お茶の時間がより上質に感じられます。
角館伝四郎の茶筒は、桜皮、くるみ、さくら、かえでの樹皮を組み合わせて作られています。三種類の異なる樹皮を組み合わせることで、遊び心あふれるデザインに仕上げ、自然の木が持つ豊かな表情が楽しめるモダンな筒へと変化しました。
使い込むほどに色合いが深くなり艶が生まれるので、経年変化を楽しめる育む茶筒です。高い防湿性はお茶だけでなく、薬入れとしても使えるので、自分の用途に合った使い方で楽しめます。
こだわりの菓子器を使うことで、ちょっとしたお茶の時間を楽しみにさせてくれます。蓋を開けるまでのワクワク感と蓋を開けたときにふわっと広がる杉の香りは、おもてなしの空間をよりあたたかくしてくれます。
秋田杉の素材の魅力を引き出した木目模様は、現代の食卓にもさりげなく馴染むモダンデザイン。ウレタン塗装を施しているのでお菓子以外にも使えます。
この時期になると自然と一年を振り返ってみたり、来年はどんな年になるのか考えたりする時間も多くなってきました。最近では大人数で集まる機会も減ったことで、日常の延長にある年中行事を大切にするようになりました。大晦日やお正月など、特別な日にはこだわりの器で食卓を囲むのも楽しみでひとつです。新年のハレの席にぴったりな伝統工芸品を取り入れてみてはいかがでしょうか。
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